スロー 

May 23 [Fri], 2008, 22:20
君が、チョコレートを口に放り込む瞬間は、スローモーションに見えた。

「あー、だるい」
彼女はあくびをしながら、またもうひとつチョコレートを拾った。
僕と彼女はぼーっと課題の写生をしていた。
いや、写生をしながらぼーっとしていた、と言ったほうが正しいと思う。
「なあなあ、空、青。」
僕が言った。なぜなら、彼女が描く空は真緑だ。
「この、空、わたしの。」
僕らはいつもこんなかんじだ。こんな会話しかできないのだ。
「あ、そうだ、ビーンズチョコ全部無くなったんだった、買っとかなきゃ」
「虫歯治す気ゼロだろ?」
「うん、痛いよりも甘いだよ」
彼女は異常なほどの甘党だ。彼女の周りにはすでに3袋のチョコの残骸。
「わたしの誕生花、マーガレットなのよ。」
「ふうん」
「・・・うっ」
小さく叫んだあと、彼女は全くしゃべらなくなった。

ベシャベシャッ

さっき緑で塗りつぶした空が知らぬ間に黒くなっていた。


彼女とバイバイしてから、僕は部屋で雑誌を読みふけっていた。
僕は彼女がうらやましい。
自由で、きれいで、不思議で、長いスカートで、甘くて、孤立していた。
孤立していたせいで、彼女はいつも僕のそばにいた。
バイバイした後はいつも、寂しいから電話しなよ、なんて言う。
その割、自分から電話してくる。寂しい、なんて言って。

プルルルルル

いつもよりも遅めで、寂しいコールが来た。
「はい、もしもし、どうかした?」
「ふふふ、むふ、酔ってます、焼酎です」
寂しい様子ではないようだ。珍しいことだ。一人で飲んでいるのだろうか。
「ねえ、今からウチおいでよ、えっと、デジカメでも持ってきて、」
は?全く意味が分からない。彼女の家には山ほど故障したと思われていたデジカメがあるはずだ。実際故障はしていないはずの。
「デジカメで、わたしのこと、撮ってよ」
は?何がしたいのだろう。
「・・・ズズッ、はやくおいでよ」
鼻をすする音が聞こえる。彼女は花粉症だった。



訳が分からなかったから、僕は急いで彼女の家の合鍵を鍵穴に入れた。
「おじゃまします」



「・・・」


音が無い。訳がわからないから中に入った。


チャポン。

水の音だ。お風呂場か。
・・・入浴中だろうか。おじゃまします。


彼女は、長いスカートで、きれいなマーガレットと甘いビーンズチョコを湯船に浮かべて、浮かんでいた。なんとも不思議な姿だ。

訳がわからないから、デジカメをかまえた。


僕が、シャッターを押す瞬間は、スローモーションに見えるかな。

いつもみたいなことでした 

January 27 [Sun], 2008, 15:22
午後9時。
オフィスは真っ暗だったせいか、外に出てきて街頭が目に痛い。
今日も仕事を中途半端にして帰ることにした。怒られてもいいから、ストレスなんてもうためたくない。
肩はバキバキ、目はシバシバ、老人か、私は。

いつもの居酒屋に到着する。

いつもの奥から3番目のカウンターに腰をかける。
いつの間にか習慣になった。毎日ここに私が座っているせいで、ここに他の人が座る姿は見なくなった。
「ビールをジョッキで・・・・・あと・・・えっと、えだまめください」
「ビールと枝豆ですね?はい、ありがとうございまーぅす!」「ありがとうございまーぅす!」
全店員が声を揃えた。ここの店員はどの店員も、威勢が良すぎるこの返事である。
「ありがとうございまーぅす!」・・・・って、絶対どこか間違っている。
たまにレジに立っている店長や、たまにカウンターのど真ん中に座っている金持ちそうなオーナーがそういうふうに指導しているんだろう。絶対どこか間違っている。

さっきの威勢のいい女性店員は、ビールサーバーに駆け寄りジョッキにビールを注ぐ。
枝豆はもう先に茹でてあったらしく、ビールと同時に出てきた。
「はい、こちらビールのジョッキと、枝豆になりまーぅす!ありがとうございまーぅす!」
私はなんとなく笑って会釈してみた。

ビールを一口飲んだ。あー、開放される。
肩はバキバキじゃないし、目もシバシバしない。私は老人ではない。
そこに、
ぷるるるるるるぷるるるぷるるぷる。電話が鳴りだした。
着信音12だ。着信音12に設定している人たちは、私の会社の女性社員だ。
さらに細かく言うと、いつも私を頼って仕事とか恋愛とかの相談をする、なんかふわふわしたような、うざい感じの人たちである。うわぁ、無視したい。
どうせまたどうでもいいことだろう、疲れるからやめて欲しい。着信音12が鳴ること自体がストレス。

一口枝豆を放り込んだ、そのとき
「お嬢さん」
声から推察できたが、ジェントルマンふうの老人だった。老人というか柔らかい感じのお爺さんだった。
「お嬢さん、知ってるか?」
柔らかい感じの笑顔で言った。
「おじさんのビールよりも、お嬢さんのビールのほうが5倍も10倍も格段においしい」
・・・・・・・・?どういう意味でしょうか。
全く理解できなかった。私は酔っていた。
「どうして?」
つい敬語じゃない言葉で返してしまった。私は酔っていた。
「おじさんのビール、飲んでごらん」
おじさんじゃなく明らかにお爺さんのビールを少し飲んだ。
「・・・・くっ・・・いや、別に私のと変わらないですよ。・・・・ふふっ」
あまりにも変わらなかったからつい噴き出してしまった。
「うーん」と言うとお爺さんは私のジョッキを取って飲んだ。許可もなく。
「どうですか?変わらないでしょう?」
「・・・・変わらないな」
・・・・なんだよ、初めの持論は何を根拠に言っていたんだよ。
「でも、私みたいな仕事もしてないおじさんのビールよりも、疲れているお嬢さんのビールのほうが格段においしい」

今日一日の疲れはビールのうまさに比例する。

わたしはまたビールを口にした。

物色のいろいろのいろは。 

January 26 [Sat], 2008, 18:30
はじめまして。
というかやぷろぐで書くのは久々です。

わたしはこの日記を使って小説を書こうと思っています。
きっかけは、特にありません。
英検の受験勉強中にはたと
「あ、小説を書いてみよう」
というかなり強引なノリでした。

もちろん小説なんて書いた経験はないです。
今人気の携帯小説なんてしゃれたものでもないんです。
人が病気で死ぬとか、激しい恋愛とか、そういうんじゃないってこと。
まだ書いていないので面白いかどうかもわかりません。
読む人がいなくたってかまいません。
ともかく小説を書きます。それだけです。

そして、小説を書こうと思ったもうひとつの理由。

小説を書くことによって自分の人生を変えてみようと思ったのです。
P R
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