回想5 

February 24 [Thu], 2005, 21:24
梨紅は、自分の腕の中にいる瑠羽と、一貴にごめん、とささやいた。
瑠羽はなにもいわなかった。
一貴はじっと、梨紅をみていた。
梨紅は思わず苦笑をもらした。
なにもいってやしない、だからわかっていないはずの二人には、
苦痛と同時に、自分の気持ちが通じてしまっているらしい。

自分の味わった絶望を。

瑠羽は視線を何度か梨紅と一貴に交互にやって言葉を捜している。
だけど、いえないで。
言葉をさがしては、自分の唇を無意識に何度も舐めて。

だけど、やはりいえないでいた。

一貴はまったく、と呟くとそれだけをいって、二人から離れ、
断りもなく、梨紅のベッドに腰を下ろした。


「で?」
沈黙を破ったのは、一貴で。
「なにがあった?」
一貴はそういって、梨紅に視線をむけたまま、気安く言った。

回想4 

February 20 [Sun], 2005, 22:38
精神感応。
それは、このOZでも、現在は梨紅たった一人しか持ち合わせていない能力だった。

相手の考えてることを読みとったり、言葉を発することなく自分の考えを相手の中に送ることができるその能力のせいで、今、瑠羽は、梨紅の中の絶望と同じ
痛みを、無差別に与えられているのだ。

「梨紅・・・・瑠羽の気が狂う前にやめとけよ」

影響を受けているのは、瑠羽だけではなく、そのいつもにはない眉間の皺から
一貴にもしわ寄せが行っていることは明白だった。

そう、梨紅が望めば・・・たやすく人の気を狂わせることができる。
彼女の能力はそれだけではなかったけれど。

自分の腕の中で泣く瑠羽は、苦痛に眉をひそめている。
「・・・ごめん、瑠羽・・・ちょっとまって・・・」
梨紅はそんな彼女をみて、不意に、思い出し、自分の涙を拭いた。
そして、そっと呟く。
「・・・・悲しくない」

それはまるで、呪文のようだった。





「・・・っ」

瑠羽は自分の頭の中に響いていた警鐘のような痛みが瞬時に消えていくのを感じだ。
それは、梨紅が、痛みを持つことをやめたことを意味し、
そして、梨紅自身が自分の思考を強制的にシャットアウトしたことを意味していた。
安堵のあまり、はあ、と、瑠羽は大きな息をついた。
横を見れば、今まで自分の額を押さえて眉間の皺を濃くしていた一貴も
同じように、肩で大きく息をついているのが見えた。

「もう、大丈夫でしょう?」
「梨紅・・・・・・」
梨紅は、そっと微笑んで、瑠羽の髪をなでた。
ああ、いつもの梨紅だ。
そう、思った。

回想3 

February 20 [Sun], 2005, 22:30
ドアはノックされるまでもなく、開かれ、飛び込んできたのは見慣れた小さな姿だった。
「瑠羽?」
名前を呼ぶと、小さな彼女はそのまま、梨紅の腕の中に飛び込んだ。
息が荒い。
なにがなんだか、わからず、腕の中の少女の後頭部を見つめる。
「・・・たい」
「え?」
小さい声はききとれず、しかし、すぐに、悲惨なさけびが聞こえる。
「いたいっ!!梨紅、痛い!!」
「瑠羽・・・?」

「感応してんだろ」 

響いた静かな声は、この場にいる二人の女の、どちらの声でもなく。
そっと目をやれば、部屋の開け放たれていたはずのドア口に身を預け
二人を見下ろしている一貴の姿があった。
梨紅が、そっと視線をやれば、彼はその長身を、かがめ、
部屋に入り込み、いらだたしげに自分の金色の髪をかき混ぜた。

「梨紅、お前な、他のやつらの被害も考えず、自分の感情垂れ流してんじゃないよ」
「ちき・・・」
「梨紅の馬鹿!!もうやだっ痛いっ!!」
瑠羽はそういって、涙を流している。

そこまで聞いて、やっと梨紅は自分の能力が、
自分の意志に関係なく今の自分に与えられている絶望を
まるで電波に乗せるようにして、
他の者たちに伝えたことを知った。

精神感応、
その、彼女の独自の能力によって。

回想2 

February 18 [Fri], 2005, 23:04
彼は追ってはこなかった。
それはそうだろう。追ってくるくらいなら、彼はあんなことを言わない。
多岐はそういう人だ。
すこし、笑いが漏れる。

自分がこんなに驚いていることが、おかしい。
こんなにショックを受けていることが滑稽で。

笑えた。

クスクスと、声が漏れる。梨紅は、それを隠そうとはしなかった。
流れる涙にも気づかないで、誰もいない自分の部屋で
壁に背を預けて、笑った。

馬鹿みたい。
馬鹿みたいだ。

ついさっきまで、多岐に呼び出されるま では、あんなに信じていた。
多岐は自分と一緒にここを出て行くんだ。
私たちは一緒にいきていく。

そう、思っていた。でも・・・もう、それは・・・。

「約束・・・したのに・・・」

それはもう、ただの幻になってしまった。


そのとき・・・不意に梨紅のドアがなった。

回想 

February 18 [Fri], 2005, 21:48
背を向ける。
立ち上がって、背を向ける。
彼女は、どこか、さっぱりとした表情をしていた。
どこか、あきらめたような・・・冷めた目をしている。
彼女の瞳が、冷めているのは、今に始まったことではなかったが、それでも。
いつもとは、何かが確実に違っていた。

視線を感じる。
彼は自分を、自分の背を見ている。
だからこそ、振り返らないと、彼女は決めていた。

彼が出した答えは、予測しなかったことではない。だけど、だからこそ。
信じていた。
そして、それは、裏切られた。

「梨紅」
名前を呼ばれるのが好きだった。

「ごめん、梨紅」
謝らないでほしい。

「わかってほしい」
「わかりたいわ。私だって。だけど・・・納得はできない。」

彼女はそれだけをいうと、その場から歩きだした。
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