ムー太

August 19 [Wed], 2009, 21:26
大都会の片隅に二匹のほ乳類が居た。
 道行く人たちは誰も気づかない。
「とうちゃん。人がたくさんいるね」
「おう。これが大都会ってやつだムー太」
「この中の一人でもだますことが出来れば僕は一人前の大狢になれるん だね」
「そうだムー太。お前はまだまだ半人前だが、狢で有ることに誇りを持つんだ」
「うん。とうちゃん」
「そして、何としても大狢になるんだ。大狢は狢の中の狢だ」
「うん。わかってるよ。とうちゃん」
「だがな、ムー太・・・人を騙すのは並大抵ではない。狢には狢 の作法もある」
「そうだね。眉毛の数を数えてから騙すんだよね。狢大辞典に書いて あったよ」
 大狢は腕を組みながら言った。
「だが、恐ろしい返し技もある。奴らは眉に唾をつけて、数を分からな くして我々狢を混乱させるんだ」
「そんなときはどうすればいいの?」
「はは。今時の連中がそんな荒技を持っているとは思えんから大丈夫だ」
「うん」
「ムー太。いきなり頭のいい人間騙すのはおまえにはまだ無理だ。よ し、あそこを歩いているアホそうな女の子を騙してくるんだ」
 大狢の指さす先には、いかにも頭の悪そうな三人の女子高生が歩いて いた。
「うん。行ってくる」
 ムー太は無邪気に走り出す。
「おねえちゃん・・・眉毛数えていい?」
 女子高生は話しかけられて始めてムー太に気づいた。
「えー!何よーこの動物!」
「ちょーかわいーーーよぅ!」
「狸よ!きっと」
「狐よ!」
「っていうかぁーレッサーパンダじゃない?」
 女子高生たちはムー太を抱き上げてさんざんいじくり回している
。 「ねえ。おねえちゃん。眉毛数えていい?」
「どうしてこんな所にレッサーパンダがいるの?
 女子高生たちはマイペースだ。
 彼女たちの腕から逃れたムー太は父の元へ走り、鳴きながら叫んだ。
「とーちゃんーーー!」
「どうした。ムー太」
「あのお姉ちゃんたち。眉ないよークレヨンで描いてあるよー」
「なんじゃと!」
「どうすればいいの?とうちゃん」
「むむ。眉をクレヨンで書くとは、なんという恐ろしい返し技じゃ。いいか、ムー太。あやつらは、アホそうに見せかけて我々に騙されないような対 策を練っているんじゃ。眉を唾で濡らすなどという、生やさしい技じゃない」
「ほんと?」
「ああ。これで人間の恐ろしさがわかっただろ!」
「うん・・・・でも」
「でもなんじゃ?」
「ぼく・・・・レッサーパンダ?」
「馬鹿たれー!!!!」
 ムー太は大きなゲンコツを貰った。
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