薄桜鬼〜近土〜

November 12 [Sat], 2011, 17:12
薄桜鬼

近×土


「……この餅は…」

所用で出掛けたある日
たまたま通った帰り道に、以前近藤さんが上手いと言っていた餅を見つけた

……この餅を食べていたのはけっこう前だったよな

そう思いながら店にある餅を見る

また、食いたいかもしれねぇよな

俺は柄にもなくその餅を……買ってしまった


「…トーシ!!ありがとう!ありがとうー!!この餅はなぁ…最高に旨くて柔らかくてあんこが濃厚なんだっ!!…よく買ってきてくれたなぁ!!」

屯所に帰ってから、買った餅を近藤さんに見せた瞬間

すげぇ勢いで話し、しまいには涙ぐんでいる

「うう…俺は嬉しい!嬉しいぞ!この仕事が一息ついたら二人で茶でも飲みながら食おうじゃないか」

「はぁ…わかったよ、食えばいいんだろ。食えば」

「うむ!こんなに嬉しいことはめったにないからなぁ…」

近藤さんはそう言いながら、買ってきた餅を抱き締めている

こんな子供みたいにはしゃぐ近藤さん…

まったく…

そんなに喜ばなくてもいいだろうに

だけど、そんな無邪気な近藤さんだから

俺は…好きになったんだろうな




最近はうるさかった長州の輩がどことなく静かになり京都の治安は見た目では良くなった

裏では…ちょこまかと動き回っているようだが

だが、そんな時近藤さんはお偉いさんとの会合だとか何とかで二条城に出掛けていた

俺は出掛けた近藤さんを仕事をしながら待っている最中だった…

バタバタバタッ!!

なんだ…やけに外が騒々しいな

「っおい!何かあったのか!」

何となく…嫌な予感がした俺は作業をしていた手を止め、襖を開けた
そして丁度通りかかった隊士に声を掛ける

「土方副長!!近藤局長が…!!」

「!?」

近藤さんが!?

「どうした!!何があった!」

「帰り道に、反幕府側の奴らが待ち伏せをしていたようで…!!近藤局長が狙撃されました!!」

「狙撃…だと、!!」

近藤さん…近藤さんは…!?

「近藤さんは…無事なんだろうな!!」

情報を全然知らない苛立ちに、つい語尾が強くなる

「それが…確かな情報がまだ入ってきていなくて…」

隊士が土方の気迫に狼狽えた時だった

「誰か手伝ってくれー!局長を運ばなきゃならないんだ!!」

「「!?」」

門…外の方から声がした

「行くぞ!!」

「あ…はい!」

慌てて隊士は土方の後に続いた

まさか冷静沈着な鬼の副長が…

こんなに慌て、血相を変えているなんて誰が想像できるだろうか



俺は人だかりが出来ている方に走る

「どけっ!!」

「副長!」

人をかき分けた先にあった光景は…

「!?近藤…さん…」

「……うぅ…」

苦し紛れに眉を歪めている近藤さんの姿があった

木の板に乗せられている近藤さんは、肩からの出血が多いように見えた

そして、駆け付けてきた山崎に言う

「山崎!急いで近藤さんを運べ!ここから一番近い部屋…俺の部屋でいい。早く!!」

「っは!!」

山崎の返事を聞きながら、俺は群がっている人だかりに指図を出す

「騒ぐな。手当てが出来る者は俺の部屋に来い、その他は部屋で待機だ。」

「…わかりました!!」

きっと隊士達も不安だろう
これで局長が亡くなってしまったら?
新選組はどうなる?

この日本の為にと思い集ったこの思いは…
どうなるのだろう

皆が不安がっているのは明らかで
土方はその事をよくわかっていたから

「…近藤さんはこんなとこで死んでいい人じゃねぇんだ…だから心配すんな」

そう言った土方は、急いで部屋に入って行った…



近藤さんを寝かせ、傷を見る

見た目ほど傷が深いわけではないようだった

「山崎…どうだ?」

「…治療できる所は全てしましたが…後は局長の生命力に賭けるしかないでしょう…」

山崎の素早く手当てしているさまは手際が良かった

これで、俺達に出来ることは全てやった…

「…山崎、ご苦労だった。もう部屋に戻っていい。」

「ですが…」

「後は俺が見ておくから。大丈夫だ…ゆっくり休め」

「…承知しました」

山崎は治療道具を片付けると、部屋を出て行った


「……」

横たわっている近藤さんを見る

「…近藤さん…早く、目…開けてくれよ…」

呼び掛けても…

『トシ!!』

近藤さんの元気な声は返ってこない

「なぁ…近藤さん…!頼むから…死ぬな…死なないで…、くれ…」

近藤さんを失うかもしれない
もう、二度と
声を聞けないかもしれない
笑顔を…見ることは出来ないかもしれない

「…恋い焦がれてる…って……まだ、言ってねぇんだよ…」


近藤さんは、それからずっと昏睡状態が続いた

局長がいない新選組を仕切るのは副長である俺だけ

やらなけりゃいけない事は倍になった

そんな忙しい中でも…

「…まだ、起きてねぇか…」

近藤さんの様子を見るのは1日だって欠かさなかった

未だに目を覚まさずに、早一週間がたった日

今日は何かと忙しくて
1日中文やら出掛けたりで昼間が終わり、一息ついたのが夜だった

「……見に行くか」

疲れた足取りで近藤さんがいる部屋に向かう

この一週間、自分の役目をこなしながらの局長としての役割も担っていたから

「……」

あまり寝ていないし、食事もろくにとっていなかった

「…近藤さん」

いつものように、近藤さんの名前を呼びながら部屋に入る

「……」

やはり返事はなかった

俺はゆっくり近藤さんの枕元に座り、溜め息を落としながら頬杖をつく

ただただ近藤さんを見つめていた、そんな時だった

「……っん…」

「!?近藤さん!!」

今…微かだったが、声がした

「近藤さん!おい!!」

俺は近藤さんの体を揺すりながら声を掛ける

「……ん…ト……シ…?」

「ああ!俺だ!!頼むから起きてくれ!!」

精一杯頼みながら、近藤さんを起こそうとした

そして……

「ここ…は…」

「屯所だよ…あんたは会合の帰り道に撃たれたんだ。覚えてるか?」

「肩が…すごく痛かったのは…何となく」

「…そうか。まぁ、いい…こうして…あんたは生きてる」

良かった
本当に……
また近藤さんに会えることができて
話をすることができて

近藤さんを…失わずにすんで

本当に…良かった

安堵の気持ちが俺の体中を駆け抜けて行く

この一週間。
どれほどこの日を待ち続けていたことか
いつも傍にいた近藤さんがいなくて
どれほど心配して…

「……っ」

「…?トシ?」

積もりに積もっていたこの思いが…

「泣いて…るのか?」

涙となって零れた

「あんたは…心配させすぎなんだよ…」


「……すまなかった…」

そう言った近藤さんは、怪我をしていない方の掌で泣いてしまった俺の頭を撫で始めた

「…が、餓鬼じゃねぇんだから、頭なんて撫でるなよ!」

「いや…以前から、こうしたいって思っていたんだ…」

「……え…」

ゆっくりと…それでもしっかり起き上がった近藤さんの腕が…

「…トシ……」

……俺を包んだ

「何…して…」

「今くらい…許してほしい。俺は…トシから離れたくはない…今回のことがあって…トシといられる事が、こんなに大切だったことを気付かされた…」

…近藤さん

「だからな…今回のことがあって、改めてわかったことがある」

近藤さんは抱き締めていた俺を離すと、俺の目を見た

「トシと……共にいたくて。…愛しくて…たまらないんだと…いう事が」

「!?近…藤、さん…」

近藤さんの目には、何の曇りもなくて

真実を伝えているんだと…はっきりわかった

「だから…今日だけは、トシを抱き締めていたいんだ…自分勝手なのは十分わかっているつもりだ。それでも…」

再度、近藤さんは俺を抱き締めた

「こうして…トシを感じていたい」

「……」

…なぁ、近藤さん
あんたは俺の気持ちなんてこれっぽっちもわかってねぇよ
俺は…あんたの気持ちがわかって、嬉しいんだ…

今日だけでも、許されるならば

俺は伝えよう

「…近藤さんが、好きなんだ」

「、え…」


俺は、神も仏も何もかもいらねぇ

ただ…

「あんたが…俺の傍にいてくれりゃぁ…いいんだ」





〜終わり〜

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