1 【邂逅】 

November 16 [Sun], 2008, 11:23
「だから――俺を殺してくれ」
 夏のある日、僕は殺人鬼に出会った。

 ◆ ◆

 父親の転勤で、僕は杜王町に引っ越すことになった。
 杜王町。
 M県内にある、S市のベッドタウン。
 田舎というほどではないが、都会というわけでもない。
 名産品は牛タンの味噌漬け。
 僕は牛タンが大好きだ。
 県花は福寿草。
 僕は福寿草も好きだ。
 何かの縁だろう。
 そんなくだらないものなんてどうだっていい。別に牛タンと福寿草が好きな人間なんて腐るほどいる。
 大切な《縁》が、ここには確かに存在していた。
 ――僕が殺人鬼と出会ったのも、何かの《縁》。《運命》。
 ――《必然》。
 そんな言葉は信じていないが、やはり、この世界には流れがある。殺人鬼が高校生と出会う、縁。

 ◆ ◆

「今日は転校生を紹介します」
 と担任、岡が言った。舌足らずの、幼い印象を受ける喋り方だ。体躯も成人女性とは言えないほどに小さい。小学生とはいかずとも、中学生だといわれれば信じてしまいそうなほどの小ささ。
「高校生にもなって、そんな口調はどうかと思うなあ」と、自分よりもはるかに可愛く、男子だけでなく女子にも慕われている美人教師を尻目に由花子はぼやく。
 軽い嫉妬も覚えるのだろう。
「名前は……りんご……君?」
 巨乳眼鏡美人教師の横には、およそ『りんご』と結び付かないような体格のいい青年が立っていた。しかし、これといって喧嘩が強そうにも見えない、むしろ弱そうな印象を受ける。
「あ……はやしです。はやしきんせい」
 黒板には『林檎星』と書かれていた。
 親は名付ける時に何も考えなかったのか? それより、担任は事前に名前を聞いていなかったのか? 等と考えていると、由花子の横の席には林が座っていた。気配に気付かなかった。しかし、空気というそれではなく、存在感はある。
「おはようございます」
「え? あ、おはよう」
 つい見とれていたが、最愛の康一君の頼みを忘れていた。
『誰もがスタンド使いである可能性を秘めている』
『見極めるにはどうするか』
『自分のスタンドを相手に見せる』
『見えたらスタンド使い』――だ。
 有体に言って、あまり賢いとはいえないこの方法。《見えないふり》は出来るし、それに、誰も彼もがスタンド使いというわけではない。
 しかし、由花子は律儀にそれを守る。
 康一本人も、効果がないことは分かっているだろうが、《念のため》だ。
 林に《ラブ・デラックス》を見せる。
 何も反応しない。
 念のため、攻撃を加えておいた。身を守るようであればスタンド使い、そう考えたのだろう。しかし、やはりそれでも《見えないふり》は出来る。
「いてっ」
 可愛い台詞とは裏腹に、林の頭は燦々たるものへと変わっていた。焼け野原、そんな言葉が似合うような悲惨な髪。格好良い顔が台無しになる。さすがに由花子も罪悪感を覚える。

 ◆ ◆

 海開きが行われ、お楽しみがいっぱいの季節。
 ――の、一月前。
 彼女はいなくなった。
 さよならの一言も言わずに――

《Dead Ends and Girlfriends》 To be contenued.

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