あいどんわなだい

July 26 [Mon], 2010, 0:03

君のかけらが私から落ちる。
脚と脚の隙間、永遠に埋められない深い深い穴の間から、どろっと白く濁った半透明の君のかけらが落ちる。
私はそれを指ですくい、手のひらにのせる。
さすがにこれは食べたら引くよな、と思いながら鼻先に近付けると、ほんのりと青臭い君のにおいがした。
私の体から出て来たものなのにちゃんと君のにおいがするなんて、愛しくてたまらない。
舌の先でつついてみると、ほのかな水の味が君のにおいに混じって消えた。

「さみしいよ」
君がそう言うたびに私まで寂しくなる。
私もさみしいよ。
そう伝えられるのは君だけ。
私が甘えられるのも君だけ。

一時間だけの密会。
夜になっても熱が引かない部屋をいたずらにかき回す扇風機の横で、君が私の服を脱がす。
机のライトを点けただけの薄暗い部屋の中で、ぼんやりと映る君の顔は女の子みたいに可愛らしい。
「僕が死んだら悲しい?」
うん、そううなずいて唇をつける。
唇に、頬に、おでこに、体中に、私の存在を今だけでも残しておくために、君の細い体に舌を這わせる。
か細い声で鳴く君が今だけでも私のことを考えていてくれたらいいなと思う。
明日には消えてしまう記憶であっても。

私の頭を抱えた君が、私の体の上で揺れる。
繋がった部分から水の音がして、くっついた肌の隙間からぺったりと汗の感触。
君が耳元で何度も私の名前を呼んで、叫ぶように君のかけらが私の中にこだまする。
満ちることのない穴が、君のかけらであふれる。
唇から漏れる息と私の名前、それだけで私は明日も君のいない世界で生きて行ける。

浴室の床の上、君のかけらを弄ぶ私の指は昨日の記憶を反芻するかのように忠実に動く。
私はそれを口に入れる。
ねっとりと舌に絡みつく君のかけらは、「どこにも行かないで」と縋る君自身のようだ。
唾液と一緒にゆっくりと飲み下すと、ようやく君と私はひとつになる。
食道にねばついたままのこの感触を、次に会った時どう説明しようか考えて笑う。

私は今日も元気です。

よかったまだわたしたちは他人だ

June 14 [Mon], 2010, 1:09

「一人になると二人を感じる
 よかった まだ わたしたちは他人だ」

やまだないとさんの「西荻夫婦」という漫画が好きで、生まれてから今まで読んだ漫画の中で一番好きな漫画は何かと聞かれたら迷わず「西荻夫婦」を挙げると思う。
それくらい好きだ。
この漫画に出会ってもう8年くらい経過したのだが、もう本当に好き。
一生好きでいたい漫画。

それでこの漫画の帯に書いてある言葉が上記のものなのだけど、最近ようやくこの言葉の意味が分かった気がする。
恋人氏と一緒にいる時、私はこの人の恋人、彼女であるということをよく忘れている。
恋人氏の友達などに「彼女だよ」と紹介されると、ああそういえば私彼女だったわ、と思い出す。

しかし家に帰りひとりになると、恋人氏のことを恋人だと認識している時間の方が長いわけで、それは例えばメールの返信をする時だったり、次に会う時に何を着て行こうとかそういう思考をする時だったり、誰かに(主に母に)恋人氏の話をする時であったり、まあ結構な頻度で思い出す。
でも一緒にいると、何というか、恋人というものを超越した関係になってしまっている気がして、忘れてしまう。
恋人だけど恋人以上の関係、家族的な、親友のような。
恋人氏の人柄もあるんだろうけど。

初めて「西荻夫婦」を読んだ時は理解出来ないところも沢山あった。
でもある程度の年齢を重ねて、ひとりのひととこれだけ長く付き合って(恋人氏は付き合ったひとの中で一番交際期間が長い)、今は大体言いたいことがわかるようになった。

幼かった私は恋愛というものを、求めて与えること、だと思っていたけど、今は、共有すること、だと思っている。
どれだけ求めてもそれは還って来ないことの方が多かったし、いくら与えても結局は見返りを期待してしまう。
そんな辛い恋はもうしたくない。
お互いに好きなものを持ち寄って、ああいいね、これはこうじゃない?と話す時間はとても楽しい。
そこには利害関係など存在しないし、ただ純粋に好きなひとの好きなものを知りたいとか、新しい知識を得たいという欲求しかない。
共有出来ない部分ももちろんあるし、それは無理に合わせることもない。
昔は無理に合わせていたけど、疲れるよ、それは、やっぱり。
RADWIMPSの歌詞じゃないけど、好きなひととの最大公約数を増やすような行為だね、恋愛というものは。

恋人氏はのんびり飄々と生きていて、他人の意見に惑わされず、常に楽しいこと、自分の好きなことを追求している。
出会ったころは私を男にしたようなひとだな、と思っていたけど、私は恋人氏ではないし、恋人氏は私ではないので、尊敬する部分も憧れる部分も沢山ある。
いい関係だなあと思う。
他人同士であること、それが私を救っている。
あなたはあなた、私は私、それを理解してくれるひとで良かった。

よかった まだ わたしたちは他人だ

「空気人形」と「告白」

June 10 [Thu], 2010, 10:02

ツタヤさんで借りた「空気人形」の返却期限が迫っていたので、夜、母が出勤してから観た。
是枝監督の映画は以前から好きで、「ワンダフルライフ」と「DISTANCE」はDVDまで買ってしまったほどだ。
ARATAが好きだというのも凄く大きいけど、あの独特のやりきれない空気感はなかなかやみつきになるもので。
「誰も知らない」も好きだ。
どんどん破滅に向かって行って、どうしようもない展開に叩きのめされ、救いようのないラストに心臓がきりきり痛む。
久し振りにまた観たい。

そして「空気人形」。
是枝監督なのにCG、是枝監督なのにBGM、という違和感を最初覚えたけれど、そんなものをすぐに吹き飛ばしてしまうほどの是枝ワールドがそこには広がっていて、ああ、やっぱり好きだなあと思った。

板尾さんみたいなひとは絶対今の日本に沢山いると思う。
寂しいけど、寂しいという感情を埋めてくれる誰かはそう簡単に見付からない。
そこで人形を選ぶ、という男の人は、知られていないだけで(最近は大分市民権を得たようですが)結構居るんじゃないかな。
冒頭、お風呂場でオナホールを洗うシーンは、切ない、というよりも男の人のそういう剥きだしの欲望を見せ付けられた感じであああああってなった。
あの役は板尾さんにぴったりだと思う。
なかなかあの哀愁を出せるひとはいない。

空気人形のペドゥナは、その名の通り人形のように可愛らしく、無表情の演技も凄く良かった。
目だけを動かすシーンも、こっそりベッドから抜け出すシーンも、「性欲処理の代用品」としての悲しさをいちいち醸し出していて、いたたまれない気持ちになる。

ARATAはもう言うことなしでいい!
というのはファンの贔屓目もかなりあると思うけど、このところずっとクールな役ばかりしていたARATAの久し振りに穏やかで柔らかい優しい演技に、このひとの幅の広さを再確認した。
「無口な男」の役はもうこの人以外出来ないんじゃないかと思う、いや本当に。

全編を通して流れる一定の是枝色の空気は、やっぱり凄くいい。
観終わってからじわじわ蝕まれていくような絶望感も、その世界の外側にいることで味わうやりきれなさ、救いようのなさも、良かったな。
深夜に観たのがまた良かったのかも知れない。
これは深夜に観る映画ですね。


そして昨日、「告白」を観て来た。
原作は買ったものの、冒頭の改行の少ない文章の羅列で挫折してしまい、最後まで読めなかった。
でもそれが逆に良かったのかも知れない。

映画としてここまで完成されたものは、久し振りに観た。
というか初めてかも。
映像効果の美しさ、ゆるやかに流れ続ける音楽、ポップなまでに壊れきった生徒たち、馬鹿としか言いようのない大人たち、それに煽られていく絶望と恐怖、悲しさ。
それらのバランスが完璧で、最初の森口先生の告白の重さをラストまで引っ張ることに成功していると思う。

子持ちの私は子どもが死ぬ映画ではいつも泣いてしまうので、やっぱり今回も初っ端から泣きっぱなしだった。
どこをどうしたら如何に人間を絶望させられるか。
次が分からない展開に終始ドキドキしっぱなしで、自分でも脈が上がって行くのが凄くよく分かった。
松たか子、かっこいい。

ラストの「なーんてね」という言葉がまたこの映画を更に重くしていて、観終わってからもしばらく動けなかった。
圧倒されてしまった。
一緒に観た恋人氏も、「ああああああああ」ってずっと言ってた。
2人で「やばい」ばっかり言ってた気がする。
精神的なダメージが凄く大きくて、今日は血まみれの夢まで見てしまった。
何だこの映画。

でも凄く、私は大好きだ。
各自が壊れているところが凄くいい。
これをまた小説で書いているのも凄い、しかもデビュー作。
また最初から読み直そうと思います。
まだ鉛を詰められたみたいに引きずっている。
凄い映画だった。


この2作を観て思ったのは、やっぱり映画は映画館で観たい、ということ。
DVDだとどうしても時間を気にして観られないことがある。
いつでも観れる、というのが逆に良い作品を見逃してしまう理由になっている気がする。
これからは気になった映画はなるべく映画館で観よう。
こんなに自由な生活をしているのだから、観なきゃ損だ。

そしてどうしようもない、重苦しい映画、というか邦画が私は大好きだということ。
これはまあ、昔からだけど。
洋画には出せない独特の陰湿さがね、いいんですよ。
じめっとした感じが。

これだけ熱の入った感想を書いたのは初めてかも。
最後の方は「凄い」しか言ってないけど。
また色々映画を観たくなった。
ああああああ(まだ胃が重い)。
P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:傷だらけのあおい
  • アイコン画像 性別:女性
  • アイコン画像 誕生日:1984年9月21日
  • アイコン画像 血液型:AB型
  • アイコン画像 現住所:愛知県
  • アイコン画像 趣味:
    ・睡眠
    ・音楽
    ・読書
読者になる


2010年07月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新コメント
Yapme!一覧
読者になる