第4話:ガンバたって、無駄だって 

2007年05月30日(水) 17時57分
ラックの会社での扱いは下の下だった。遅刻、早退、休みの常連であり、「給料日の翌日は必ず風邪をひく男」と呼ばれていた。
そんなラックも相当自分が悔しかったので、ある日を境に自らを変えようと、近所の先輩の家に朝6:30に必ず通いつめて一日の予定をしっかり立てて、
やるべきことを実直にこなしていった結果、1年で評価はガラッと変わっていた。以前は出荷検査場での人数合わせ的どうでもいい人員から、努力を実らせ
国家検定も取り、精密測定器を扱う者として副室長兼、職場サークルのリーダー兼、宴会の幹事と次々と役職を勝ち取っていった。行き先は順風に見えた。
しかし、素直なだけじゃ世の中は渡っていけない出来事がたくさん起こっていた。ならず者な、ていたらくな上司達からターゲットにされ、ラック自ら発案、制作した
検査方法の案件が言わば横取りされてしまっていた。一緒に戦ってくれた同僚も居たが、年功序列のタテ社会が会社の、社会人としての受け止め方なのだと上司に諭され
納得せざるを得なかった。それ以来、新しい、HOTな最前線の仕事に首を突っ込もうとすると「オマエにはまだ早い、生意気だよ」と咎められてしまっていたのである。
ラックは次第にどうせやっても報われないじゃないか!手取り12万円から一向に給料は上がらなかった。後から入ってくる大卒の初任給は20万円を越えていた。
格差社会が社会に取り立たされる以前にれっきとした学歴社会が目の前に立ちはかだっていた。

ラックは会社の帰りにパチンコ店に通うようになっていた。パチンコやパチスロを打っていると、嫌なことから一時的に開放されていたのである。五万、十万円勝ったりすると、
まるで自分がスーパーマンのように思えて気分が良かった。そうやってギャンブルに依存していったのである。
会社の仕事はのらりくらりとこなしていた。ずる賢くもなっていた。夜勤に入れば手当ても付き、翌朝にパチンコにも行ける。そういうポジションをうまい事言って勝ち取っていた。
だがしかし、匿名で職場内から「なんであいつだけ、夜勤に入れるんだ?不公平だ!」と組合経由で問題視されてしまった。貧しかったのはラックだけではなかった。当然と言えば当然だが、なんだか
凄く嫌気が差した。結局夜勤は中止になってしまった。

それから一年後、ラックは約200万円の借金を抱えていた。ほとんどがパチンコによるものであった。
ラックは努力してもたかが知れていると悟り、自殺を考えた。缶チューハイを飲みながら車を当てもなく走らせた。ゴルフ場に続く道をひたすら上っていったのである。
酒の飲めないラックは涙を流しながら車を路肩に止めた。死ぬ気など毛頭無かった。自暴自棄になりたかった。今までの悔しい思いが一気にこみ上げてきた。そして車中で叫んだのであった。
「ちくしょう!明日!会社休んでやるっ!」

それからしばらくそこで眠っていた。全てが予定調和。確信犯だった自分が少しおかしいし、セコイし、しょぼいし、その程度の人間だということに納得してしまった。

第3話:廃墟 

2007年05月25日(金) 13時01分
女の子をナンパしに来た。ちょっと涙のブルーヴァケーションがしたかった。しかし、それもままならなかった。眠れないから誰かを道連れにしよう!

心底面倒な奴だとラックは思っていたが、目に涙まで溜めて話す程深刻なのか?それじゃあ、ジュンゴと大してかわらね〜じゃんかよ!!と半諦めムードで話を聞き始めた。

ミズは語り始めた。

知り合いの先輩が最近失踪したんだ。実は先月、肝だめしに誘われて、某廃墟の元海軍施設内に潜入したんだよ。3メートルの金網と有刺鉄線で普通は入れないんだけど、この間の台風で土壌が崩れて一箇所だけ下から潜り込めるスペースがあったんだ。

ゴルフ場に行く道で、途中にある林道に入っていくとひっそり建っている建物で、普段めったに人は来ない場所だよ。タイヤとか、電化製品とかはやたら捨てられているけどね。

で、その先輩の後ろに付いて行ったんだ。赤十字の古ぼけた看板が垂れ下がっていたのでおそらく病院か何かだったと思う。先輩は仕事で使っていたペンライトの明かりだけを頼りに中に入るからもう、怖くてな。しつこく中に誘う先輩を振り切って入り口で待っていたんだよ。

怖くて仕方が無いから、タバコでも吸おうかと、ライターに手をやったそのときに、先輩の声が聞こえたんだ。

「あ、、、あの、すいません、ホントにすいません。えっあの、あのですね〜」

誰かに必死に謝っているようだったんだ。オレ、怖くなって速攻で逃げたんだよ。で、先輩の車に戻ったんだ。そしたら施設から誰か出てきてこっちに歩いてくるんだけど、明らかに先輩じゃないんだよね、すらっとした女性が真っ直ぐ歩いてくる。捕まると思って、車をスグに出して逃げたんだ。バックミラーで覗いたんだけど、その女、あの3メートルはある金網のフェンスをまるでガードレール飛び越えるみたいに飛び越えて来たんだよ。ついに出たと思って全速で逃げたんだ。

あそこは、そういう人が居る施設なんだよきっと!

それに対しラックは襲ってくる恐怖、ではなくて、眠気と戦いながら

「で、何巻まで出ているの?その漫画!」

すると、憤慨したミズは浴衣姿のラックの胸ぐらを掴みながら

「ほ、ホントなんだって!!信じてくれよ!!!!」

と嘆願してきた。

またメンドクサイことになってきたから、適当に相槌を打つ方向でその場をしのいだのであった。
しのげたということは、やっぱりウソっぱちなのだなとも思っていた。

翌日、旅行(合宿)も終わり、一同は岐路に着いた。
「絶対に誰にも言うなよ!!」と念を押されたがその後、変わらぬ日常の中でそんな話はどこかに忘れ去られていた。

その後バンドは自然解散、毒が全身に回った犬は、息絶えるのも早かったようだ、、、、。

第2話:衛星 

2007年05月25日(金) 11時37分
民宿に戻った4人は、夕食を済ませると、待ってましたとばかりにジュンゴが1冊のノートを取り出した。

そこには、BOOWYのスコアブックを単に書き写しただけのページがたくさん出てきた。

「この、 is freeing」って意味が解からないんだよね〜布袋さんってば!」とジュンゴが何故か高尚ぶって発言していたので、少し腹の虫の収まらないミズが言葉を返した。

「ジュンゴ!英語解からないのかよ!?自由にしろ!つまり、ソロの部分はアナタが自由に弾けよ!って事だろ?」

ジュンゴは駄々っ子である、甘やかされて育っている。こういった突っ込みはタブーの人間関係で育ってきたに違いない。「再発」の恐れを即座に察知したラックはすかさず気を回した。

「まぁまぁ、凄いねぇ、ジュンゴ!コレ、一生懸命書き写したんだ、凄い凄い!」

これじゃまるで、地元の小学生の和太鼓サークルでの誉めて伸ばすテイストとたいして変わらない。16歳のボン相手は相当疲れる。

すると、無口なキーが重たい口を拓いた

「じゃあ、みんなで、やろうか・・・」

一同「・・・・・何を!?」

キー「・・・・あ、そうか、楽器、無いんだよね・・・・」

一同は笑いに包まれた。しかし、この4人の中で、いちばん解かっていた人はこのキー君だけである。
「楽器も場所も無いのに、ノート自慢の駄々っ子のオナニーに付き合いに来たんじゃないから、普通に飲もうよ、カス同士さ、、、」

を、遠まわしに表現し、流れを変えてくれたのである。

酒も入り始めた時、隣の部屋から若い女性の声がした。最年長のラックは当然、ロックオンとばかりに彼女達の部屋へご挨拶に行った。彼女達は18〜19歳の二人組で海水浴でここに泊まりに来ていた。

我々の部屋に招待し、宴?が始まった。

しかしながら、このシラケムードはなんだろう?男性陣は全員、BOOWYの話題しか話さない。否、出来ないのだ。だって、みんな童貞で包茎だから!

たまにラックが愛想を振りまくくらいである。ラックは色々と算段を立ててみた。外に連れ出せないだろうか?とかを!

しかし、それは無理であった。現在では、お持ち帰りだの、本人達にとって都合の良い「ぶっちゃけ発言、及び行動」は市民権を得つつあるが(著者の勝手な思い込み)
そんなこと本当にしたら、ジュンゴはまた「何しに来たんだおえ〜〜〜っ!」と泣き出し、ミズは根拠も無く至って純粋な、本能的な嫉妬心で命がけで止めに入っていただろう。

バンドの結束は固い。変なほうの。

シラケてしまった女性陣は「うわぁ、イテーやコイツラ!」的笑顔で逃げるように部屋に去っていった。
残った4人はまだBOOWY談義が終わらない。まさに地獄の合宿だ!

午前二時過ぎ、やっと部屋の電気を消し、就寝。

ラックも、さっきの女子の事なんかすっかり忘れてウトウトしていたそのとき、ミズが小声で話しかけてきた。

「ねえ!ねえ!起きてくれよ!」

ラックは瞬時にミズの思考を読んだ。またさっきの女子の事が忘れられずに、夜這いにでも行こうとしてるんだろうなと!

しかし、事態は思いもよらぬ方向へ進んでいくのであった。

「ラック!いいか?小さい声で話すぞ!何故なら、衛星が聞いているかもしれないから!」

とうとう、そういったモノを服用してしまったんだなとラックは悟ったが、ミズは目に涙を浮かべながら話し始めた。

「オレ、、、黙っていられなかったんだ、聞いちまったんだよ、化け物の話を、、、、」

・・・・・オマエ、暑苦しい夏の民宿の暑苦しさこの上無い男子4人のかごの中で、ここぞとばかりに、今度は怪談か!?友達選びなおそうとラックはひそかに決意した。

その後、漫画みたいな話を延々聞かされるのであった。地獄。

第1話:伊豆合宿 

2007年05月24日(木) 15時18分
「台風が来ていたから、遊泳禁止だってさ!」

「なんだよぉなぁ!?せっかく民宿予約までしたのにぃ〜ここでゴロゴロしながらタバコ吸って終わりかよっ!」

「ビーチボール買って来たよ!みんなでやろうよ!とりゃっ!あ゛〜〜〜〜っ」

強風でボールは50メートル近く流されてしまい、この遊びは瞬間的に終了を迎えた。何故買って来たのかが解からない。

ラックは休暇を利用して南伊豆に友人達4名と旅行に来ていた。

男子4名が、遊泳禁止の浜辺で、特にすることも見つけられず、海の家の御座の上で寝転がりながらひたすら缶ビールとタバコを消費していた。

浜辺に流れるサザンオールスターズの「シュラバ☆ラ☆バンバ 」が強風によって巻き上がり肌を痛々しく直撃する砂嵐と妙にシンクロしていた。まさに修羅場である、1992年7月某日。

夜になると、ラック&ミズ。ジュンゴ&キーの二組に考え方が分裂した。
ラック&ミズは昼間に海水浴が楽しめなかったフラストレーションを現地のナンパで解消したかった。
ジュンゴ&キー組は「今回は旅行じゃなくて、BANDの話を煮詰めていくための合宿、のようなもの」にしたかったようだ。

ナンパ組は数時間、浜辺を徘徊しながら女性達に話しかけるが、全く相手にされない。何せ、社会人は
19歳のラックのみで、後の3人は全て高校生だったのである。相手の女性達は皆、20歳を越えた彼氏付き、車付きの至って普通の観光客である。彼らがワイワイとはしゃぎながら花火に興じている姿が羨ましくてならなかった。

諦めたラック&ミズ コンビは、民宿に戻ろうとすると、近くの湾内でひとりの男が泣いていて、ひとりの男が無言で肩をさすり慰めていた。

泣いていたのはジュンゴで、慰めていたのは無口なキーである。
泣いている理由を聞くと、ジュンゴは嗚咽を交えながらこう答えた。

「何で、、BANDの親睦を深めようとして来たのに、ナンパだなんて、なんだか悔しいよ、、、、ヒック、、」

面を喰らってしまったラックとミズであった。何というか、彼を泣くほど追い詰めた自覚が泣き崩れる彼を目の前にしても到底理解することが出来なかったのである。それは、ちょっとした「訴えてやる!」的刃物を予告無しに突きつけられたようなものにしか受け止められなかった。

だから、彼を心底理解することより、どうやってこの場を凌ぐかに二人は全神経を集中させたのである。
その結果、ミズが、

「解かったよ、ジュンゴ!BAND名まだ決めて無くて、今回決めるんだったよね?ようし!あとでじっくり皆で考えるとして、ここは仮のBAND名を円陣組んで叫ぼうぜ!?いいよな?とりあえずそれで!?」

ジュンゴはやっとボクの方角を向いてくれた的駄々っ子特有のだらしの無い笑顔でうなずいた。

「みんな、手を重ねろ!いいな!?いくぞ!?」

「せ〜の!ポイズンドッグ!!いくぜ〜!!!!」

「お〜〜〜〜っ!」

その場しのぎに付けられたBAND名 ポイズンドッグ! 仲直りに使われたキーワードにしては、あまりにも毒気を含みすぎか、、、、。




P R
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