3、単に医療報酬点数表による薬物療法!?

January 09 [Thu], 2014, 13:32
3、単に医療報酬点数表による薬物療法!?

「パンパカパーン。ケッ、テーイ」
 声に、
「何が決定?」
 私は炬燵に蹲った儘答え、だがもし例えば、
「何てお前は駄目な人間だ」
 とか、
「いなくなってしまえ」
 とか声が続ければ、私はあるいは統合失調症の幻視幻覚幻聴妄想。ある種の認知症。多重人格障害、解離性同一性障害。薬物、アルコール依存症なんかの離脱症状。ETC。
「何が決定?」
 まだ私は欄間の隙間や壁の掛け時計、強く弱く凩の吹く空の電線電柱の方へ次々目をやる。
「お悩みのようですが、単に医療報酬点数表に基づく薬物療法は、不向きです、あなたの場合」
「・・・え?」
「対症療法としての向精神薬や睡眠剤の類いは、オーバードース、ドラッグジャンキー、分かり易く言えば個人差による耐性、依存性のシンドロームとも裏腹だから」
「・・・え?」
 と更に私は大声にならないではいない。
「ご免ご免。詳しくは、いつか又説明。ともあれ、炬燵でそうして目だけ辺りを見回し、曇り空の凩の音を聞き、蜜柑を不味そうに食べ、テレビを点けたり消したり、今の君のその儘でいい。ケッテイ!」
 “あなた”がもう“君”になっている。
「はあ・・・。そろそろ近くの公民館にでもと思っていた所。新しい週刊誌を、・・・コンビニでは立ち読みに」
「週刊誌?それが又いい」
 今度は私は思い切り無表情に、
「ほお!」
「主にどんな記事に興味が?」
「・・・興味は、別に只、興味本意で。派手な見出しに釣られて。去年夏までは、今にも中国経済崩壊、韓国経済崩壊、世界恐慌か。秋は東京オリンピックから、直ぐ東京都知事の疑惑。年末年始は日経平均株価一万五千円から、二万円へ一直線と鼻息が荒い。大抵の週刊誌が」
「政治経済に造詣が深いようで」
 私は鼻で笑い舌打ちしながら、
「怖いもの見たさや、反対に誰もがこう書いて欲しいと思うようなことを、面白可笑しく書くから、週刊誌は」
「ですから決定、今のそのあるが儘」
「ですから?あるが儘?」
 私は困ってまさに独り言のようになった。「この件で病院に行けば、どうせ又、向後三ヶ月の治療を要す抑鬱状態。三ヶ月とは一応の目安でもなく、便宜上で、通院が定期的に延々と始まり、大量の処方薬。待合室で、黙って他の多くの患者と順番を待つ間、あの沈黙、何か病気になってしまいそう」
 言って私は、故意に一度笑った。
「なる程。いわゆる日帰りホームレスの方は?週刊誌以外に」
「よくご存知で。次の仕事が見つかるまで、何となくそれも」
「どっちの方が、詳しいかなあ。日帰りホームレス。入門から初段まで。鬱を楽しむ法。上達の秘訣。一緒に考えません?」
「ふーん」
「はっきり、しませんねえ、相変わらず」
「ふー、んー」
 遠く電線に黒い小鳥の群が、風に向け止まっている。交差点の信号機が薄暗がりに鮮明に変わり、手前に黄色い無数の橙の実が、上下左右に大袈裟に揺れ動く。


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日帰りホームレス入門から初段まで  〜鬱を楽しむ法〜
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