★穴 (著・ルイス・サッカー)

2005年06月06日(月) 22時12分
★穴 (著・ルイス・サッカー)および★Holes ( Louis Sachar)

 お勧めのヤングアダルトです。
 最初に日本語訳を読み、1年以上後になって原書も読んでみたんですが。
 この本に関しては、ちょっと苦労してでも原書を読んだほうがずっと心に染みました。
 なんというか、読み手の心をわざと渇かしておいて、いきなり、絶妙な文章で読者のその渇きを癒やす、みたいなリズムがあるんです。
 日本語訳では、うまくそこを読み取れませんでした。

 主人公の少年は、太っていて、いじめられっ子で、おまけに運も飛びきり悪い。
 無実の罪で逮捕され、刑務所か少年院かどっちがいいかと言われて、「キャンプ・グリーン・レイク」という名の少年院を選ぶの。なぜって、貧しい少年は、これまでキャンプというものを楽しんだことがなかったから。レイク(湖)のほとりのキャンプのほうが、刑務所よりましに違いない、と思ったのね。

 ところが、その少年院はとんでもない場所。夜明け前に起き出して、深さも大きさも1・5メートルの穴を1日1つ掘り続けなきゃいけない。
 この奇妙にして絶体絶命のシチュエーションに、少年のひいじいちゃんだか、ひいひいじいちゃんだかのずっとずっと昔の話が見事に絡んでくるから、小説としての仕立てもとても上手です。

 それでいてテーマは友情。それから、人間回復、と私は思った。
 少年院の少年たちは互いに全部ニックネームで呼び合うの。でも、物語の途中で、相手の本名を知りたくなったり、本名を明かし合ったりする場面が出てきます。
 人間の持つ「名前」は、単に記号なんかじゃなく、その人がその人であるためにとても大事なものなんだ、ってことがジワジワと伝わってくる。

 寓話のようでもあり、冒険小説のようでもあり、謎解きも楽しめ、それでいてすごく淡々とした表現で、すごく深いものを描いてくれている作品です。
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■プロフィール■
名前■おぐにあやこ
生年■1966年 ひのえうま
仕事■新聞記者
趣味■読書、ピアノ、旅       昆虫飼育
目標■ちょっと背伸びして、疑問       符を感嘆符に変えること
苦手■勧善懲悪
著書■「薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族」(青木書店)▼「ベイビーパッカーでいこう 赤ん坊とザックかついでスペインの旅」(日本評論社)▼「魂の声 リストカットの少女たち」(講談社)▼「いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ」(共著、講談社)
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