● 眠り続けながらも。:守雫+千種 (零刻) 

September 16 [Wed], 2009, 0:10
学校の教室で千種と談笑。
とても他愛ない会話をしていた筈なのに、私の頭の中には良からぬ事。
それは、最近よく見る妙にリアルな夢の事。


「こんな光景、夢で見たなぁ」
「え、なにそれデジャブ?」
「うーん、ちょっと違う気がするけどそんなかなぁ」


えーなにそれ、守雫ちゃんどんなの?
と千種に覗きこまれるようにして尋ねられる。
どんな?どんなって、だからとってもリアルな感じ。

こうやって教室で誰かと話してる。
その誰かは大抵、最初が雷姫で、目線を脇に向けると拓魅と願叶君がいる。
雷姫と私がいつでも話に盛り上がっていて、雷姫がその話を拓魅に振る。
そうするといっつもつまらなそうにしている拓魅が、やっぱりやる気のない声で返事をするの。
それでその横にいる願叶君が苦笑しながら眺めてて。
そんな事をやっていると千種が策麻くんを連れてやってきて、お昼を食べようって声をかける。
良いよって返事して、いつの間にか机がちゃんと整えられててお昼の開始。
少しも食が進まない内に哲牙さんと漲南さんが二人でやってきて、一緒に良い?って聞いてくるの。
雷姫と拓魅がスペースを空けると、そこにはもう机が用意されててね。
一緒に食べる人数が増えていくと日浦先生がやってくるの。
次このクラスは体育だぞ、しっかり食えよって言ってくの。
それで大抵そこでお昼食べようとするんだけど他の先生に呼ばれて行っちゃうの。
それとすれ違いくらいで哲牙さん達にクラス連絡しにきた海吉さんとか淕さんとか霄さんがどんどん増えてってね。
それで10人超えたなぁってのんびり考えてると部活の事聴きに来た雲珠君が千弦ちゃんを連れて席に座りに来るの。
なんかもう全員集合って感じでみんなでお昼食べてるんだよね。
すっごい楽しそうなんだよねーそれが。
でも話してる内容は全然分かんないの。
それで大抵お昼が終わる鐘がなると目が覚めるの。

それがとても、さみしくて怖かった。
あれは夢、現実じゃなくて、夢の中。
とても楽しい時間が、目が覚めると同時に消えてしまう。
妙にリアルな夢だから、時々夢と現実が分からなくなってしまう事がある。
これは夢?それとも現実?
意味もなく不安になってしまって、時々ベッドの中で涙する。
生活しているようでしていないような時間が繰り返されているのが怖い。


「そっかー、やっぱり夢でも楽しいんだね私らは!」
「うん、そうなの」


千種が無邪気に私の夢の感想を言う。
もちろん、私の不安になっている気持ちなんて千種には伝えない。
だって、もちろんそんな不安な気持ちだって結局は夢の影響でしかないから。
でも次の千種の言葉は、私にとってはひどく意外だった。


「じゃー守雫ちゃんはずっとその夢を見続けてよね!」
「……え?」


夢を、見続ける…?
あの、とてつもなく不安になる夢を?
理由が分からなくて、頭が勝手に混乱する。


「どうして?」
「だって守雫ちゃんがその夢を見てるからこそ、現実の私らが楽しいんだよ!」
「へ?」
「夢にまで出るほど私らは守雫ちゃんにとって楽しい存在で、逆に言えば守雫ちゃんが夢で願うほど楽しい事が増えて行くんだよ!守雫ちゃんの夢がきっと、私らの楽しい時間を作ってるんだよ!」


にっこり。
千種が笑う。
とても屈託のない笑顔で、私の夢を褒め称える。
とても突拍子がなくて、とても不思議な解釈で、でも、とても心強い考え方。
そんな考え方を、私はしたくて、でも出来なかった。


「ねぇねぇ守雫ちゃん」
「なぁに?千種」
「これからもそういう楽しい夢、いっぱい見て、いっぱい話してね!」


楽しい夢は、人に話すと叶うんだって。
と、千種が笑う。


「…うん」


私も、笑い返した。







−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

一年以上止めていたにしてはなんだこれ。
とりあえずお題消化。
やっと5つめ…ごめんなさい難産過ぎました。
あーはーはー…

あ、そうだ。これを書かない内に姫姉さんと哲牙と漲南の兄弟の苗字が
「日浦(ひうら)」に変わりました。
「ひうら」って読むんだけど彼女たちはこれを「ひゅーら」って呼んでます。
といういらない報告でした。
お次は四史さんですよー。
今回の千種に支障がありましたらいつでも訂正してくださいませ!!

死に怯え続け続けながらも。:哲牙+策麻 (四史) 

July 12 [Sat], 2008, 21:44
「死は生の反対にあるのではない。我々の中に存在しているのだ」

***


帰り際外を見ると雨が降っていた。こういう時に限って傘を持っていない。千種もいない。おかげで家に帰れない。それで高等部の教室まで傘をたかりに来たら生憎兄も従兄妹も不在だった。霄と淕の双子は一足早く帰ったとぽつんと一人教室に残っていた哲牙が教えてくれた。海吉はゴミ捨てだそうだ。よもや窓から捨てるのではあるまい。もうしばらくかかるだろう、だから俺も帰れないと哲牙は言った。つまり漲南と海吉が焼却炉におでかけ中というわけだ。(蛇足ながら、高等部から焼却炉はそこそこの距離がある)

「海吉に傘借りに来たんだけどな」
「そうか」
「持ってなくて帰れない」
「千種は」
「先に帰ったよ」
「めずらしいな」
「世界は広いからそういうこともあるんだ」

哲牙との会話はあまり長続きしない。会話がなりたたない訳ではない。ただ短いだけだ。不便は感じない。ことさらに話すことがあった訳では無かったので策麻も口を閉じた。教室が薄暗いのにそこで気付いて電気つけねーのと聞こうかとも思ったが億劫だったのでそのままにしておいた。雨の日の薄暗い教室というのも風情があるだろう。多分。

「策麻」

しばらく経った頃だろうか。突然名前を呼ばれたので策麻は顔をあげた。

「なに?」
「死ぬことは怖いか」

あまりに淡々としていたので言われた意味がよく分からなかった。しばらく考え、それが突拍子もない質疑であることを踏まえて慎重に口を開く。

「…それはきっと聞く相手を間違えていると俺は思う」
「そうか」

そしてまた静かになってしまった。自分の言葉を反芻する。そうだ、多分もっと人生のかなしみというのを知っている人に聞くべきだ。(しかし、死ぬことは人生のかなしみであろうか?)ゆっくりと窓際の手すりに寄りかかる。風が涼しい。また少し考えて、結局口を開く。

「俺は今この窓から飛び降りろって言われたら断固拒否するだろう。だから死ぬのは怖い」
「………」
「なんで怖いか分かるか?」
「分からない」
「うまれた日のことを覚えてるから」
「……うまれた日?」
「うまれた日のことを覚えてる。だから死ぬのは怖い」

そう言うと哲牙は怪訝な顔をした。無理もない。笑って続ける。

「血筋か知らないけど、俺の家族はよく覚えてるんだよ。父親とか海吉とか。…みんな喜んでくれたんだ。このうえ無いほどに。だから死ぬのが怖い。あの様子を思い出すと死ぬのが怖くなる」
「そういうものか」
「俺は、ね」

そして考える。自分が生まれたとき喜んでくれたあの様子は自分のストッパーだろうかと。リセットしたくなると感じた時にそれでもあの喜びを思うと留めることができる。そして考える。もしそのストッパーが無かったら、人は淵から飛び降りてしまうのだろうか。もし、なにか留めるものが無かったら。もし、

「そう考えると、俺はたまらなく恐ろしくなるよ」

雨の帰り道に難儀しているのだろうか。漲南のにぎやかな声も海吉の足音も雨の止む音もしそうになかった。待人は帰らない。今はただ、死だけが恐ろしかった。



***
いれたかったけど入らなかった台詞。
「死ぬのにドラマチックもリアリスティックも無い。極端だけど、まあ確かにそう言ってた」
入らなかった(´・ω・`)
ていうか策麻じゃなくて海吉だったらどんなに楽だったことか^^あと哲牙生かせなくてごめんなさいorz台詞の少ないこと少ないことorz次ぜろりんです。

● 喚き続けながらも。:漲南+霄(零刻) 

April 19 [Sat], 2008, 21:31
「無意味だったとしても、やっていないと足元から崩れちゃいそう」


全部を理解してくれなくたって良い。
けれど、聞き入れては欲しかった。


「……そう」







● 喚き続けながらも。







「なんで《無意味》って言葉が出来たのか、雷姫に聞いた事があるの」


漲南は唐突に言った。
普段の明るい表情から一変、頬杖をついて焦点の定まらない目で。
目の前にいる霄を見ているのか分からない。
恐らくは、視界にいれているだけ。
そう、ただそれだけ。
漲南は双子の兄と同じく、あまり多くの事柄を知らない。
その為か、2人は揃って知らない事を同居人の2人に聞く事が多かった。
しかしそこには個人差も生じていて、兄は人が教えてくれるまで何も聞かないが、漲南は率先して聞いている。
したがって、知識の有無は確実に漲南に軍配があがっていた。
そんな漲南が同居人の娘に聞いた《無意味》の成り立ち。


「《無意味》が出来る為には《意味》って言葉がある事が前提なんだって」
「………そう」
「それで言葉は人の行動を表す為に生まれてるから《無意味》って言葉が生まれた時に誰かが無意味な行動をした事があるって事なんだって」
「…………………」
「言葉が生まれたって事は過去に誰かが無意味な行動をしたって事で、更に本当に無意味な事は言葉にすらならないんじゃないかなってあたしは思うの」
「………だか」
「だから本当に無意味な事を指摘する時にはなんにも言えないと思うの」


漲南は霄の意見など求めていないらしい。
ゆっくりと話す霄の声に自分の声を被せてしまった。
それでも漲南は気にしない。
廃人の一歩手前、とまではいかないが、それなりに危ない状態であることは見て取れた。
今の漲南に相槌は必要ない。
けれども、聞き手は必要そうだった。


「確かに無意味…あたしがやってる事は無意味だよ……でも、でもね」
「表現、出来る?」
「《喚いてる》って、言葉に出来るから、本当に無意味な事じゃないんだよ」


泣くでもなく、叫ぶでもなく、騒ぐでもなく、漲南はただ喚いていた。
滅茶苦茶な事を連ね、支離滅裂に言葉を紡いでいた。
喚くとは本来どのような意味かも、理解してはいないだろうに。


「………でもさ、漲南…」


霄は発する。
漲南が息継ぎの為に黙った時に。

「疲れない?」
「……………」


霄が短く問う。
漲南は俯いたまま、答えようとはしない。
霄も、まるで答えは求めていないように、気にしない。
最初の立ち位置が、今は逆転していた。
漲南が黙って、霄が話す。
普段から霄はあまり話さない、今も言葉の数は少ない。


「休もう」
「………」


漲南が黙って、耳を傾ける。
霄も黙って、漲南を見る。


「…………疲れないよ…」


漲南が一つ遅い、返事をした。
霄はそのまま、漲南を見る。


「休みも…出来ないよ…」
「………そう」


休まない、のではなく、休めない。
漲南はそう言った。
だったらもう自分が何を言っても無駄だと思ったのか、霄はそれきり口を噤んだ。






「          」






小さく漲南が呟いた。






+++++++++++++++++++☆+++++++++++++++++++
はい。喚き続けながらも。でした。
ちょっと良く分かんない…なぁ………
最後に漲南ちゃんが言った言葉は想像にお任せします。

次は四史さんですよー

戸惑い続けながらも。:願叶+策麻 (四史) 

April 07 [Mon], 2008, 19:09
「夢と現実の境目というのは確かに存在するのである」


***

人のいない教室でがたんと椅子の動く音がして策麻が顔をあげた。二、三回瞬きをして、それから少し遅れてその音が自分が眠りから醒めた時にたてた音だと理解する。額にじわりと浮かんだ汗を拭いながらふと机の上の日誌に眼を落とすと、埋めていないのは日付だけだった。寝起きのせいで頭が働かない。今日は俺が日直で、日誌を終えたら帰って良くて、ええと今日は、ええと、何日、

「18だよ」

背後で聞こえた声に一瞬なにかが喉から出かけた。懸命に驚きを飲み込んで、首の向きを変える。真後ろに願叶が立っていた。西日に顔の半分だけ照らされて、表情を読むことは出来ない。笑っているようにもみえる。

「……なにしてんのそんなとこで」
「とくには、なにも。…今日は18日だよ、はやく終わらせなよ、それ」

おだやかに急かされてまた日誌に向き直る。じゅうはちにち。口の中で繰り返してペンを握ったのに手に力が入らなくてころりと転がっていった。こと、り、とペンが床に転がる。
ゆるゆると手を開け閉めして、掌を見つめてもそこにペンは無い。きっと足元に転がっている。眠いなあ、と考えてペンを探して床に眼を向ける。そして少し眼を見開いた。ペンが、ない。日に照らされる床のどこにもペンが見えなかった。背後にはおだやかに願叶が立っている。それなのにペンは無い。

「……かいと」
「なに?」
「ペンが無い」

そんな筈無いのに。確かにあのペンの転がり落ちて床にぶつかった音を聞いた筈なのに。しばらく床を見つめていてもペンは現れない。まるでどこか世界と世界の境目に沈んでしまったかのように。

「…これは海葉願叶一個人としての忠告なんだけど」

背後から声が聞こえる。日にあてられた背中はひどく暑いのに、どうしてか少し、冷たい

「少しは醒めたらどうかと思うんだよ」






ようやく全ての空欄を埋め終えて策麻は息を吐いた。半分寝ながら書いていたせいか陽は疾うに傾いて、教室をあかく照らしている。

「今日18日だっけ」
「そうだよ」
「…なんだか、な」
「なにが?」

視界の端に願叶が笑っている。赤い光。今は確かに表情を窺える。笑っている。

「お前わりと、さ」
「うん」
「わりと黒いな」
「ありがとう」
「褒めてはいない」

がたがたと音を立てて椅子から立ち上がる。一つ伸びをして、真っ直ぐに願叶を見据えた。

「童話なんだけど」
「童話?」
「少年が夢と現の境目に船で漕いで行くんだ。知ってる?」

知らない。と返事が聞こえる。日誌を机から持ち上げて頭を振った。ゆらり、と
、夕陽で髪が赤茶に照る。

「ようするにそこは存在するようなしないような曖昧な世界なんだ」
「うん」
「少年にはその世界が見えるし、素直にとても綺麗なものだと感じる」
「綺麗なところなんだ」
「そう。でも不思議な世界で、少年が触れている物しかそこには存在出来ない。たとえば帽子を持っているとすると、少年がその帽子から手を離した瞬間に帽子はその世界から存在を消すんだよ」
「…不思議だね」

不思議だね。と願叶は言った。そこはひどく夢に近い現実であり、ひどく現実に近い夢の世界である。少年は戸惑う。確かに存在する世界から確かに存在するはずの帽子が消えてしまう。夜の空がある。夜のさざなみがある。船があり手に握っているオールがある。しかし風に吹かれて頭から離れた帽子はその瞬間に空気になってしまう。

「それだけ、なんだけどさ」

願叶はまだ笑っている。日差しはだんだんと、紫色になりつつあった。日が暮れるのだ。

「僕は役にたった?」
「とりあえず俺はありがとうと言うべきであると思う」
「そう」
「多分俺がなにも見えていなかっただけだったんだ」
「……」
「帰ろっか」

返事が無かったのでそのまま是と受け取り策麻は扉へと向かう。

「それで」
「え?なに?」
「それで、終り?」

もう西日は射していない。教室はただ淡々と暗くなっていく。

「…おわりだよ」
「そっ、か」
「うん」

少年はある日、月に影が無いことに気付く。彼は戸惑う。なぜだろう。水面にあるはずの月の影がない。こんなにも世界は明るいのに。そうして前にも同じようなことがあったことを思い出す。自分は確かになにかを、別のなにかを失ったことがある。少年は考える。そして分からなくなる。自分はどこから来たのだろう。両手で頭を抱える。オールが消えた。少年に現実は見えない。主のいない部屋で今、帽子だけが風に揺れている。


「ほんとうは、戸惑いながら旅をしている」



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なに言ってるのか全くわからないよ(´・ω・`)カ・・・オス・・・
次ぜろりんです^^。

● 躊躇い続けながらも。:海吉+姫 (零刻) 

March 22 [Sat], 2008, 17:54
なんでこんな所にこの人がいるのか、海吉にはさっぱり分からなかった。
ただ一つ言えるのは、海吉と姫はそこまで親しい間柄ではないという事。





● 躊躇い続けながらも。





状況としては不可解な部分がありながらも、海吉にとって理解が出来ないものではなかった。
しかし噛み砕いて状況を把握するには至らない。
この学校の新米女教師である姫は、入り口から入ってきた海吉に背を向けていた。
屋上に設置されたそれなりに高いフェンスの上に腰を下ろした状態で。


「いつまで突っ立ってんだよ海吉」


海吉が何してるんですか、と声をかける前に姫が振り返って声を出した。
気付いていたのか、という驚きと気付かれた、と妙な焦りが入り混じって海吉は固まる。
目の前のフェンスの上に座っている姫は、海吉の方を向く為に僅かながら体の位置をズラしていた。
もう少しで落ちてしまうのではないかと思ってしまう。


「……何、してるんですか」


思わず詰まってしまった声は、震えていなかっただろうか。
中途半端に海吉を振り返る姫の体が落ちそうで怖かった。
海吉を真っ直ぐに見つめる姫の目線が怖かった。
それが相まって、海吉の声は普段より小さい。
それでも姫には届いたらしく、少しばかり目が見開かれた。


「……空を、見てたんだよ」
「…こんなトコで…?」
「近いだろ?」


ニヤリと普段から浮かべている子供のような笑みに、今日は少し勢いがない気がする。
しかし、気がするだけで本当はどうなのか分からない。
背格好、喋り方、言動、全てが年齢にそぐわないがそれでも姫は確実に大人なのだ。
海吉達子供よりも、ずっと世界に視野を広げてきた、大人。
表情の一つや二つ、簡単に造れるかもしれない。


「………なぁ海吉」


海吉が、様々な事を考えている間に姫が声をかける。
目を向けると、そこにはいつも姫が自分の弟妹に向けているような眼差しで海吉を見ていた。
そんな姫は海吉の返答など待っていないのか、すぐさま口が動く。


「オレな、実は生物兵器なんだぜ?」
「……へ?」


突然何を言い出すのかと思えば、姫は一瞬理解の出来ないような事を言い出した。
混乱する海吉を余所に、姫の言葉は止まらない。


「頭も良くて、足も速くて、力もすげぇんだ。こんなフェンスなんて片手で一捻りに出来るくらいによ…」


ガチ…と姫はフェンスを握り締める。
手のひらが白くなるまで力を込めているのか、僅かに震えている。
そんな様を見れば、今言った事が嘘だとすぐに分かる。

分かる、筈だった。

当たり前だ、常識だ。
落下防止の為のフェンスが人の握力で捻り潰されては困る。
それに頭が良いと言われても、教師の頭が良いのは当たり前の事だと海吉は思っている。
それなのに、今は何故だかそんな考えが酷く確信が持てないでいる。


「てめぇらだって簡単に殺せんだぜ?怖ぇだろ?」


まるで心酔しているかのように片手を海吉の方へ差し出して見つめる。
その差し出している手に、何かがついているかのように。
手の向こうにいる海吉を狙うかのように。
うっとりとした目つきが、不意に歪められて微笑まれた。
その事に対して異常に動揺した海吉は一瞬姫から目を離した。
そして次の瞬間、頸元に何か冷たいものが当たった。


「……海吉は…どんな血の色してんだ?」


気付いて顔をあげると、フェンスの上に姫はいなかった。


「………………ッッ!」


一瞬で体が強張った。
汗が吹き出し、足がその場に縫いつけられたように動かない。
拘束されている訳じゃなく、ただ頸元に手が触れているだけだ。
しかも後ろにいるのは見知っている教師で、間違ったって最悪の事態など起こる筈がない。
それなのに、海吉の体はピクリとも動かなかった。


「……はははっ…冗談だよ」


数瞬の間のあと、急に姫が声を発して海吉から離れた。
途端に海吉に掛けられていた威圧感も解ける。


「海吉?おい大丈夫か?」


姫が後ろから正面に回り込んで、心配そうに海吉を覗き込む。
そんな姫に海吉がやっとの事で頷くと、満足したのかニカッと笑う。
くるりときびすを返すと、じゃぁなと一言告げてそのまま屋上をあとにした。


「……………………っ」


取り残された海吉は、足腰に力が入らなくなりその場にしゃがみ込んだ。
ゆっくりと、深く深く息を吐き出す。
まるで、肉食獣にでも喉元を狙われた気分だった。
頸元に当たっていた姫の爪。
体育教師なので手入れは行き届いている筈だ。
それなのに感じた、鋭利な刃物のような感触。
そして、背後からでも分かった眼光。
何時もの楽しそうな瞳から一変して、何か獲物を狙う捕食者の瞳。

怖いとは、感じていなかった。

怖さをとうに通り越して何も考えられなかった。
逃げ出したいのに逃げ出せない。
足を地面に縫い付けられて、感情の入り口に蓋をされた。


「…………っ…なんなんだ…」


こんな感覚は初めて、という訳ではなかった。
実は前にも一回だけ、同じような感覚を海吉は味わった事がある。
姫の弟妹に初めて逢った時だ。
刺すような敵意、縫うような殺意、そして射抜くような軽蔑。
そんな視線を感じた時から、海吉は彼女達三人と深く関わる事を躊躇っていた。
関わって、拘わって、係わり続けた末に、地雷を踏んで殺されそうだと思ったからだ。
最近はわりかし平気になってきていたのに、また逆戻りだ。


「………………………」


大きな体を一回縮込ませてから、思い切り伸びをする。
息を吸って、吐いて。
一回、二回、三回やって落ち着いた。


これからも海吉は躊躇い続けるだろう。
それで良いのだという思いと、なんとかしたいという思いが心の中でせめぎ合いながら。










キィ、という音がして、屋上には僅かな風が取り残された。









++++++++++++++++※++++++++++++++++
第一弾は四史のオリキャラ海吉と零刻のオリキャラ姫でお送りしましたー。
内容的には繋がってなくても良いみたいなので勝手に始めちゃった…別に関連性がなくても良いよー。

四史に見せたら
『海吉の血の色が緑だったらホラーだよねー』
と言われました。
確かにそうだ…(苦笑)

書き始める前に 

March 21 [Fri], 2008, 19:28
これから書いて行くお題の内容は、全て零刻と四史のオリキャラ使ってます。
ので、分からないだろうと言うことでキャラ説いれておきます。
小説読んでて名前とか分からなくなったらコレ参考にしてください。



零刻サイド。



雪之 雷姫 - ゆきの らいき -

eyes:黒(high-lite:黄緑)
hair:黒(high-lite:緑)
blood:BO
sex:女

突っ込んでったら止まれない。熱しやすくて冷めにくい。
礼儀はとりあえず弁えるものの敬語はてんで使えない。
でも人の感情の動きには敏感。特に負の感情には聡い。恋愛感情にはとことん弱い。


紅葉 拓魅 - もみじ たくみ -

eyes:黒(high-lite:紫)
hair:黒(high-lite:紅)
blood:AB
sex:男

いつもどこでも自分は第三者、そんな冷静な視線で周囲を見渡す。
熱する事なく冷め続けるのはお手の物。
は?信じるもの?てめぇしかいねぇよ。口悪い。ある意味一番ゴーイングマイウェイ。


桜葵 守雫 - さくらぎ まな -

eyes:黒(high-lite:桃)
hair:黒(high-lite:桜)
blood:AA
sex:女

明るく素直。何かと常識外れな雷姫達に翻弄されながらも力強く生きる。
実は天然ボケでやる事が突拍子ない。警察の両親を持つ常識人。密かに腹黒。
学ラン作って生地が余るとセーラーも作れる子。


海葉 願叶 - かいば かいと -

eyes:黒(high-lite:焦げ茶)
hair:赤茶(high-lite:茶)
blood:OO
sex:男

人畜無害・温厚誠実。優しげな目つきに違わず優しい子。
しかし一度怒れば敵などいない。笑顔で脅迫は得意技。他は人並み。
茶髪は地毛。黒に染める気はない。一人称が唯一『僕』である。


彪娜 姫 - ひゅうな おみ -

eyes:黒寄り灰(high-lite:灰)
hair:黒寄り灰(high-lite:白寄り灰)
blood:不明
sex:女

自らを『オレ』と称す女教師。
ガサツな性格だが偏見や差別などはしない。授業は全て気分で行う。ゴーイングマイウェイ2号。
実は人体実験で生まれた人成らざる人。髪と瞳が金髪に変えられる。


彪娜 哲牙 - ひゅうな おるが -

eyes:金(high-lite:黄)
hair:金(high-lite:檸檬)
blood:不明
sex:男

小柄で声変わりもしていない為に女に間違えられる事もしばしば。
姫の弟。喋り方に特徴がある。社交的になれず、笑みを滅多に浮かべない。
知らない事が多く、嘘を鵜呑みにする事がある。


彪娜 漲南 - ひゅうな おさな -

eyes:金(high-lite:檸檬)
hair:檸檬(high-lite:白寄り檸檬)
blood:不明
sex:女

哲牙の双子の妹。浮かべる表情がまるで正反対なので一瞬双子に見えない。
怒る事は滅多にない。ちょっと言葉の使い方が可笑しい。なんか違う。
小柄な体つきでは分からないが姫の次に年長である。




四史サイド。




この人達は全員榊原さんで親戚。七人共同生活中。
表記してある苗字は屋号です。屋号が同じのは兄弟。
家族に書いてあるのは血縁としての家族。同居別居等は除く。
榊原家=S家


夜奏千種(やかなでちぐさ)


eyes:深紅
hair:薄茶
blood:O+
family:父母妹

自重?常識?なにそれおいしいの?ゴーイングマイウェイ。暴走すると止まらない。人懐っこい。
算数等論理的に考えることは苦手だか体育は得意。本能で生きている。剣道は天才的。

千弦の姉。策麻海吉とは従兄弟。


標策麻(しるべさくま)

eyes:深緑
hair:濃茶
blood:B+
family:父母兄

千種のストッパーと見せかけつつ実は止めてない。寧ろ時折一緒に暴走。
人にはあまり懐かないが年上の家族にはわりとべったり。理論的に考えたとしてもそれを全て捨てて歩く。意味ない。

海吉の弟。


標海吉(しるべみよし)

eyes:深青
hair:黒(もとは濃茶。染めた)
blood:B-
family:父母弟

七人組最年長。近頃は兄というより母化が進む。S家一複雑な生い立ちを抱える突っ込み担当。
常にフルパワー暴走中の千種の面倒で奔走中。動物に好かれやすい。散歩中の犬に飛び付かれることしばしば。

策麻の兄。


雪会淕(ゆきのえりく)

eyes:紺
hair:濃紺
blood:AB+
family:父母兄弟

霄と双子。雪会三兄弟の長女。典型的姉御気質。戸籍では淕が妹なのに気分的にはもう姉のつもり。
霄とは性格が似てないので顔も似てないように思われがちだが実は瓜二つ。異性一卵性双生児。

雲珠の姉、霄の妹。策麻海吉とははとこ。


雪会霄(ゆきのえそら)

eyes:紺
hair:濃紺
blood:AB+
family:父母妹弟

淕の双子の兄。しかし弟化。S家の誇る謎っこ。常に眠そう、というより寧ろ寝てる。
おとなしいというより静か。とても口数が少ないうえに抑揚があまりない。恐ろしい程に頭が良いものの英語はさっぱり。謎。

淕、雲珠の兄。


夜奏千弦(やかなでちづる)

eyes:橙
hair:薄茶
blood:O+
family:父母姉

奇人揃いの家族の中で常識人に見えるものの実は然程でも無い。
穏やかに大変なことを言ってくれるのでストッパーにはなりえない。それどころか姉の暴走をバックアップしていたりする。恐ろしい。実は。

千種の妹。


雪会雲珠(ゆきのえうず)

eyes:紺
hair:黒
blood:AB+
family:父母兄姉

なんか反抗期、でも遊んで欲しい、背伸びしたいお年頃。実はわりと一般人で、意外に呆けが多い中での数少ない突っ込み。
いつか千弦を言いくるめてやろうと思っているのに上手く行かない。

霄と淕の弟。








では、そんな感じで始めたいと思います。

説明 

March 10 [Mon], 2008, 17:40
停滞人スズカ改め四史です。
次のお題はこちらです。

続いてる10のお題2

● 躊躇い続けながらも。
● 戸惑い続けながらも。
● 喚き続けながらも。
● 死に怯え続けながらも。
● 眠り続けながらも。
● 留まり続けながらも。
● 微笑み続けながらも。
● 欲に溺れ続けながらも。
● 名を呼び続けながらも。
● 繰り返し続けながらも。

零刻→四史→零刻→以下略で交互です。
ジャンルはお互いに創作です。
それではまあ、そんな感じで。

不安でいっぱいになる。・オリジナル(旧スズカ) 

March 05 [Wed], 2008, 20:24

「怖いんだよ」
「うん」
「なんか怖いの」

彼女は先程からそれしか言わなかった。相槌を変えてみても何も変わらない。ただ空気がだんだんと重くなって行くだけ。

「なにが怖いんだよ」
「よく分からない」
「そればっかりじゃ俺も分からないよ」

同じやりとりをそれからまた数分も続けた頃だったろうか。ようやく彼女が、ずっと伏せていた瞳をあげる。唇を開いて、

「…昨日から」
「うん」
「なんか、いたい」
「どこが?」

そう尋ねると彼女はまた少し黙って、とん、と胸の左の辺りに手を載せて、また呟く。

「この辺、いたい」
「心臓?」
「違うんだよ。なんかこの辺、きゅう、ってする」

彼女がそう言ったとき、まさに雷にうたれたような感触をあじあわされた。彼女が痛いと告げた場所。それはおそらく、こころというものだったのだ。「慣れないところ、使うからだ」辛うじてそう言って、ああ、眼があわせられない。だって今自分は動揺しているのだ。彼女の昔から常に喜と楽のところに固定されていてそれ以外殆んど見せなかった感情が、ようやく動いたというのに、動揺なんて、どう隠せばいいのだろうか。

安心しきっていたのだ。彼女がそれしか知らない以上自分のところから離れて行くことはないのだろうと。ああ、どうしよう、


( 不 安 で い っ ぱ い に な る )


***
とりあえず土下座して置いていきますほんとごめんなさいすみませんスライディング土下座……!!

どうしてなのか。:BLEACH(零刻) 

February 14 [Wed], 2007, 19:01
「あー…ダル…」

アナタがいなくなってから、時間がなくなったような気がします。


どうしてなのか。


「次はコレで…」

今日も気だるげに、それでも文句は吐かないように。
他の隊員に気取られる事がないように雑務をこなす。

「……」

あまり意識しなくても手が動くようになってきた。
いつもアナタの傍で、アナタの仕事を見ていたから。
大変、という思いが多くなったのは、やはりアナタを頼っていたからだ。
アナタは俺の中で、一番の心の支えになっていたんだ。

「……どうして…かなぁ」

一向に晴れてくれないこの気持ちは、一体なんなのだろうか。
時間がないのに、アナタの事を考えてしまうのはどうしてなのか。

「……」

手にしたばかりの書類を机の上に戻す。
筆を持った手が、力なく下ろされる。

「……」

魔が、差した。

「……くそっ」

考えないように、していたのに。

「考えるな……考えるなっての…」

俺はあそこに、居られなかった。
俺はあそこから、降ろされた。
俺はあそこから、自分の意思で離れたのだ。

それなのに。

未だに悔いている自分が、納得させようとする自分と、衝突する。
自分で降りた、自分で離れた、自分で、決めたのだ。
なのに。

「……俺は…ココにいて良いのか…?」

あっちに行きたいと思っている自分。
ココにいたいと思っている自分。
あの人の傍に居たいと思っている自分。

だんだんと、自分が駄目になっていくのが、分かる。

堅く、固く、目を瞑る。
たっぷり瞑って、ゆっくり開ける。

「……仕事しよ…」




アナタは今、何をしていますか。






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やーい、もうBLEACHなんて全く書いてなかったからわかんないやーい(泣)
でもコレで書くと決めていたのでやりました!
このお題零刻の分はこれにて終了!お疲れ!お疲れ自分!
つーか久々過ぎて全く口調が分かんない…
ちなみにコレは檜左木デスヨ(言わなきゃ分かんない)
檜左木独白→東仙、みたいな感じです。

次は萌さーん。
ラスト!ラストだヨ萌さん!!




言ってくれるから。・オリジナル(すずか) 

December 30 [Sat], 2006, 16:34

「あいつの傍ね、とても心地良いよ」
「・・・良かったな」
「あいつはさぁ、何も言わないから」
「ふうん」
「私は何も返せないのにそのままいさせてくれるから」

「そう、言ってくれるから」
「ここにいて良いのか、分からなくなるの」
「ねえ」

「私は、あそこにいて、良いのかな」


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手抜きとか言わないで下さい。
今回縛りやってみました。
条件「会話のみ」「10行以内(改行除く)」
・・・何やってるんだか。
何回やってもうまく投稿出来ないのでスズカちょっときれてます苛々。
真面目にやる気が失せてます苛々。
インターネットエクスプローラー7何かうざすぎるんですがもうお前前のバージョンに戻れこのやろう