川と、ノリオ。 

November 19 [Mon], 2012, 20:05
「やぁ、今日はどうしたんだい。随分と動きにくそうな格好をしているじゃないか。」

川が語りかける。

別に気がふれたわけではない。昔からこの川は私に語りかける。
私の気持ちをくみ取るように、あるいは私の気持ちを見透かして突き放すように。

「今日は泳いでいかないのかい。いい陽気だよ、さぁ靴を脱いで。」

言われるがままに、私は靴を脱いだ。
スーツの裾をまくり、上着を律義にたたんで置いた。

携帯を濡らすとまずかろうと思い一瞬振り返ったが、上着の上に置きに戻ることはしなかった。

代わりに、まるで水切りでもするように勢いよく川に投げ込んだ。
2、3度跳ねて沈む。小さいころからまるで上達していなかった。

「秘書からの連絡など、もはや気にすることもない。」

そう、私にはもうどうでもよいことだった。
先ほどそこに置いてきた上着についた輝かしいバッジも、先ほどの携帯と同じ運命をたどらせてやろうかと思った。
わざわざ戻るのは億劫なのでやめたが。

「馬鹿な話だが、私には止められなかったよ。」
「あの日、誓ったのになぁ・・・」

後悔と懺悔。
言い訳がましくとも、川は聞いてくれる。
ただ聞くだけではない、受け入れてくれる。

「明日、戦争が始まる。私には止められなかったよ。」

「君は悪くないじゃないか。」

私は、真冬の水面に横たわる。

すぐに感覚が消える。

微かな視力が捕まえたもの、それは、ひび割れたビー玉だった。











50年後の川とノリオ。
とりあえず始まります。



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