3、「でも私、大丈夫だから。」

January 02 [Thu], 2014, 0:17



ふと我に返ると、安祐美は和泉に手を引かれ、職員室へ向かい、歩いていた。


「...え、え、ちょ、ちょっと!」


何が起こっているのか理解出来ず、安祐美は和泉の手を振り解いた。


「あれ...なんで、あ、先輩は?」


先ほどまで目の前にいたはずの乃木の姿が見えない。


「え...あれ、もしかして...知り合いだった?」


和泉は、しまった。と苦笑し、目を泳がせた。どうやら、安祐美が上級生に絡まれていると勘違いしたらしい。


「だって四十住さん、嫌そうな顔してたから...。」


和泉の言葉に、安祐美は隠しきれない自分の中の何かを悟った。


「嫌なんかじゃ...ないんだから。」


そう呟き、一人職員室に入っていく安祐美の背中を、和泉はじっと見つめていた。




しおりを束ねる作業は想像以上に難航した。
2人は静かに、黙々と、作業に専念していた。
...が、ふと、安祐美は手を止め、口を開いた。


「...私ね、好きだって言われると、誰でも好きになっちゃうの。」


和泉も手を止め、ゆっくりと顔を上げた。


「さっきの先輩...乃木先輩の噂、あれを知ってたから、私を引っ張ってきてくれたんでしょう?」


安祐美の的を得た質問に、和泉は少し戸惑い、そして静かに頷いた。
それを見て、安祐美も静かに頷いた。


「ありがと、心配してくれて。でも私、大丈夫だから。今度こそ、相手のこと、ちゃんと好きだって思えてるから。大丈夫だから。」


安祐美は俯き、自分に言い聞かせるかのように呟やいた。それを見た和泉も、すっと俯いた。
そして2人は、作業を再開した。

プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:ぼーん
読者になる
2014年01月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
ヤプミー!一覧
読者になる
P R
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
http://yaplog.jp/boomboon/index1_0.rdf