王子様には目覚めのキスを

2007年02月13日(火) 13時57分



うとうとと少しだけ眠そうに頬杖をついた、銀色の髪はさらさら揺れる




(めずらしい‥‥)




おれと一緒にいるときのごくでらくんはいつもテンションが高くて
―それはそれはもう迷惑なくらいだ‥‥!―
だからこんな表情を見ることは滅多にない
そもそも眠るっていうイメージがあんまりなくて
―例えば夜中に電話をかけたとしたって、寝ぼけたりなんてぜんぜんしてない声で話すから―
なんだか新鮮でかわいいとか思ってしまった





(‥‥でもなぁ)




だいきらいな数式は相変わらず藁半紙の上からおれを睨みつけて
教科書もシャーペンも消しゴムも、みんな味方になんてなってくれないから
このプリントを終わらせるためには
申し訳ない―と、同時にひどく勿体無い―けれど、ごくでらくんには目を覚ましてもらわなくちゃならないんだよ
だから、





Fin...




王子様には目覚めのキスを





ウェブ拍手 〜2/13

2007年02月13日(火) 11時24分
 

ごくやま



指先にたまった丸い赤を舐めてみた
―何となしにめくった雑誌のページで切ってしまったのだ―
予想通り赤は鉄の味がして




「まずい‥‥」




あたりまえだ
小さく笑ったら思った以上に乾いた笑いが零れて
赤が似合わないあいつに会いたくなった





(無理だよなぁ)




見遣った時計は深夜1時をまわっていて
健康優良児は既に寝てるに決まってる




指先でぐるぐると針を戻したぶん
時間も戻れば、どんなにいいかなぁなんて
非科学的なことを思ってしまうから夜は少しだけ苦手だ




Fin...


やまつな



ばしゃばしゃ音をたてて雨が落ちる
冬の雨はさむい
ヒーターが効きすぎた教室はあつい
むわってして、栗色の癖毛はいつも以上に言うことをきいてなんてくれないから
雨のことをあまりすきだとは思えなかった
予想しなかったことに、それも今日までだったりするんだけど



「ツナの髪ってふわふわなのな」



そう言っておれの髪を撫でた彼はきらり、笑うから
単純でばかなおれは
雨のことだって許してやろうかな、なんて
思ってしまったんだよ




Fin...

ごくつな





放課後の長い廊下に響く上靴の音はいつだって2種類だ
―きちんと上靴を履いているおれの足音と―
―かかとを踏んで履いている彼の足音―




窓の外のオレンジと遠くから聞こえる運動部の声と
ふたつの足音が
こんなにもこんなにもおれにとって大事なんだってことは
彼はぜったいに知らないんだ




(教えてあげる気もないんだけど)





いつだって
おれのことだけすきでいてほしいんだよ



Fin...


ひばやま




「まだ帰れねーの?」
「まだ」




書類から目を離さずに答えた
さらさらの髪は今日も綺麗だったりして
トリートメントとかしてんのかな、なんて考えたら笑えた
―だってそんな彼を、おれは1ミリだって想像できない―




「まだ?」
「‥‥」
「なぁ〜」
「うるさいな、かみころすよ」



不機嫌きわまりない、その一言が聞きたかったんだ
なんて言ったら、君はぜったいに呆れるね





Fin...


それが身勝手な感傷でしかなくても

2007年02月13日(火) 0時03分



ガキの頃、この坂道のいちばん上から見る街がすごくすきだった
遠くまで続くの家並みは、レゴのブロックとか積み木みたいで
夕陽がさしたりなんかしたものなら、それはもう世界一キレイなんだ!って信じて疑わなかった
それからずっと、坂道のいちばん上と玩具の街と夕陽はおれの宝物になった





「で?」
「だから、ここがおれの宝物」





どうだ!と言わんばかりに笑ってやったら、獄寺は何とも言えない顔をした
見下ろす景色は相変わらず玩具の街並みで、ただあの頃より少しくすんで見えたことが悲しかった
―やっぱり街は変わったし、おれも変わった―






意地になってペダルをこいだチョコレート色の自転車は陰を伸ばして佇んでいる
―二人乗りだから坂道のいちばん上にくるのはとてつもなく大変だったのだけれど―
隣で何も言わないままの獄寺の横顔は、なんだかガラスみたいだ





「どうかしたのか?」
「なにが」
「なんとなく、」
「おれは、こういうの、ねーなぁって思って」
「宝物?」
「ん、つーか愛着のある場所とか」
「イタリアにもねーの?」
「そもそも、そんなのんびりまったり育ってねんだよ」
「、そっか」





自分から聞いておいて気の利いた言葉が出てこないけどでもやっぱり聞きたくなる、なんて
手のひらに掻き集めた矛盾を持て余すから、この輝石みたいな目と話すのが本当は少しだけ苦手だ
―でも苦手だと思う以上に欲してしまう矛盾―





「‥‥帰るか」
「そうだな」






またチョコレート色の自転車に跨ってハンドルを握った
後ろに乗った獄寺の手のひらが肩に置かれたことを確認して
坂道を下る自転車は徐々にスピードを上げた





(あぁこれからこの場所が、こいつにとっても宝物になったらいいのに)






Fin...





ガラス細工の君を見ると
何故だか僕はひどく泣きそうになるよ









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