長い長いさんぽ 

May 09 [Tue], 2006, 23:53
須藤真澄著 ビームコミック 720円+税

世の中に猫漫画は山ほどあれど、ここまで愛猫への愛を語った漫画はないかもしれない。
漫画家須藤真澄の飼い猫ゆず。
彼の老境にさしかかった生活+その最期。

うちにも1歳と2歳の猫がいる。
いつかこの子たちにも、そして私にも平等に訪れる死のことを考えると憂鬱になる。
自分のことはまあいい。
あんまり他人に迷惑かけないようにひっそり死ねればそれで。
問題は猫だ。
猫は可愛い。
子供もいないし、基本的にインドア派なので仕事に行っている意外はほとんど家の中ですごし、かつ猫との同居生活をおこなっているため、ちょっとした猫依存状態。
生活の一部になっている。
たった二年間一緒に過ごしただけなのに、もう猫がいなかった生活を思い出せない。
きっと作者もそんな気持ちなんだろうな。
わかる、わかるよ!と、しみじみとする一冊である。
いままでもたくさん、ゆずが主人公の漫画を読んできた。
だからこそ、この最期の一冊を手に取る勇気がなかなかでなかった。
大好きな漫画の最終回を読みたくないように。
読んでしまったら、もうこの楽しかった作品は終わってしまうから。
ゆずがいなくなってしまうから。

最初はいつもの日常漫画だったというのに、中盤からゆずの調子があれよあれよと悪くなり、そして最期・・・
もう泣けて泣けて。
桜沢エリカのカッチー(猫)が亡くなる漫画を読んだときの20倍くらい泣けます(当社比)

でも冷静になると。
捨て猫や野良猫となり、事故や保護されても保健所で処分される、なんてことがまだまだ多いこのご時世にここまで作者もそうだけど、何万という読者にも愛された猫がいたであろうか。
ゆずの死に涙した人の数だけ、ゆずが愛された証拠でもある。
私があと40年生きても、こんなに愛される自信はない。
そう思えば、ゆずは世界一幸せな猫なのかもしれない。

その証拠がこの本です。

いま、週末に思いっきり泣くのが流行ってるってニュースで見たけど、この本読めば、一週間分と言わず、1年分くらい泣けますよ。
涙腺の硬い方、ぜひどうぞ。

失踪日記 

May 31 [Tue], 2005, 21:13
吾妻ひでお著 イーストプレス 1140円+税

友人に薦められて購入。
吾妻ひでおの漫画読むのは、SFマガジン以来で、懐かしいやら、しばらく見ないうちになんだか大変な事態になっていたのね、と感慨深かったりしました。

漫画家吾妻ひでおの実話漫画。
突然の失踪から警察に保護されるまでの前半と、アルコール依存症で強制入院させられる後半の二部構成。
本人が意識して軽いタッチで描いているので、読んでいてもそんなにしんどいわけではないのだが、後半のアル中部分は中島らもの「今夜すべてのバーで」を思い出してどんよりした。
個人的には前半の、失踪からホームレス生活、そして警察に保護されるまでの部分が大変面白かったです。
人間、働かなくても結構、生きていけるもんですね。

才能のある人ってどこか欠けていたりするわけだが、吾妻ひでおもしかりで、凡人の私からみると、その生き方はどこか歪んでいておかしい。
でもそれが彼の漫画の良さなんだろうし、それでいいのはわかっているのだけれど、やはりなにか悲しい。
この悲しさは、彼の生き方が哀しく思えるからだろうか。
それとも、自分が凡人だということに気付いてしまった哀しみだろうか。
一読者の私としては、吾妻氏のお体が早く良くなることを祈るくらいしかできない。

プ〜ねこ 

May 31 [Tue], 2005, 21:00
北道正幸著 講談社 524円+税

絵がうまい漫画家は山ほどいるが、この作者は絵も上手く、かつ猫も上手い。
猫と暮らし、猫の形、動作、一見無表情に見えるが表情豊かな顔を知っている猫好きの私が言うのだから間違いない。
かなり、猫がいい感じの漫画である。

内容は、シュールな作品群であり、登場人物は猫を中心にその猫の飼い主や、両親がでてきたりである。なんかうまく説明できないな。
いうなれば”伝染るんです+猫+可愛さ”だろうか。
理不尽な漫画に面白みを感じる人、ただ可愛い猫が好きな人には薦めたい本である。
私が特に気に入っている話は、明智小五郎のパロで登場人物が全部猫、とくに小林少年のショタ猫ぷりには、ショタ属性のない私まで背筋がゾクゾクした。
こんなに可愛い少年(猫だが)を描ける作者はゲイか潜在的なゲイかもしれない。
こんなに可愛い少年(あくまで猫)を漫画で読んだのは久しぶりだ。
猫もページを読み進むうちになぜか、ビジュアルが神木隆之介になっていた。
たまらない。
最後の亀甲縛りなんてどうしたらいいんだろう。
たまらない。
そんな猫好きに推薦したい一冊です。

ZETMAN 

March 06 [Sun], 2005, 16:30
桂正和著 集英社 648円+税

10代20代前半の世代には、可愛い女キャラの出てくるラブコメ作家で有名な桂正和。
30代にとっては、桂正和といえばウイングマンだ。
この作品は、ビデオガールから女キャラの可愛さだけ持ってきて、ウィングマンで培ったアクションをさらにシャープにして、最後に昭和ライダーの哀愁をくっつけた、30代にはいろいろ懐かしい作品になっている。

ZETMANは究極の人間体を求める大人と、大人の欲する力を持ちながらもその力を己の信じるもののために使おうとする子供の物語である。
大人のずるさ、卑怯さ、と言った汚い部分を必要以上に紙面に書き、子供の純粋さ、純粋さゆえの傲慢さと対比させることに成功している。
対比しすぎて、いささか残酷な暴力描写が多く、ワクワク感を削ぐわけですが、まあ刺激になれた子供にはちょうどよいのかも?
ヒーローモノではおなじみのツインヒーローで、ひとりは1,2巻の主役でもあるジン。強大な力を持ちながら、育ての親じいちゃんの教えに従い平和な生活を守ろうとする。
もうひとりは3巻以降の主役、高雅。
甚大な権力と財力を持つ親のもとに産まれた何不自由ない少年は純粋に正義の力に憧れれ、ときに行き過ぎた行動をとる。
1〜2,3〜4巻と別々の主人公を軸に書かれている本作ですが、5巻以降はこのふたりの少年が交わっていくんでしょうか?(コミック派なので展開を知らないんだけど)
バトルロワイヤルみたいな理不尽な死に抵抗感がある人以外にはオススメです。
GUNTS読める人は余裕かと。
ストーリには関係ないけど、表紙の加工凄いですな。

魔女 

January 14 [Fri], 2005, 22:28
五十嵐大介著 小学館(IKKICOMIX) 第一集 629円

一般的に魔女と聞いて、どういう姿を想像するだろうか。
黒いマントに、杖、そしてつばの広いとんがり帽子。
古文書片手に魔方陣を描く。
この本には、そういう”いかにも”な魔女は登場しない。

第一集の一話「SPINDLE」では、神の声を伝えることのできる遊牧民族の少女が神の声を織物に紡ぎ、異国の男を愛した西洋の少女は、大人になって魔女となった。
二話「KUARUPU」には精霊を操ることのできる少女が登場し、精霊を操る呪術師となって私たちに精霊の世界を覗き見させてくれる。
それは摩訶不思議で、人外であらざる故に異形の世界だ。
ホラーではない、なにかもっと原始的な怖さを、夜の暗闇を恐れるような種類の恐ろしさをこの作品は運んでくれる。

それにしても、こんなに老人を書き分けられる漫画家そうはいない。
よく似ている老兄弟の書き分けまでばっちりだ。
群集の中の老人ひとりひとりも完璧だ。
その代わり、メインであるはずの少女たちの顔が怖いんだけどサ。

凝った話もさることながら、凄いのは絵!
凄いというより、凄まじい。
ページひとつ、構図ひとつ無駄がない緻密な絵は、漫画というよりはアートに近く、読む者を圧倒する力を持っている。
ひさしぶりに、アタリだと実感できる漫画家だ。
諸星大二郎、福島聡あたりが好きな方にはおすすめ。
世界に入るまではしんどいけど、一度扉の向こうを覗いたら、何度でも覗きたい、読み返したいと思える久々の漫画でした。

二話「KUARUPU」の最期。
「視る準備はできている?」
呪術師クマリが現代人に問いかけるこの言葉は、クマリの言葉を借りた作者からのメッセージだ。

ハンバーガーを食べるたびに思い出そう。

機動旅団八福神 

January 12 [Wed], 2005, 23:08
福島聡著 エンターブレイン 1巻 620円

手塚治虫文化賞を受賞後、初のコミックである本書。
前作「少年少女」の匂いを期待していると肩透かしを食らう一冊だ。

帯には「選ばれし八名の少年少女!彼ら兵士に与えられたのは機密の機動兵器 その名も”福神”!!!」とある。
というわけで、読んでわかるとおり舞台は、現代もしくは近未来の戦時下の日本。
敵はアメリカ、同盟国は中国と大変わかりやすい構図になっている。
下手にエイリアンとかと闘っていないだけ、リアルな印象。
物語の焦点が、八名の少年少女に当てられているので、戦争の定義が曖昧なところはバトルロワイヤルの世界観に似ているような・・・。

あと、福神な。
へんな太ったひょうたんに手足がついたようなフォルムで、人間一人が乗り込んで戦う姿は、見た目は違うもののエヴァンゲリオンを彷彿とさせ、そして、福神初の乗組員に少女が選ばれているあたり、最終兵器彼女を連想させます。

ともかく、まだ一巻なのでなんともよくわからない印象。
大作になりえるのか、迷作で終るのか。
とりあえず、戦争漫画にありがちな”戦争はいくないよー”的な押しつけがましさがないところは好感がもてますね。
でも戦争はいくないんですけどね。

僕と君の間に 

November 10 [Wed], 2004, 0:32
鈴木央著 集英社 1巻 505円

ファンタジーモノで、鈴木央の本領発揮といったところか、ライジングインパクトよりも作者の意気込みが感じられるいい漫画だ。

文明が滅びた、遥か未来が舞台。
失われた科学技術を駆使し、閉じられた世界からの脱出を夢見るセルマとホーク。
最後の大人は、この静かな世界でセルマにホークの子を産むことを望むが、若い二人は外の世界へ飛び出すことを夢見る。

ここまで読むと、最近の漫画では高橋しんの"ゆめのカケラ"と田村由美の"7SEEDS"が思い浮かぶが、"僕と君の間に"のいい点は、作者の楽しさが伝わってくる点だろうか。
漫画を仕事と割り切っていない、漫画を描くことを楽しいと感じている作者の気持ちが伝わってくる。
これは鈴木氏の人柄によるものが大きいのだろうか。
ファンタジーという点も良い結果に繋がった。
ライジングインパクトでは微妙だった絵柄も、城や貴族が闊歩する世界観ではぴったりマッチだ。
主人公のホークは、最初みたときどうしようかと思ったが、慣れてくれば可愛くなるもの。
すっかり1巻の最後のあたりでは、実写版をやるなら神木隆之介くんだな・・・と勝手にキャスティングするほどに可愛くなってきた。
年の差カップル、強い美人なお姉さん、SFファンタジーがお好きな方にオススメの冒険活劇になりました。

ところで、常々、鈴木央には何か足りないものがあると思っていたが、今回「僕と君の間に」を読んでそれがわかった。
そうだ、エロだ。
エロスが足りないのだ。
というわけで、今回の一番のオススメページは次巻予告でアマゾネスに握られているホークの顔でしょーか。
無いはずのショタ属性がうずくぜ・・・

ヒストリエ 

October 24 [Sun], 2004, 0:43
岩明均著 講談社 1,2巻 各533円

ファンにとっては待ちわびた感のある岩明均の新作、1,2巻の同時発行の作品その名は「ヒストリエ」。
1巻に巻いてある帯には”アレキサンダー大王の書記官エウメネスの波乱に満ちた生涯!”とある。おおー!壮大な叙事詩になる予感!
期待していいんですか、いいんですよね、岩明先生・・・

1巻では青年のエウメネスが、旅をしながらアリストテレスなどと出会い、その才能を垣間見せる話が数話載っており、じっくりと主人公エウメネスの人となり、知性を読者に伝えている。
まあ、長編の導入部にはいい感じでしょう。
主人公の顔が、寄生獣の新一くんと違いがないような気がするが・・・そこはキャラよりストーリ重視の作者故の問題ということで、流しておこう。
それにしても、つくづく主人公に華がない作家だのう。
今市子に肩を並べる。
地味キャラを書かせたらアフタヌーン一か。
1巻の後半から2巻丸々がエウメネスの幼少時代の話となっている。
1巻前半では供も連れず、ひとり自由奴隷の立場で旅をするエウメネスだが、幼少時代は奴隷を多く所有する裕福な家庭で育つ様子が描かれている。
幼少から他のものにはない英知と身体能力が発揮されるエウメネス。
天才だけど、やっぱり顔は地味。
なぜ裕福な家庭の少年が、奴隷に身をやつしたのか。
少年が見る夢の謎とは・・・

以上、まだまだ序盤なので、なんともコメントしずらく。
私の感想として、まずは静観し5冊ほど巻を重ねた頃に評判がよければ貴方の蔵書として集めてはいかがでしょうか。
現段階では漫画喫茶で読んでおけば良いレベルかと思われます。
寄生獣と比べるとどうしても、ストーリのテンポがのろく、作品の吸引力と言った点では劣っていますが、ここは長編ということで腰を据えて一人の人間を描ききるということであれば、良いペースなのかも。

欠点らしい欠点はない作品ですが、唯一粗探しをしろといわれるならば、作中に出てくる登場人物の名前が覚えずらい(アンド発音しずらい)ということでしょうか。
なかなか馴染みなくって、紀元前の話って。
とりあえず、まだ主人公の名前が覚えられません。
エウメノス、エウメノス、日本人にはメ→ノという並びに慣れませんな。
3巻までには、慣れておこうと思いますよ、エウメノス。

少年少女 

October 13 [Wed], 2004, 21:10
福島聡著 エンターブレイン社 全4巻 1巻各640円、2〜4巻各650円

敷居が高めな福島聡であるが、この漫画は大変読みやすい作品となっております。
まあ、読みやすいとはいえ福島聡なので、どしょっぱなから主人公の小学生(ヨシコ)が遊び友だち(ジロウ)を古井戸に落として殺し、住んでいる村で村八分になるという話ですが。

重いが、ヨシコがカラリとした性格なのが救われていますね。
全4巻の中には全28話の短編が収められています。
その中に、ヨシコ関連は5話。
小学生から、最終回になると中学生にまで成長したヨシコの葛藤と、それを小さいながらも支えようとするジロウの弟のゴローの健気さが胸に染みますなあ。

それとは別に、性格が悪く、他人の家の事情に首をつっこんでくる宇宙パンダの話や、台詞が一切無い作品、難病の治療のためコールドスリープされたアイドルが数十年の時を経て蘇る話など、どれも珠玉の一品。
短編で収めるには勿体無いネタの宝庫。
こんなに魅力あるキャラたちを短編集で使いきっちゃって大丈夫なんでしょうか、福島先生。
もし、もし、いつか連載の機会がありましたら、ぜひ宇宙パンダを、宇宙パンダを主役にとはいいませんので、準主役にでも据えてあげてください。
その日が来るのを楽しみに待ってます・・・・。

光の帝国 常野物語 

October 01 [Fri], 2004, 0:38
恩田陸著 集英社文庫 495円

私は熱心な、恩田陸"好き"だ。
ファンかファンでないかの境界線は、小説の場合、ハードカバーを買うか、買わないかだと思う。
同様の理由で、アルバムを買わないでレンタルで済ますアーティストのことは"好き"で、アルバムを予約して買うときのは"ファン"なのだと思う。
そんなことを踏まえ、恩田陸好きの私。
ハードカバーは一冊も持ってない(自慢することじゃないが)が、文庫は全部持っている。
なので、この「光の帝国」は私が数々読んだ恩田陸作品の中で、一番気に入っているのだが、やはり文庫なのである。
内容は、常野と呼ばれる土地に古くから住む、少し不思議な力を持った人々の物語である。
彼らは、他の人間より記憶力が良かったり、長生きだったり、見えないものが見えたりする。
主役となる人物は別々で、個々独立している短編が10本収録されている。
どれも不思議で、でもホラーテイスト、でも怖くない。
恩田陸の得意分野。

どの話も気に入っているのだけれど、特にいいのは、一作品目の「大きな引き出し」。
常野の力を持つ兄弟が、普通の学校に通い、だんだん力を開花させていくまでを描いている。小さな事件?は起こるが、基本的に淡々としていて、ドキドキハラハラはない。
でもその、平穏感が常野という国を表しているような気がして、導入には持って来いだ。
表題作でもある「光の帝国」は痛いので、どうもなあ。
恩田陸がこういう作風を書くと、あまりにストレートでちょっと痛い。
コミカルですら感じる「草取り」、最後に常野の平和を感じさせて終る「国道を降りて・・・」
など、10編どれもがいろんな色をしていて、まるでドロップ缶のような作品群です。
普段はキャラが立っていない事が不満な恩田陸ですが、常野物語に関しては、"常野"が主役なので、これでOK。
優しい気持ちになりたいときに読んでください。
2006年05月
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