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ネット界に口づけを*1-6 / 2004年07月16日(金)
俺の仕事には制約が多かった。
社長の素性は明かさないのはもちろんの事、俺の今の仕事を人に話してはいけないし知られてもいけない。だから羽振りの良くなった俺に皆驚きどんな仕事をしているのか聞いてくるが適当に誤魔化さなくてはならない。自慢話すら出来やしない。
取引相手に社内の情報を明らかにしてはならない。名刺の住所すら架空のようだ。実際事務所の住所とはかけ離れている。電話も転送で受けている。

社長は昼間はほとんど事務所に来ない。
佐藤さんの話では小学校に通っているらしいからな。ネット界では様々なネットワークに精通していてプログラミングの知識もある経済通の社長、HN:ZEROが、現役小学生。

有り得ないな。


先日、早く出社したなと思ったら
「短縮授業中だ。」
と言われた時にはひっくり返ったもんな。
得意のサッカーは辞めたらしい。まあ、掛け持ちはつらいよな。

そういえば近々夏休みに入るらしい。



最近は大手のメーカーの接待がかなり頻繁だ。
ソフトについての詳細はノーコメントを貫く。実際俺はソフトの内容すらも知らないのだからばれようも無い。
その日は特に追求が厳しかった。現品を見たいと言い出した。
挙句、社長代行の俺をヘッドハンティングするとまで言った。もちろんお土産(情報)付きで。
だが、どんないい条件も俺の気持ちを揺さぶらない。
今の会社の給料がどれだけかそいつらは知らないんだ。

俺ははっきりと断って、その席を後にした。



 
   
Posted at 00:32 / NOVEL / この記事のURL
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ネット界に口づけを*1-5 / 2004年07月12日(月)
俺は就職した。社長代行だ。名刺にもそう書いてある。

俺は数着のスーツを買い与えられ
高価な時計を身につけて美人秘書を従えて、バリバリ仕事をこなしている。

アメリカンドリームだ。俺にもそんな物がやってきたんだ。
俺は有頂天だった。俺はすっかり高給取りだ。

もちろん混乱もしている。社長は相変わらず可愛げが無いし、
佐藤さんは大事な話は教えてくれない。
だが、社長の手掛けている仕事の端っこぐらいは俺にだってわかってきた。

社長はあるソフトの開発に成功したらしい。
その使用権をめぐって大手会社からお声がかかっているらしい。
俺は色々な接待を受けながら返事を保留し続ける役目をさせてもらっている。
画期的な教育に関するソフトらしい。

どんなソフトなのか。
接待中に飛び交う金額に驚いて、こっそり社長のパソコンを盗み見しようとした事がある。
ところがいきなりパスワードでひっかかり内容を知るに至らなかった。
俺は普通にはパソコンぐらい扱えるが、そういう専門知識は皆無なのだ。
自慢じゃないけど。

そういえば社長から一度だけメールが来たっけ。
何かファイルが添付されていたが、保存したはずなのにどこかになくしてしまった。
まあ、その程度の知識だ。

「仕事、慣れてきたみたいね。」
佐藤さんが肩に手をかけて話し掛けてきた。
実はかなりスパルタだった。行動には事細かに指示が出た。
この美人の佐藤さんを「鬼」と呼んだ事もあった。
実は彼女がこの会社を裏で操っているのじゃないかと思うほどだった。


 
   
Posted at 23:21/ この記事のURL
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ネット界に口づけを*1-4 / 2004年07月04日(日)

「それであなたの、坂井さんの仕事ですけど・・・」
「営業と求人にありましたが。」
「ええ。社長はほとんどネット上で仕事をこなされますが
打ち合わせや会食、パーティー等、出席を求められる
機会が多いのです。ですので、坂井さんには
社長代行をお願いしたいのです。」

「え〜!?いきなり新人の俺が社長代行ですか!?
それは無茶です、ダメですよ!」

「その為の高額給与だ。」
衝立の向こうから社長の声がした。
その有無を許さない威圧感が、小学生から発されているとは
信じがたい雰囲気だ。

「社長は、ご自分が社長である事をご自身のご家族にも
打ち明けて無いのです。そして、それはこれからも
極秘となります。だからこそ小学生社長だと
騒がれるのを避けるための代行です。
安心して下さい。研修も十分に行いますしマニュアルもあります。」
佐藤さんがなだめるように俺に言った。

「そんな、家族も知らないなんて、どうやったら社長になんかなれるんですか!?
どうして自慢できる事なのにそうまでして隠して・・・」

「採用を取り消されたくなかったら
何も疑問に思わないことだ。」

社長のその一言で俺は動きたがる口を手で塞いだ。


 
   
Posted at 00:40 / NOVEL / この記事のURL
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ネット界に口づけを*1-3 / 2004年07月04日(日)
「え?社員って俺採用されたんですか?」

「そうよ。私に詳細を聞けと言われたでしょう?
・・・・ってあなた、そこが驚きどころじゃないでしょ〜!」
「だって社長が小学生だって給料くれるんでしょ?
俺合格なんでしょ?だったらどうでもいいかなって。」
俺自身が信じられない事だがよっぽど俺は金に餓えていたんだろう。
その時は本心がそうだった。
確かに最初は面食らってどう対処していいかわからず
何かの冗談かと思った気もするけど、社長もいて美人秘書も居る
そしてこんな俺を採用してくれる。
まずはそれを確認したかった。

「変な人ね。まずはみんな信じないのよ。社長の事。
そのうち呆れて帰ったり、怒り出す人までいたわ。
実はもう70人ぐらい面接には来たのよ。
半分は社長が不採用を決めたんだけど。」
佐藤さんの方がよっぽど呆れ顔で社長のいる方を見た。

「何も聞かれなかったよ?あれが面接?」
「社長の直感なんでしょうね。前の人もそうだったから。」
「前の人って、前任の人がいたんですか?その人は?」
「事情があって辞めちゃってね。」
「へえ。こんな高額給与なのに勿体無いなあ。」

佐藤さんは目をそらした。



 
   
Posted at 00:06 / NOVEL / この記事のURL
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ネット界に口づけを*1-2 / 2004年07月01日(木)
「面接に来たのだろう?
突っ立ってないでそこに座りたまえ。」

子供がしゃべった。そして俺に命令した。
どう見ても小学生か小さい中学1年といったところ。
ラフなTシャツとジーンズ。
スーツで決めてきた俺とはかなりアンバランスだ。

俺はとりあえず状況判断がつかないまま
言われたとおり椅子に腰をおろした。

「子供、なのが気に入らないらしいね。」
「いや、いえ、あの・・・その・・・。」

子供なんですか?と聞くのは大人だったら
失礼だ。しかも今は俺の生活がかかった面接だ。

「キミがどう思おうと構わない。僕達が一緒に行動する事は
少ないだろうからね。」

俺が何も言えないでいると
「履歴書は?確認させてもらうよ。・・・・ふん。」
子供は俺の履歴書を受け取るとかなり長い間目を通していた。

この面接の前に履歴書にはかなり細かい内容を書いてくるよう
言われた。
「確認した。・・・特に問題なし。」
自主退学の件は問われずホッとした。
相手が子供だという違和感より現実面接で受かる事の方が
大切だと思えてきた。

「じゃ、細かい事情は佐藤さんから聞いて。」

彼の指した方でさっきの美人が笑っていた。




「うふふ。驚いたでしょう?彼を見て。」
佐藤さんは何だか嬉しそうにそう言った。

俺は即答できなかった。
あまりにも衝撃を受けすぎて用心深くなっていたのだろう。

「もうあなたはうちの社員よ。気を使う必要なんて無いのよ?」
必要書類を用意しながら佐藤さんは俺の顔を覗き込んだ。

「社長は小柄な方ですね、お幾つなんですか?」
俺はやっとそれだけ聞くことができた。

「ここからはトップシークレットよ。あなたの仕事にも
関わりがあるから話すけど、口外しないと約束できる?」
「・・・はい。」
「彼は、社長は現役の公立小学校の6年生よ。
お父さんは公務員、お母さんはパート主婦。
サッカーの得意な子供。成績は中の上・・・」
「・・・・・」
「それがあなたの高額給与の払い主、HN:ZEROの
もうひとつの顔よ。」

 
   
Posted at 02:40/ この記事のURL
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ネット界に口づけを*1-1 / 2004年07月01日(木)
VOL.1 ゼロ



俺がその怪しげな雑居ビルの前に立つはめになったのは
実に恥かしい理由だった。

働くのが嫌いで大学に入ったのに親からの仕送りを使い込み
自主退学をして、それが親にばれて勘当され・・・

ま、よくある話。
もちろん反省もしたが生活基準を元に戻す事は
大変困難な事であり、挙句友人に借金をして

・・・って俺何で自分に説明してるんだ?
とにかく金が要る。ここで引き返したら
俺は友情を失い、友人宅に居候している俺は
即路頭に迷う事になる。

意を決して俺は雑居ビルのコンクリ剥き出しの
今にも壊れそうな階段を5階まで登った。



扉には無愛想に「kiss.com」と書いてあるだけだ。

「怪し・・・」

俺は中の様子を伺った。
電話がひっきりなしに鳴り、女の声がした。
ドア越しに女が居るとわかると少し嬉しかった。

俺はポケットの中の履歴書を確認してドアをノックした。

「はーい」

狭い事務所なのかすぐドアは開いた。
そこには若い女が笑顔で立っていた。
年は20歳ぐらいか。少し愛嬌のある美人でスタイルはまあまあだった。

「先日お電話した坂井です。遅れてすみません。」

「面接の方ですね、社長がお待ちです。奥へどうぞ。」

そう言って通されたのは奥といっても衝立代わりの
書類収納の向こうなのだが。

俺は驚いた。驚いたというのも少し違う。
担がれたかと周りをキョロキョロ見回したりした。
そんな俺を無関心な目で見つめるのは

子供だった。


 
   
Posted at 01:37/ この記事のURL
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