村中明彦著「事例広告の方法」を読む [ 閉口するほかないベストセラー投機 - そんなことをしなくても評価されうる「実ある書」 ] 

February 14 [Mon], 2011, 8:45
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村中明彦氏の「事例広告の方法」は素晴らしい。
私は本書の中身を絶賛したい。


近年、マスメディア・マス広告の凋落が顕著である。
それとともに、広告主と消費者の架橋はいわばこのうえない難題と化した
感がある。

そんななか、広告主をぬか悦びさせるようなクリエイティブ礼讃本が
次々と出版された。
人気クリエイティブ・ディレクターなどから数々出されたそのほとんどが
自慢話の書籍化という噴飯もので、
「架橋」例への洞察も何もなく、それは偶発したのか、
そのディレクターゆえに成果を挙げたのかすら曖昧な始末だった。

一方、その間、消費者には未曾有のセールス・コンテンツが
これでもかと送り続けられていた。
ここに「戦略的に買いたくなる『空気』を作り追い詰めていけばよい」的な
プロモート手法が講じられ、消費者はさらに包囲される。
なんとも息苦しい環境。

『空気』として通用すれば、ただのステルス・マーケティング。戦略PRとかいう。
見破られれば、イジリすぎの広告プロモーション。

しかし、この時代の消費者は度重なる偽装問題を目の当たりにしながら
懐疑と警戒のマインドを昂じていた。
騙されたふりをした消費者によってプロモーションは盛況だが、
企業(広告主)の事業成績は低迷の一途を辿った。

一方で、消費者は「手当てと税」が日々増える話になったり
減る話なったりする中にいる。
こんな状態では消費マインドを硬化させていくほかないのである。
結果、マスメディア・マス広告は機能不全の重症化どころか、
不能的惨状の日を迎えた。


しかし、広告はなくならない。
人に物欲があるかぎり。
人に向上心や将来期待があるかぎり。
どの時代にもそれは絶えることなく、むしろ連綿としてそれはあった。
その確かな律動と同期する術さえあれば、
広告はそれとしていかようにも躍動するのである。

その術にはもちろんいくつもの解がある。
それぞれに正解といいうる相応事情がある。
ただし、重要なのはその解は広告主にとっての正解であると同時に、
この時代は消費者にとっての正解でもあることを求められている
という点である。

この辺が、爾来、そそのかし、いくらかはだまくらかしてでも買わせるという
スタンスで、そのだましが巧妙であれば激賞するというような広告批評の中で
孵化させられていた輩にはともかくno ideaであった。

他方、消費者は一方的な売り込みやだましから自衛するためにこそ、
各種レビューや情報比較サイトに入れあげた。

が、それもここへきてレビュー自体のだまし化、比較サイト自体の
広告ポータル化によっていよいよ息が詰まり始めた。

救世主のようなふれ込みの「キュレーター」も、
往年の檀家ビジネスの胴元が自称したインフルエンサーと区別がつかない。
たとえキュレーターがみずからその商業意図について禁欲的であろうとも、
である。
いうまでもなく、結局はエンド・ユーザーたる消費者がそれが商売がかっているか
どうかを決めうる唯一の主体なのだ。


自衛への動機が懐疑的消費性向として平準化されたこの時代の消費者たち。
しかし、彼らはそれでも自利に適う情報を求めている点に変わりはない。

「買ってほしい・買わせたい」の広告主と「自利と懐疑のリテラシー」の消費者の
同時結節点、そのひとつの解がこの「事例広告」という「方法」なのであった。


手詰まりとしか表現しようがないマスメディア・マス広告界に
この「正解例」はあまりに重要である。


また、同時に消費者には自利と共感に沿う自己実現情報の探し方への
有意なヒントになろう。



惜しむらくは、ここまで「実」と可能性を抱いたこの書について
閉口するほかないベストセラー投機にもみえるキャンペーンが仕掛けられている
ことである。


先日来、「推奨の懇請」を趣旨とするメールがおびただしく送りつけられ、
ユーザーとしては閉口するほかない。( 機械の誤作動か? )

目先を変えただけの自己啓発書や売るためだけに書かれたビジネス書が
スパム・プロモーションで手垢まみれになっていくのは昨今のやむを得ざる
趨勢なのだろうか。

それとも出版[粗製乱造]コンサルに株価操縦されるがごとく
(エセ)ブランド人になることをそそのかされたのか。

まるで販売部数UPをおまけで釣りつつ言い寄る姿には
わりきれないものを禁じえない。


冒頭に評したとおり、村中明彦氏の「事例広告の方法」は素晴らしい。
投機的「キャンペーン」等、そんなことをしなくても評価されうる「実ある書」こそ
本書である。
商業出版を隠れ蓑にするような姑息さは一片も見当たらぬ本書だけに
投機的「キャンペーン」に走ったその点だけがきわめて残念である。
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     reviewed by Hideyo Miyake as BOOKselect167
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