たしか、彼等だった。 

March 07 [Mon], 2016, 0:19
君、困るとすぐ手を出すよね。
ねぇねぇ、殴った君が私より辛そうな顔してるの、なんで?
いや別に?君のいかにも「殴って後悔してます」って間抜けな顔が面白くってさ。
ねぇ、一緒に出かけようか。
怯えた顔して腕組んであげる。
他人が君をどんな目で見るか、すごく楽しみ。
これ以上私を傷つけたくないから別れたい?ここまでしておいて?
ふーん、逃げるんだ。ハエみたいに。
でもダメ、逃がさないよ。
殴るのを我慢してる君が好き。
結局殴って後悔してる君が好き。
私に怯えてる君が好き。
私から離れられない君が好き。
君が好き。

たしか、私だった。 

March 07 [Mon], 2016, 0:15
ほんとうは動物園になんかいきたくなかった

ただ
動物園にいきたいといってあげるしかなかった、あの日

父もたぶん
動物園になんかいきたくなかったのだ

動物園はくさいし歩きつかれるしそれにかなしい

ほんとうは
動物園になんか
いきたくなかった、あの日

たしか、彼等だった。 

March 01 [Tue], 2016, 22:14
誰にも言いたくないことってあるじゃん。
んー、ちがうな。
誰に相談しても解決出来ることじゃないから、言いたくない悩みごとってあるじゃん。
自分で解決するしかないこと。
言ってもしょうがないからって自己完結しちゃったこと。
そういうのってさ、基本的に言いたくないんだわ。
親にだって親友にだって、もちろんあの人にだって。
だから親友のそういう悩みごとは無理矢理聞かないようにしてんだけど。
やっぱね、あの人のは知りたい。
絶対言わないってわかってるけど。
あの人のは、私だけに話してほしい。
でも私は話したくない。

人生ってむずかしい!
どうすればいいのか誰か教えて!

たしか、彼等だった。 

February 22 [Mon], 2016, 21:20
取り返しのつかないことっていっぱいある。
たとえばギャンブルで大損したときとか、卒業アルバムの映りの悪い写真とか、酔ったまま送った支離滅裂なLINEとか、仲良くなれそうででも目の前で醜態を晒してしまった人との関係とか。

ちょっと前から様子がおかしいのは気付いていた。
特段何もおかしくはないのだと言った感じでいつも通りに振る舞っていた。
ある朝、血色をなくして冷たくなっていた。
汗だくで心臓マッサージをする男と、名前を呼びながらしっかりしろと手を握る男と、淡々と救急車を呼ぶ男を見ながら私は何もしなかった。
取り返しのつかないことだと、なんとなくそう思っていたからだ。
病院で霊安室に入れられると思っていたけど、点滴だけ繋いだ状態のあっさりした感じでまっ白いベットに寝かされている。

「死んだんじゃないの」
「生きてんだって」
「脈も呼吸も無いけど」
「正しくは、生き返るかもしれないんだって」

病状の説明を受けてそれぞれの胸懐をない交ぜにしながら、泣きじゃくる女を慰めつつ帰っていく人達を見送って、私と男は病室に残っていた。
放課後の教室に二人きりみたいに、夕日が白い病室を明るいオレンジ色で塗りたくっていく。
違うのは微かに聞こえるのがカラスの鳴き声じゃなくて、繋がった点滴内の水包が弾けた時の音だけってとこ。

「この管はなに」
「栄養剤だって」
「ご飯は?」
「食えねんだって。お前、医者の話聞いてた?」

ちょっと苛ついた感じで睨んでくる。
それを受け流して手の甲に点滴の針が刺さった手首を掴む。
ひんやり冷たい。
脈無し体温無し反応無し。
なんも無いじゃん、そう呟いて半分だけ目と口を開いて舌をはみ出させた状態の男を写真に撮る。
ピロリンと間抜けな音がオレンジ色の病室に響いた。

「おい」
「生き返ったらこの写真、待ち受けにしてあげるんだ」
「性格わりいなお前」
「知ってるくせにだよ」

隣にいる男は、こいつのことになると私より饒舌になる。
とてもかなしんでるんだなあ、と思った。
この男がちゃんと友達になれる相手はこいつだけだから、さびしいんだなあ。
私は今までもこれからも良い友達になるつもりはなかったから、そのさびしさが良くわかった。

部屋で聞き慣れない音がした。
ぎ、とか、ぐ、といった断片的な音で、部屋を見渡すと睫毛がふる、と震えた気がした。
名を呼ぶとまた建てつけの悪い網戸の様な音を幾分か出して、再び部屋は静寂に戻った。

「ぎーとかぐーとか言ったな」
「どうせ肺の空気が抜けた音だよ」
「またそんなこと言って、お前はあ」
「ねえ、きっともうすぐ生き返るんじゃない」
「そうだな」
「生き返ったらどうする?」
「どうするかな」
「なにすんの」
「さあ」
「なにすんの」
「ちょっとうるせえよね、お前」

目を合わせないまま毒づいた。
私は口角を上げた。
人の心を見透かすのは得意だ。
仕種や癖で感情を窺うのも得意だ。
人を自分の思うように動かすのは欠伸が出るほど簡単だ。

私とこの男だけが知っている。
こいつが自ら死を選んだ理由、そのきっかけ。
男はもうさびしそうじゃなかった。
だってこれから自己嫌悪に陥ることになるから。
それに助かったとも思ってるはずだ。
取り返しのつかないことっていっぱいあるけど、それが幸せか不幸かなんて人それぞれが決めることだ。
もう全然、さびしそうじゃなかった。

たしか、私だった。 

February 22 [Mon], 2016, 20:48
辛い辛い幸せなことなんて今この瞬間ひとつもない辛いっていう字に一本線引くだけで幸せになれるのに誰も鉛筆を持ってない寝て起きたらこの辛さは忘れてなくなってるからこうやって残しておいてもなくなるからごめんね心配しないでね元気にしてるからねずっとここにいるからね四季なんかなくていいずっと冬でいい太陽はずっと雲に隠れてていい舌打ちしながら仕事して毎日シャリシャリ系のアイスを食べればいい特別な日なんていらない

たしか、彼等だった。 

February 22 [Mon], 2016, 20:43
いくらLINEを勧めても始めないのは面倒だからと思っていた。
だからロックもかかってない携帯を開いて勝手にダウンロードしてあげようと思っただけ。
未送信メール136件?
怪しんでフォルダを開くと重すぎる言葉の羅列。
一番新しいメールに一言。

「あいつには言えない」

たしか、私だった。 

January 24 [Fri], 2014, 23:20
起きてる間は合ドラを延々とチェーンスモーク。

泥酔した時より多少強めのラリリ感。
気を失いはするが、戻る。
気を失って、そのまま寝てしまい、起きる。
復活してしまい、頭痛が酷いだけでした。

思考能力がガクンを落ちて、何も考えられられなくなる。
意識が正常だと色々考えてしまうから。
考えなければいいのですが、「考えない」ということえを考えてしまう。
このループから抜け出したかった私には、快楽なくとも、むしろ逆に気持ち悪くなるけども、思考鈍るか気を失うので、その点はありでした。

眠りから覚めるか、気を失っていた状態から醒めるか。
どちらにしろ復活した時には頭痛とかまだ若干残っていて若干震えがあるので、歯が噛み合いませんカチカチ鳴るよ。
そんな程度のものはありますが、おおよそ視界と思考がクリアです。
その時にもうやめようと思いました。
好きな人の悲しい顔を見るのは、とても悲しいからです。
ごめんねごめんねごめんねもうやめよう。
そう決心しました。
その時の気持ちは本当だったと思う。
間違いなく。
「もう、やめる」
そう強く決心しました。

合ドラがもうちょっと残ってます。
好きな人が起きたら、トイレについてきてと言う。
そして、目の前でトイレに流して捨てよう。
直接その現場を見ないことには、「捨てた」の言葉だけではどうも信憑性が低い。
だから、直接見てもらう。
目の前でそれをトイレに流し、もうしません悲しい思いさせてごめんなさいと。
そうしたら、喜んでくれるだろうか。
その場面を何度も何度も反復して妄想しました。
もう絶対やめると思いました。
思いました。

現実で、好きな人が起きました。
よし、しっかり見てもらうぞ今までごめんねと、半ばウキウキしながら、私も起きた。
そして、ねえねえ、トイレついてきてと声かけるぞって、大きく息を吸おうとした。
その時、好きな人が「トイレ」と言いました。
そして、階段を降りていった。
自分の予定と少しだけ違いました。
私から声をかけて一緒に階段を降りるつもりが、声をかける前に、一人でいってしまった。
あまりにもイメージを高めすぎていたため、それとは違う展開に、ほんの少しの間ができた。
ほんの少しです。
あとから追いかければいいこと。
けれど私はそこでとどまってしまった。
ほんのちょっぴりだけできた空白の間、そこで私は「合ドラって高いんだよな」と思いました。
続けて、「もったいないから、別に捨てなくてもあげたらいいんじゃない?」
続けて、「それか、合ドラにめちゃめちゃ金使ったし、誰かに売ろうかなぁ」
続けて、「でもそれで金儲けとか嫌だなぁ」
「そんで買った子がボロボロになっていったりしたら、ねぇ」
「やっぱ、薬で金儲けとか、そういう意地汚いの嫌だし、誰かにあげるかぁ」
「○○さん欲しがってたしなぁ、喜ぶかも」
「でもよく考えたら、それで○○さんがボロボロになったらどうしよう。一応知り合いだし」
「うーーん…」

そういうことを延々と考えていたら、戻ってきた。
まだ売ってもあげてもないけど、悪いことしてバレたみたいな気分になり挙動不審になる。
「どうしたの?なんかあった?」
ううん、違う違う、なにもないよ、明日何しようか考えてただけ。
「……ふーん」
何だか妙な雰囲気になり、タイミングも逃し、この人がまた仕事から帰ってきてからでいいかと保留する。

そうして仕事に行ってしまい一人になると、「よしっ」と隠れて吸っていた時の感情が、無意識に真っ先に浮かんだ。
だめだめ!
さっき決めたとこでしょ?
もう絶対やめようと決めたでしょ?
…あ、でも、

たしか、私だった。 

April 21 [Sun], 2013, 0:16
カタツムリの集団の中にこっそりとナメクジである私がいる。
皆は優しいので、この者は殻のないカタツムリなのだと信じて受け入れてくれるのだけれど、自分がナメクジであることを自覚してしまっている私には、その優しさこそが重圧となってしまうのだ。

たしか、私だった。 

April 21 [Sun], 2013, 0:13
孵化しなかったタマゴが
まちがえてゆでられて食卓に出される

死んだヒヨコは黒い

あれはぼく
あれは世界

なにもかもこわさなきゃ
はやく目を覚まさなきゃ

死んでしまうまえに

たしか、私だった。 

April 21 [Sun], 2013, 0:01
湿疹で掻き壊してしまった皮膚にベビーパウダーをはたいていたら、うっかり容器を床に落としてしまった。
大量の白い粉は空中を舞って、鼻から咽喉から勢いよく肺に注ぎ込まれた。
激しく咳き込んで、涙は流れ、鼻水に涎にと、顔を液体塗れでぐちゃぐちゃにしながらその場にしゃがみこんだ。
足の下に積もるベビーパウダーの粉とその上に吸い取られた水滴の痕。

毎日が冴えなくて、私の人生なんだからそんなもんだろうと妥協して、あの頃どんなに綺麗なものに憧れて綺麗なものが好きで綺麗なものになりたかったか、どれほど強く願ったか、この気持ちは誰にも分からない、絶対分かってほしくはないと、なんだか昔の色んな想いが溢れてきて、せっかくの機会だからと暫く泣いてみた。

明日の朝になれば、ベビーパウダーではなくファンデーションのパウダーを顔にはたいて家を出るのだ。
どうせ粉塗れになるのだからそれほど構うこともないだろうと、部屋を片づけたのは翌日だった。