NWOBHC(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ハンドクラップ)

October 31 [Fri], 2014, 7:00

近ごろ何かと話題になっている「手拍子レッスン」の体験フェアに行ってきた。

場所は帰宅ラッシュでごった返す西武池袋線・池袋駅の東口改札前。大勢の人が行き来するフロアのど真ん中、畳一畳ほどのこじんまりとした白いブースがある。そこが体験フェアの会場だ。ブースといっても、それは運動会などによく使われるパイプテントの下に机とモニター、パイプ椅子を並べただけの非常に簡素なものだ。今は誰も椅子には座っていない。

ブースの周りには男性のスタッフが三人ほど居る。レッスンは無料だと必死に声かけをしているが、通行人にはことごとく無視されているようだ。少し遠くからその様子を窺っていると、ひとりのスタッフと目が合い手招きをされたので覚悟を決めてブースまで行く。間近で見ると予想以上に狭い。促され、恐る恐るパイプ椅子に座る。

程なくして、右手から大柄な男性が現れた。有名タレントの伊集院光さんだ。黄色いキャンペーンTシャツを着て、額にはびっしり汗をかいている。伊集院さんは手拍子レッスン協会のイメージキャラクターを務めているのだが、何と今回のフェアには特別講師として参加。心なしかお疲れの様子だが、きっと今日は何人もの人を相手にしてきたのだろう。

「それではレッスンを始めましょう」
挨拶もなしに、いきなりモニターの電源を入れる伊集院さん。ブーンという鈍い音がして、ブラウン管がすぐに明るくなった。画面を凝視すると、そこには「英国式の手拍子」という文字が大きく映し出されている。

「今回は体験フェアなので、一番簡単な手拍子をやってみましょう」
伊集院さんがそういうと、画面の表示がすぐに切り替わりレッスンの説明文が現れた。



一拍目:非常に短め
二拍目:非常に長めに余韻を残しながら

これを4セット


初歩の初歩ということだが、これが自分にはかなり難しい。特に、余韻を残すコツがよく分からないのだ。何度も手拍子を繰り返してみるが、どうもしっくりこない。必死で叩けば叩くほど正解からは遠ざかっていくように思えるのだが、自分ではどうすることもできない。

ふと周りを見渡すと、溢れんばかりに居た通行人の姿が今はどこにも見当たらない。いつの間にかスタッフも姿を消し、今ここに居るのは自分と伊集院さんだけだ。だだっ広いフロアに自分のぎこちない手拍子だけが響き、かなり気まずい。伊集院さんの顔は明らかに強張っている。

僕は待ち人

September 30 [Tue], 2014, 6:53

夕闇の迫る江戸。とある横町の宿屋の前に居る。今は客を乗せたトラックの到着を待ちわびているところだ。傍らには顔見知りの町娘たち。格子柄の着物がよく似合う器量良しの二人だ。一人では間が持たないと、悪いとは思いつつ付き添ってもらったのだ。だが皆で居ても会話もせず、トラックが来る方角をずっと見ているばかりでとても退屈だ。

実のところ自分は宿屋とは全く関係がなく、やって来る人物がどんな者かさえも知らない。しかし、ここで待たねばならない必要性があるように何故だか思えている。


不意に、通りの向こうから空中を漂う奇妙な物体が現れた。ひらひらと舞いながら近付いてくるそれは、三枚の原稿用紙だった。通常の数倍はあろうかという大判の一枚に、その半分程のサイズの二枚が重なりあっている。形状は大きく異なるが、一目見た瞬間にそれこそが到着を待ち続けたトラックだと確信した。

原稿用紙は宿屋の前まで来ると、宙に浮いたままピタリと静止した。その光景に興奮し、思わず息を呑む。横に目をやると、町娘たちの顔も上気している。それぞれの用紙には唄の題名と歌詞が書かれているようだ。重なり合っていてはっきりとは読めないが、一番大きな用紙に書かれた題名が「器置ラプソディ」であることが分かる。ふと、脳裏に笠置シヅ子の顔が浮かんだ。だが彼女はラプソディなど歌ってはいないはずだ。

原稿用紙から誰かが降りてくる気配がする。目には見えないが確かに存在を感じるのだ。それは宿屋の玄関を音もなく通り抜け、忽ち消え去った。自分は思わぬ展開に唖然とし、ただただ薄暗い玄関を凝視するのみだった。


一体どれくらいの時間が過ぎただろう。ふと我に返ると、もうすっかり夜だ。横町のあちこちでは提灯が灯り、町娘たちもいつの間にか居なくなっている。

玄関先から物音がした。どうやら誰かが出てくるようだ。さては先程の客かと身構える中、ガラリと戸が開く。だがそこから現れたのは身長が1メートルにも満たないとても小柄な人物だ。黒いヒジャーブを深々と被り、俯いたままの姿には何かしら不安をかきたてるものがある。こちらの存在に気付いたのか、その者は少し顔を上げた。布の隙間から見えたその顔は岸田劉生の描いた「麗子」によく似ている。だが男女の区別はつかない。




笠置シヅ子/買物ブギー(1950)

(訳詞) T.REX/ザ・ソウル・オブ・マイ・スーツ The Soul Of My Suit

September 16 [Tue], 2014, 11:58

僕のスーツともいえる魂を きみは台無しにしてしまったね
きみは愛を根っこから 引き抜いてしまったんだ
でも僕は そこまでひどい奴じゃないよ 本当さ

ルーン文字で綴られた旋律に きみはうっとりしていたのに
僕の愛するものすべてに 今では不格好なグローブをはめてしまった
でもきみは そんなに悪い娘じゃないはずさ 本当は


揺さぶって 転ばせて さ迷わせればいい
揺さぶって 転ばせてしまえばいいさ

揺さぶって 転ばせて さ迷わせればいい
揺さぶって 転ばせてしまえばいいさ
きみが本当に大好きだよ

きみが大好きだよ
きみが大好きだよ



ラストアルバムとなった「地下世界のダンディ」(Dandy In The Underworld:1977)に収録。
シングルとしてもリリースされたが、最高位41位とチャート的には振るわず。
個人的に大好きな曲だ。
邦題は「心はいつもロックンロール」。




(訳詞) T.REX/セレブレイト・サマー Celebrate Summer

August 23 [Sat], 2014, 11:17

ねえ君よ どうか踊ってはくれないか
ねえ君よ 今すぐロマンスが欲しくはないかい
ねえ君よ どうかきっかけを僕にくれないか
そしてこの夏を一緒に祝い 楽しもう

ひな鳥みたいな君 どこでそのトリックを学んだんだい
気付いてるのかい 君はロックンロールを手に入れたんだ
ねえかわいいパンク くだらないことは全部忘れてしまおう
そしてこの夏を一緒に祝い 楽しむんだ

僕らを決してがっかりさせたりはしない
夏とはそういうもの 今がまさにその時なんだ
1977年の夏は まるで天国にいるようさ


ねえ君よ どうか踊ってはくれないか
ねえ君よ 今すぐロマンスが欲しくはないかい
ねえ君よ どうかそうなってほしいんだ
この夏を僕と一緒に祝い 楽しんでくれるひとに

僕らを決してがっかりさせたりはしない
夏とはそういうもの 今がまさにその時なんだ
1977年の夏は まるで天国にいるようさ



1977年8月にリリースされた、T.REX最後のシングル曲。
「SOLID GOLD EASY ACTION」ばりのスピード感溢れるナンバーで、特に新たに参加したベーシストであるハービー・フラワーズ(初期のデビッド・ボウイやルー・リード「ワイルドサイドを歩け」への参加が有名)のプレイが光る。

間奏で聴かれるほとんどノイズに近いギターや、歌詞に登場する「Little Punk」等、当時のパンクムーブメントを意識したようなところも垣間見え興味深い。
ファンの間でも非常に人気の高い一曲だが、当時チャートインは果たせなかった。

当時マークが司会を務めていた音楽番組「MARC」でも度々演奏されたが、この曲は同番組のテーマソングである「SING ME A SONG」にメロディが酷似している。
この「SING ME A SONG」はまったりとしたメロウな仕上がりだが、それをシングル用にアップテンポへと改作したものが「CELEBRATE SUMMER」なのではないかと個人的には思っている。



T.Rex - Celebrate Summer (1977) (with lyrics)


メモリーリセッタ

June 22 [Sun], 2014, 8:23

平日の午後。自分は、とあるゲームショップで働いている。奥で作業をしていたが、お客さんの呼ぶ声がしたので慌ててカウンターに向かう。

声の主は大人の男性だった。がっちりした体格にグレーのスーツが良く似合う、落ち着いた雰囲気の好ましい男性だ。きりっとした口元には微笑みを浮かべている。どこかで見かけたことがあるような気もするが、よく思い出せない。少し戸惑っていると、遅れて戻ってきた同僚のK君が小さな声でそっと教えてくれた。「…ほら、この人グループTの山口さんですよ」

そういえば、朝の情報番組などで何度かその顔を見かけた気がする。自分は芸能人に詳しくないが、かなりの有名人だったように思う。何故こんな小さな店にやってきたのだろう。

「あの、そこに置いてあるゲーム機を僕に売ってもらえませんか?」
山口さんは、カウンターの作業台にぽつんと置いてあるプレイステーション2本体を指差しながらそう言った。

その本体はいわゆる改造品で、マニア向けといってもいい代物だ。初期型のSCPH-10000がベースだが、放熱対策で天板がアルミニウム製に交換され、銀と黒のツートンカラーに外観が変わっている。また、アウトドアでもプレイ出来るように充電池を内蔵。さらに3.2GBのハードディスクも搭載している。誰もが興味をそそられる仕様だが、問題が一つ。ハードディスクの動作が非常に不安定なのだ。その中にある仮想メモリーカードの記録が勝手に消去されたり、頻繁にフリーズしたりする症状の改善がままならない。

「お客様、恐れ入りますがこちらの本体はお売りすることが出来ません。内蔵メモリーが不安定で、セーブデータが消えてしまう可能性があるのです」
そういって、自分は深々と頭を下げた。さすがに黙って故障品を売るわけにはいかない。ここはお詫びしてお帰りいただくしかない。ところが、それを聞いても山口さんは店から立ち去ろうとはしなかった。

「壊れていてもかまいません。どうしてもその本体が必要なんです。ちょっと込み入った事情がありまして…」
穏やかだった山口さんの表情が急に険しくなった。

「分かりました。それで直るかどうかは何とも言えませんが、一度OSを再インストールしてみます」
正直にいって、修理は不可能に思う。だが、山口さんの困った顔を見て、ついそのような事を口走ってしまう。

「助かります。それではここで待たせてもらいます」
再び笑みを浮かべる山口さん。

カウンター越しにその熱い視線を感じながら、不安な気持ちで作業を開始した。

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