セソラシド 

August 10 [Wed], 2005, 22:34

あでやかな身に
浴衣をまとふと
少女ひとつで町に出て

まつりの在り処を
ゆきづりの教師に
訊ねれば
あやかしい話が
ついてまわる

それは
まこと不幸せ

寝ても歓楽
よせても夢の
町はかげらう飛ぶ
すいぎんの下
椿象の匂ひ悲しき
油蝉の羽世界

ええ
それでもちつとも
かまひやしないの

花の匂いどもが
そはそはと
うかれ病まひ
あどけない体が
今すこし悪であるなら

凶筆に候 

July 28 [Thu], 2005, 22:32
均整のとれた
文筆は夜になると
また騒がしく
優良の思潮
笑ふ夢を見る

雨もやひの夜半
空は昏昏と消え
茫やり思ひ冷え
郷愁を片手にとつて

汗を私は濡れた
袖で拭ふだらう
医者に止められた
喫煙をやるだらう

あとはそれとなく
身を捩り
じつと手首を見ては
痩せた我慢に
始末をつけたらう

苦しきことを
楽しむべきではない
などとなどと
からかふことも
義務とさえ思へ

値せずとただの
一言を呟いて
終いの海へ
首まで浸かる其の
道の過程でくるふだらう

オンゴーイング 

July 07 [Thu], 2005, 22:14
デイゼル機関は
ちやうど七つ唸り
私はそれを数えた
まだ鼻の奥が
ずきずきとする

廃島線の構内を
ぐるり見渡せば
事故の影響で
ごつたがえす
ひとの群れの中で
偏狂者が

危険な遊具を模した
高度なことわりを持ち
捲り上げた袖で
鼻血をざつと拭ひとる

さうだ
西日の赤は月に変わる
蹶起も目の前に
在るかのやうだ

熱の車両の
鈍き胴体の中で
胃の内容物の込み上げる
高揚に駆られ

白い蛾の肩に留まるを
小雪のやうだな
と思ふ私も
間もなく
射す西口は人質通り

漆月の夜洪堂 

January 29 [Sat], 2005, 19:24
どうぞ
お気の済むまでと
わたしの為に
注がれた
七杯の器

少し長居を
し過ぎたかと
時計を見る
さきほどから
それを幾度となく
繰り返している

清貧の味を
拭いたいと
むきになつて
口をゆすぎ

あやしい夜の
あやしい雨は
艶消しにして
そぞろ憎い

いづれにもない
いづれにもない
この身の端を引く
やみはくりぬかれ

秋はどうしようもなく
深く酷いものねと
同席の女は
畳まれた
その白い手に
美しく語る

感情謄本 

January 22 [Sat], 2005, 10:48
もつとも
これはゆいごん
ではないのだ

さきほどから
水銀中毒の
つむぢかぜが
未曾有とわたしを
呼んでゐて

ゆふべより
わづかに高くなつた
月には癇癪が
ひそんでいるよふだ

ゆきずりのひとよ
崩落の音は
聞こえるだらうか

手厚い夏の在りの儘を
すこうしづつ
かくしてゐるものが
見えるだらうか

数日前の蒸す晩に
あはれみを催した
はりつけのひとよ

今にもわたしは
じわじわと
死に長けて
確実に擦れてしまふだらう

だからもう
いううつなど
ただのいつときも
数えなくて良いのだよ

クラァケン 

January 11 [Tue], 2005, 19:55
レインコオトの
布地貧しく
忍ばす色や
詞も透けとおり
常軌と偽つた
風は軽く
軽いが故の薄つぺらだ

つらなる不安に
たへきれず
指折る順序を誤つて
いうびん受けの
カタカタ騒ぎ

かなわんや
かなわんやと
云ふのであり

片足はもう
沈没しちまつてヰたので
いつそのこと
はづしてしまひなさいと
あなたは云ひ
卑怯者のやうに
笑いやれば

半明の不安の
溜め池に光を
放置した
わたくしの原因も
天井の青い辛みに負け

若い陶器の
擦れあふやうに
黄ばむカアテンの
隙間より避難する
そとはしづかな嵐

青き野の春の火花 

December 12 [Sun], 2004, 21:40
針金の様に
疲労した
腕を無技巧に
折り曲げて

この身を預けた
かのひとは
奥歯のうつわで
かたと泣き

廃ビルディングの骸骨に
ふたりヒソヒソ
成り済ます

そら右肩の肉は落ち
顎を浮かせて
嗚咽を垂らし
慰めの舌を
くびりあうなら

日々はヨソヨソ
暮れるんで

ふたりくるった
資材置場で
執拗に杭を打ちつけて

かのひとは
また歯を鳴らし
散った合図が
火花となって

内出血の花の咲く
重機の地平へ青き陽は
ぐずぐずぐずと
崩れていった

蜈月は嗤う 

November 24 [Wed], 2004, 23:37
ささりささる
やわらかな足裏に
ささりささるる
小石の冷たい

君のその時が
やってきて
暗幕の影でほら
青がひいてゆく晩春

呼気の低さは
ささやかな
感触の嬉々として
解き流れ

わたしは疾うに
果てていたのに
尊い君の
恥知らずな八重歯は
苦い仕打ちを
あつらえる

あの竹薮を渡り
夕日を攫い
閉じ切ったはずの
引き戸の隙間から
漏れる着衣の乱れ

いまは心見が逃げて
しまわぬように
見上げるカーマイン

痩せた月の目で
君の無事を
嗤うわたしを
色白の光が射抜く初夏
++++++++++++++++++++++++

スコープ 

November 16 [Tue], 2004, 19:21
姉を消した
初秋の匂い苔を
夜更けに見立て

口元についた
餌の欠片をそっと
拭いやった君
吉凶に匙刺した
僕の嘘つき

頭上遥か
水面浮かぶ天体の
影を揺らすナツメ球

溺れることで
成り立つ多くは
手の甲から
捲れ上がるもの

その詩 
 水泡眼と覗き筒

僕の彼岸の川
ブリキの筒で覗く
水魚水魚交わり
強く咬んだ片唇の
裸足はもう汚れていた

稚拙に入り組む
夜の野放図
その詩 
 頂天眼と人の皮

たったひとつ
姉に似た左の目
夜含んで重くなり
空 泡吹いても
まだ気は確かだ
+++++++++++++++++++++++
金魚その二。【頂天眼】【水泡眼】

残党時代 

October 31 [Sun], 2004, 21:19
相も変わらず
生きるより上を
知らぬ吾らは

同じ穴の人らに習い
追い詰めるより
他を知りません

人を追えば
僅かな抵抗も
空しく鎮圧され

和ヶ原は赤い
一斗缶の中で
燃えています

爆ぜる木片
写実じゃ足りず
遅日酔いまして
不覚の赤い眼差し

世を追えば
孤立する事態に
二段銃構え
スローガン撃ち抜き

草の匂い
乾ききらぬ
セメントの曇り
同胞坂の上に落日

哨戒機の去る
遠く果敢なき坩堝
赤い瓜がなり
揺れて揺れます
+++++++++++++++++++++++++++
連作「7坂」作品1。
ハラカラ坂から「残党時代」です。
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