第一話 

2010年01月31日(日) 12時03分
「ロードとベルディーク」 


何年か前に一度だけ訪れたことがある。


この5つの国の中心にシュアーロという森があり

そこには誰が建てたのか、誰が住んでいるのかも分からない塔が建っているのだ。


父は大真面目にあの塔には神様が住んでいると言っていた。

どうしてそんなこと言うのか分からないけど、僕もなんとなくそういう気がした。






夜空の星々は立ち上がる炎に焼かれているように赤く光り

街の中は戦渦に巻き込まれていった。


今日々ウィキール王国は隣国と手を組みグィンブル王国との戦争を繰り広げていた。

この戦いはウィキール、オルディア、ダンクルの3カ国と

グィンブル、バンクルダムの連合軍と、5カ国全てが戦っているのだった。


 ロードは教会に避難した人々と共に自国の勝利を願っていた。


でも、このままこの状態が続いたら5カ国は共に焼け野原になってしまう。

どうにかならないかな・・・




今日は16歳の誕生日

16歳になったら父さんがいた王室剣士団に入るんだと思ってたのに

とんでもない日々だ。


今頃、剣士団はシュアーロの森で攻め入っているグィンブルの軍勢と戦っているのだろう

あの塔はどうなったのかな・・・


こんな時だからこそ何が出来るのかも分からない。

だから、ただ・・・





―――セランカンの山脈
(ダンクル王国側のシュアーロに広がる岩肌の山脈)


ダンクル王国に攻め入ろうとするグィンブル軍勢はこのセランカンへ向かっていた。

この山を通らなくてはダンクルには入れない。

しかし、山峰では既にグィンブル軍を迎え撃つ準備がされていた。



「敵は目下に迫っている!!―――砲撃開始ッ!」


「はッ!」


地面を抉る様な爆音が響いて

炎をまとった砲弾は夜の闇の中を次々と照らした


「すごい!」

魔道兵の一人がその威力に感嘆の声をあげた

それに続いて他の兵たちもシュアーロに目を向けて敵の様子をうかがった

その間にも砲火は止むことはなく放たれた。


「我が国の魔道兵器は最強だ!!」

その声の言う通りダンクルは他国に一切の劣りを取らず

先陣を切ってきた5カ国最強という国だ。


だが、その力に劣らないためにグィンブルは常に技術を求め続けていた。


「お、おい!よく見ろ、敵が・・・」

夜の森がざわついた。


グィンブルの灯は消えることなくこちらに向かって来ていたのだ


「あれを逃れるとは・・・流石に強いな」


グィンブル王国

魔道術であろうと、兵器であろうと、ダンクルに続く強国であった。

しかし、強国同士仲は険悪。

故に上を行くダンクルを潰す術を磨き上げていたと言ってもおかしくなかった。


「弾は十二分にある!砲撃を続けろ!」

「待て!!」

後方からの聞こえた声でその場の緊張が安らぐような感じがした。

「ああ・・!陛下!!」


ダンクルの国王が到着したのだった。


「状況はどうなっている?」

「はい!敵はまだこちらに向かっています!」

まだ若い国王だが信頼の厚さは国民の誰からも頼れる存在となっていた。



「先程オルディアの方から連絡が入りました。
 ディンザー王様の指揮する軍がグィンブルの城下まで攻め入ったということです。」

王の部下が味方であるオルディア王の活躍を知らせた。

「おお!流石です!」

すると兵たちの間で歓喜が湧きあがる。



「ここからは私たちが行くよ。我々も一気に攻めよう。」

「はい!」

ダンクル王は大鎌を空に掲げた。

包帯で隠された右腕の下に決して裏切らないという象徴の刻印が今は強く感じられた。


「たとえ死神と言われようとも・・・!」

そう言うとダンクル王は、二人の部下と共にセランカンを後にしたのだった。






その頃シュアーロの奥深くでは・・・


「やつら引き返すぞ!追えーー!」

最早、森の中は炎の渦に呑まれていた。

ウィキール王室剣士団は敵陣の真っ只中へと馬を走らせた。

どの方角からも地響きがする


これが戦場・・・

こんなところで戦いたくて剣士団に入ったわけじゃなかった。

剣士団に入って国を守ることを夢見た子供の俺が

今の世界を見たらどう思うだろう。


一度入ったら出られないと教えられてたこの森を

自分の手で焼き払ってるところを見たら・・・



「団長!ガーダル団長!!」

「な、何だ!?」

「何ボッーとしてるんですか!?
 敵がこちらを待ち受けているんです!指示をお願いします!」

「そうか・・・距離を置いて二手に分かれるぞ!先陣は俺が入る、後衛にはお前が行け!」

「はい!」


先頭に立つ自分がここで全力を出そう。

全力でこの国を守ろう。

守る?

俺、国のこと守れてるのか・・・?


加速して駆け抜ける身体と裏腹に心の中は疑問だらけで

全力なんて出なかった。





―――ウィキール教会

「こんな時にどこ行くんだ!?」

「馬借りてくよ」

「おい!ロード!!」

止める人々の声も聞き入れず

ロードは馬を走らせて、はるか彼方へ消えて行ってしまった。


皆が勝利を確信していたこの戦争。


なのにこれだけ長い時間戦い続けまだ終わらない。


もう・・・終わってもいいころだろ?



シュアーロの入り口に着いた

この更に奥にあの塔があるんだ。

この辺は木も残っているが遠くでは煙と炎が上がっている。


道は覚えていない。

森の中に道なんてないからな

真っ直ぐに行こう、もちろん戦場を避けながら。


あの塔を目指して・・・




「ああ、どうしよう。この世界は壊れてしまう。困ったな・・・。
 神様、きっと怒るだろうな。ああ、困った・・・」

少年は塔の上に立ちただ嘆いていた

この世の終わりを。
P R
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