やさしいPDPモデルの話 

October 12 [Mon], 2009, 23:36
やさしいPDPモデルの話―文系読者のためのニューラルネットワーク理論入門(新曜社)
守一雄 

いまさら、PDPモデルの本の紹介です。
出版されたのは、1995年と、今からもう15年近く前になりますね。

PDPモデルとは、並列分散処理モデル(Parallel Distributed Processing)と言って、この言葉がタイトルになっている本が、今回紹介する本よりさらに10年ほど前に、ラメルハートとマクレランドら(1986)によって出版されました。

並列分散処理とは、その名の通り、直列じゃない処理をすることです。
SR学習理論→認知心理学(PSモデル)と進んできた心理学における、第三のパラダイムです。(…となるはずでした?どうなんでしょう実際は。今度調べます。)
認知心理学のボックスと矢印モデルにも行き詰まりを見せた20世紀後半に、不死鳥のごとく現れたモデルだったんです。何故不死鳥かというと、起源はもすこし古いから。

最近のパソコンのCPUはCORE2DUOとかQUADとか、二つ四つと、並列させてますよね。そんなんとは全然違うんですけど、直列がダメなら並列なんです。 

並列分散表現の優れているところは、
(1)実際の神経の働きを模しているところ。
これを優れている点として挙げるかどうかは微妙ですが...似ている方がいいですよね。
(2)頑健であること。つまり、損傷に強い。モデルの一部が損傷しても、全体としての
働きは保たれること。パソコンみたいに、少し壊れたから全部ダメ、みたいなことにはなりません。
(3)学習の結果、ネットワークが生成されること。はじめに神様が作らなくてもいいんです。人間に例えるなら、成長するということでしょうか。どんどん頭良くなる。
(4)「中枢」がないこと。上の二つとかぶるんですが、それぞれのユニットは他のユニットがどのように働いているかも知らないし、どこか一か所が指令を出すわけでもない。
どっかで見たような言葉を使えば、「創発」される。

みたいな漠然とした感じで捉えてました。
音読(もしくは失読、てゆーか言語)のトライアングルモデルなんかは有名ですよね。

そんなPDPモデルについて、本当に平易に、とても読みやすく分かりやすく、
その魅力を伝えてくれるのが本書です。
PDPモデルを自分のパラダイムとして使用するかしないかという次元ではなく、とても有益な示唆が得られると思います。もともとモデル自体がとても魅力的ですし。
ページ数も100ページほどで、数時間で一気に読み終えられます。

コネクショニストとか言うと、文系の私たちには取っ付きにくく、実際、甘利(1989)の
「神経回路網モデルとコネクショニズム」など読んだことありますが、
何もわからずひっかからず終わりました。
これをきっかけにキャンベルやエデルマンなんかも読めたらいいなと思います。

因子分析と主成分分析 

September 23 [Wed], 2009, 22:53
SPSSで因子分析しようとすると、手法の中に主成分分析というものがあります。
これ、実は、因子分析ではないのです。気をつけて、ということで。

因子分析とは、
 「予め因子数を決め、その因子内の内部整合性を高めていくための手法」であり、
主成分分析とは、
 「複数の変数間の相関をなるべく少数の合成変数(つまり因子)で説明する手法」です。

(主に探索的)因子分析は、何度も繰り返し使います。項目を削ったり、足したりして内部整合性を高めます。
それに対し、主成分分析は、基本的に一回やれば充分です。

因子分析は、因子数を決めて、作業に取り掛かるという点では、「仮定」が存在するはずです。
何せ、ある特定の因子数で事を進める理論的根拠はアプリオリには決定されていません。
どの因子数を用いても、その範囲内で内部整合性を高めていくことは可能です。
一方、主成分分析は、出力された結果が全てで、「どの因子数が一番当てはまりがいいか」を出力してくれます。

自前の理論があるかないか、が最も大きな違いといえましょう。他にも相違点はありますが。
二つの違いを分かりやすく説明してくれているものに狩野(2002)があります。
http://www.sigmath.es.osaka-u.ac.jp/~kano/research/seminar/30BSJ/behavior02.html
因子分析は因子分析で、確認的因子分析、探索的因子分析と大きく二つに分かれ、用途が異なりますが、
ここではトピックの範囲を越えるので触れません。

心理学の分野では基本的に理論が先にあるはずなので、なかなか主成分分析をする機会はないと思います。
ちなみに、主因子法は、因子分析のメジャーな手法です。混同しがちですのでご注意!

日本心理学会大会2009 

August 29 [Sat], 2009, 23:02
日心に行ってきました。
京都です。京都なので、メインは観光です。
遠くの学会は、イコール観光ですよね。

発表やシンポジウムはこれでもかってくらい聞きませんでしたので、レポートすることはありません。
何と言っても大会費払っていませんし。
大会に参加するのにも費用がかかるのは以前に書きました。
しかし、ある程度大きな学会だと参加費を払わなくてもばれないんですよね。
お金がない学生さんを、何故無料にしないのでしょう。未来を担う研究者たちなのに。
ちなみに日心は、学部生は3,000円なのですが、院生には一般料金が適用され、
臨時会員はなんと、14,000円です。何考えているのかわかりません。
かなりの憤りを覚えるとともに、このアホな現状を憂いざるを得ません。
学生は無料くらいに低価格にしませんか。
無駄な団扇や、バッグなどのグッズを作るくらいなら、ねぇ。

さて、そんな中、こんな記事が発表されてました。
・博士課程学生に「給与」年180万円 文科省概算要求へ
http://www.asahi.com/national/update/0828/TKY200908280090.html
タイトルそのままなのですが、早く、確実に、実現化してほしいものです。
しかし、2000人かー。どのくらいの人が対象になるのでしょうね。
取れなかったら取れなかったで、かなり悔しい思いをしそうです。

ちなみに、来月なのですが、2009年9月24日・25日の二日間、
第33回神経心理学会が東京ドームホテルで開催されます。
僕は発表などしませんが、関わったものがシンポジウムで話されます。
でも、近いうちに自分が論文にまとめる予定のものです。
面白いので、是非。

まとめとしては、
京都は良かったです。研究、がんばりましょう。
そして、早いところでは院試の季節ですね。頑張ってください。

現代心理学入門―進化と文化のクロスロード 

June 13 [Sat], 2009, 7:33


現代心理学入門―進化と文化のクロスロード(川島書店) ★★★☆☆
西本 武彦 (著), 福澤 一吉 (著), 越川 房子 (著), 大藪 泰 (著)

今回の紹介は簡単です。
早稲田大学文学研究科、心理学コースを受験する方は買ってください。
受験しようと思っている方はわかるとおり、上に掲げられている著者は
みんな文学部の先生です。
中身は、章ごとにさらに多くのまとまりのない分担執筆となっているのですが、
多くは文学部の先生で、足りないところは他の人、という構成となっています。

特に、外部から受験する人にはかなり役立つのではないのでしょうか。
サイズが大きく、値段もするので、あまり買え買えとは言えませんが。

巻末にグロサッリーがついており、これがウリらしいです。
たしかに、かなり量はあります。心理学辞典(有斐閣)に載っていない言葉も
載せてあったりします。説明の中身にばらつきがありますが、使えないことは
ないでしょう。用語集として全て覚えてみるのもいいでしょう。
少なくとも500円の用語集よりは数十倍の価値があります。
用語の対訳も全て載っています。なぜか向精神薬特集もあります。

肝心の中身ですが、どの本でも同じように、章(著者)によってばらつきがあります。
ただ、心理学全般を網羅しているので、読んでもそこまでの損はないのでは、
と思ったりしますが、僕が薦めて彼らに印税が入るのもなんか悔しい気がします。
出版されたばかりなので、内容的にも新しいです。

学会と雑誌と論文の話 

May 27 [Wed], 2009, 0:20
学会って雑誌って何?みたいな話をしようと思います。

学会とは、同じ分野の研究をしている人たちで作った会のこと。
勉強会や研究会のちゃんとしたバージョンであるにすぎない。
ちゃんとしたバージョンだから会則とか会計とかがしっかりしています。
まあ、ただそれだけのことで、ナントカ学会みたいなものを作るのには
制限はないはずです。だから似たような学会がいくつもできるハメになる。

学会が、その活動の記念に出しているのが雑誌。英語で言うとジャーナル。
日本心理学会が出しているのは心理学研究。
日本神経心理学会が出しているのは神経心理学。という具合。
雑誌には、論文が載っています。論文じゃないのも載るけれど。
刊行のタイミングは雑誌によって違っていますよね、当然ながら。

雑誌に載る投稿論文とは別の活動として、大会発表みたいなのもあります。
どこかにみんなで集まって、こんな研究してるんですけどわーわー。
みたいなことを言い合う。シンポジウムとかあったりもする。
いわゆる、今週末は学会があってちょっと…みたいな時はこれ。

学会と言ったら雑誌、雑誌と言ったら論文なんですが、
論文を雑誌に載せるためには査読と言って、審査みたいなものが必要です。
必要ではない雑誌もあるんですが、だいたいはあります。
当たり前の話ですが、しっかりとした雑誌ほど、その基準が厳しくなります。
だから投稿しては突っ返されて、というのを何回も繰り返してやっと載る、
みたいな感じです。論文をパブリッシュするのは大変なんですね。

論文を投稿するためにはその学会の会員にならなければいけない、
つまりお金を納めなきゃいけない、みたいなルールもあって。
ひどい世の中です。お金払って載せてもらうみたいで気持ちが悪い。
そして読みもしない雑誌が送りつけられてくる。はっきりいって要らない。
専門なんて案外狭いものなので、いくら同じような研究だからって、
雑誌の中身まるごと読むなんて興味も暇ももない。

とりあえず、学校の図書館にある雑誌類はすべて機関誌だけ購読する
会員みたいなのになってお金を払い続けているおかげなんですよ。
論文は、書くのも読むのもお金がかかる。ほんと嫌んなる。

しかし、なんといっても、投稿した論文の本数自分のが業績になるので、
いつまでも愚痴っているわけにはいかないのです。
当然内容が大事なんですが、そんな細かいとこよりも本数がわかりやすい。
らしいので、学会費をせこせこ払ってでも論文は書かねばならぬのです。

超簡単・心理統計の基礎E 分散分析おまけ 

April 19 [Sun], 2009, 17:37
分散分析って平均値の比較なのに、なぜ分散分析というのでしょうか?

それは!

分散が重要だから。は、間違ってないけれど、説明不足。

群間の平均値差を、誤差の分散で説明できるか否かを判断の基準にするからです。

群間の差とは、比べたい群同士の差です。
たとえば、1要因3水準あれば、群はとりあえず3つありますね。
紅組、白組、黒組の成績の差を比べたい、みたいな。
それぞれの群にサンプルが複数いますんで、平均値も出ますし、分散も出ます。
分散とは、データのばらつき具合を言うのでした。

3群の平均値が違う。
しかし、これが偶然ばらついたのか、そうじゃないのかを判断したいわけです。
偶然のばらつきって、誤差ですよね。
その誤差のばらつき具合に、群間の平均値のばらつき(つまり群間の差)が
含まれてしまうのか、それともそんなんじゃ説明できないくらいに、群間の差が大きいのか。

これを見ているわけですよ。分散分析。

論文の教室 

April 16 [Thu], 2009, 21:01


論文の教室―レポートから卒論まで (NHKブックス)
戸田山 和久

大学に入ったらとりあえずこれを読め。
と言えるくらいのかなりのお役立ち本です。

レポートの書き方が解る。点数が上がる。単位が貰える。
という実用的な面を超えて必要なことがしっかり書かれています。

文の書き方とはつまり、考え方。
そして考えたことを他者に伝える力。
社会に出ても、出なくても必要になる力です。

レポート・論文の書き方本というものはたくさんありますが、
この本が一番らしいです(筆者曰く)。
ただ、そんな主張も納得できるような内容となっています。

まず、とっても読みやすい。ので、とてもわかりやすい。
そして何よりも現実的に使いやすいことが書かれています。
宙に浮いた話ではないため、読後にはかなり「論文が書ける」
気になるでしょう。

レポート・論文なんて、何も教えてもらわなくても書けるよ。
と思う方も是非一読してみましょう。得るところは必ずあります。
いくら考えが面白くても人に伝えられなければ意味がありません。

研究者を目指す学生なら、「必読」の本じゃないでしょうか。

そもそも大学院とは 

March 17 [Tue], 2009, 11:02
いまさらなのですが、大学院に行きたいと漠然と思うのだけど、
大学院ってどんなところなの?という疑問に答えておきましょう。

大学院とは、“研究する場所”です。
研究とは、勉強ではありません。
今まで蓄積されてきた知見をもとに、“新しい”考えを主張することが研究です。
もちろん新しいだけではだめで、それなりの妥当性が必要です。
勉強は過去に誰かが研究したことを、知るだけ。
研究は、これから未来の人たちが勉強するような知識を作る仕事です。
なので、大学院では、もちろん勉強もしますが、研究をしなければなりません。

学部では卒論というものを4年間の記念に書きます。
一応卒論でも新しいことを言わないとなりません。
誰かが既にやったことを繰り返すことは、それほど価値がありません。

簡単に言えば、卒論を書いている最中の生活がずっと続くのが大学院です。
しかし、行こうかどうか迷っている人は卒論さえまだ体験していない可能性が
ありますね。

ゼミというものが大学や学部によってあったりなかったりするでしょうが、
院ではひとりの担当教授にくっついて、あれこれします。
通常の授業もありますが、おそらく学部ほど多くはありませんし、
重要視されません。大事なのは、ゼミでの研究でしょう。
ゼミでの研究が、自分の修論としてそのうちに形になります。
ただ、ゼミでの内容は、研究室次第です。
ひたすら英語論文の和訳・輪読を続けているゼミもあれば、毎週自分の
研究について発表があるゼミもあります。
研究についても、研究室で割り与えられる(つまり、オリジナルではない)
ものもあれば、ほとんど自分で一から、という場合もあるでしょう。

ちなみに、前者の方が、圧倒的に楽です。自分で一から始めることは、
かなりしんどいです。が、それが研究の醍醐味でもあります。
修士のみで一般企業に就職するのならば、修論自体は何の役にも
立たないので、楽なことに越したことはありません。
臨床心理士を目指すために大学院を経由する場合は、そもそもの興味が
研究にないでしょうから、研究室もそういう雰囲気でしょうね。


大学院生活についてまとめると、担当教授しだい、です。
通常の授業に関しては、あまり問題はないでしょう。
また、心理学系の院ならばバイトや遊ぶ時間がない、ということも無いでしょう。
臨床心理士を目指す人たちについては、申し訳ないのですが全然わかりません。
大差ないと思いますけど。

超簡単・心理統計の基礎D 分散分析 

February 18 [Wed], 2009, 17:52
D三群以上の平均値の比較(分散分析)

三群以上の平均値の差の比較の検定には分散分析を用います。
たとえば、指導法A,B,Cの違いを、A群とB群とC群の英語の成績を用いて検定するような場合です。
または、指導法A,Bの違いを、A群とB群の英語と国語の成績を用いて検定したいような場合です。
ちなみにここでは、「組」という要因の影響は抜いて考えています。
前者を1要因3水準、後者を2要因2水準の分散分析といいます。なんじゃこりゃ。

用語の説明に入る前に、ひとつ重要なことを述べておきます。
分散分析は、要因の効果があるか、ないかを検定する統計法です。とりあえず覚えていてください。

・要因と水準
要因とは、従属変数に与える影響(独立変数)の種類のことです。
前者の例の場合、独立変数は「指導法」のみだから1で、後者の例の場合は、
独立変数は「指導法」と「教科」だから2になります。
水準とは、一つの要因(独立変数)における種類の数です。
前者は、三種類の指導法があったので、3です。後者では、指導法はA,B2つ、教科は英語と国語の2つ。

分散分析においても対応の有無が問題になり、被験者内要因か被験者間要因であるかを考慮します。
同じ被験者が異なる水準のデータにも登場するならば被験者内要因です。
前者の例を見てみると、指導法の水準3つを3つの群に割り振っています。
ということは、3つの水準のデータは、異なる被験者から出ていることになるので、これは被験者間です。
後者の例では、指導法はA群とB群で異なる被験者なので、被験者間要因。
一方、教科はA群内、B群内で共通の被験者が出すものなので、被験者内要因です。
ひとつの実験計画に被験者内要因と被験者間要因が含まれている時には混合計画と言います。

だから前者は被験者間要因で1×3の分散分析、後者は混合計画で2×2分散分析とか言います。

・主効果と交互作用
分散分析にはt検定にない新たな問題が出てきます。それが、主効果と交互作用という問題です。
主効果とは要因単独の効果で、交互作用とは要因が二つ以上絡み合った効果を指します。

とりあえず先程の、2×2の分散分析の例で考えてみましょう。
指導法の主効果、というのは指導法Aを導入したA群の成績の方がB群よりも
英語と国語の両方において高く(低く)なることで示されます。

一方、教科の主効果とは、A群においてもB群においても、英語の方が国語の点数よりも
高い(低い)ようなことを言います。
有意な教科の主効果が見られた時に言えることは、どちらかのテストが簡単だった、ということです。

さて、次に交互作用ですが、英語の成績に関しては、A群はB群よりも高かったのだけれど、
国語の方では変わらなかった、いや、逆にB組より低かった。なんて場合に登場します。
こんな時には、交互作用が有意になります。
そして、指導法Aは英語にのみ効果が見られた、という結論が出てきます。

さて、主効果も交互作用も有意になったときは、どう考えればいいでしょうか?
そんな時は、主効果が有意だったとしても主効果についての検討は避けろ、とよく言われます。
つまり、片方の水準の効果がもう一方のダメだった方の水準の効果をカバーして
全体としての主効果を有意にした可能性があるために、
ほんとに主効果があったのかどうかがわからないのです。
交互作用を抜きにして要因の効果に検討したいときは、単純主効果の分析というものを行います。
単純主効果とは、特定の水準における、主効果の分析です(=1要因の分散分析です)。

・多重比較
交互作用が出た時、多重比較というものを行います。
また、交互作用が出なくても、仮説検証に必要であれば、多重比較を行います。
多重比較とは、全体の効果ではなく、どことどこの間に差があるかを細かく見るものです。
なので、上に挙げたような単純主効果の分析というやつも、多重比較で行えます。
一般に多重比較という言葉は、3水準以上ある要因について、どの水準とどの水準の間に
効果があるのかを調べる時に使うようです。以下に具体例を見てみましょう。

最初の方の1要因3水準の例を見てみます。
要因の主効果が有意になったということは、A,B,C群に差がないとは統計的に言えない、
ということを意味します。とっても回りくどいのです。
では、具体的に、どことどこに差があったのか。これを多重比較で調べます。
多重比較とは、ある方法を用いて、t検定を繰り返す統計法です。
t検定を単純に繰り返すことができないことについては、他で解説します。
このケースではAとB、AとC、BとC、と3回比較をします。これが比較いっぱい多重比較。

二番目の2要因2水準の例が2つの要因の主効果、交互作用ともに有意になったとしましょう。
交互作用が有意になったので、考察において「指導法に効果があった」とそのまま結論することは
できません。交互作用とは、主効果ちょっと待った作用、という感じです。ここで多重比較を行います。
普通は、A1とA2の比較、およびB1とB2の比較をします。
ただし、理論的にはA1とA2、A1とB1、A2とB2、B1とB2という全ての対の比較が可能です。
(A1=指導法A・教科1…と考えてください)
今回挙げた例(2水準の場合)では、多重比較=単純主効果の分析となります。

主効果や交互作用が有意でなくとも、分析の方法によっては多重比較でどこかが有意になることはあり得ます。
結局、統計においては、「何をすればいいのか」ではなく、仮説検証において、
「何の効果が見たいか」ということが大事なのです。

超簡単・心理統計の基礎C t検定 

February 18 [Wed], 2009, 17:47
C二群の平均値の比較(t検定)

二群の平均値の比較にはt検定を用います。
t検定は、統計量がt分布に従うことを利用した統計法です。
なので、t分布って何?ということを知らなければt検定もわからないのですが、
知っていても知らなくても別に困らないので、まず、t検定の使い方のみを説明します。

t検定の考え方は、統計的仮説検定の項で説明したとおりです。
対象のデータにおいて、二つの群の平均値に差が無いと仮定すると(帰無仮説)、
なんかおかしいんじゃない?という結果がでたら、帰無仮説を棄却し、
こりゃ差が無いとはいいづらいねー、となります。

たとえば、指導法の違いによってA組とB組の英語の平均点を較べる時などに用います。
さて、t検定を使うときに、いくつか設定しなければならないことがあります。
つまり、有意差を決定するときに、考慮しなければならないことです。
実際に何がどうなるのかは、統計ソフトに任せて、用語だけ知っておきましょう。

・対応の有無
対応と、言うのは、二つの群におけるサンプルの対応ということです。
つまりは、二つのデータが関係しているかしていないか、です。

A組とB組の点数を比較するときは、関係ない人たちなので、対応はありません。
では、A組とB組が全員双子の片割れずつを集めたクラスだとしたら、どうでしょうか。
そうすると、A組にもB組にもかなり関係がある人たちがそれぞれ集められているので、対応があります。
もう少し現実的な対応があるケースは、A組内での英語と国語の点数を比較する場合です。
この場合は、同じ人たちがデータの出所なので、対応があることになります。

対応の有無は、検定力というものに関係があります。検定力とは、有意な差を見出す力です。
対応のある群を比較した方が、余計な誤差が入りにくいので、検定力が高くなります。
余計な誤差というのは、個人差というものです。
同じ人の成績を比較する時には個人差の要因は省かれるので、その分、信頼できる推定ができます。
そうすると、もう少し基準甘めでもいいんじゃない?ということになり、有意差が出やすくなるわけです。

・片側と両側
差の検定をするときには、少なくとも心理学では、何か仮説があったはずです。
つまり、「新しい指導法は古い指導法よりも効果的である」みたいな。
そして新しい指導法をA組に、古い指導法をB組に、という実験計画を立てるわけです。

しかし実際、t検定で検討するのは、差があるかどうか、です。
差があるといった場合は、用意した仮説とは逆に、
「古い指導法は新しい指導法よりも効果的である」場合も、差がある、となってしまうのです。
それは困る。ので、

差があることに加えて、「差の方向」をも決定しているときには、「片側検定」を用います。
そして、漠然と「差がある」といった場合には「両側検定」を用います。
片側よりも両側の方が確率が半分であるため、有意差がその分出にくくなるわけです。
結構これはクリティカルな問題なので、検定の際は間違えないようにしましょう。
心理学実験においては大体において、しっかりとした仮説があるため、片側検定を使用します。
というか、両側検定を用いるような仮説を立ててはいかんぜよ。


D分散分析
P R
プロフィール
  • ニックネーム:chrone
読者になる
“心理学系大学院へ行こう”では主に大学院入試対策向けの参考書や受験に役立つ知識を紹介しています。 大学院入試以外にも、心理学系のコラムや、心理統計の基礎についての記事もあります。卒論対策にも一読ください。

このサイトはリンクフリーです。相互リンクも募集しております。
現在、WEBサイト版”心理学系大学院へ行こう”を試験運用中です。
感想をお聞かせください。


This site is powered by blackcatstyle. 
blackcatstyle 管理人の趣味サイトです。
こちらもどうぞ
にほんブログ村 科学ブログへ