有るのは、進むべき道。 

April 21 [Tue], 2009, 8:38
 天に浮かぶは望月。 色を引き立たせるは藍色の海。藍色の海にたゆたう銀の砂は大小の光を発し、地上を照らす。
 屋敷の屋根で空を見上げていれば、ふっと隣に気配が沸く。
「親父さん、倒れたらしいな」
 振り返り、仰げばにっこり笑った知り合いの男。いつも飄々としてつかみどころがない。
 首が疲れるので元に戻した。顔など見なくとも、男の表情など手に取るように分かる。
 それ程の付き合いが、二人の間にはあった。
 恋仲など決してない。 たとえるのなら、戦友。
 袴姿の女は、自分を笑うように息をもらした。
「……ずいぶんと早いな」
 知らせたのは誰か。
 ――いや。誰の差し金か。
「どうすんだ。 家、継ぐのか」
「女子の私が継げるとでも? その件は弟に任せた」
 女は星空を見上げる。
「私は……しばらく旅に出るよ」
 後ろで男が息を呑む。
「もう決めた。誰にも止められはしない」
 涼しい風が、女の高く結った髪を揺らす。
「……この乱世を、旅すると」
 女は頷く。
「『輝夜姫』とまで言われたお前が旅か……」
「別に最初の旅じゃないんだ。何を気に病む?」
「お前は軍師の才がある。 それを、いつどこから付け込まれるか分かりかねない。
 それでも、旅をするか」
 かつて、姫と呼ばれていた女は、家を焼かれ、家族を失い、この屋敷に拾われた。
 全国を旅し、時折その腕を振るいながら生き抜いてきた。
 商人とし、今は馬を育て。
「……姫なんて古い呼び方するな。 その名は死んだ。
 今はただ、馬を育て、のんびり生きているだけ」
 戦場を駆け抜けたのは二度ほど。
 四国と、安芸。
 姫と呼ばれた鬼と孤独を選んだ男と。
 数年前の話なのに、どうしてこんなにも懐かしいのか。
「この命、易々くれてやるほど私の心は広くない。
 どこにも属さないし、主従の関係を結ぶ気もない。
 まあ、友としてぐらいなら付き合ってやらんこともないが」
 言って女は笑う。
「さて。 この天下を治めるのはどの軍勢か。しばらく見物させていただこう」
 二人の会話はそこで終わった。



 女の名は凰嘉。
 さらに数年後、乱世の梟雄に瀕死の状態で拾われるまで、旅して回った。
 同時に女の名は武将達の間でも有名になっていた。

 勝利へ導く軍馬を操る男がいると。


 梟雄との出会いが、女の人生を変えた。

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 Hey! 突発的に何やってんだ!な状態です。
 気付けばBSR夢(?)だよ! 馬主ヒロインやっちまったよ!!(強さは武将クラス)
 男は従兄弟の設定で書きました。

 ヒロインは商人時代に四国へ行ってます。そんときにちかちゃんとオクラと知り合いました。
 成り行きで戦に参加していたり(え)。

 伊達さんとは乱世の梟雄に拾われる前に出会ってます。
 KGとは酒飲み仲間(え)。
 サッティンとも伊達さんと同じ理由。
 松永さんは紳士なのでヒロインがどこの誰で何をしてきたか知ってます(ストーカー)。
 風魔とかすがは友達。
 織田さん家にはあまり関わりがない。 うん。



 こんなどうしようもない設定だけある現段階。
 心理や情景描写の練習を兼ねて書こうか否か検討中。(検討せんでいい!)

胸キュンする話 

November 16 [Sun], 2008, 11:16
 小説の課題で「胸キュンする話」を書けといわれたときに華麗に逃げた(先生談)作品をハリポタ夢風味に(てかハリポタ脳内再生してたんですけどね、その時)直しただけのもの。
 こんなことしてないでさっさと課題始末しろって話ですが……息抜きも大事だよね?

◆設定。
 ヒロイン名:セレス。
 お相手:某魔法薬学教授(笑)。

 親世代とは同期。で、蛇寮。
 現在脳内で膨らませている夢の駆け出しみたいな感じになってます(今じゃ口調も違うよ〜)。
 あーヒロインのポジションはセブの助手的な感じでホグワーツにいます。
 子世代とも仲良し。
 容姿はこの話には特に書いてないのでご想像にお任せ。








 それが許せる方は下からどうぞ。ちなみに名前変換機能はなしですよ。

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「その名を明かすときは、お前の全てが終わる時だ」 

September 23 [Tue], 2008, 11:11
 眼前に佇む男はそう吐き捨てた。
 銀色の髪が月の光を浴びて水面のように輝く。
 ――対する私の髪は闇夜に溶け込むような紫黒だった。
「だったら、貴様の終わりを見せてもらおう。さすれば自然と名が聞ける」
 私は前に飛んだ。
 男の喉下を狙って手首を捻る。
 風を切る音がして、一本のクナイが男を目掛けて走った。
 それも、届く前に何かに弾き落とされる。
 方向を狂わされたクナイが地面に突き刺さった。
「クナイ一本で俺を仕留めらると思ったか?」
「いや」
 男は笑い、私は首を振る。
 その回答に満足したのか、男は更に攻撃して来い、と手招いた。
 ――馬鹿にされているのか。
 それとも、相手にされてすらいないのか。
 どちらにせよ、こちらから動かなければならないらしい。
 全く、一流の忍と名を馳せた男が何をしているのか。
「――では、行くぞ」
 刹那、私の身体は男の視界から消えた。
「ほぅ。 姿くらましか。なかなかいいのが来たようだ」
 私は男の背後を狙い、短刀をその首目掛けて振り下ろした。
 が。
 それが掻っ切ることはなかった。
 私の腕は男に掴まれ、捻りあげられる。
「……」
 しばらく踏ん張っていたが、骨の妙な軋みと痛みに負けて手から短刀を離す。小さな音を立てて短刀は落ちた。
 男はその腕をそのまま引き、私の顔を近付けた。
「気配を消しきれていない。 お前の甘さはそこだ」
「余計なお世話だ。 闘う気がない相手に指導のつもりか?」
 方眉を跳ね上げた私は男を睨む。
 男は私をじっと見つめ、面白いものを見つけたように目を細めた。
「……そうだな。五年。 五年経ったらもう一度相手してやる」
「何を言っているのかわからんな」
「五年後に再戦を約束してやってるんだ、少しは喜べ」
「喜ぶべきことか、それは?」
 男は私の腕を離すと、傲慢に笑ってみせる。
 そのまま後ろに飛び、近くの木の天辺に登った。
「五年で強くなれ。そうしたらちゃんと相手してやる」
 じゃあな、と男は霞の如く消えうせた。
 握られていた腕を見つめ、私はため息をつく。
「…………厄介な男に目をつけられたか」



 それから。
 私は修行をし、確実に力をつけていった。
 奴との一方的な約束の五年など、あっという間に過ぎてしまった。
 己の上司に任務報告を終えたとき、背後で気配が生まれた。
 振り返ることなくクナイ一本で威嚇した。
「少しは鋭さが増したか」
「……! お前は」
 声に驚き振り返れば、あの約束をした男がそこにいた。
 上司も目を丸くしたが、やがて笑いが起こる。
「おお、やっと来たか。この腰抜け」
「誰が腰抜けだ。 こんなちっさい器におさまっている男に言われとうないの」
「ほら、貰いに来たんだろ。連れて行け」
 そう言って私を指差した。
「あの……話の意図が見えません」
「そうだな。言ってなかったな。そいつはお前の婚約者だ」
 上司の悪い冗談だと思ったが、そうでもなかった。



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 突発的にまた変なのを書き上げました。
 次書く小説のテーマが決まらないのでずっと悩んでます。
 ジャンルは異世界召喚モノなんですが。
 キャラも大まかなストーリーも構築されつつあるんですが。
 まあ、それ書き上げて何が見えてくるのか考えたいと思います。

 最近キャラが増えてくれない。
 156人もいるんだから少しくらい合体〜とかして新しいの生まれてよ、って自分に言いたくなった。
 日本が舞台になるので、名前考えるの楽しみです。
 あ、今日は名前考えよ。

「その胸の高鳴りはお前を戦場へ導くのだ」 

September 03 [Wed], 2008, 8:44
「ははははは!」
 男の空を劈く高笑いが耳によく響く。
 傲慢に顔を歪め、男は見下した。
「――ってことだから。お前は今日から俺のものだ」
 何故そうなる。
 女性は眉根を寄せた。
「寝言は寝てから言え。 用がないなら帰るぞ」
「俺のものだと、言っただろう?」
 眼前の男が掻き消え、女性の後ろに風が生まれる。
 風を肌で感じ、身体を動かそうとしたときには後ろから抱きしめられていた。
「…………はなせ」
「いやだ。」
 女性は身体を捻って脱出を試みたが、すっぽり男の腕の中にはまっており、しかも頭の上には男の顎が乗せられている。
 ――何故、わたしなんだ。
 急に大人しくなった女性を不審に思ったのか、男は顎をどけ、腕を緩めて、女性の顔が見えるよう自分のほうにくるりと回した。
「……どした?」
「…………何故……」
 女性の声は小さかった。心なしか肩が震えているようにも見える。
「?」
「何故……わたし、なんだ……」
 男は悟った。 そうか。
 すっと目を細め、馬鹿げた芝居を引っ込めた。
「ずーっと大事に守られてきた姫なんて俺には興味ねぇ。
 むしろ、その身を挺して姫様を護ったお前が目にとまった」
 女性が顔を上げた。
 その表情はどこか切なげだ。
「いつ、どんなときに仕掛けても、お前は真っ先に姫の側へ寄った。
 そのために負傷して精神だけで立っていたあの時も。
 仲間は一切お前に触れず、姫に駆け寄ったときも」
 男が、女性の左肩を強く握った。 女性が顔をしかめる。
 傷口が開いたのか、左肩部分の服が赤く染まって行く。
 男は女性を少し離して今しがた自分が開いてやった傷口の部分に小さく口付ける。
 そしてそのまま抱きしめられた。
「……お前を傷つけていいのは俺だけだ。
 俺と一緒に来い。二度と怪我はさせない」
「戯け。 死にたいのか?」
「今のお前に俺が殺せるのであれば、の話だがな」
 男は女性の腰を攫って軽々と抱き上げると自分の頬を摺り寄せた。
「な……!」
「ま、今のお前じゃ俺に攫われるのがオチだな」
「ま……待て! わたしを攫っても何の得もないだろうが!」
「俺は、みんなのお姫様はいらねぇんだ。
 俺だけの女王がいりゃあ、それでいい」
 瞬間、女性の顔が呆けた。
 …………この男、何を言ってる。
 そんな女性の顔を見て、男は笑った。
 先ほどとは違う、優しさがほんの少し込められた声で。
 そして、女性の耳元で小さく囁いた。
「奪還しに来る王子はいねぇ。 愛してやるから覚悟しろ」
 同時に。
 男と女性はその場から姿を消した。

 事実をしるのは、二人を煌々と照らしていた満月のみ。



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お久しぶりです。
一体自分は何を書いているのかと問い詰めたくなる内容ですね。
オレ様か。相手はオレ様なのか。
そしてヒロインは男よりも漢らしいカッコ良い子かよ!ってね。

……頭おかしくなったのかなぁ。

自己陶酔御一行様01 

May 25 [Sun], 2008, 22:46
 ツグミは今日も九条と補習を受けていた。
 何故こんなにも点数が悪いのか自分でも分からない。銅は天才級の頭脳の持ち主だから授業に出てなくても良い点数が取れる。
 和葉は一回聞けば理解できるらしくこちらも問題ない。
 ついでに言えば腹違いの姉であるクイナも成績が良いらしい。
 ツグミと一緒で会計は苦手らしいが悪い点数を取ったことはない。
(はぁ……なーんで俺ばっか……)
「ツグミ手が止まっているぞ」
「あ、ああ……すいません」
 九条に指摘され、ツグミは問題の続きを解きにかかる。
 しばらくツグミのことをじっとみていた九条が口を開いた。
「そうだ……ツグミ。お前の従姉弟の白柳クイナはどんなヤツだ?」
「へ?」
 間抜けな声で返事をしたら眉間にしわを寄せられた。
「クイナですか? ふつーの女の子だと思いますけど」
「ふむ。さすがに一緒に暮らしていなければあまり知らないか」
 シャーペンの動きが止まった。ギギ、と効果音が付きそうなくらい顔をぎこちなく動かした。
「それ誰に聞いたんですか」
「篠村だが、なにか?」
「あ……いえ、別に」
 正妻の子供でないクイナはアパートで一人暮らしをしている。時々本家に呼ばれるらしいがツグミは家で会ったことがなかった。
 幼少の頃は一緒に暮らしていたのだが、いつの間にかいなくなっていた。
「そーいえば」
 呟いたクイナに九条が顔を上げる。
「?」
「クイナ、俺の家にいたことがあるんですけど、部屋知らないんですよね」
「一つ屋根の下なのにか」
「無駄にでかい、ってコトもあるんでしょうけど。ちっさい頃遊んだあとは、男の人に連れられて帰るんです」
 あの時は何も考えなかったが今思えばものすごく怪しい。
「いつだったか後をつけたこともあったんですけど……結局あいつが家のどこから降って沸いて出たのか未だに理解できません」
 あいつはどこへ帰ったんだろう。同じ敷地内にいたことは確かだが、いそうな場所に心当たりがない。
 ツグミだっていい年だ。家の構造ぐらい分かっている。無駄に部屋数が多いのは親戚などが団体で留まりに来るからであってその中にクイナの部屋があってもおかしくないのだ。
 しかし、どこにもない。
(――ホントにあいつどこにいたんだよ)
 九条が時計を見ながらツグミに尋ねた。
「クイナの髪は地毛か? 妙に明るいが……」
 クイナの髪はこげ茶で、ドライヤー焼けをしているのか光に透かすと茶色に見える。
「ああ。染めてますよ。小さい頃は綺麗な黒髪でしたけど」
 だから、久しぶりに会ってもすぐに気付かなかったのだ。
 ツグミの答えに「そうか」とだけ呟き、九条は立ち上がった。
「今日の補習はここまででいい」
「え。でも――」
「篠村に怒られてな。 一日ぐらい休みを入れろ、とな」
「はは……そーですか。ありがとーございます」
 あの篠村が九条になんて言ったんだ。そんな簡単に補習サボれる先生じゃないんだぞ!
 ツグミは銅達が教室で待っているのを思い出し、道具をまとめて部屋から出た。
 ツグミの気配が完全に消えた後、九条は椅子に座り直した。
 彼の背後に花魁姿の女性が一人現われる。低く頭を垂れた。
『九条様、お呼びで』
「春蘭(しゅんらん)、烏鷺(うろ)姫は見つかったか?」
『残念ながら。あちらにはおられないかと』
「そうか……では、門を開けておいてくれ」
 主の久方ぶりの帰館に春蘭が嬉しそうな声を上げる。
『お帰りになられるのですか?』
「ああ。丑三つを過ぎると思う。 だからその時間に頼む」
『御意』
 春蘭は一度頭を上げ、お辞儀をして消えた。
「……今夜は長くなりそうだな」
 空は、闇色をしていた。

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 次回拍手の内容にちょっと絡んでくるこ漏れ話。
 九条が九尾と聞かされてもふつーに接するツグミは強い子だと思います。
 又はただのバカとか。

 てか九条、ツグミにお姉ちゃんの情報聞くなんて下心丸見えな気がするのは私だけ? 

いざ勝負! 

May 22 [Thu], 2008, 10:41
 課題で出た「じゃんけんを知らない人に一からじゃんけんを教える」の応用編。小説にしてみる。400字以内、というオーダー付。
 せっかく書いたのでupすることにしました。ちなみに加筆修正版です。

 ※男二人、女一人出てきます。

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「これからじゃんけんするですよ」
 中国人女性がナイフ片手に微笑んだ。
「じゃんけん?」
 その隣でスーツ姿の男が首を傾げ、女性が目をぱちくりさせた。
「オー知らないですか? じゃんけんには三つの形があってそれで勝負しまーす」
 女性は片手を拳にする。
「これが“グー”。 そしてこれが“チョキ”」
 人差し指と中指を開いた形を作った。
 サングラスを掛け、葉巻煙草をふかしていた男が手を開いてみせる。
「でもってこれが“パー”」
 スーツ男が感心したように頷く。グラサン男が口元を笑みに変え、スーツ男の片手を開かせる。女性がグーを出し、グラサン男がチョキを出した。
 女性は指を振って見せるようにナイフを振ると、スーツ男に説明する。
「こーしてグーチョキパーが揃うと“あいこ”になるネ」
「あいこ?」
 オウム返しに問えば、
「三竦みの関係で、も一回勝負できるですよ」
 と教えられた。 OK? と聞かれたので先程より強く頷いた。
 グラサン男がグーチョキパーを順番に指差していく。
「グーはチョキに強い。チョキはパーに強い。パーはグーに強い」
 そうか、それで三竦みか。
 だったらその逆の流れだと「弱い」ことになる。
 スーツ男は顔を上げて二人に頷いて見せた。
「理解した」
 女性は腕を高々と掲げ、男性はチョキからグーに形を変えた。
「頭の回転は悪くないネ。 いい事よ」
「ビジネスには大事だしな」
 グラサン男の瞳が鋭さを増す。
 ――いよいよか。
「じゃあワタシの言葉のあとに出すですよ?」
 女性の掛け声のあとに三人の手が動いた。



 さてここで問題です。 この三人は何を決めるためにじゃんけんしていたでしょうか?

 @暗殺する順番
 Aケーキを切る役目を決める
 B誰が最初に(同じ職場の可愛い女の子に)アタックするか










 正解は……Aです。
 最初は@だったんですけど「あ、普通だ」と思ったのでケーキにしました。ちなみにバースデーケーキね。
 これを考えていたときに丁度ブラクラ一挙に見てた頃だったのでキャラモデルがそこから来たのだと思います。
 ですだよ姉ちゃんと大哥と見習い水夫さん。


 ……じゃんけんの説明がこれほどむずいとは思ってなかった……

「足掻けば足掻くほど、それは己の敗北を認める過程となり」 

April 23 [Wed], 2008, 16:15
 彼女は眠そうな顔ではっきりと言った。
「やがて冥界へ堕ちるであろう」
「そ……んな……」
 俺の足から力が抜ける。 目の前の女は何を言っている?
「だから、私が来たの」
 女は一歩前につめる。俺は後ろへ下がった。
 紫の軍服に身を包んだ女は軍人ではない。
 むろん、生きてすらいない。
 だってここは――三途の川なのだから。その入り口で二人は向かい合っていた。
「俺が……俺が何をしたっていうんだ! 人も殺してない、万引きもしていない、善意ある人間だったはずだ!」
「確かに」
 女の声は静かで威圧も感じられないが、聞き逃せない。
 聞かなければ、ならない気がする。
 ――いや、聞かなければならないと錯覚させられる。
「あなたの生前は普通だった。よくもなく、わるくもない。
 でもね、」
 女の目に、鋭い光が宿った。 刹那、俺の横を風が過ぎた。
 いや違う。女が動いて俺の横を通り過ぎたのだ。
 女の左手が、俺の後ろに伸びていた。
「こんなものを連れて来てしまった」
「え?」
 振り返れば、黒いフードをかぶったモノがいた。人間かどうかはわかりかねる。それの首に女の手が食い込んでいた。ゴムのように食い込む指にはとんでもない握力が加わっている。
 女の唇が動いた。
「シニガミ」
 死神? 何故死んだのに死神が憑く?
「これは死神と呼ばれる獣。 取り憑いた人間を喰らい、輪廻の輪から外してしまう。
 食われたものは死神が死ぬまでヤツのハラの中でもがき苦しみ続けるの」
 言って、さらに力をこめるが死神はビクリともしない。 もう死んでいるのか?
『…………ソンナ力デハ倒セナイゾ小娘』
「……チッ」
 女は死神の首から手を離すと俺の首根っこをつかんで後ろに跳んだ。
 三途の川には俺以外にも人はいる。
 女と同じ格好をした眼鏡を掛けた優男もいた。
「あいつは私が執行する。 そっちは任せた」
 優男を見ずに告げ、女は俺から手を離した。 優男は俺に近付き、俺の額に指を当てる。
「はいはい。あまり壊さないでくださいよ。黎朿(らいし)が怒りますから」
 ピン、と弾かれた。
 俺が三途の川で覚えているのはそこまでだ。



 今いるのは、病院のベッド。
 暗い空間から白ばかりの明るい空間に放り出されたので目が痛い。
 数回瞬くと、俺の胸に突っ伏していた妻が顔を上げた。
 真っ赤にはれた瞳。 涙の筋が乾いていた。 それが再び潤う。
「あなた…………っ!」
 妻は俺に抱きついた。

 ああ、暖かい。 これが生者(しょうじゃ)。
 女の指が冷たかったことを思い出す。 アレも、死者なのか。


 俺は、この世に戻った。







 40年後に再びあの場所へ行くまで、女の顔を忘れていた。







「今度はちゃんと死んでから来たのね」
「そうじゃな。ちゃんと死んだな。 葬式のあとから来たし」
 そう、と女は笑い、背を向けた。
「じゃあ、いきましょうか。 閻魔天が待ってるわ」


------

 へーい。魂魄死刑執行人系列のお話でした。 今回は虎鶫の彼も登場しております。
 相変わらずの即興ですので誤字脱字、かみ合わない場所があるやも知れません。

 レポートの下書きが終わったのでタピんグ練習がてらに挑戦。

「退屈を凌がんが為に人は何かを為すのだ」 

February 12 [Tue], 2008, 23:21
 クイナは首をかしげ男を見上げた。
「何それ?」
「ちょっとした知り合いが言った言葉だ」
 男は椅子に座って無造作に足を机に上げた。
 ……クイナはというと、縄で両手を縛られ、後ろに回されている。
 俗に言う拘束といった類だ。
 まあ、何故クイナが男に捕まったかという話は……省いておこう。
 とりあえず、捕まえられていた。
「何であたしが拘束されなきゃいけないのかの事情はなんとなーくその言葉で理解できた」
「ほぅ。小娘のクセして頭の回転は速いか」
「伊達に二桁生きてないわよ?」
「オレは三桁になるんだけどー」
 クイナはむぅと唸る。
 クイナを捕まえた男は生徒会の人間で三年生と言うことになっているがそんなの嘘だ。
 齢三〇〇年を数える妖怪である。
 褐色の肌に薄めの髪が後ろに撫で付けられ、クイナを気だるそうに見下ろす瞳は紫。
(だいたいにして妖怪に掴まっちゃうあたしが意味わかんないのよ! こんなんじゃ当主様にお叱りくらっちゃうしー!! ああ! ツグミは何処よ?! 無事なんでしょーねぇ!)
 クイナの胸中を読んだのか、男は欠伸を噛み殺しながら言った。
「今他のメンバーが白柳ツグミ確保の為、追跡中。
 和葉と銅の守りが厳しいのか捗ってねェようだな」
「当たり前よ。あの二人の守りは堅いの。 よわっちい妖怪じゃ話になんないわよ」
 敵の陣に拘束されているというのにずいぶんと強気な小娘である。
(めんどくせーなぁ。九条戻ってこねェかなー)
 白柳ツグミの関係者で親類だからとりあえず人質程度にはなるだろうと九条に言われ捕まえたがうるさくてしょうがない。
 白柳家は気性が荒いと言うがこの小娘はそれをきちんと継承したようだ。
 ……ツグミとは正反対じゃねえの?
「……ちょっと」
「あ?」
 クイナに呼びかけられ、男は返事をする。
「ここ、隔離されてる?」
「……はぁ? 何で隔離されなきゃいけねーんだよ。そこのドア開けりゃぁ廊下に出るっての」
「でも……結界の中みたいよ、ココ」
 言われて男が立ち上がった。
 気だるそうな表情を一掃し、ドアに向って咆哮ひとつ。
 一秒遅れて風圧が狭い室内をかき混ぜる。
「きゃ……!」
 クイナはバランスを崩して床に伏す格好となった。
「おいおいおいおい。ジョーダンきっついぞ」
 男は傷跡もないドアを見つめ呆然と突っ立っていた。
「小娘、結界やぶれるか?」
「種類によるけど威力はツグミの守りに挺している二人の足元にも及ばないわよ」
 男はクイナの傍にしゃがみ、縄を解いてやる。
 手首をさすって柔軟体操を交えながらクイナは立ち上がった。
 ドアに近付き、手をかざす。
(…………三重……四重結界? こりゃ厄介のレベルじゃないじゃない)
 クイナでも本気で挑まなければ破れそうにもない。
 一旦後ろを振り返り、微笑を浮かべる。その表情に男が首をかしげた。
「ぶっ倒れるかもしれないから、その時は受け止めてね?」
 男の返答を待たないでクイナは神経を集中させ始める。

 数拍して、「解!」とよく通る声が響いた。





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 えー小説書きたい衝動にかられ、即興小説にチャレンジ☆
 今回は自己陶酔御一行様(と臥待さんは呼んでいる)より、次回の流れはこんな感じよ〜なノリで書きました。
 メインは現段階で公開している拍手のヒロインクイナちゃん。
 容姿は普通。美人でもなければブスでもない。どこにでもいそーな女子高生なのです。
 でも霊力だけは並外れてます。(ツグミ>クイナ>銅>和葉)

 
 にしても、下のパソコン画面に表示されるの遅ッ!!
 も少し早くならんのか!

「決して消えない、過去がある。決して消せない、過去がある」 

January 09 [Wed], 2008, 23:40
 あの日、惨劇は起こった。
 任務遂行の途中、敵と応戦。
 その最中、オレの術が暴発した。

 敵味方全てを巻き込んで。


 生き残ったのは、オレだけだった。


 ――それから一年。
 月日の流れは速いもので、あの事件から一年が経過した。
 重症で帰還した女性はすぐさま病院に担ぎ込まれ、一週間生死の境をさ迷った。
 退院すれば、聞こえてくる、自分を罵る言葉。
 
『アイツガ』
『オレカラ全テヲ奪ッタ』
『同族殺シ』
『化ケ物』

 術が暴発したせいでオレは術が発動できなくなり、階級も降格。非戦闘員として扱われることになった。
 ……それは当然の結果だ。
 仲間を殺して、生きながらえて、それでもまだ『自由』が許される。
 監視される日常だが、気にさえしなければ普通の生活と変わりない。

 事務の仕事に異動し、最初は嫌がられた。
 でも最近は話しかけられるようになったし、少しだけど、心を許してくれるようになった。

 相変わらず人の二倍は職務をこなしているが、苦にはならない。
 生きることで、殺してしまった仲間に償いができるなら。
 それが、許されるのなら。

 
 
 その日は、いきなりやってきた。


 任務に出る者達から報告書類を受け取る仕事の最中、一人の男が現れた。
 出された報告書を預かり、それで終わるはずだった。
 男はオレの顔をじっと見て「ああ」と呟く。
「……もしかして、同族殺しの人?」
 ビクンと肩が跳ねた。 後ろの方で同僚達が息を呑む音が聞こえた。
 今は言われなくなった、嘲りの言葉――
 オレは深呼吸し、顔を上げる。
 笑顔を作り微笑んだ。
「そう呼ばれるのは久しぶりですね」
 ――よくもこんな平静とした態度が取れるものだと自分で驚いた。 その代わり、掴んだ書類には若干しわがよっている。 それにはもちろん男も気付いているだろう。
「そう? 今の時期は上でも何回か上がるケド」
 オレは苦笑し、書類に確認済の判子を押した。
「そうなんですか? 困ったなぁ、もう上に書類を届けに行けませんね」
 彼女の後ろでは、上司が男に言おうか言うまいか迷っている。同僚も仕事をこなしているがこちらのことが気になって集中できないでいる。
(早く帰ってくれ!!)
 オレは胸中でそう念じた。
 男はオレの目から視線を逸らさずに告げた。
「いい加減、隠居でもしたら?」
 男には、その瞬間オレがどう映ったのだろう。
 驚愕に目を見開いてしまった。
 心の動揺が筒抜け状態になった。
 ――ああ、この男は間違っちゃいない。
 ずるずる思いを引きずっているなら、さっさと捨てればいいんだと、直球に投げてくる。

 散々言われてきたが、こんなにグサッと来る言葉は初めてだ。
 同時に、こんなに優しい言葉で言われたのも初めてだった。
「隠居、ですか。 ……そうですねー隠居もいいかもしれませんねぇ」
 いっぱい時間がありますもんね、と考えると、相手もそうでしょそうでしょ、と便乗してくる。
 
 ――隠居か、それもいいかも知れない。

 それから二、三話して男は帰っていった。
 視界から姿が消えて、オレはうつむく。 しばらくして、誰かの手が肩に乗った。
 ゆっくり振り向けば、心配そうな顔をした上司と同僚が映る。
「大丈夫か?」
 上司は本気で心配してくれた。

 その上司に精一杯答えるようにオレは笑って見せたが上手く笑えなかった。
「大丈夫です。 仕事はちゃんとやりますよ」



 その日、遅くまでかかって自分の仕事を終わらせた。
 そのままこの組織を支える老人に会いに行く。





 日付けも変わってしまって、門前払いにされるかと思ったが、通してもらえた。
 部屋に入り、老人と対面する。
 笑顔が眩しい老人で、オレは彼が大好きだった。
 部下全てを自分の息子、娘、孫のように思い、そして育てていた。

「刹那」
 老人がオレの名を呼んだ。
 その目には、全て見通されているのだろう。
 老人の悲しげな瞳と目が合う。
「もう、決めました」

 あの男に言われたからじゃない。
 ほんの、きっかけのひとつに過ぎない。
 心は、当の昔から決まっていたのだ。



 彼等を殺してしまったあの日から。


「隠居、いたします」


 その言葉の意味を知るのは、ほんの数人。
 片手で数えられるくらいしかいない。


「……そうか」


 老人は、短く呟いた。


「考えを改める気はなさそうじゃな」
「すいません。 でも、これでここは安全になります」


 オレが隠居すれば、剣呑な空気がなくなる。




「お主の隠居、許可する」










 数日後、オレは仲間に、見慣れた景色に別れを告げた。






 これからあと半世紀は暗い闇の中。








 

 オレは、組織の地下牢に幽閉された。


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 へーい、相変わらず暗ーい話しかかけないお馬鹿さん。
 主人公は二〇代前半の女性です。一人称が『オレ』になってます。
 名前が刹那なのはこの頁のデフォルト名だから。(え。そうなの?)
 前に出てきた”刹那”とは全くの別人です。


 ……実はNARUTO夢をこんな設定で書こうかとか思案していた。
 が。ネタが浮かばなくなったので脳内封印。
 設定をちょっと変えて書いてみました。

 文章は相変わらず即興。

「目を合わせ、直感でコイツやばいと感じたら即踵を返せ」 

January 05 [Sat], 2008, 14:07
 そう隊長に言われたのが数刻前。
 自分より背の低い子供の隊長だけど、そんなの気にしない。
 だって、任務を言い渡す時の彼女の顔は、紛れもなく『隊長』の顔だった。
 全員の命背負ってるんだ、一つだってこぼすわけには行かない、と少女は告げる。
 “敵の殲滅が第一だが、己の身が危ないと思ったら引け。挽回など機会があればいくらでも出来る”
 そう言って、笑顔で死ぬな、と喝を入れられた。

 だから、死ぬわけには行かないんだ。
 あの隊長が、影でいろいろ言われているのは知ってる。
 下っ端の自分達の尻拭いをさせられていることも全員知ってる。
 知っていて、誰も助けないし、隊長もそれは望んでいない。
 
「お前は、僕が倒す」
「ほぅ、偉そうに。小僧に我が倒せるか?」
 眼前の敵は、視線を合わせれば尻込みしそうなほどの殺気を持っていた。
 身体に鞭打って動けるようにしたなら逃げればいい。
 そんなのは分かっている。

 けど。

 僕だって五番部隊なんだ。
 隊長ばっかりカッコ良いとこ取られてたまるもんか。

 そんな思いもあって、気付いたら、身体のあちらこちらから出血して、鉄のニオイでいっぱいだった。
「はっ……はっ…………ッ!」
 動けなくなった足に、敵の刃が突き刺さる。
 その柄をつかみ、グリン、と回した。

 肉が、引きちぎられる。

「う、あ……あああぁぁぁあああああッ!!!!」

「もう少し色気のある声で鳴けぬのか」
 敵は口元を吊り上げながら何度も何度も傷口に刃を振り下ろす。
 肉が切断される音が断続的に続いた。
「う゛! あ゛ぁ!! い゛ッ!! があ゛ッ!」
 声なのか、ただの音なのか良くわからない。
 足の痛みはだんだん麻痺して分からなくなってきた。
 涙で顔はぐちゃぐちゃだし、額には脂汗がびっしり浮かんでいた。
「――さて、そろそろいいか。 鳴かなくなってきたしな」
 言って敵は傷口から刃を引き抜いた。
 そして、それを振り下ろす。

 切っ先は、喉を狙っていた。
 軌道はずれていない。 寸分の狂いもなかった。


 なのに。

 何故――


 僕は生きている。


 ふと顔に、柔らかい感触が当たる。
 ぼやける視界で見上げれば、血に染まったような真っ赤な髪が映る。
 その顔は歪められていて、泣き出しそうな子供のようだ。
「――愚か者」
 底冷えするかのような、怒気を含んだ声。
「た、い……ちょ…………」
 支えていたのは、間違いなく隊長だ。
 彼女の腕の中は暖かい。額に浮いた脂汗を袖口で拭ってくれる。
「ほう。やっと狙っていた小娘が出てきたな」
 敵が隊長を舐めるように上から下まで観察する。
「ま、ずいぶんと小柄だが、いい声で鳴いてみせよ」
 唇がめくれ上がった。
 そんな敵を害虫でも見るように隊長は見下した。
「残念だがそれは断る」
 良く通る声は、怒りを露に伝える。
「オレの大事な部下をここまで可愛がってくれたんだ。お前にはさっさと消えてもらう」
 そう隊長がまくし立て、ふわりと僕の身体が地に付いた。
 そう思った時には、

 隊長は、

 敵の懐に入り込み、


 上下を切り離したところだった。


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 新年早々ずいぶんグロい内容だな(お前が言うな)。
 そして微妙なところで終わったな。
 いやータイトルを見たときにNARUTO夢でも行こうかとも思いましたが、脳内にあるだけだしやめとこ。ってことになりました。
 なので前々回に引き続き。グリーシス隊長でお送りしました。

 
P R
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