
地方都市に住む幼児が、ある事故に巻き込まれる。原因の真相を追う新聞記者の父親が突き止めたのは、誰にでも心当たりのある、小さな罪の連鎖だった。決して法で裁けない「殺人」に、残された家族は沈黙するしかないのか?第63回日本推理作家協会賞受賞作。 |
(朝日文庫) ★★★★☆
久しぶりに小説でも読もうという気持ちになり、書店で数冊文庫を買って来ました。 そして最初に選んだのがこの貫井徳郎の「乱反射」です。
冒頭に、この小説を要約する一説が書かれている。 「これは、あるひとりの幼児の死を巡る物語である。 その幼児は日本人としてごく平均的な両親の間に生まれ、取り立てて非凡な 何かを発揮する時間も与えられないままに死んだ。たった二歳での夭折は痛ま しくはあったが、決して前代未聞というわけではなく、その意味で人々の記憶に 留まりにくい死だった。事実、幼児の死は新聞の片隅に小さく報道されはしたも のの、続報が載るわけでもなく、そのまま時の流れの中に置き去られた。 幼児が生きてこの世にいたことを憶えているのは、両親とその縁者ぐらいでしか なかった。 しかし幼児の死には、ある特異な点があった。異常、ともいえるそれは幼児の 死を奇怪なものに見せても不思議ではなかったが、一方でごく普遍的な側面を 併せ持ち、それ故に表面に現れた現象としてはただの事故にしかならなかった。 幼児の死は「不運」のひと言で片づけられ、そして忘れられた。 そう、一見不運な事故にしか見えない幼児の死は、実に殺人だった。それも大勢 の人間が寄ってたかって無辜の幼児を殺したという、異常極まりない事件であった。 にもかかわらず、幼児の死の異常性には誰も気づかず、現場となった地点には誰 が手向けたとも知れない花だけが置かれている。犯人たちは今日も、己が死に追い やった幼児のことなど忘れ果て、平凡な日常の中を生きている。 この物語は、後に被害者となる幼児の父親が覚えた、ある小さな罪悪感から 始まる。」
本当に誰にでもある「まあ、いいか」って思ってしまう様な迷惑な行為。 その無責任な行為の積み重ねが、一つの大きな事件をおこしてしまう。 読み終え自分にも身近な問題と感じ、考えさせられる一冊でした。

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