開戦 (1)

March 21 [Mon], 2011, 12:24


地響きが起きた。
だがそれは、自然が作り出した音ではなく、大量の人工物が木々を薙ぎ倒して進む音だった。

薄暗かった森に、次々と光が射し込む。もちろんそれは、自然が望んだことではない。
人が、己の欲望の為に自然を破壊しているのだ。
「なぜ分からないのですかっ!貴殿方だって、利用されているに過ぎないのですよ!」
黒く光るロボットたちに追われながら、1人の少女が叫ぶ。もちろん、ロボットたちに向けられた言葉ではなく、先頭を進むロボットの頭上に座る人物への問いかけだ。
丸い頭の天辺に、あぶなげなく座る人物は、ロボットたちとおなじ体型をしていた。丸い体の上に乗った丸い頭、それには不釣り合いな程に細長い手足が付いている。
「いいんだよ。僕は、あの方の為に生きているんだから。捨てられたら、死ぬだけさ」
当然のように答える表情に一切の迷いはない。
対する少女の顔は曇った。
「そんなことより・・自分の心配をしろよ。ほらっ!」
ロボットたちの手が一斉に伸びて、少女に向かう。全ての腕を間一髪のところで避けながら、少女は前へと進み続けた。
この先が崖になっていることを2人は知っている。だから、追跡の手が緩いのだ。だから、少女が避けられるのだ。
しかし、ロボットの操縦者は知らない事が1つあった。
そしてそれは、これからの運命を大きく変えることになる。

「さぁ。行き止まりだよ。どうするの?アリステナお嬢様」
「わたくしをその名前で呼ぶなと、アミリアから言われていらっしゃるのでしょう?」
ジリジリと詰まる間合い。アリステナの背後は、底の見えない崖。カラカラと落ちていく小石の音は、どこまでも遠くなり消えていく。
ニヤリと笑う目前の敵に、アリステナは笑って見せた。それは気品が漂う美しい微笑み。
「わたくしは、サントワーク王国第一王女にして、正当なる後継者、アリステナ・クルーヴ・レストアです。貴方のような方に捕らえられるわけには、参りません」
「じゃあ、死ぬ?」
「いいえ」
アリステナが、ゆっくりと首を横に振る。
「いつかわたくしが戻る日まで、わたくしの国をお預け致します」
「なにを・・・
「それでは、ごきげんよう」
 ・・・っ!?」
その身を軽やかに谷底へと躍らせて、アリステナの姿は消えた。
あまりにも予想外だった展開に、追跡者は呆然とするしかない。自ら死を選ぶなら、それも良しと言われている。だが、これでは生死の確認すら出来ないではないか。まさか、ぬくぬくと育った王女に、こんなところへ飛び降りる度胸があるとは思っていなかった。
「まぁ、良い。どのみち助からないさ」
とりあえず、3体のロボットに後を追わせて、もと来た道を帰っていく。どうせ、あの姫さんもロボットも、谷底で壊れているに違いない。




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