彼のいる場所 vol.40 

November 05 [Sat], 2005, 22:09
<四十話>
シホは宗次が「信じていいのですね?」と言ってはくれたものの
自分に対しての思いがもっと確実になるまでには、まだ時間がかかると
考えていた。
圭介だって何度同じことを言っても分かってくれず、挙句に
宗次のとこまで行くとは、そこまであの男が幼稚で執念深い奴
だったとは知らなかった。それに付き合って半年しか経っていないし
大体付き合ったという事実でさえ不確かなものなのだ。
気持ちの中ではこれからというような間柄だった所で、
圭介が一人ではしゃぎ、その彼の浮かれように疑問を抱き
始めていた矢先に宗次に出会った。
私にとっては本命と義理に例えると本命は宗次で、圭介は
義理になる。それを圭介は、宗次が私にナンパでもしている、
かのように思っているみたいで何とか私に騙されるなと
説得してくる。
唯一の友達である京子から紹介されて始まった圭介との
出会いは、いつからか形が変わり、脱出の糸口でさえ
見失っている。どうしたら彼と別れられるのか、理解して
くれるのかシホはもう長いこと悩まされ続けていた。
 唯一の救いは宗次という存在。彼がいてくれるから
私は圭介が近づいてきても耐えられた。私には宗次が
いてくれる。
「何か起きたら警察に真っ先に連絡すること」
 彼は言ってくれた。小さなことも連絡し、それが経過となり
やがて彼らを動かすだろう、と。その日を待ち、そして
その日のために日々経過を積み重ねた。

彼のいる場所 vol.39 

July 26 [Tue], 2005, 22:08
<三十九話>
 やっぱり。圭介か。
「何でもないのよ、私とは。別れたっていうか、大して付き合っても
いないのに、彼氏気取りでこっちが困ってるくらいなの。付き合って
たっていうより、友達みたいな感じで、向こうが勝手に付き合ってい
る気でいるのね。どうしたら分かってくれるのか私自身も分からない
のよ」
 正直なことを言うしかなかった。
 正直に言って宗次くんに守ってもらいたかった。もっと私を知って、
近づいて欲しかった。
「じゃあ警察に言えばいいじゃないですか」
 私をじっと見る宗次くんの顔を見て、シホは応える。
「これくらいのことじゃ、警察は相手にしてくれないの。もっと事件
沙汰にならないとね」
「それじゃあ遅いじゃないですか」
「そういうこと。だから自分で考えてるの。何度も言ってるのに、
全く理解してくれないの。こっちがおかしくなりそうなの」
「それ本当なんですね?信じていいんですね?」
「当たり前でしょ」
 これで本当に理解してくれたか分からないけど、宗次くんが
自分のそばから離れないでくれたのが一番ほっとした。彼に
離れられたらもう誰も頼る人などいない

彼のいる場所 vol.38 

July 26 [Tue], 2005, 21:44
<三十八話>
 圭介に会うよりも宗次くんと会うことの方が先決で
シホは真っ先に彼のバイト先であるコンビニへと車を
走らせた。
 夜のバイパスもそう車の数は少なくないが、結構みな
飛ばすものでコンビニに着くまでそう時間はかからなかった。
ピンポーン
「いらっしゃいませ・・・・あ」
 いつものように時間を持て余し、雑誌を読んでいた彼が
頭を上げ、シホに気づいた。
「もう会わないってどういうことなの?彼氏って?彼氏なんか
いないし。誰かに何か言われた?」
 いつもなら店の外で彼に気づいてもらうのをじっと待っている
のだけど、今日はそういう気もなくつかつかと店に入り、レジ前
まで進んで彼を前にして言った。
 なのに宗次くんは黙ったままうつむいた。
 シホは圭介なのだと半ば確信していた。
 付き合っていたときでさえ大した彼氏ではなかったのに、
今更なにをどうしようとしているのか、どうやって宗次くんの
存在を掴んだのか、シホの周りでこそこそとしていることが
不愉快でならなくてイライラする。
「彼氏なんていないって言ったでしょ、何度も言うけど」
「でも」
「でもなに?」
「いえ、別に」
「“でも”って言ったでしょ、今。言ってよ。何かあるんでしょ、
言いたいこと。言って。」
 彼は何か迷っているようだけど、口を開いた。
「この間、来たんですよ。男の人が。シホさんにはもう会うなって」
「そいつ、背が高かった?」
「あ・・・まあ」
「で、痩せてた?」
「わりと」

みつばのヒトリゴト 

July 14 [Thu], 2005, 21:18
 出版社に投稿するためにせっせ、せっせと書く練習というか、
書くことを習慣づけるためにブログに書き込んでいるわけだけど、
結構大変だなぁぁとつくづく思う。

 時々書いているから大変なのかと思うと、そうばかりではなくて、
PCの前にずっといれば、それはそれで文章が浮かんでこないのだっ。

 こんなんじゃぁ本当に作家になれんの?って自問自答して、渇を入れて
また頑張って書くっていうサイクルを何度も何度も繰り返す。

 もともと空想派なので書き始めると結構楽しいのよ。
 
 でも、自分の作品を客観的に見るために、色々な人の本を読んで
(大して色々というほど幅広くないけど)こういう言い回しって私のには
ないなぁとか、こういうのを書いているつもりでも、文章が硬すぎるなぁとか、
反省したりするの。

 やっぱり東京とかだと作家教室とかあるのかな。スクールに
通って文章力って伸びるのかな。内館牧子さんが脚本家を目指し
はじめた頃にスクールに通ったと本に書いてあったけど、定期的に
物事をこなせる人ってすごいなって思う。私には波があるし。今日は
ダメ。でもその次の日は書く気になっているとか、さ。

 ま、私にはこれしか夢がないし、楽しみもここに凝縮されているので
ずっと付き合っていくつもりなんだけど。いつかは花が咲くといいなぁと
思う。漠然と、ではなくて強く願わなければ!咲く花も咲かないよね。
 
 温かく、かつ厳しく見守ってくださいませ

彼のいる場所 vol.37 

July 08 [Fri], 2005, 20:10
<三十七話> 
携帯に宗次くんからメールが届いていた。
(もう会うのはやめましょう)
 いきなり悲しい内容のメールにシホは戸惑った。
 短い文には多くの彼の気持ちを考えた。とうとう、留学先
から彼女が戻ってきたのかもしれないという、一番可能性
の高い推理、もしくはやっぱり彼女のことが気になって、
これ以上会うのが気が咎めた。あとは・・・・なんだろう。
色々考えて、悩んで、メールを送るのをやめたほうがいいかと
考えたけど、せっかく会えるようになったのに、どうして
今になってこんなことを言い出すのか、理由だけでも
知りたくて、知るのが怖い気持ちもあったけど、メールを
送ることにした。
(どうしてなの?)
 それから返事がくるのを待ちながら、待つのが怖かった。
 会うのをやめたいという彼の気持ちの理由を知ったところで
なんの得にもならない。知れば知るほど惹かれてシホと
違って、彼の思いが逆に向かっていたのがとても悲しく
思えた。
 シホの気持ちとはうらはらに、明るい音でメールの着信を
携帯が知らせた。
(理由なんて別にないです)
 何かある、絶対に何か。シホはまたメールを送った。
(彼女が帰ってきたんでしょ?それしかないじゃん)
 肯定する内容のメールが届いたのかと思ったら、
(彼女はまだ帰ってきてないです。全然関係ないです)
 やっと普通に話ができるようになったのに、また敬語に
戻っちゃってる。敬語になると、急に二人の間に距離が
できたみたいだ。冷たく突き放されているみたいで、
余計に悲しくなる。
(彼氏、心配してますよ)
 同じような文を何度も送りあい、やっと核心に触れた
メッセージがこれだった。
 “彼氏”宗次くんのことを彼氏と呼びたいくらいなのに、
きっと圭介のことだろう。
 シホは嫌な予感がした。

抱き続ける野望 

July 07 [Thu], 2005, 21:08
 私は作家になるのが夢であり、目標です。


 漠然と学生の頃から文章を書き始め、気が向いた
時に短編を書いたりしてます。っていうか、いつも
中途半端なんだ・・・・。


 だから、「原稿」っていうほど、書き上げたストーリー
なんてほとんどない。情けないんだけどね。
 一日原稿用紙一枚書けば、一年で結構な枚数に
なるな・・って思って書き始めたときもあったけど、
なかなかねぇ・・・・・、書き始めるより、書き続けること
がこんなに大変だなんて、思い知らされ十年くらい
経っちゃったな。
 

 でも、作家になりたい。空想っていうか、妄想って
好きだから、それだけじゃ作家にはなれないだろうけど
作家にならなきゃ、生まれてきたことさえ無駄な気が
する。

 色気も可愛げもなく、特別勉強もできないし、女として
子供を授かることもできず、友達も結婚式に呼べるほど
いないし、他にこれといって秀でるものもない、まだ
不完全燃焼って感じなんですよね。


 内館牧子さんの本に「夢を実現して死ぬか、実現できずに
死ぬか」みたいなのをみつけた。
 手にとって、はぁ〜って重みを感じたよ。頑張らなきゃ
いけないなって。


 いつか必ず作家になれるように、その道を作らなきゃ
いけない。自分にエールなのでありました。

彼のいる場所 vol.36 

July 04 [Mon], 2005, 20:32
<三十六話>
 コンビニに着いて、外から店内を見渡すと宗次くんがいるのが
見えた。いつものようにレジの向こうで雑誌を読んでいる。
 この辺りのコンビニではそんなに客が入らないのか、彼は
当たり前のように雑誌を読んでいるが、シホが住んでいる方の
街まで出るとそうはいかない。雑誌など読む暇もないし、読んで
いることは社員教育の上で許されないことであるだろう。
 忙しくない町に住んでいたことが幸いだったのか、コンビニに
バイトしていたから出会えたのか、田舎も市街地も人に出会う
にはそれほど大きな差はないと思う。
 店の外からじっと宗次くんを見ていたら、老夫婦がやってきて
入店した。ピンポーンという聞きなれた音が鳴って彼が頭を
上げ何か言った。そして雑誌に視線を戻したけど、また頭を上げた。
私に気付いたようだ。
 すぐに店を出てきてくれた。
「こんなとこにいないで、店に入ればいいのに」
 学生だというのに、はるかに私より視線が上で、彼に見下ろさ
れるのは心地がよかった。
「いきなりメールしちゃったし、迷惑だったかなと思って」
「いいよ、そんなこと気にしなくても」
「今日は何時までなの?」
「十時」
終わるまで随分時間がある。
「勉強する暇ないね」
「まぁね」
 私達は他愛もない話をしながら、シホは七時頃まで店にいた。
 彼がいいというので、シホもカウンターの中に入って、話をして
時には隣で接客をした。とても幸せだった。一緒に働いている間、
ずっとここにいたいと思った。

彼のいる場所 vol.35 

July 04 [Mon], 2005, 19:55
<三十五話>
 髪量が多い彼、黙っていてもそこにしっかりと存在感が
ある彼、少したれ目でだけど声が低く、学生にしては大人の
風格まであって、何よりも学生なのに私なんかを受け入れて
くれたこと、全てが彼で、全てが好きだ。シホにはまだ知らない
ことがたくさんあるだろうし、新しい発見をしても彼のことなら
そのこともきっと好きになるだろうと確信する。だって全ては
彼であり、彼の細胞なのだ。世の中から遅れたこの町並みも、
ゆっくりと進む時間の流れも、これからも変わろうとしないことも、
全て彼が育ってきた町なのだと思うと、茶畑も、工場も、山も、
川も、発展しない店も全て歴史があり、愛おしく見える。彼に
とっては見慣れた町であって、いろんな思い出がつまっている。
 まだ彼の口からは語られていないその思い出を、シホは
勝手に描く。きっと、彼は、あそこの川でザリガニを捕り、あっち
の店では万引きをし、あの山に登って、あの学校に通った。
 どれも当たっているような、外れていたとしても、とても近い
推理なのではないかと思うと、彼の驚く顔さえ想像できて
一人、車を運転しながらシホはそっと笑った。

彼のいる場所 vol.34 

July 04 [Mon], 2005, 19:31
<三十四話>
 シホは国道を走っていた。車は綺麗になった。
でも心は乱れてイライラしていた。圭介も、京子にも。
最悪だ。今まで友達と思っていた唯一の京子もあれ
だもの。
 シホは人と接するのが苦手で、傷つけるのも、傷付け
られるのも怖い。子供の頃に近所の男の子にいじめられ
てからだんだん人と接するのも怖くなって、大人しくなり
義務教育時代も人と深く接するのは避けてきた。だから、
特に仲のいい友達と呼べる女の子はいない。高校時代に
強引に話しかけてきた京子と、少し遊ぶようになってから
心を開きかけてきていたのに、それも閉ざすことになった。

 誰を信じていいのか、信じる信じないというより、共感
できるかどうかという違い。誰とも深く接しないから、誰とも
共感できないのだということを、シホは気づかないでいた。

 知っている街を右へ左へと気まぐれに走らせて、気づくと
宗次くんのいる町へ来ていた。
 会いたい、とシホは思った。
 からからに乾いた心が、宗次という名のミネラルを欲して
いた。
(コンビニの近くまで来ているの。今、時間あるなら会いたい)
 “会いたい”という言葉を使ってしまうことは、タブーに思われた。
 “友達として”彼に受け入れてもらえたのに、彼女の領域
にまでどんどん立ち入っている気がした。いつしか、彼に
拒まれたら。友達としてまでも受け入れてもらえなくなる日が
来てしまう気がして怖かった。分かっていても、受け入れて
もらいたい、理解して欲しいと彼に求めてしまうのだ。
 
(バイトの日だから、店にいるよ)
 返信の内容を見て、シホはホッとした。嫌がられたメールじゃ
なかった。安心と喜びが混ざった。シホはすぐに宗次くんが
いるコンビニへと向かった。

彼のいる場所 vol.33 

July 04 [Mon], 2005, 17:06
<三十三話>
 父に車を借りてばかりなので、たまには洗ってあげようと
車を借り洗車場へと向かった。ここへは圭介が利用している。
洗い、ワックスをかけふき取っていると一人の男がちらちらと
こちらを見ているのに気づき誰だろうと視線を向けると、圭介
だった。
「久しぶり。何やってるの」
「・・・・・・」
 一番会いたくない人と会ってしまったと、心の中で舌打ちを
した。
「どうしているかなと思ったら、結構元気そうで良かった」
「・・・・・・・」
 話したくない、顔も見たくない。早く向こうへ行けばいいのに。
「オレさ、結構心配してんのよ、シホちゃん元気ないみたいだから」
「・・・・・・・」
 人のことを心配するより、自分のことでも心配しろっての。
「毎日じゃないけど、アパートの前通って電気が消えるまで
見届けたりしてさ。オレって優しいところあんだぜ」
「何やってんの?それ本当なの?警察に言うわよ」
「冷たいこと言うなよぉ。オレとお前の仲じゃないか」
 どういう仲なのよ、普通の恋人同士が聞いてびっくりするわ。
一度もあんたと恋人同士になった覚えはないわよ。
「最近会わないけど、仕事そんなに忙しいのか?あんまり会わなく
なるとお互いを忘れちゃうだろ、だから・・・もう一度昔のように」
 やりかけていたワックスの手を早め、さっさと終わらせ、
ワックスを片付けた。
 それでも圭介はまとわりついてくる。
 すがるような圭介の声を少しでも聞かないように。
「電話してくれたら、いつだって会社まで迎えに行くからさ」
「来ないでよ!会社になんか絶対来ないでよ!来たら本当警察
呼ぶから」
「シホー・・・・・・」
 向こうから人がやってきて、助けを求めようと思ったら京子だ。
「誰かと思ったらシホじゃん。仲イイねぇ。紹介してよかったよ」
「何言ってんの」
 とんでもない人を紹介してよくそんなことが言えたものだと、
心の中でいらだった。
「やっぱりシホには圭介くんがお似合いだと思ったんだよね。京子に
感謝してよ」
「あんたってサイテーね」

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