ディアボロスを討つ・後編 

2005年12月23日(金) 16時29分
 道中は問題なかった。まぁ、もともと危険が多い場所でもなくさらについ最近通ったばかりなのだ。危険があるというほうがおかしいだろう。
 とは言え、やはり『異界の口』が近づくにつれて緊張が高まるのがわかった。それは私だけではないのだろう。周りの者も皆、口数が減る。あるいはことさら戦術に対して話しだす。未経験者がいるわけではないのだがだからこそ逆に緊張する。一度敗れた者たちで行くのだから。
「アストンさんは初手から全開でお願いします」
 その言葉に頷き、私も門を潜った。いや、あれは門ではないのかもしれない。門に見える何か、術については詳しくないがテレポやデジョンの仲間なのかもしれない。それともあのタルタルの言葉を信じるなら眠りについているのか……。
 軽く頭を振り、迷いを解いた。そもそも深く考える事は得意ではない。私に期待されている事は殴り倒すそれだけならば下手な考え休むに似たり、だ。
「行きます」
 そう言いながら黒魔道士たちが呪文を紡ぐ。敵は強大無比、ならば気勢を制すためにも不意打ちは上策、そういう事なのだろう。冒険者にならず近衛騎士を目指していたならば「卑怯」と思ったことだろうが、馴れというものは恐ろしい。至極当然のように私も気を練る。
 眩い雷光がディアボロスを襲う、と同時に私たちの眼前に悪夢が立っている。前回はこれにあせりを抱いたが今回は違う。練り込んだ気合を叩き込むと同時に拳を振るった。
 右、左、右、左、右左右左……殴るという行為以外の行為をすべて止める。迷いも思考も息も。勝負は最初の極わずか。ならばその間に終える。

 しかし、我ながら未熟だと思うことはある。結局のところ、その力に任せた事で肝心の戦いの中身を覚えていないのだから。これでは他の冒険者に尋ねられたときに答えようがない。いや、言えるとすれば同じモンクに対してのみ、か。迷うな、と。

ディアボロスを討つ・前編 

2005年12月21日(水) 21時39分
 ようやく勝てた。それが感想だ。いや、感慨に浸るほど苦戦をしたわけではないかもしれぬ。だがそれでもやはり喜びはあった。
 過日にディアボロスに挑んだ際は完膚なきまでに叩き伏せられた。こちらの力、技を駆使する事もできず倒された私は一度仲間たちと別れた。無論、一期一会の冒険者の仲間だ。もともと長期に渡り組むということはない。縁があったらまた会おう、それで十分な間柄だ。
 だが彼らと別れた最大の原因は『このままでは勝てない』と思ったからだ。いかに熟練した冒険者と言えど、いや熟練しているからこそ時を改める必要があることもあるのだと私は思っている。
 そう考え、自らの修行の旅に出ようと思った時の事だった。荷を纏め、ジュノからダボイへと向かおうとする私の耳に一つの話が飛び込んできた。すなわち『ディアボロスへの挑戦者を探している』と。
 内容がそれだけであれば私はそのまま修行の旅に向かっていただろう。先の戦いで冒険資金どころか最悪路銀すら尽きかねない状態である。だがその時に入ってきた言葉は「あと一人火力があるものがいれば……」と言うことだった。
 私の中で何かが囁いた。今考えればあれはアルタナの導きだったのか。それとも単に私の直感か。私は他のサンドリア国民のような熱心なアルタナ信者ではないのだからおそらくは後者なのかもしれぬ。どちらにせよ、その言葉に惹かれ、私は募集している者たちにあった。
 その構成は先とはまったく違うものだった。召喚士に赤魔道士、白魔道士に黒魔道士が2名、大よそ肉弾戦とは縁も所縁もないようなものたちだった。
 いや、実際に冒険者の中には高威力の魔法のみで敵を殲滅すると言う戦法を取るものもいるらしいとは聞いていた。だが実際に目の前で見ることはこれが初めてだった。一瞬だけ『いいのか?』と躊躇してしまう。
 だが私は彼らに賭けてみる事にした。先の構成では全力を尽くし切っては危険と思い、序盤は枷をかけていた。だが今回は違う、最初から最後まで止まることない戦力で挑む。それは私が好み、そして得意なことだった。

合成を行う 

2005年12月21日(水) 7時36分
 冒険者と聞くともっぱら荒野や遺跡に向かい、財宝や珍しい品を集めていると思う者も多いだろう。実際にそのような者も多い。だが中には荒野や遺跡で財宝を見つけるのではなく、さまざまな技術を磨き、モノを作る事で糧を得る者も少なくない。たとえば私の弟などは冒険者としても技量も去ることながらさまざまな技術に手を出すどちらかと言えば職人のような奴だ。
 私も今でこそ雑多に手を出しているがその昔は『合成』と呼ばれる分野には手を出してはいなかった。どちらか――いや、確実に武器を振るう方が気楽な私としては『合成』という分野はどちらかと言えば支出するだけ、に思えていたからだ。無論、今でも支出の方が多くなる事も多いのだが。
 そんな私が合成を始めるきっかけとなったものはやはりリンクシェルにいたからだろう。その時に所属していたリンクシェルには合成を行う者も少なくなく、そのために私も興味を抱いたのだ。その頃には忍者の修練にもやや飽いた、というのも理由だったかもしれない。
 かくして私も職人の道を歩み始めた。ただし、『合成』と言っても簡単に一つではない。
 ・鍛冶
 ・木工
 ・彫金
 ・裁縫
 ・革細工
 ・骨細工
 ・錬金術
 ・調理
 ギルドとしてはこの他に釣りというものも在るがあれはまた別なものだ。
 ともかく先に挙げたギルドの中で私がその時に選んだものは『革細工』であった。理由としてはリンクシェルの中でその職人になろうとするものがいなかったこと。そして素材が現地調達できる、ということがあったからだ。私にとって多くの合成は素材をとってくることから始まるのだから。

ディアボロスに挑む 

2005年12月19日(月) 22時38分
 夢の霊獣ディアボロス。その力は今までにないものである。ならばと思い彼の者に会おうとするもなかなか機会がない。リンクシェルの仲間たちは戦いに行った、という話を聞いたのだがあいにくと私はその時は所用があり、共に向かうことはできなったのだ。
 だがやはり同じくディアボロスに会おうと言う者はいたらしい。
『ディアボロスに挑む仲間募集中』
 千載一遇と言えばさすがに大げさだが渡りに船なのは確かだ。自分がどれほどの力になれるか解らぬがこれでも多くの冒険は潜り抜けてはきている。ディアボロスの真の力が何するものか。この時の私はそう考えていた。後から思えばあれは単なる傲慢不遜であったのだが。
 程なくして私は5人の仲間と出会うこととなった。エルヴァーンの忍者、タルタルとミスラの召喚士、ヒュームの黒魔道士にミスラの赤魔道士。これにエルヴァーンのモンクである私が加わる事となった。募集主である忍者は既に数回、ディボロスに挑んでいるらしい。一瞬だけ私の心に不安がよぎった。
 ともあれ私たちはディアボロスに会うためにソ・ジヤに向かった。場所は以前に来たこともあり、迷うほどの道ではない。実際の道中は何事もなく『異界の口』と呼ばれる地にたどり着いた。
 道すがら経験者に話を聞くとどうもディアボロスは冒険者に対して怒りを覚えているらしい。その怒りとは何か解らぬし、何に対してなのかも解らぬ。ただ理解する事はディアボロスを討ち、平伏させねばその力を借りることはできないと言うことだ。単純と言えばこれほど単純なこともない。
 仲間たちと打ち合わせをし、来る戦いに備える。もっともモンクである私には策など在って無きの如しだ。いつも通りに構え、いつも通りに踏み込み、いつも通りに殴る。打算も妥協も加減も過激もない。できることはこれだけだし、やることもこれだけだ。後は仲間を信じるのみ。
 だが……結果は惨敗であった。いや、圧倒的ではなかったとは思う。だがやはり悪夢は悪夢だったのだ。唱えるは眠りの呪文。これは痛みで耐えれる。だが問題はナイトメア。まさに悪夢、真に悪夢。限界まで加速しようとした私の拳も、赤魔道士の高速詠唱も、すべてが停滞し、倒れ伏す。打ち倒されたの私たちだった。

夢の霊獣ディアボロス 

2005年12月19日(月) 4時15分
『新たに契約できる召喚獣が現れた』
 そんな話をリンクシェルの仲間から聞いた。その名はディアボロス。かつて氷の大地の地下に眠る謎の遺跡、ソ・ジヤで遭遇したことのある魔物――いや、霊獣か。そう言えば前に遭遇したときに、テンゼンが『夢の霊獣ディアボロス』と呼んでいたか。
 何はともあれ召喚術を学ぶならば新たな力は必要だ。いやこれを持たぬ召喚士も少なくはないがその秘めたる力はやはり冒険者としては捨てがたい。ならば彼のものと契約を交わすため、会いにいねばならぬ。幸いにしてディアボロスに合うためにはウィンダス水の区、鼻の院にいるケルトトなるタルタルに会えばわかるという話も聞いた。
 早速、鼻の院に向かい、ケルトトと会った。どうも瞑想中にディアボロスに閉じ込められ、伝言を頼まれたなどと言っていた。伝言の相手は私たち冒険者らしい。これも縁か。
 だが以前に戦ったときは非常に苦戦をさせられたものだ。特にナイトメアという技はその名の通り悪夢としか言い様がない。傷を負っても目覚めることがない夢、夢の霊獣の力に相応しいと言えばこれほどのものもないだろう。あの時のことは今でも悪夢のように覚えている。

去りし日々よ(1) 

2005年12月19日(月) 3時50分
 冒険者となってこの世界を旅を始めてどれほどの時が流れたのだろうか。ふとそんな考えが頭をよぎった。思えば随分と長いこと旅をしてきたように思う。
 誇りと伝統の都であり故国たるサンドリア。
 新参とは言え活気のあるバストゥーク。
 知識の国――いや、あの住人のことを考えればとはとてもそうは思えぬのだが――ウィンダス。
 かつて、サンドリアという国しか知らなかった私にとってはどの国々も未知なるものだった。
 今でこそ多くの世界を気軽に飛びまわれるようになったとは言え、たまにあの時代を懐かしく思うこともある。そう、あれはまだ私が駆け出しだった時のことだ。
 あの頃の私は赤魔道士という職に憧れていた。白魔法、黒魔法だけではなく武器に魔力を込める特殊な魔法を使うだけではなく剣を持って戦える。そんな戦い方は当時の私には素晴らしいものに映っていた。
 もっとも今でこそ冒険者仲間では花形とも言える赤魔道士だが当時は『半端者』『役立たず』などと言う呼ばれ方すらされていたような気もする。私もそれで赤魔道士の道を閉ざしたのだから……。
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