komakoma
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komakoma ♀
特技は恐竜のまね
悲しいかな、より目ができない。頑張って集中すると目が震える。
好きな言葉は「ふらり」
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    ・コマ様-コマ様の旅
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ふらっとやりたいことを恥ずかしがらずにできる人間になりたいと思うだから、ここでいろんな物語を記そうと思う
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♂。ビーグル犬のさくら
ショート♯14 若人よ! / 2014年01月18日(土)

若人よ!




未完成



頼りない音の声が薄ら積もった粉雪に響き、大雪を助長するかのように飛び跳ねている。
私はまだ子供だと言わせない。そうやって、私の成長が自分の意識を越えていった。
「狂うい繰るうのだ」
私の気持ちなんて知るも知らないも、この先生は勝手に私の楽譜に赤ペンでアルファベットを書き記す。よく見る雑誌裏の広告の赤ペンなんちゃら先生のようだ。
いつの間にか輸血が必要になるまで、この赤いペンの助言が私の心を蝕んでいた事にも気づかず。

ぽっかりと開いた穴に心地よさを感じた思春期の雪解け。私は自らゲシュタルト崩壊をした。


春。
俺の名前は正志。高校三年の童貞男子でとにかく現実逃避ミサイル発射!とか心の中でリフレイン。いっちょまえに自我が芽生えている厄介な年頃を平穏に過ごしたせいなのか、今ようやっと反骨精神が出始めている遅咲き男子。見た目は普通だけど野望はでっかいと願いたい中二病を煩いつつ、初めて染めた明るい茶色の髪の匂いに幸福感を持ちながら、赤く点滅する信号機の下で次の指示を待っているところだ。
吹き抜けるなんとも言えない朝の緊張感。勇者は俺だと名乗る妄想が鮮明で、高揚感にひたる気持ちに合うかのように信号機はGOのサインを下す。しかし、なぜだか足がだるい。3年になると参考書の量も多くなり、登校時間をより面倒なものに変えるのだ。
「はー」
深いため息をつく正志に、まさしくその瞬間。

ビカー!!!!!!!

っと光が差し込めて、一瞬視界を失ったかと思った瞬間、何かが重くのしかかり体のバランスを崩した。
  ファンファン  
という情けない音が響くと、自分にのしかかる正体が柔らかい女神だと気がついた。

数分後のこと。
正志の体は単調に塗られたセル画のように色分けされたいた。これでは学校に行かれない、というかそもそもここはどこ?なんなんだ俺。

なぜ??なんなんだ?

「唐突ですまない、いや、ごめんなさい」
女神だと思っていた女性は、よく見るとまだ幼い少女だった。
「私を幼女だと?顔は幼いが高校受験を控えている身であーる」
得意げだ。
「貴様の体はもう元に戻らない。その代わりに、私があなたの面倒を見よう!」
どうでもいいが、正志はがっかりした。面倒とか意味不明だし、飲み込めないし、それ以前に行きたい大学もあったし、好きな女子もいた。夢はあやふやだけど漠然とした希望はあった。それに、大切な家族だっていたんだ。なのになんだこれ?どっきりTVにしては俺は平民すぎるし。しかし、どこかでわかっていた、ここが地球でないどこかで、そのことが正志自身を高揚させていることも。
「家族のことか?心配ないよ、君らしく作ったクローンが君の役を演じている。誰も気づいていない」
その言葉がなにより嬉しくないことは置いておいて、ここはどこだろうかと辺りを見回す。真っ白な空間と距離を認識できない壁の中で、時より漫画のコマのような黒枠が上から下へと下りて行く・・・なんだここはと、見た事も無い場所。
「大丈夫、私だって人の子だから」
そういった得体の知れない女の手が、正志の頬に伸びる。近くに寄る互いの顔、女の長いまつげの間で揺らぐ大きな瞳の君に吸い込まれそうになるくらいで。一瞬飲み込まれそうになった。が、首を振る。
「怖がらないで」
「え?戻りたい?ここはどこ?私は誰?目的?うんぬんかんぬん?」
「うるさいなー!!!黙れ!!!!!」
突然の罵声に、ぽかんとした正志の頬は一瞬にして赤く染まった。ものすごいハイスピードなビンタをくらったのだ。
「私は女、あなたは男ね?ここは知らない、勝手にできたの。そこにあなたの方がきたのよ」
俺の意思で来る訳が無い!だって俺、受験生を絶賛満喫中だったんだから。
「ごめん、謝る。でも同士よ、いや、あなた様よ」
よく見ると綺麗な女の子だった。長い髪はよく手入れされていて輝いているし、顔立ちよりも惹かれるかすみ草のような可憐な指先が見事だ。
「私の心臓の音」
そういうと彼女は自分の乳房を正志の胸に押し付けた。
「信じ合いましょう」

・・・・・・。

今まで聞いた事の無い音楽が骨に響いていた。
「この音を再現できないの。きっとできないの」
そう嘆く彼女に、いとも簡単に正志の心は一瞬にして奪われた。
「これ、地球だけでは奏でる事ができないの。気づいたの、だから勉強した。ありとあらゆる楽器を触った。どれもうまく弾けた。天才だった。でも、それは地球のせまい概念の一部でしかなかったのよ」
「正志、わかる?」
そう言った乙女の柔らかな口に見とれつつ、頭の中に大きな宇宙船と、かっこいいヒーロスーツがよぎった。
すると、それが現実になり、次に創造した魔法の呪文までそのまま再現された。
「やっぱり正志は完璧だよ!君は勇者だ魔法使いだ大魔王だ!ヒーローだ」
清らかな笑顔で乙女は笑う。
「旅をするにはこのイメージが必要なの、私の宇宙音楽を奏でるには、あなたが必要なの」

高校三年生の正志は、ついに勇者の称号を得た!
必要不可欠なヒロインは超美形で謎属性。それに、ハリウッド映画だってだいたいこういう時は男女ペアが基本でしょう?まさに王道でしょうが。

この国に勇者学科のある大学はないかと本気で思えていたんだ!そのおかげさまで今まで気持ちわるい扱いされ続けて来たけれど。
なんてことはないのさ。そう願った男女が未知のパワーで巡り会い、冒険をする。そんなことがおきてしまうものなのさ。
こんなすごいこと、どうやって地球に返していいのか分からないから、一生教えられないまま旅をするのだろうね。きっときみもそう思ったんだろう?

彼女は目を細めた。
「何言ってんの?これこそがリアルだバカ者が!」
 
   
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ショート13#のの様 / 2013年10月17日(木)
のの様


未完成



「ののさまののさま」
そう言って大地に跪く小さな手で、そっと救い上げた幼い赤土を舐めた。
まん丸い地球に沿うように湾曲する世界に、うっそうと生い茂った若草の匂い。ふと遠くから迫ってくる積乱雲の片隅に見えた怯える渡り鳥の、どこえ行くでもない人々の雑踏が、この丘からはよく見えるのだった。
こんもりとした丘は、いつしかどこかの誰かさんが飼っていたペットのお墓となり、知らぬ人々に踏まれている間に跡形も無く姿を消していった。

「ののさまののさま」
まだ幼女の声が響いている。
真っ空な世界にその声は響き、木霊となってぼんやりと消えて行く。涙に濡れた頬に真っ赤な膨らみが、それは熟した富士林檎のようで、魅惑の匂いを放っているので。いつしか、礼儀を知らぬ輩と言われるものたちがその匂いを嗅ぎ付けてしまったのだった。
丘にいてはならぬ。そうでなければ、風下の輩に気づかれはしなかったのだ。
そう、呪文のように発する言葉の重みも知らぬまま、軽い幼女は掬い上げられたのだ、まるで縁日の金魚のように、お遊びの感覚。複数の大の大人ともあろうお前達が、幼女の口を塞ぎ、そして丘を下りるとは。ああ、これは滑稽だと蔑み罰を。
つるつるとした草に足を取られながら、酷刑をしでかそうとしている輩達は数メートル先にある林をめがけて一目散に息を荒げている。まだ小さな柔らかい耳に残る不快な笑い声が、胸くそ悪い。

ただ、幼女は思った。怖い。そして反吐が出る程の胸くその悪さを。不愉快で気持ち悪くて恐怖で怒りで、静寂で。抱きかかえられながらも、このまま林の中に入ったらいけないと直感した。その先は、きっと終わりが待っていると知った。
だからこそ、嫌悪の先には呪いがあったのかもしれない。不快な先にある呪い。だからか、幼女はもう一つの囁きを聴いた。それはバットと呼ばれる類いで、その声に耳を貸してはならぬと、雇い主から言われていた。
「こいつらに制裁を与えよう」
甘い匂い、大好物の匂いを引っさげて囁くバット。いきなりスローモーションになった世界の中で、この声は神秘的だと錯覚さえしたが、幼女は毅然と頷かなかった。

ああ、林が近づいてくる。抱きかかえられている、まさにこの状態を打破できなければ最悪が待っているのだと、悟る。その悟りが、小さなキノコのベクトルと同じ波長にリンクした。

そうして、興奮に身を委ねた輩は一目散に林に飛び込むと、まず叫ばないように幼女の頬を殴打し恐怖を刷り込ませた。ざわざわと葉っぱがこすり合い、日が少し暮れたせいか鳥たちが騒ぎだしている。
幼い心は、ぎゅーっと小さくなって、固くなる。
一人が幼女の生暖かい頬を舐め、もう一人が何やらもぞもぞして、最後のあいつは手をのばす。
もうダメだとはじめて震えた瞬間に、幼女の体から無数の胞子が散撒かれ浮遊を開始した。まるで命令を待つように一瞬漂うと、最適な床を見つけて即座に行動を開始。一つ一つに意思があるように、歓喜するかのように。
真っ白なその胞子が、美味しそうな輩の毛穴に入っていく。そして瞬く間ににょきにょきと皮膚を食破り成長するのは真っ赤で白い斑点のキノコ。養分を吸い取り成長していく。浮き出た血管も見えなくなり、脈が打つことを許されないと、脈が輩を見捨てた瞬間、その時は一瞬止まり、幼女は一人息を抗え立ち上がった。

助かったのだと、キノコの触媒になりはてたそいつらの姿に安堵した。

それからというもの幼女は、歳をとることができなくなった。
たった一人で丘にいる。柔らかい髪をなびかせて、真っ赤な頬に甘い匂いをただよわせて。
何も憎む事無く、誰も憎む事無く、世界の片隅で起きた悲しき悲鳴に向かって、今日も胞子を飛ばす。気まぐれでもなく必然でもなく、ただ感情をもたない、感性だけを携えた幼い見た事の無いあなた。

いつしか守り神となったあなたは、町の人から「ののさまだ、あれは最悪を滅するののさまからの賜り物」と、信仰の対象になり、立派な祠と栄養分のお供え物をいただきながら。
未だに「ののさまののさま」と幼い声で手を合わせて唱えているのだそうだ。



おしまい
 
   
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ショート12♯スマイルドック / 2012年08月31日(金)
スマイルドック



未完成


こまこま作




「やや、こんにちは」
そう挨拶をするのは、ひじきと名付けられた、黒い小さな和犬の混じったmix。
ひじきという名前は、主人が付けたもので、特に一番好きな食べ物がひじきだからではない。外見の色で、ただなんとなくつけたのだそうだ。

「わーいわーい、ひじきだー会いたかった〜」
興奮したシッポを扇風機のように振り回すのは、お餅と名付けられたミニビーグル。
お餅には、最初はティファというハイカラな名前がつけられていた。しかし、1歳を過ぎるとお餅のように太りだしたもんだから名前が変更した。

今日の二匹は非常にご機嫌だ。互いの生け垣から前足を石の上にかけ、軽快に会話をしている。
隣同士で仲もよく、飼い主同士も幼なじみだ。
「ねーね、今日だね今日だね」
興奮収まらないお餅は、さっきからシッポの振り過ぎで体が左右に動いている。ビーグル特有の長刀のようなかわいい尻尾に残像ができている。
「そうだねー、やあやあ、いやはや、楽しみだ」
ひじきも丸まったシッポを軽快に振りながらステップを踏む。
今夜、なんとも不思議な事が起こる。さてそれはどんな事かと言いますと。
それは秘密。

さあ、目を閉じて。早く眠りにつこう。そうじゃないといけない。人間の寝静まったその時に、奇跡は起こるのだから。

深夜。

それはそうっとそうっと現れた。人の目にはうつらないほどの小さな楕円の光だけども、小さな2匹にとっては、それはそれは大きな光。ぽつぽつとぐるぐると回りながら、2匹の願いを聞き入れると、そっと闇に混じって消えて行った。

次の日の朝。

2匹の願いは叶っていた。
尻尾が何本にも増えたのだ。

嬉しいときはその数が増え、100本にもなる。また、悲しいときは1本に戻る。
嬉しくってたまらないお餅は、すでに100本max!ひじきもそろそろ100本に到達しそうな勢いだ。
「やったねー」
2匹はお互いに喜び合った。嬉しい、嬉しい、嬉しいよ。

ガラガラ・・・。
家の窓が開くと、お餅の飼い主のお花ちゃんが餌を持ってツッカケを履いた。それと同時に、ひじきの飼い主の大輔も、制服姿で眠そうに餌の箱を持って外に出る。
2匹の尻尾は100本max!!
「おはようお餅、今日も最高に尻尾振ってるね、幸せだねー」
お花ちゃんは優しくお餅の頭を撫でると、そっと餌を置いて。
「よし!」
というかけ声をかけた。そのお花ちゃんの声に気がついた大輔は、ぼさぼさの髪を少し手で抑えながら、ぶっきらぼうに挨拶をした。
「おっす!お前んちさ、食い過ぎじゃね?」
そう言うと、そっと餌をひじきの目の前に置いてから。
「お手」そして「よし!」と言った。
そんな様子を憤慨そうに眺めるお花ちゃんは、かなり重くなったお餅をだっこしながら挑発するように言った。
「うるさいなーだいちゃんは。ていうか、おはようでしょ?」
そう言い放つと、お餅をぎゅっと抱きしめながら家の中に入って行った。ピシャっと窓を閉めて、カーテンも閉めた。
残った大輔はあっけにとられながら、心配そうな顔のひじきの体をワシワシとなで回すと、そのまま一緒に玄関に入って行った。

そうして、飼い主の学校への出発をひとしきり悲しみ、甘えながら「いってらっしゃい」をした。
それからいつものように生け垣に集まると、鼻をくっ付けたりして会話を始めた。
「うまくいったね!尻尾増えたね!わーい」
戦陣を切ったのはお餅。
「すんなりなじんでたから、主人も変化に違和感を感じていなかったようだし。いやまったく、想いというものは素晴らしい。でも・・・」
そう言ってから、ひじきは静かにため息をついた。
「どうしたの?嫌なの尻尾増えるの?」
「そうじゃないんだ、いやはや。ご主人様が、そんなにこの尻尾を喜ばなかっただろう。きっと、お花ちゃんとここんとこずっと喧嘩しているからさ」
そんなことおかまいなしなお餅は能天気に尻尾をパタパタと振る。
「そう?いつもあんな感じだよ?それよりさ、尻尾いっぱい振れるから、いつも以上に嬉しいを表現できるんだよ!たくさんの嬉しいを表現できるんだよ?わーいだよ!」

2匹は、常に願っていた。どうやったら飼い主にこの喜びを愛を信頼を伝えられるのかを。
そして願ったのだ。尻尾を増やして下さいと。
いっぱい振った尻尾を見て喜ぶ飼い主の表情が、2匹にとって答えだったのだ。

でも、難しいね。伝える事が喜びになると感じたことでさえ、二人の100の笑顔を生み出さないのだから。悲しいかな、人は人でしか埋められない何かがあるようだ。その何かを埋める事で、本当の意味で2匹の尻尾が二人に愛を伝えるのだ。
だが、2匹はそこまで分からない。ただ純粋に飼い主の笑顔を生み出したくて答えをだした結果がこれだったのだ。
なんとも健気なんでしょうか。

ただ、よいのです。その単純で純真なあなたたちを、人は求め救われるのだから。

夕方

最初に家に帰ってきたのは大輔だった。大学受験が近いので、難しい参考書を片手に持って疲れたように庭を横断する。
しばらくしてお花ちゃんも帰ってきた。手には何も持っていない。
静かに門を開けると、鉄が錆びているのかギギギーと音を立てた。その音に気がつくと、お餅は少し開いた窓から身をよじって庭に出て、甘えた声を出して足にまとわりついた。
その甘えた声に反応したようにひじきも騒ぐ。その連鎖で、大輔もお花ちゃんに気がつくと、そっと外に出て生け垣から顔を出した。
「よお、遅かったな」
ぶっきらぼうに言う。
「ただいまでしょ?てか、何なの?」
「は?お前、最近おかしいぞ」
険悪な空気が漂う。
「あ、分かった、お前。俺が東京の大学に行くのが寂しいんだろ?そうだろ?」
そう言ってから大輔はぎょっとした。図星をついたかのように、お花ちゃんが涙を流し始めたのだ。ずっと我慢していた感情が、なぜか突発的に吹き出したようだった。
「私、あんたと一緒に東京行きたい」
ぽろぽろと流れた涙と本音がうまい具合に絡み合わず、伝えたい事のほとんどが消えて行く。
しばらく沈黙してから、大輔が言葉を見つける。
「ならこいよ。俺らさ、ずっと一緒にこうして隣で暮らしてきただろ。だからさ、いないほうが違和感だわ」
その言葉にお互いモジモジとたじろぐ。
さあ、お花ちゃん、なんて答えるの?これってさ、もしかしてプロポーズ?きゃー!
という暢気な気持ちを置き去りに、お花ちゃんの涙はまだ止まらなかった。
「お花、俺さ、ずっと思ってた事なんだよ」
そう言われてこくりと頷く。
「だいちゃん、私ね。怖いよ。自分の知らない土地にいきなり行く勇気ないよ。私、そういうのいっつもだいちゃん任せだったし。それに、なんかすっごく不安だよ」

冷たい秋風が二人の間を流れて行く。

「私、地元の大学に推薦決まったし」
「そこ、本当にいきたいとこか?」
「違うけど」
「なら、一緒に大学を考え直そうよ。秋だけど、まだ間に合うよ、きっと」

沈黙と乾いた涙と、いたたまれないほどの甘酸っぱさが漂う。
うん、本当に甘酸っぱいよ!もう!

ただならぬ空気に、二匹は互いの飼い主の表情を見つめて嘆いた。
こんな尻尾で飼い主が100の笑顔になるなんて、甘かったのかもしれない。でも、願ったのは本気だ。本気で伝えたかったのだ。愛を。真実の気持ちを。その手段が尻尾だといきついた、ただそれだけのこと。

ひじきとお餅は飼い主の足にすり寄ると、今度は強く祈った。
「この気持ちが叶いますように!!」
すると、また小さな楕円の光が二匹の前に現れた。その楕円は言う。
「いい?」
二匹は迷わずに言った。
「いいよ。届けて、大好きだから」

その瞬間。ぴかっと光が瞬くと、一瞬にしていつもの庭に戻った。
いや、さっきと違う事が二つ。
二匹の尻尾が一本に戻った事。そして・・・
お花ちゃんと大輔は生け垣越しにお互いの腕を相手にまわして抱きしめ合っていた。

数秒経つと二人は我に返り、そっと恥ずかしそうに離れると、顔を林檎のように赤らめた。
「ご・・・ごめん」
「私こそごめん」
「なんだかさ、いきなりお前に気持ちを真っすぐ伝えてくなったというか、一緒にこうしていられるのがたまらなく嬉しいっていうか。幸せだって感じたっていうか」
大輔は恥ずかしそうに顔を上げる。
そこにはしっかりと赤らんだ顔で大輔を見つめるお花ちゃんがいた。
「私も、この時間が幸せで、会えて嬉しくて、離れたくなくて・・・。お餅になったみたいに、なんだか飛びついちゃった」
「俺も、ひじきみたいに飛びついた」

しばらくして
「あははははは」
笑い合う。
「考えようよ、これからのこと。なんなら勉強教えるからよ」
「お生憎様、私これでも成績いいから、逆にだいちゃんの方が心配」
「うるせー」

「今日は俺んちで食おうぜ。母さんはパートで遅いし妹もバイトだからよ。って言っても、レンジでチンの余り物だけど」
「分かった、お母さんに聞いてくる、家で待ってて」
「おう、またな」
「またね」

二人は幸せそうにはにかんだ。
そして、お互いの最愛のワンコを胸に抱くと、軽快に家の中に飛び込む。
お花ちゃんは言う。
「ねえお餅、なんだか私、あなたにありがとうって言いたい。大好き、愛してる。私、今すごく幸せ」
万遍の笑顔のお花ちゃんの顔には、迷いの色が消えていた。

「なんだか、お餅と離れたくないよ」
お花ちゃんの目は何かを企んでいる。
「そうだ、上京したら一緒に住もう。ひじきも一緒に!大輔と4人で!」

「よっし!まずは受験頑張るぞ!」

お餅は最高に幸せだと感じた。
それから、夜になって庭に出て、すぐにひじきと会話!
「あのね、ひじきー!尻尾一本になっちゃたけど、もっと幸せなことが叶ったよ!」
「いやはや、新しいお家はどんな所だろうね」
お花ちゃんも大輔も、考えている事は同じだった。この瞬間、二匹の願いが叶った第一歩。
「ひじきー私ね、お花ちゃん大好き」
「こっちだって、大輔と離れたくない、大好きだから」

パタパタと音が鳴り止まない尻尾が、二人の幸せを支えていくのでしょうね。




おしまい
 
   
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ショート11*夏の雪畑 / 2010年05月04日(火)
夏の雪畑


コマコマ作

未完成)


ポフ
梨花の頭に真っ白な粉が吹き荒れ、早々に雪畑が姿を現した。そんな梨花の頭を心配そうに眺めながら、紗耶香はぼーっと無神経に頭を掻いた。カリカリ、カリカリ。
はっとする。梨花はすかさず落ち着きなく指差してにやけた。
「あー、そんなに頭痒いんかね?」
その言葉にはっとしながら、どこか不安を拭う事ができず…紗耶香はあさっての方向を眺めた。
「まさか…私はそこんとこ、だいたい平気だし」
ニヤニヤと笑う梨花を横目に冷静を保つが、どこかにある心がチクチクするのだ。
「何が平気?」
ふいに耳に入り込む梨花の疑いの言葉に、なぜだか汗が垂れる。
「あのーえっと」
困惑する紗耶香の頭を掴み、まるで日本猿のグルーミングのように頭皮と髪をまさぐる。嫌だ嫌だと抵抗した紗耶香は、ついに…梨花から最悪の結果を告げられた。
「あのさ…言いにくいけど、あんたの頭にも虱(しらみ)の卵が付いてるんだな」
沈黙…
「紗耶香?」
沈黙…
「なんでそんなにショックなの?大丈夫、薬はあるし!あたしみたいに頭に白い粉振り撒けば大丈夫だよ」
沈黙…
「あのさ、あたしの頭見てよ!虱の薬撒かれて頭真っ白の粉まみれ!でもこれでさ、痒さから解消されるしない?大丈夫だよ」
紗耶香はゆっくりと梨花の頭を見つめる。薬の粉塗れで、なおかつ白髪のような風貌で…なんだかこれじゃ乙女としてどうなんだろうと考えてしまうばかりだ。
梨花は梨花で、まるで粉塗れの白髪の自分を楽しんでいるようだった。
「梨花、今日さ、蛍祭だよね」
「そうだけど?」
「その真っ白な頭で行くの?」
「行くし!蛍好きだし!地元の祭だし!」
紗耶香は大きなため息をついては、ほとほと梨花の脳天気さに呆れるばかりだ。こうして考えると保育園からの幼なじみで小学校のクラスも班活動も同じ、極めつけに互いの家も近くて仲良し仲良しな私達は、うまい具合に互いのマイナスを補っていたが…今日は違う。今日は違うのだ。

「虱じゃない!」
突然、紗耶香が叫んだ。思わずのけ反りながら梨花はヘラヘラと笑った。
「あのさ、虱ほっとくと…痒いし!あの細いストローみたいな口でジワジワと…血を吸っては増殖するんだよ」

だいたい、なぜ虱が流行ったんだろうかと考えながら、学校内で蔓延する虱対策は日に日に強化されていった。私は大丈夫と思ったってそうはいかないさ、虱は徐々に人々の頭に増殖し、そして静かに消えていく。そう、みんなが白い粉のお薬を振り掛き始めるからだ。が、しかし、その薬のおかげで虱だとばれるから毛嫌いする乙女心は多数だけれど、すぐに虱から解放されてハッピーライフが目の前に待っているんだ仕方ない。

ただをこねる紗耶香にてをやきながら、梨花はお薬を手に強行手段に踊り出た。

「やーめーて!だから虱じゃないってさ」
「虱だし虱だし!卵いっぱい付いて外見はふけまみれだわ!」
「梨花ひどい!」
「あのね、薬品を畑に捲く空中散布だと思えよ!あれでアメリカシロシトリが死ぬから農業への打撃が減るんだよ!」

軽快にあっちこち動く右手を避けながら、遂に梨花の右手首を鷲掴みにした。

「あのね、空中散布は去年から中止になったのよ!環境問題を考慮した結果よ!」
梨花の右手から力が無くなったのが分かった。
「知らなかった…」
しおらしい姿を見つめながらにこりと笑い、不意に頭を掻いた。カリカリ。
「もしかして、空中散布中は外に出ちゃいけないのに…ヘリコプターの音を聞いたら外に出て、しかも追いかけようとして問題を起こしたから…空中散歩だと勘違いしてて…だからやらなくなったの?あたしのせい?」
「だから!環境問題を考慮したんだよ!!」

その瞬間、梨花の右手に力が入り…たちまちに紗耶香の頭は真っ白雪畑に変わっていった。

「梨花ひどいよ!」
「虱って、ほっとくと人に移るんだ。だから、世の為人の為に私は悪魔になったのだ」

悲しみが込み上げ、そして、いたたまれない気持ちが溢れ出した。いつの間に忍び込んだんだと考えながら、なぜ発覚したのが今日なのかと自問自答した。
「紗耶香、なんでそんなに嫌なの?」
涙目になりながら鏡を見つめる。その瞬間、どこかにある心がキシキシと悲痛な音を立てた。

「だって、今日は蛍祭よ…」
「うん、それで?」
「私ね、今日さ、岸本と約束があるんだよ…」
紗耶香の頬っぺたに涙が零れる。
「あのガリ勉男子の岸本?そっか、なんだか分かんないけど。分かった!ちょい待ちな!」

そう言い残して梨花は部屋を出て行った。それから30分後に電話があり、いつもの調子で梨花は蛍祭に行く準備をしていてと告げた。

遂に日が暮れた。
ピンポーン
呼び鈴が鳴り響く。
「紗耶香ー!梨花ちゃん迎えにきたよ!早く来なさいね」
支度をしていなかった紗耶香は、そのまま頭を掻き乱す。粉がヒラヒラと舞い上がり、気管に入り咳込んだ。
「紗耶香、いくよ」
部屋を開けて無理矢理腕を引っ張った。嫌だ嫌だと抵抗したが、今日の梨花は強かった。
「暗いから大丈夫。みんな蛍を見に来てるんだから大丈夫」
トボトボと歩く二人の影が長く伸びて、夕日は恥ずかしそうにお山に隠れると、紫のお空が辺りを彩った。

蛍祭りは静かに始まっていた。ただ、祭と言ってもにぎやかなものではなくて、町内のちょっとしたイベントで行われる恒例の行事だ。

「ほら、紗耶香、頭を上げなよ!蛍が綺麗だよ」
蛍は気になるけど、どうしても恥ずかしいという気持ちが打ち勝ってしまい顔を上げる事ができなかった。だから紗耶香は小さく疼くまるように顔を伏せた。その姿を真似るように、梨花も同じように隣で疼くまった。
「大丈夫?」
梨花の問い掛けに、紗耶香からの返事はない。
「あっ、足元の先の、ほら、あの草間に…」
梨花の指の先には小さな蛍が一匹、草間からポーポー、ポーポーとか弱く光っている。そして、すぐ近くからまた光が瞬き、またすぐ近くから光が。そうやって光の連鎖が自然と紗耶香の頭を空に上げた。二人は頭を無意識にカリカリと掻きながら、精一杯に光る小さな蛍たちに心を奪われた。

「綺麗だな」
いつの間にか虱の痒さにも慣れ、だいぶ心は落ち着きを取り戻していた。

蛍達がポーポー、ポーポー
瞬く光が時間を経つほどに増えていく。通学路だった小さな畦道の小さな小川は、今、たくさんの光に人の想いが集まっている。

「ねぇ梨花、岸本さ…」
紗耶香は言葉に出しかけて躊躇した。
「何?どした?」
梨花の問い掛けに紗耶香はたじろぎ、数分沈黙した。
カリカリと頭を掻きながら、二人は目を合わせる。
「梨花、あのね、うちの母さんさ…岸本のお父さんと結婚するみたい」
唐突な表現にまだ幼い梨花はどこまで理解したのだろうか。ただ、やはりずっと付き合ってきた馴染みの友、ニコリと笑い動じなかった。
「じゃあ、狐塚紗耶香から岸本紗耶香になるわけだ!もう狐塚からきたニックネーム、コンちゃんと呼ばれないわけだしよかったしない?」
あっけらかんとした言い草に、なんだか安らぐ。
「あはは。そうだね。狐塚じゃなくなるなんて不思議だよ。なんかさ、今日さ、岸本と岸本父が蛍祭来てるんだって。岸本も動揺してたけど、とりあえず父と会ってくれってさ。だからさ、母さんに内緒で今日会う事になったんだ。暗闇だから緊張も柔らぐだろうって」
「なるほど、だから薬嫌がったんだ!確かに初対面から恥ずかしい姿は…やだくなるわな」

あはは

なぜか笑った。
今日が蛍祭でよかった。今日が虱発覚の日でよかった。不快感も安らぎ感も、対象にある蛍と虱は、紗耶香のアルカリ性も酸性もなかったかの如く中性にしてしまうのだった。

「ってゆーか、この人混みから岸本探すの大変だ。なんだか行き会わない予感」
「大丈夫!」

「なんで大丈夫なわけ?」
「だって岸本も虱だもん!」
「え?」
「だから、岸本も虱なの!」

その瞬間、心地好い夜風が吹いた。梨花があの時急いで帰ったのはこの事を調べていたのか…。

「梨花は馬鹿だな!本当、ありがとうね」
「探してきなよ、きっとすぐに見つかるって」

その後、さすが流行だけあってか何人も雪畑が通り過ぎたが、痩せた体のガリ勉岸本が同じ雪畑だったからか、虱の縁かなんだかですぐに見つける事ができた。
そして、岸本の隣には何度もお辞儀をしながらヘラヘラ顔の岸本父が立っていた。

それから、三人の間に会話なく時は流れ。緊張する岸本父を横目に紗耶香と岸本はぎこちなく、ただ下を見ずに上ばかりに目を動かしていた。

下を見てばかりじゃ損だよね。蛍を眺めながら、そう言いって二人ははにかんだ。



おしまい
 
   
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ショート10*撒き餌 / 2010年04月22日(木)
撒き餌

コマコマ作
(未完成



鳩は本当に

『ポッポ』と鳴くんかや?

彼女は小さな郊外の公園にある少し寂れたベンチに腰を掛けながら、ふいにぽつりと言った。あまりにも小さな小言のようだったから僕は…そのまま聞き逃してみせたんだ。

数分だったんだ。ゆっくりと時が過ぎながら缶コーヒーを互いに口に運びながら、過ぎていく時間を持て余してみていた。どうにも彼女の気持ちがわからない。何か言いたいのなら早く切り出せばいいのにと、少し苛立った。けれど、苛立った気持ちを緩和させる事が僕達の終わりを示している気がして…切り出す事を恐れているんだ。

『ねぇ、私達が公園に来るのっていつぶりかしら』

沈黙を破ったのは彼女だった。
僕はふと考えながら、ゆっくりと丁寧に言った。

『だいぶ経ったよな。昔はよく来たもんだわな』

鳩の首がどうして左右に揺れるんだろうかと考えながら、僕はまるで他人事のようにぼーっとしながら次にくる答を待った。
数分経ってから彼女がまた小さな声でぽつりと言った。

『私達って鳩のようね』

彼女は考えていた。私達のこの関係を。考えながら、なんとなく友達が言った言葉を思い返していた。


“男の浮気は
仕事も家庭も安定している時ほど陥りやすい

女の浮気は
心が寂しい時、心を埋めるために陥りやすい“


彼女は常に冷静だった。だからこそ、男の知らない所で弱るのだった。自分の立場を考えながら、見えないその先に心を痛め、破壊したい気持ちを抑え込んでいた。

『なんだい鳩って…時々君がわからないよ』

僕は、なんとなく攻められているようでいたたまれない気持ちになった。大輪の花を抱えながら枯らしてしまうのか…それともオシャレに花瓶を買ってしまうのか…そんな微妙な気持ちで満ちていた。

『たくさんの花束が欲しいわ。鳩が餌に群がるように、私は花の残骸を拾って食べるわ。あなたが買った花だもの…買った時に誰と買ったかとか…一瞬だけ忘れてね、きっと本能で駆け込むわ』

二人は自然と目を合わせた。

『何?何か言いたいんだろ?』

彼女は男の目を覗きながら、ぐちゃぐちゃの気持ちをなんとか丸くした。そして、わかって欲しいと願った。今まで聞けなかったあなたの事、あなたの指の事、あなたの生活の事、私から言わせないでと願った。もう若くないと彼女は少し焦りながら、彼女自身、どうしたいのか悩んでいた。自問自答しながら、彼の素直な気持ちを聞けたなら尊重していこう、そこから次を考えようと思っていた。

『あぁ、そうだな…公園は久しぶりだけど、この間行ったあの…あぁ、小さな懐石料理の店、また行こう。気にいったんだろ』

彼女は首を振った。綺麗な首筋がちらりと男を誘惑した。
男は、綺麗な首筋だなって想いながら、彼女を失いたくないと願った。

そして、時は流れた。
公園の鳩は飛び去った。

『私ね、私ね…あのさ…』

彼女は…

『あっ!もう夕方かよ…お腹すかないか?ここにいたら体が冷えるよ、行こうぜ』

優しい男の手を見つめながら、彼女は小さく頷いた。その頷きを見てようやく安堵した男は、彼女の痩せた腰に手をまわしてベンチから引き離す。

ぐちゃぐちゃの気持ちを抑えながら、彼の左手を避けるように立ち上がる。絡め合う指に纏わり付く冷たい誓いが、これ以上私を苦しめないように…もう手を握らないと、誓いながら。キラリと輝くその金属が嫌みのようにくすむ現実と、くすんでもなお存在する金属とを、私は…

私は…

私ね…

ただ普通に神に祈った

ただ…

ただ…


もう

これ以上は
これ以上は

助けてくれないなら

あなたなんて


いらない




おしまい
 
   
Posted at 03:49/ この記事のURL
ショート9*天竜村 / 2010年02月27日(土)
天竜村

コマコマ作


未完成



天体望遠鏡が目になった。あたしはそんな夢を見続けているの。

流星群がやってくるんだってさ、滝のように流れるのかしら。それとも、渡り鳥のように飛び越していくのかしら。

川上犬のコロッケとばあちゃんとあたしの小さな土壁でできた家の上空を、どんな想いでキラキラ煌めくのかしら。

コロッケ、流星群が流れたらワンと一声泣いておくれ。

ばあちゃん、流星群が流れる日はあかぎれの手をすっと止めてみて。

そして、あたしたちは笑顔で見送ろう。旅の先へのお土産を、消えてしまいそうな刹那を、漆黒の碧空に手持ちライトで点を打ちながら。
次への未来のたずなを引こう。

あたしが守れなかった尊厳は、人のせいにしてまとめてた。編み上げた織物のように、時代から逃げるマントを身に纏う。悲観的になれて心地好い。

あたし自身で守らなきゃいけない尊厳を、感受性を、何かのせいにしていたなんて。気が付くのが遅かったなんて、誰も責めきれない事は知っている。

だからかな、ばあちゃんがいつも洗濯板を使うのは。あかぎれの手であたしを撫でるのは。あたしの手が綺麗な手相をしているのは。コロッケが尻尾をより高速に振るのは。

あたしがここにいるから。ここで食事をし、ここで眠り、朝になって言葉を交わし、互いを求めているから。

そう、流星群に感情がない事を知っている。

見る人がかってにこじつけたロマンだとわかっている。

でも、あたしたち三人で流星群を見れたなら。きっと流星群が返事をしてくれるんだ。

尊厳とか感受性とか個人とか今とか、そんなんをひっくるめて伝えてくれる。

そう想う。

想うから、そう感じてそう聞こえる。

きっと、暖かい土壁の温もりを想えるようになる。

離れても大丈夫。

離れたらきっと、よりあの家を大切にできる。

ここに居られなくなるのが怖かった。

でも、大丈夫そうだよ。

スタートを祝ってくれる家族に、やっと素直に言えるよ。

あたし、夢を掴みにこの家を出れるよって。

少し目の悪いあたし、老眼のばあちゃん、犬目のコロッケ。流星群の映り方は異なるけど、きっと綺麗だよ。

だから、ありがとうは10年後にとっておくからね。

この村が好きよ。

ばあちゃん、コロッケ、手紙は書かないから。だから、夜空を見上げてね。あたしも夜空を見上げているから。



おしまい
 
   
Posted at 15:11/ この記事のURL
ショート8*なかしまさんと小山さん / 2010年01月29日(金)
なかしまさんと小山さん


コマコマ作

未完成


雑木林から雄叫びが聞こえた気がした。
それでも私は今日も日記帳を開くの、でも、今日は書けそうにない。
雄叫びが聞こえた気がしたから。

家の裏の雑木林、青々と生い茂っていてなんだか悲しい。なぜなら、ずっと行く手を阻まれている気がして憎悪が増すのだ。なんだか嫌なんだよ、テストで点数が取れない私、相手を傷つけないように気をつかう私、未来ばかり不安になるが故になんとか楽観的に取り繕う私、こうして日記を書き続ける私にだ。
学生の頃はどうしても勉強ができなかった。好きでもなかったけど、努力しても結果が伴わなくて唖然とした。劣等感の固まりのような自分を意識しだし、夜は家に篭り、ネット掲示板に叫びを綴りながら社会に飛び込み、そして、結局家の暗闇に逃げた。

雄叫びが聞こえた今日、初めてネット上で流行っているブログを始めてみる事にする。
だって、日記を書くより簡単そうだったし、なんだか誰かに知って欲しい気持ちがふつふつと芽生えたからだ。

ブログを始めて2週間、今だコメントがない。でも、アクセス数を確認すると誰かが見てくれた形跡があって、なんだか救われて、だんだんのめり込むとブログ仲間ができた。

ハンドルネームは‘なかしま’彼女は元気よく毎日を過ごしていた。
なかしまは今日、天気がよかったので公園に出かけ、そこから自然を感じる事に感動したらしい。
なかしまは友達がいるらしい、そして、いっちょ前の恋愛をして詩なんか書いたりする。
なかしまはよく悩むらしい、人間関係について。

あぁ、なかしまよ、あぁ、なかしまよ。

あなたは私じゃない。でも、なかしまは私の中で生きていて理想のあなた。

なかしまは今日、巷で有名な歌手のCDを買ったらしく、それを聞いた感想を書いたりしていた。
なかしまはいつの間にか化粧がうまくなり、誰かと恋愛をし失恋をし、そして、悲しいと歎いた。

あぁ、なかしまよ、あぁ、なかしまよ。

いつの間に大きくなったのか。

ざわざわと騒ぎ立てる木々の叫びがいつからか心地好くなったのだろうか。

なかしま、あんたは私の理想だよ。

ある日のコメント。
なかしまさん宛てにラブソング。笑った、だけど嬉しい。

妄想ブログ、私はあれやこれや書き続けた。
そんななかしまに、ある日荒らしがやってきた。それなりに傷つき、それなりに凹み、それなりに怒りが増した。

本当のなかしまは小山というそこら辺にいそうな普通の女性だ。チョコレート工場でチョコレートの生産をしている。工業高校を卒業してすぐに機械製造業に励み、辞めて、チョコレート製造に転職した。
今だ処女。実家から出た事がなく、もっぱら家と工場のエンドレス。
母は心配しているみたいだけど、ここまで何もない日常が続くと結婚のけの字も無縁状態で。いつまでパラサイトし続けるのかと、馬鹿にされたりしながら。

あぁ、なかしまよ、あぁ、なかしまよ。

あなたになりたい小山さんです。

そんな小山さん、いつものようにブログを更新しながら泣いてしまった。

泣いてしまったの。

なかしま、今日は嘘をつかないから、そう書き綴り悲しい悲しいと歎いた。

ブログ仲間からすぐにコメントがきた。コメントだけ。あぁ、なかしまさんよ。また泣いてしまったのだね。

そうして、部屋を出てテレビを眺める母の横に座った。

「ごめんね」

母は驚いたように目を丸くした。
「何かあったの?」

首を振る。
「ごめんね」

私はきっと恋愛もしたいし、笑い合う仲間が欲しいし、携帯のメールを待っている。
家族と工場からの業務メールだけの私はなんというか切ない。
そんな小山には元気な兄がいて、結婚して子供を連れてやってくる。孫を見る嬉しそうな母の目が私にはきつい。

そんな小山に、春がやってきた。妻子もちの上司との秘密の恋愛。ワクワクと欲望とイライラが入り混じって、久しぶりになかしまは小山になりきってブログに心情を綴る。

あるコメントに、不倫はよくない最低と書かれた。

気にならなかった。なかしまは小山になったから、そして、愛される事を覚えたから。
でも、不倫はそう長く続かなくて、都合がよい自分に嫌気がさした。やはりあなたは人のもの、男には家庭がある。帰る場所がある。私のところに帰る事なんて心からはない。

あぁあぁと歎いた。久しぶりになかしまになりたいと思った。けど、ちくしょー!愛情を知ってしまったからあの頃のなかしまになれねーじゃねーか!ちくしょー!

ちくしょー

ちくしょー

愛情が欲しいよ

ちくしょー

なんなんだよ

私はなんなんだよ

愛してるってなんなんだよ

そんな感じで小山さん、お風呂から這い出して雑木林に体を投げ出した。

痛いよ

ちくしょー血がでたよ

足痛いし

枝当たるし

なんだか暗いし

うわぁぁぁん

うわぁぁぁん

泣いて泣いて泣いて泣いて。

なかしま、もうあなたに戻れない。

私はブログを閉鎖した。
そうして、今日も私はチョコレート工場に出かける。甘い香を漂わせながら、いつか私に染み付いた甘いチョコレートの香に誰かが気が付いてくれるように。

ただ、仕事をして、部屋のライトを明るくしてみるの。




おしまい
 
   
Posted at 16:21/ この記事のURL
ショート7*軌道 / 2009年12月10日(木)
軌道


コマコマ作
(未完成)


月が朧げ。
太陽は我から放つ光を月に映し、まだ輝いていると人々を安心させている。
それは、また必ず迎えなくてはならない怠い朝日からのメッセージ。僕にはそんなメッセージが嫌で嫌でたまらなかった。

僕は俗に言う超金持ちだ。だけど、生まれてから超金持ちだったわけではない、たまたま超金持ちになった部類の人間だ。なぜか?と問われるが、簡単だ。
それは、僕がエスパーだからだ。
今や僕の力を驚異に感じている世界各国の人間達は、いかに僕をこの国から奪いとろうか考えているらしい。その半面、エスパーの力に頼った僕の生まれ育ったこの国は、世界中の驚異から守られ治安は良好だ。なんだか経済も上向きらしい。
そりゃ、僕の力が怖いから、経済戦略もあったもんじゃないよ。絶対的な力を前に『NO』はない。

そんな感じで僕は、世界から恐れられ、母国からも恐れられているのが実際の現状だ。
いつ謀反を起こすか、それが怖いのか…一日中監視され、親や兄弟は隔離され、まさに人質状態である。まぁ、僕が謀反を起こしたら家族は…とでも言いたいのだろう。
だけど、謀反なんて考えは一つも考えた事がないのだよ。無駄な事をしているなぁと思う。

そう、平和な国になったもんで、僕は今や神のように奉られている。まだ生きているのにさ…失礼極まりないと、そう思うがまんざらでもない。
広い広い空間で、花を潰し空気を汚し女を撫で、好き勝手生きる事に慣れてきたらさ。
実は…
ここだけの話し…

エスパーの力の使い方を忘れてしまったのだ。

遊び尽くした結果か?はたまた殺戮を許された僕への戒めなのか?
そもそも、可哀相なのは僕ではないか?いくら好き勝手生きれても、富があろうとも、新しい刺激を求め出してしまったのだから不運だ。
それに、パワーの使い方を忘れたなんてばれたら…あぁ怖い怖い。

怖い怖いと嘆いている僕に、さっきまで隣で裸のまま横に伏せていた女が、顔を上げて言葉を発信した。
「ばれないわよ、あなたは安心して死ぬわ。だけど、死んだら神としてより崇められるわ。それは歴史になって文化になって、絶対になり、あぁ可哀相、死ぬに死ねなくて本当に神になるのかしら」
だまって抱かれていたさっきまでの人形のような女が、人形から人になったように口を動かしていた。
僕は笑った。
「まさか、さっき繋がったあの行為からそこまで感じてしまったのかい?それともやはりお前は人形なのか?」
女は体を品やかに起こし、長い髪をかき上げて空を見た。
「あなたは月。太陽の光を映し出して照らしくれる。可哀相に、あなたは朝になると人ではなくなるわ。人々がそれを認めないから。だけど、それは無関心なあなたへの最高のプレゼント」
神秘的な笑顔に、心は発作を起こした。
僕は思わず女を抱きしめた。その後は狂ったようだったが、気が付くと子供のように丸くなり、女の腹にうずくまっていた。

ドクンドクンと脈を打つ。

「あなたの子よ」
女は優しく僕を撫でる。
「あなたは人形のように私を抱いた、けど、毎日が初めてだったでしょ?可哀相だったから、あなたの時間を動かしてあげるの。だから私、あなたの子を成したのよ」

僕はエスパーで、エスパーである力の使い方を忘れ、僕と呼ぶ事で名を忘れ、そして時間を忘れ、死を恐れる事を忘れた。

最近、ようやく怖い怖いと思えるようになったのは、女のおかげなのかもしれない。
君を無意識に失いたくなくて、力を欲したのだろうか。

この平和な世界にようこそ、我が子よ
 
   
Posted at 03:13/ この記事のURL
ショート6*鯨波 / 2009年10月24日(土)
鯨波

コマコマ作

(未完成)



がっははは

っと笑った。
大きな声で笑った。
狭い1kの4畳半で、やせ細った中島真美は一升瓶を片手にニコニコの上機嫌だ。もう、どうしたもんかわからなくなると、決まってお酒を飲んでいるのだが、こんなに笑ったのは数ヶ月ぶりだ。
でも、なんだかソワソワする、なんだか嫌な予感がする。
ふと、おもむろに携帯を鞄から取り出して適当にアドレス帳を開いた。電話ボタンを押す。

無反応

あははは〜!

今度は軽い笑い。
「もう、私ったら馬鹿だ〜!」
携帯は料金未納により止められていたのだ。
真美や、真美ちゃんや、あんたは本当にダメなんだから!
もう笑いが止まらない。

も〜あははのはだわ〜なんつってな〜って…
虚しい風が吹く

「あ〜お金ない…」
真美は先日バイトをやめた。実家には頼れない。だけどバイトをやめたのだ。家賃も、まだぎりぎり払えそうな感じだ。だから、家でひっそりと酒を飲むのだよ真美ちゃん。

「さみちぃ…」
真美ちゃん、甘えてもだめなのだ。君には誰も居ないのだから。携帯が動かない以上、誰も君のSOSには気がつかないんだ。

「さみちぃんだもー!…あ〜…酒…すげーぇ」
真美はそっと酒のラベルを見つめた。
「アルコール12%かぁ」
ごろんと横になる。鳴らない携帯に目をやりながら息を荒げる。
はぁはぁと、まるで興奮した変質者のように、真美はまだ高校に通っていた頃を思い出した。
あの頃はキラキラしていた。
中学は最悪だった、逃げて非行に走っていた。極めつけに友達もいなかった。けど、馬鹿がいく学校だと言われたけど、真美は中学を卒業してからの高校ライフが本当に楽しかった。
同じ偏差値の仲間で集まって、テストなんて気にせずに遊び歩いた。そう、男を知ったのは調度その時だった。好きか嫌いではなくて、なんとなく家に居たくなくて彼氏を作っていた。そんなスタンスだから飽きられて、また作って、体を交わして、飽きられて。
なんとなく、アルコールを飲みだしていたら止まらなくなって…
あぁ…
今にいたる…

思い出の断片は集約されてあっというまに消えていった。
結局、高校も楽しかったのだろうか。
真美は頭をグチャグチャに掻き乱した。あの時、何度も体を交わした相手が今私を助けてくれるわけないんだ。あんなに遊んだ友達も、私が辛いのをわかってくれないんだ。

だって、携帯がつながらないからさ。真美ちゃん、あんたはいったいどんな生き方をしちまっただや?

「実家に帰ろうか…日本海の荒波が懐かしいよ…実家の米が食いてぇよ」

そんな実家の母親にも、携帯が動かないから連絡ができない。

真美の唯一の特技はザルだった。
だから、真美は新潟を飛び出して新宿のキャバクラで金を稼ごうと上京した。
けれどキャバクラのバイト…結局長く続かなかった。上には上がいるもんだと、つくづく思った。

こんな真美を、母はどう思うのか。なんだか変なプライドばかりぎ先に立つばかり。

「限界…」
すぐにトイレに走り寄り、おぇーっと吐いた。ドバドバっと、昼に食べたカップラーメンが消化しきれずに姿を現した。

「うわぁぁあぁ」
ついに泣き出した。泣く体力も、そう長くは続かない。
真美はいつの間にかウトウトと心地よさを感じて、布団にごろんと横になった。

夢にはいつも、あの鯨波が押し寄せる。小さな頃に遊んだちょっとしたビーチ。
日本海、なんかしけった空気と暗いイメージ。だけど、強く強く強かった。

真美の手は、いつこんなにか細くなったんかや?

奮えるのに気がつこうとせず、振り払う事をいつ覚えた?

懐かしい荒波の音がする。

帰ろう

帰ろうか

いや…でも…

毎日の葛藤。
いつも悩み続けながら、まだ東京にいる。

だから、今日は真剣に悩もう

帰ろうか

帰らまいか

あぁ

目が覚めたら結果が出るだろう

疲れたよ、お休みなさい



おしまい
 
   
Posted at 02:04/ この記事のURL
ショート5*キラキラテイル / 2009年04月22日(水)
キラキラテイル

コマコマ作

*まだ作成途中


フサフサキラキラ

幼少の頃、私には不思議な光の粉を見る力があった。
フサフサの犬たちが幸せそうに散歩をしていて、その後には必ず光るキラキラの道が続いていた。犬が嬉しそうに尻尾を振ると、そのキラキラの粉はパラパラと舞だし、ヒラヒラと地面に落ちていく。そして、数時間経つとすっと消えてしまうのだ。だから、犬たちがいつ散歩をしてどう歩いたのか私にはなんとなくわかるのだ。
私は、お母さんにしきりにキラキラの粉の話をしては、よく頭を撫でられていた。家は団地だから、犬が飼えない私を哀れんでいたのかもしれない。

この粉が私にしか見えないとはっきり自覚したのは小学校に入ってから。クラスメイトの小枝子に、ふと粉の話をした時だった。
「奈々ちゃん、私には見えないよ〜ずるいよ」
驚いた。なんとなく自分には特別な力があるのかもしれないと、少し誇らしかった。
「奈々ちゃん、ゲームしようよ」
小枝子はにやっと笑った。不気味だったけど、負けない自信があった。
「ゲームって?」
「今日、私がゴンと歩いた散歩道を当ててみてよ!当てたら信じてあげる」
「えっ信じてくれてなかったんだ」
「違うよ!テレビドラマで言ってたもん、証拠が何より物を言うって」
目を爛々と輝かせながら、小枝子は指切りげんまんを強引にすると、にやっとまた笑う。
「はぁ、わかったよ!私が言い当てたら、ちゃんと信じてよね」
「当たり前だよ」
小枝子は少し考えると、閃いたように公衆電話に駆け寄り10円を入れた。
「お母さんあのね〜うん、姉ちゃんは…」
少しだけ話すとすぐに受話器を置き、また私の元に駆け寄った。
「とりあえず、私の家で奈々は待機してるの!その間、私は散歩に行くから!姉ちゃんが見張り役引き受けてくれたからね」
嬉しそうに跳びはねながら私の手を掴み、引っ張られる形で強引に小枝子の家にお邪魔する事になった。
家に着くと、玄関には雑種のゴンがいて、ゴロンと横になっていた。小枝子に気が付くとゆっくり腰を上げて、キラキラの粉を撒き散らしながら近くに寄ってきた。可愛いなぁと思いながらそっと撫でようとしたけど、ゴンはキラキラの粉を撒きながら私の手を避けた。
「お姉ちゃんよろしくね!」
「はいはい」
小枝子の姉ちゃんは私を居間に案内をすると、お菓子とカルピスを出してくれた。
「小枝子の事だから、どうせ堤防あたりを散歩してるんじゃないかな」
姉ちゃんはそう呟きながらお茶を啜った。なんだか姉ちゃんの顔はうかなかった。ひどく面倒くさそに、疲れたようにため息をついた。
「あの子の事、嫌いにならないでな」
姉ちゃんはぽつりとそう言った。
それから数分経って、小枝子は嬉しそうに戻ってきて。
「さあ、当ててよ」
威圧的なその態度にかちんときながらも、私はゴンが撒いたキラキラの粉を辿りながら寸分の狂いもなく言い当て、小枝子の家に到着した。
「すごい!奈々ちゃんカッコイイ!」
あの時の小枝子の目は、本当に澄んで綺麗な瞳だった。

それから5年後、私は突然キラキラの粉を見る事ができなくなった。

何か事件があった訳ではない。
何もない、ただの日常からキラキラが消えた。

大人になった今、私はなんとなく不思議な体験を忘れられなくて、2浪して国立の獣医学部に入学した。
忙しい日々の中で、夏休みに入ったのをきっかけに田舎に帰る事にした。予備校で都会に出た私はあまり田舎に帰っていなかった。
ふと、なんとなく小枝子に会いたくなって、携帯電話を取り出して小枝子の家に電話をかけた。
すぐに小枝子母が電話をとった。
「はい、西東です」
「お久しぶりです、小枝子の友達の大津奈々です。小枝子さんいらっしゃいますか?」
「あら…手紙…まだ読んでないのね。そうね、奈々ちゃん、都会暮らしだものね。そちらの住所は知らなかったから…」
「?」
「大津さん、忙しくしてらっしゃるから手紙に気が付かなかったのね…」
「どうしたんですか?」
受話器ごしから緊張感が伝わってくる。数秒無言が続いた後、小枝子母は小さく震えるように言った。
「小枝子ね、死んだのよ」

頭が真っ白だ

反射的に電話を切った私は、新幹線を降りると小枝子の家に向かってタクシーを走らせた。
急いで呼び鈴を鳴らすと、小枝子母が私をそっと中に招き入れた。なんだかすごく小さく見える。居間には姉ちゃんがうちわを仰ぎながら、小さく会釈をした。
そしてなぜ死んだのか、一部始終聞くと、もう遅いからと追い出されるように家を出た。
とぼとぼと歩いていると。
「奈々ちゃん!待って!」
姉ちゃんが私の肩を掴んだ。
「今日はありがとう」
「こちらこそ、お葬式にも出れず」
「いいのよ」
二人で夕暮れの畦道を歩いた。虫達が泣いている。
「ねぇ、聞きたい事があったのね。奈々ちゃんさ、ゴンの散歩道を当てるゲームしたでしょう?あれ、どうして当てたの?」
少し沈黙。そして口を開く。
「あの頃は見えてたんです。キラキラの粉を」
姉ちゃんから大きなため息がでた。
「可笑しいのよ。あのさ、あの時、ゴンは死んでてもうこの世にはいなかったんだから」

ん?
なんでよ?
いたよ、ゴンはキラキラの粉を撒き散らして、あの涼しそうな玄関にいたの!

姉ちゃんは別れ際にこう言った。
「あなたは、小枝子の憧れだった」

不思議な体験がまた増えてしまった。

なんで私が幼少の頃、あんな力を授かったのか今でも解らない。
幸せそうに振る尻尾にはキラキラの粉が仕込まれていて、ただただ、私は見とれていた、ただそれだけだったのに。いつの間にか気まぐれな神様のせいで、私は力を失うの。

ゴンは確かにいたよ。小枝子、あんたはあの時、一人で歩いたんだね。一人で歩いた道を、私は言い当てたんだね。

でも、確かに居たんだよ、隣で嬉しそうに走るゴンが。

神様、私に何を伝えようとしてるのですか?あの力はなんだったんですか?

答えなど返ってくるはずがない。

そう思ったのに、最後の不思議体験が私の心を締め付ける。

私の手がキラキラと輝いているように見えた。一瞬だけ。ただの一瞬だけ。


結局私は、力を完全に失った。

だけど、ただ言えるのは、私は犬を近々飼うと決意したという事。そして、私はこの手で一生をかけて動物を救おうという事。

そうだよ、一つ解った事。
この世に奇跡の魔法なんてない。あるのは現実なんだ。そう教わったんだろうなって自己分析。



おしまい
 
   
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