看板や電飾 

April 13 [Mon], 2009, 22:32
 6日に地震が襲ったイタリアのアブルッツォ州はスキーリゾートでもある。この年始、私もチェラーノという町からアペニン山脈に入った。

 石造りの町の広場に車を乗り入れた時は、中世に迷い込んだ気がした。目立った看板や電飾、音はなく、商店はどこも入り口の狭い石造りの館を利用していた。地元産の生ハムやチーズを売る総菜屋は「300年前のまま」とさりげなく自慢した。

 古さを守る文化をうらやましく思った。泊まったのは貸しアパートだったが、古い屋敷を紹介されたら、喜んで移っただろう。石造りの屋敷は、いるだけで心が落ちつく。

 地震直後に訪ねた村サンタンジェロでは広場に面した17世紀の建物がほぼ全壊していた。教会前の館はイタリア北部の若い一家の別荘だった。家族は復活祭前の休みで訪れた晩に震災に遭い、両親と幼児2人が亡くなった。がれきには自転車や人形が散らばり、鋼材は一本もなかった。

 古い館を求めたのはこの一家に限らない。人は昔のままの空間に心地よさを覚え、いつか来る、あるいは来ないかもしれない危険を顧みない。軽量建材や木造家屋を知りながら、なかなか導入されない。現に80年の震災で約2700人の死者を出した南部の被災地では、耐震建築が盛んに語られたが、結局古いままの再建が好まれた。マフィアの介入や手抜き工事の問題もあるが、「そもそも防災という考えが浸透しない」と耐震工学者は言う。制度より個人の感覚を、将来の備えより今の快適さを重んじるからか。

 極論を言えばシェルター暮らしが一番安全だろう。だが、人はそういうふうにはできていない。どうしてだか、重い石の家にひかれるのだ。

毎日新聞

古い物は残したいけど、耐震も考えないとねぇ。
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