『流れ星が消えないうちに』 橋本紡

November 23 [Sun], 2008, 22:32













新潮社
定価:1470円(税込)


大好きな人が死んじゃうよりも、世の中にはもっと悲しいことがある…。つらくって一睡も出来なくても、朝は来るし。涙が涸れるほど泣いてても、やっぱりお腹は空くもので。立ち直りたいなんて思ってなくても、時間はいつでも意地悪で、過ぎ去った日々を物語に変えてしまう。
玄関でしか眠れないわたしと、おバカな僕と、優しすぎる彼を繋ぐ「死」という現実。
深い慟哭の後に訪れる、静かな愛と赦しの物語。


時間の流れは、早すぎる場合も遅すぎる場合も過酷なものです。恋人を事故で亡くした奈緒子は、まだ思い出を消化しきれていない。しかし、自分という存在を置いていくように日々が過ぎていく。
そして、自分の部屋で寝られなくなった奈緒子は、玄関に布団を敷いて寝る。そのことについて家出をしてきた父は咎めない。今の恋人、巧も奈緒子を不器用ながらも優しく見守っている。皆気になってはいるんだけど、優しさからあえて触れない。
家族と恋人、奈緒子を取り巻く人達がとても素敵。皆思いやりに溢れていて、「死」という悲しい要素を払拭してるように思った。

まだ奈緒子と加地くんが付き合っていない頃の、回想の部分も、なんだか岩井俊二の映画を彷彿させて…頭の中にあの綺麗な映像が浮かんびました。個人的にその部分がすきです。

大切な人を失い、色んな事に対して盲目になっていた奈緒子が最後はきちんと目を見開き、日々と共に歩き出す―内容的にはありがちかもしれないけど、思い出を回想していくような部分も含め、この本はとても綺麗にまとまっていて読みやすかったです。あと、隠れたいいフレーズも多い!
読み終わった後はほわっと温かいです。

『悩む力』 姜尚中

November 09 [Sun], 2008, 18:37










集英社新書
定価:本体680円+税



情報ネットワークや市場経済圏の拡大にともなう猛烈な変化に対して、多くの人々がストレスを感じている。格差は広がり、自殺者も増加の一途を辿る中、自己肯定もできず、楽観的にもなれず、スピリチュアルな世界にも逃げ込めない人たちは、どう生きれば良いのだろうか?
本書では、こうした苦しみを百年前に直視した夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。現代を代表する政治学者の学識と経験が生んだ珠玉の一冊。
生まじめで不器用な心に宿る無限の可能性とは。



私達は日々、悩みながら暮らしています。悩む、ということ自体がネガティブなことと考えがちですから、悩みを解消するために色々な努力をしている方も少なくないでしょう。
私の場合は学生なので、日頃から「悩むこと」と「考えること」を大切にしているつもりです。しかしこの本を読むと、なんだかもっともっと悩んでいい気が。むしろ、もっと悩まなければいけない気にさえなってくるのです。でもそれはすごく気持のいいこと、有り難いことなんです。
悩むことを肯定したことで、楽になる人は多いと思うし、人は活性化するような気がしました。


学生の自分にとって、著者はちょっと憧れの存在。
大学の教授をされてるからかわかりませんが、なんだか非常に読者にゆっくり語りかけてくるような雰囲気。それだけに、一つ一つの言葉に説得力を感じました。

悩むことの重要さもそうですが、「役者に挑戦したい」とか「映画を撮ってみたい」みたいなことを言ってて、真面目すぎるくらい真面目だと思っていた著者の新たな一面を覗けるような場面が面白かったです。

『知と愛』 ヘルマン・ヘッセ

October 19 [Sun], 2008, 16:47













新潮文庫
定価:本体629円(税別)

精神の人になろうとして修道院に入った美少年ゴルトムントは、そこで出会った若い師ナルチスによって、自分は精神よりもむしろ芸術に奉仕すべき人間であることを教えられ、知を断念して愛に生きようと、愛欲と放浪の生活に入る。
人間のもっとも根源的な欲求である知と愛とが、反撥しあいながら互いに慕いあう姿を描いた、多彩な恋愛変奏曲ともいうべき作品である



日本では、「知と愛」を題がついていますが、もとの題は「ナルチスとゴルトムント」。
"知"がナルチスで"愛"がゴルトムントのことを表しているそうです。

ヘッセが人間が求める根源的な欲求、知と愛について書いた作品。
まとまりのいい作品で、個人的には『車輪の下』より好きかもしれません。


なんといっても、知に生きるナルチスと愛に生きるゴルトムント、この二人の関係がとっても魅力的。
ナルチスもゴルトムントも美少年で…そんな二人が慕いあうということで、一歩まちがえればBLっぽくもなり得そうですが…二人の想い合う姿はBLとは全く違い、恋でも友情でもなく「愛」そのもの。
違う性質を持ったお互いへの敬意とかまたは羨望、そんな感情を抱きあいながら二人の想いはつながっているのかな。


そしてナルチスに教えられ、ゴルトムントは愛に生きようと女の人を渡り歩くような流浪の生活を送ります。女性の"美"に敬意を表し、彼女達を幸せにする彼は魅惑的にうつりました。
しかしこの時、彼はまだ"エロスだけで芸術が創造できる"と思っていたのでしょう。快楽との日々に溺れていくのです。けれども、芸術家となったゴルトムントは"エロスだけでは芸術は創造できない"ことを知るのです。
今まで愛した女性達を思い浮かべながら、芸術作品(彫刻)を創りますがここでもやはりナルチスを想い出し、ナルチスをモデルとし像も制作します。ゴルトムントにとって、ナルチスは常に頭をよぎる存在。女性達を愛するゴルトムントですが、ナルチスへの愛の方がはるかに上回っていたような気がします。



ゴルトムントは芸術家らしく、たくさんの人に愛され、たくさんの人を愛して…もちろん愛し愛される中にも孤独は介在しただろうけど幸せな人だなと思った。そう考えるとナルチスは常に孤独な人だったと思う。知に生きて、人間が求める様々なものを我慢してきたのだから。ナルチスにとって、修道院で出世してそれは喜ばしいことなんだろうけど…愛する者に置いてかれる身は辛いだろうな。


彼ら二人の想いを"友情"といってしまうのはなんだかやっぱり不自然。
やっぱり愛なんだろうな、けどどんな愛と聞かれるとまた難しい。
妻子に抱くような愛とも違うし、親に抱く感情とも違う。もちろん恋人とも違う。

もしくは全てを含んだような、完全な愛なのかもしれないと思った。

『ラブかストーリー』 松久淳・田中渉

July 17 [Thu], 2008, 14:05


小学館
定価:本体1500円+税


妄想美形男子VS読書美少女空前の恋愛小説
超美形だが、妄想癖の強い童貞高校三年生・永峰達也は、通学途中、清楚系美少女・轟未来に一目ぼれする。未来との妄想シミュレーションを展開する中、奇蹟的にメアドの交換、上野公園初デートへと事態は進むが・・・

妄想美形男子VS読書美少女空前の恋愛小説



ちょっと、苦手な内容ではあったのですが挑戦。
綺麗な純愛ストーリーを求める人には、あまりオススメできません!

まず。下ネタが多い。ここまで必要だろうか、と思うくらい。達也と未来のキャラを際立たせるためとはいえ、なんだかそこで私の場合冷めちゃいます(笑)

高校生とかが読んでもちょっと「うーん」って感じじゃないかなあ。
大学生にもちょっと子供っぽすぎるし、
中学生くらいが読んだら、共感できるのかな?

達也のキャラとか面白いんだけど、達也の周りの人がキャラ濃すぎてて、際立ってないのが残念。どの箇所も強いから、休まるとこがないというか…落ち着かないですね。
この装丁の写真のように、常に皆がギャーギャー言ってるような感じの本でした

『車輪の下で』 ヘルマン・ヘッセ

July 14 [Mon], 2008, 18:40


光文社古典新訳文庫

周囲の期待を一身に背負い猛勉強の末、神学校に合格したハンス。しかし厳しい学校生活になじめず、学業からも落ちこぼれ、故郷で機械工として新たな人生を始める…。
地方出身の一人の優等生が、思春期の孤独と苦しみの果てに破滅へと至る姿を描いたヘッセの自伝的物語。



ヘッセの「車輪の下」を、新訳で読みたい!と何故か思っていました。
そしたら題が、「車輪の下で」になっていたから、あら?と。
訳者こだわりが題にまで行き届いてることは嬉しいですね

新訳は、今までに数冊読んだのですが、また読みやすいんです。これが。読みやすいもんだから意識してじっくり読まないと、素敵なシーンをすらーっと見過ごしてしまうのです。
古典持ち味の「どっしり」した存在感っていうのが欠けているような気が、個人的にします。

ワガママな読者です…
訳者さんが、どれだけの苦労で一冊を完成させていることやら。



ハンスは、やっぱり気の毒な子。
頭が良くて、上品な顔立ちをしていて、なんだかとっても恵まれてるように思えますが、それ以外のものが欠けすぎています。それ以外のものが本当は一番大切なものなのに。

ハンスは無理をしてるんだけど、そんなことを口に出せない子。
優等生って大変…と思うけど、ハンスは優等生の中に自分がいることを得意としている部分もある。神学校に入学した自分と、そうでない子を比べ、蔑んでいる面もある。
ハンスは、もう、ただ純粋なだけではない。人より自分が優れていると思う事で、楽になろうとしてる。

ずるいけど、そう思わなきゃやってらんないよな〜とね(笑)

綺麗事だけを描写しているわけじゃないから、ハンスに読む人は共感できる。

最後ハンスは、解放された。
解放されたハンスを私は見届けて本を読み終わることができた

『愛すること 愛されること』 加藤諦三

July 13 [Sun], 2008, 17:29

大和書房
定価:1121円+税



まず、題名に惹かれて読んでみました。

勉強になるなあ。うんうん。
と思いながら、夢中になって、猛スピードで読んでました(笑)

かなーり、ズバズバと言う人だなー…と思って読んでたんですが、これは著者がまだ若い頃に書かれた本だそうで、著者自身も年を経てこの本を読み、そういう感想を持ったようです。
でもそのズバズバした物言いが、とってもスカッとする

恋愛について悩んでる人、
明快な答えが欲しい人、
すぐ読めちゃう本なので、読んでほしいと思いました

『八日目の蝉』 角田光代

March 25 [Tue], 2008, 14:19

中央公論新社
定価:本体1600円+税


逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるのだろうか。
理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。
角田光代が全力で挑む長篇サスペンス。




愛人の子を誘拐した女性・野々宮希和子と、誘拐した子・薫の、数年に渡った生活。(薫、という名前は希和子がつけたもの)

長そうな、読むのに時間がかかりそうな本だなあ、と思いながら開いた本。
まず、描写がとても豊かで綺麗。自分の頭の中で自然と映像化していける。

希和子の、追い手から逃げる時の、不安、焦り…心情が伝わってきます。
人の子を盗む。
そんな気持ちは今まで理解できずにいましたが、希和子の薫に対する真っ直ぐな想いや、エンジェルホームという、希和子と薫が二年間過ごした新興宗教的な団体で暮らす、子を授かれない、子を奪われた、など問題を抱えた女性達の存在で、女性にとって"子"という存在がどれほどかけがえのないものなのか、ということについて考えさせられます。
それを失ってしまったことで、精神的にも傾いてしまった彼女達の姿は、未知であって、不思議で、ときに恐ろしくも感じました。
親は、子の為なら何でも犠牲にできるということ自体、恐ろしいことなのかもしれない。

希和子は正しい―といってしまいたくなるほどに、この主人公は私にとって美しかった。

希和子が捕まえられる時に、警察官に言った
「その子は朝ごはんをまだ食べていないの。」
という一言が、薫に対して抱く愛情の深さを物語っていました。

『ステップファザー・ステップ』 宮部みゆき

March 14 [Fri], 2008, 18:17

講談社文庫

 哲と直は中学生の双子の兄弟。両親はそれぞれに駈け落ちして家出中。なかよくふたりで暮らす家に、ある日、プロの泥棒が落っこちてきた!

いやいやながらも、双子の父親がわりをさせられる泥棒。そんな3人を巻きこんで、不思議な事件やできごとがつぎつぎにおこります。ドキドキ、ワクワク、笑って泣いて、最後はほろり。ユーモアミステリーのロングセラーにして大傑作!小学上級から。




双子っていいなあ。楽しそうだなあ。と、まず思ってしまいました。
なったらなったで嫌な事も沢山あるんでしょうけどね

ミステリーなんですけど、全然頭を使わないミステリーというか。とても軽く読めて、この双子と父親代わりの泥棒さんの関係をメインに読ませたいんだな、と伝わってきます。ただここにミステリーが無くなってしまうと、関係がくっついていかない。
まさに、ミステリーがつなぎの役割を持ってるんですね。

宮部さんっていったら、ミステリーの腕がすごいと思うんだけど…
そこを抑えて、こういうのを書くっていうのがいいなあ。
こういうの大好きです

『蒼い乳房』 谷村志穂

March 08 [Sat], 2008, 19:46

新潮社文庫
定価:本体438円(税別)


 身体は日ごとに成熟してゆく。胸も豊かに色づいてきた。だが、彼女は外の世界をまだ恐れていた。ロシアの血をひくその容貌が、好奇の視線を集めてしまうから。
薫、あなたは恋を知らぬ少女だった。
『海猫』を甦らせた表題作をはじめ、現在まで描いてきた短編より選びぬいた、オリジナル作品集。純粋さ、喪失感、静謐な喜び、癒えぬ哀しみ…。恋愛にはきっと、人生の全てがある。



とても静かで、心苦しくなる作品集でした。
恋愛もの、どんどん読んでいきたいんだけど、自分には結構どっしりときます
やっぱ感情がとても伝わるものだからなぁ。恋をしていなくとも辛くなります。

『海猫』を読んでなかったのが残念! 表題作の「蒼い乳房」は、ロシアとの混血である薫の話。『海猫』の主人公・薫の、若かりし頃、書かれていなかった部分を書いてるそうなのです。

『海猫』、ちょっと前に伊東美咲主演で映画化されましたよね。伊東美咲は綺麗だけど、日露ダブルには見えないなあ、とか思うけど…作者の谷村さんはこの本で"まさに!"と書かれていました。
今は沢山の混血の方がいらっしゃいますね。特にダブルの方は血を多く引いているせいか、色素が薄く、手足がすらーっとしてて、独特な雰囲気なんかがあって、日本人には憧れる存在というか…とても魅力的に映りますよね。 でも昔はやっぱり慣れていない存在でもあるから偏見や好奇の目にさらされることも珍しくなかったのでしょう…。
でも、異国の人との間の子供というのは、世界が平和である象徴のようにも思えます。

しかし、有名人(特にモデルさん)は本当多いですね!
私の好きなモデルさんも日露ダブル、日仏ダブル、日米ダブルだったりします。
彼らは、誰もが認める美しさを持ってるんですね

しかし、この物語を読んだ後はひたすら暗く考えてしまいます(苦笑)
谷村さんはうまいなあ。こういうはなし。
いくつかの作品が収められていますが、どれも北海道(作者の出身地)をどことなく感じさせる匂いが漂っていました。

『ブックストア・ウォーズ』 碧野圭

March 02 [Sun], 2008, 16:43

新潮社

 27歳の亜紀は、大手出版社の編集者と結婚して幸せいっぱい、仕事も楽しくてたまらない。文芸書はもちろん、コミック、ライトノベル、ボーイズラブにも気を配り、売り場改革案や人気漫画家のサイン会など、ユニークな企画を次々打ち出している。
ところが、40歳の独身副店長・理子とは、ことごとく衝突続きの日々。その理子が店長に昇進した直後、6ヵ月後に店が閉鎖されると知った二人は…。
恋愛、失恋、結婚、離婚、たまには嫉妬や喧嘩だってある。ワーキングガールズの世界は、幸せ色のピンクや涙色のブルーで彩られたビックリ箱。この本は、働く女性たちへのリアルな応援歌。



"本屋と、本屋を愛するすべての人に"とはじまるこの本。
題名からして、「本好きは読め!」と言っているよう(笑)

もちろん私は本屋が大好き。最低でも3日に一度は行くのですが、新刊をチェックするだけでほとんど買わないんですね…なので多少の後ろめたさを感じつつ読んでいたんです。ましてや、舞台のお店は潰れるか否かですし。
でも安心したんです。後半くらいになると、見ているだけのお客とかもいやすい本屋の感じっていうか…全てのお客を歓迎しているような店員達が想像できるんです。

著者が、出版社勤務していたということなので詳しいのか、とってもリアル。文に個性があるとか感じる事は少なかったけど、きちんと情景を説明するところに著者の真面目さを感じます。

色んなフェアとかの裏にはこんな苦労があったのかと、興味深かった
本屋って面白い
影響されたかは分かりませんが、最近本を借りるだけでなく買う事もぼちぼち増えてきました(笑)
P R
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