黄色いくるま 

November 28 [Fri], 2008, 23:03
 ここはおおきな町の端っこにある工場地区。

 その中のちいさなちいさな町工場で黄色いくるまはひっそりと生まれました。

「さあ、今日から君も私らの仲間だ。目を開けたまえ」

 作ってくれた鈴木さんに言われて目を開くと、目の前には様々な機械と、汗だくになった人たちと、それから車たちが居ました。

「おはよう、小さな新入りくん」
「おはよう、小さなくるまくん」

 周りの車たちは口々にそんなことを言いました。

「おはようございます、みなさん。ぼくは…」

 そこで小さな黄色いくるまは困ってしまいました。彼には名前がありません。
困って鈴木さんを見上げると、笑ったまま何も言いません。

 そこで彼は自分で名前をつけることにしました。

「ぼくは、ドーリーです。よろしくお願いします」

「よろしく、ドーリー」
「こちらこそよろしく」

 こうしてドーリーはみんなの仲間になりました。

***

 一番下のドーリーはみんなから大切にされました。

 しかし中にはイジワルをする車もいます。

「やい、ドーリー。お前はどうしてそんなに小さいんだ?」
「俺らと違って高性能なエンジンが無いからな、ははっ」
「お前が鈍いのもバカなのもそのせいだな」

 大きなクラクションを鳴らし、ごつんとどついて去っていきます。

 あるときは、

「やい、ドーリー。お前はどうして黄色いんだ?」
「それじゃあカッコ悪くて工場の外へ出られないな」
「俺らがカッコよくデザインしてやるよ。ほらっ」

そう言って泥水を思いっきり浴びさせられました。

 ドーリーはしょっちゅうからかわれていました。でも、本当の事だから何も言い返せません。

“どうして僕はこんなにちいさいのだろう?どうして僕は黄色いんだろう?”

 ずっとずっと、ドーリーは一人で悩んでいました。

 そんなドーリーを心配した鈴木さんはあるときドーリーに尋ねました。

「ドーリー、何を悩んでいるんだい?」
「あのね、」

 ドーリーは全てを話しました。そして最後にどうして僕は小さくて、黄色いの?と尋ねました。

 それを聞いた鈴木さんは言いました。

「じゃあ、ドーリー。裏の工場のおじいさんを訪ねてごらん」

 ドーリーは言われた通りに裏の工場のおじいさんを訪ねました。

「来たか、小僧」

 おじいさんはドーリーが来る事を知っていたようでした。

「おじいさん、どうして僕は小さいの?どうして僕は黄色いの?」
「ふぉっふぉっふぉ、そんなことか」

 おじいさんはじっとドーリーを見つめると言いました。

「それは、必要とされているからじゃよ」

 ついて来い、と言うとおじいさんは工場の奥へと歩き始めました。

「これをごらん」

 おじいさんが何か大きな塊のカバーを外しました。

「これはわしが昔作ったものじゃ。わしが必要として、作った」

 ドーリーは不思議でした。

 その車は自分より小さくて、みすぼらしくて、とてもカッコイイとは言えなかったからです。

「どうして残っているの?」
「それはな、大事な相棒だからじゃ。使えなくなった今もとても大切なものじゃから、こうやって手入れをしながら大事に大事に残してあるんじゃよ」

 そして、おじいさんは静かに言いました。

「ドーリー、大切なのは自分がどんなイイ車であるか、ではなくてなんで生まれたのかなんじゃよ」

 ドーリーは知りました。自分が生まれてきた意味を。どうして小さいのか。どうして黄色いのかを。

「ぼくは、」
「さあ、鈴木さんの所へお帰り」

***

 今、ドーリーは幸せいっぱいな気持ちで工場内を走り回っています。

 もうイジワルをされてもへっちゃらです。

 自分の生まれた意味を知っているからです。

「ドーリー!」

 ほら、いつものように大好きな鈴木さんが呼んでいます。

 ドーリーは今日も鈴木さんの笑顔を絶やさないように頑張ります。

 それが、自分に出来る唯一の事だと思ったからです。

 傍に居るだけで充分だと気付くのは、もっとあとのお話です。
P R
プロフィール
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  • アイコン画像 ニックネーム:稚陸 耀迪
  • アイコン画像 性別:男性
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