恋仕掛けのワルツ

2006年12月30日(土) 2時30分



もっともっと甘いものだと思っていた
その頃のおれは恋というものを知らなかった





たとえば、背中だとか
たとえば、爪だとか
たとえば、まつげだとか
たとえば、笑う顔だとか
たとえば、たとえば、たとえば、
そうやって挙げていったら際限なんてないくらいに
彼を形作るそのパーツひとつひとつが
―果てはきっと細胞から染色体までぜんぶぜんぶぜんぶ!―
そこにあるって、それだけで涙が出そうになってしまうんだ、なんて
恋しい愛しい
それは痛みにとてもよく似ていて
ぎゅぅってなった心臓の裏っかわに桃色が息をした




「おはよ、ツナ」
「山本、おはよー」




山本の言葉なら当たり前に有り触れた挨拶だって
標本にして額に入れて飾ってしまいたいくらいなんだよ
たまぁに、手にとって眺めたりして
その温度までおれの中に形作れたらいいなぁって




「どうかしたのか?」
「何が?」
「や、なんかツナぼーっとしてたから」




山本のこと考えてた、なんてきっと一生、口が裂けたって言えないんだ
言う気だってもちろんないんだけど
でももしも、本当にもしもね
何にも伝わらずに消えてしまうなんてひどく哀しいから
少しだけ、少しだけ
その整った横顔を見上げながら
気付いてほしいなぁ、とも思ってしまうんだよ





Fin...




そのてのひらが欲しいよ




ラッキー・ルチアーノに射たれる前に

2006年12月22日(金) 20時31分




空の青が映りこむから海は青いんだって
こんな空の下でにいればそんな話すらも信じてしまえそうだよ
なんて言っても、今まさに眺めているのは窓枠に切り取られた四角い青なんだけど





「十代目」




厳しさ7割、甘さ3割と言ったところか
背後からかけられた声は続いて小さく溜息を吐いた





「なに」
「仕事をしてください」
「わかってるよ、ちょっと休憩してただけ」




今やろうと思ってたの!なんて、小さな子供みたいだ
いつまでたっても結局は何も変わってないのかなぁ
そう思ったら少しだけ愉快な気分になった、のに




「30分前にもそうおっしゃいましたね」
「‥‥ごくでらくん」
「かわいくない!」



月に落ちた兎

2006年12月12日(火) 23時22分



この人には月がすごく似合うんだと思う
ともすれば冷たそうに見えるはずなのにどうしてだろう
おれはぜったいにそんな風には思えないんだから
恋っていうのはほんとに盲目なもんだ



「せんぱい」
「なに」



何となく呼んだだけなのに
―だってまさか返事してくれるなんて思わないから―
そっけない二文字が嬉しくて、にやけた



「えーっと、月がきれい、ですね」



窓の外には切り取られた絵画みたいな
真っ黒い空とまぁるい月と、たぶん冷たい風
―それを色に例えるならきっと水晶みたいな紫だ―
応接室の壁の色と相まって触れたら崩れてしまうんじゃないか、なんて、ね



「えーっと、ってなに」



返してくれる言葉が甘い
おれにとってだけだって構わない
盲目でいいんだ
おれしか知らないヒバリが、そこにはいるってことだ



「なんでもない、です」



あは、って笑ってみせたら
ヒバリは眉間にしわを寄せて、相変わらず変な子だね、って言った




Fin...




見上げた月が綺麗だった
今日もまた恋に落ちた





memo

2006年12月08日(金) 21時15分





窓の外のオレンジ色を切り裂いてしまえば
この空は青に戻るのだろうか、なんて





memo

2006年12月08日(金) 21時14分





靴紐を結びなおす指先とどうしようもない焦燥感




黒曜

2006年12月08日(金) 18時44分



どうしようもないと思った
逃げられませんよ、呟いてしまったそれは
君に対してだったのか僕に対してだったのか




いつだって一緒にいたいと思った
どうしようもなかった僕をその言葉で掬い上げてくれたんだ
お世辞にも温かいとも柔らかいとも言えなかったけれど
その存在は涙が出るくらい嬉しかったんだ




居もしない神様なんかより
僕は貴方の傍にいたいんです
何処までだって着いていきたいんです
たとえそれが地獄でも
貴方が居てくれるなら問題なんてひとつだってないんです



北風ロマンチカ

2006年12月03日(日) 13時29分






通り過ぎた赤い自転車とすれ違う小学生のはしゃぎ声と傾きだした夕陽の橙
気がついたら外はもう冬だった
かさかさ音を立てそうに空気は乾きだして
指先が冷えてぴりぴりする
隣を歩く十代目を見やるとマフラーをきつく巻きなおして
寒いね、って笑った




(‥‥かわいい)




できれば、本当ににできればでいいのだけど
その寒そうなてのひらをぎゅぅってして
このコートのポケットにお招きしたいなぁなんて、思ってしまうんだけど
―実は、あえてポケットが少し大きめなこのコートを選んだのはその為だったりするのだ―




(でもなー、拒否されたらまじ生きていけねー‥‥)




一応ではあるけど、お付き合いなんてものしているわけだし
手を繋ぐのだって当たり前なはずで
でも相手がこの人なんだって、思ってしまうそれだけで
緊張なんてものをしてしまうんだからまだまだだ




「じゅうだいめ‥‥っ」
「ん?」




意を決して重ねたてのひらには力を入れすぎていて
―本当はまだまだ足りなくてもっとぎゅってしたいのと―
―もったいなさすぎて、大切に扱いたい気持ちと半々くらいなのだけれど―




「ちょ、痛いよごくでらくん」
「すいません‥‥!」
「いいけどね、別に」




少し拗ねたみたいに笑うから
まぶしいなぁ、なんて思ってしまった
少し前まで彼はなんだか怯えたような表情しか見せてくれなかったから
まだ慣れない、嬉しいんだけどでも
慣れてしまうことなんて一生ないんだろう、なんて
当たり前のように思った
―とりあえず、一生そばにいさせてもらえるのかは考えないでおく―






うん
明日もきっと晴れだ







Fin...






当たり前を愛せたらきっと明日も幸せに





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