ご主人様、決定 

June 15 [Fri], 2007, 21:59
あぁ、今日は天気がいいな。
洗濯しないと。でももうちょっと寝ていたい・・・。
今、何時だろう?
目は瞑ったままで携帯を探る。

「今、七時っすよ。もうすぐご飯できますから」

ばち、と音がしそうな勢いで目を開けると、見知らぬ男が微笑んでいた。昨日コンパがあった記憶はない。つか、お持ち帰りはしても家に連れ込んだことはないし、ましてや男を持ち帰る趣味はない。
夕べの記憶を何とか掘り起こす。

「おはようございます、ご主人様」

そう言われて記憶の糸を手繰り寄せる。

「夢の続き?」
「残念ながら現実っす。あんたは俺のご主人様っすよ」
「・・・・・俺は男を囲う趣味はねぇ」
「あんたの趣味は関係ねぇよ。俺の趣味」
「はぁ?」
「俺がアンタを気に入ったの。だから俺の趣味でアンタは俺のご主人様に選ばれた」

朝から頭が痛くなりそうだ。
なに、俺の意見無視?

「ほら、顔洗ってきて下さいよ。ごはん準備できてますから」

布団をばさりと剥ぎ取られて洗面所に押し込まれる。
キッチンを通った時ふわりといいにおいがした。
なんだか意味がわからないがとりあえず歯をみがいて顔を洗うと幾分スッキリした。

朝飯をまともに食ったのは何年ぶりだろう。
実家に帰ったときくらいか。その実家にも殆ど帰ってねぇから3、4年ぶり?

「・・・・・・うまい」
「それはよかった」

ヤツのたまごやきは甘すぎず、しょっぱすぎず、俺好みの味だった。

ご主人様、募集しております。 

June 15 [Fri], 2007, 21:56
「ったくあのヤロウ殆ど俺に押し付けやがって・・・・」

ぶつぶつと文句を垂れながら大学からアパートへと帰る道。
もうとっくに暗くなって、電気の切れ掛かった街灯が点いたり消えたりを繰り返していた。
分厚いフランス語の辞書を抱え、所属するゼミの教授に押し付けられたレポートをパラパラと捲る。あーめんどくせぇ・・・。

「っった・・・ッ!!」

余所見をして歩いていたせいで何かにぶつかる。
なんだ、コレ。

「ご主人様、募集しております???」

ぶつかった何か、の首にかかっていたそれ。
はっきりいってアヤシイ。かかわりになるのやめておこう。
きっと俺は疲れてるんだ。
見なかったことにして再び歩きだそうとしてツンと何かに引っ張られる。

「あのさ、気付いて無視ってひどくねぇ?」

し、しゃべった・・・・!!!
なになになに。なんなの、これ。え、人間?
軽くパニックになる。
逃げようともがくも結構な力で捕らえられて動けない。

「俺、結構役にたつと思うよ?」

それ、は逃げようとする俺におかまいなしに話かけてくる。

「だから俺のご主人様になんねぇ?」
「だからっ!なに、その、ご主人様ってオマエ何、人間?ペット?」
「うーーーん、強いていえばペットかな。だからさ、俺を飼ってよ」
「生憎と俺はペット飼えるほど余裕のある生活してねぇんだよ!」

学費だって奨学金だし、とまでは口には出さなかったが。
するとニヤリとそれの口元が歪む。

「あーそれは大丈夫。金はかかんねぇって。だからさ」
「これ、夢?」
「残念ながら夢じゃねぇよ。さ、行こうぜ」
「は?」
「あんたんち」
「ちょ!マジ?ねぇ、マジなの!?」

慌てふためく俺を見て、それはクツクツと笑う。

「あんたのそんな焦った姿初めてみた。可愛いね」

は?

沈黙。

約10秒は軽く時間が止まったと思う。

コイツ、何者?

「あぁ、俺は阿散井恋次。よろしく、ご主人様」

にっこりと笑って俺の手を握ったそれは、硬直したまま動けないでいる俺をあろうことか肩に担いで歩きだす。
何がなんだかわからなくて暴れたとたん、首に衝撃。

「ごめんね」

何かを呟いたような気がしたけど、それは聞き取れなかった。
きっと、これは夢に違いない。
あのヤロウが俺にばっかり仕事押し付けるからおかしくなっちまったんだ、きっと。
そう、目が醒めればいつもと同じ現実が待ってる筈なんだ。




一筋。 

June 15 [Fri], 2007, 21:54
「未練、って言うんかな・・・」

ぽつりと洩らした言葉は吐き出した溜息と共に溶けていく。
眼下に広がる瀞霊廷。どれだけの時をここで過ごしただろう。
随分長いように感じたが、実は短かったのかもしれない。
ココロは何度も揺るがされたけど、動かなかった。
己の道が藍色の風の中に飲み込まれていることに躊躇いはない。
それでもふと振り返った時にちらりと垣間見える様々な色が好きだった。

「弟、ってそんなもんかもしれんなぁ」

やわらかな風がギンの髪を揺らす。まるで自分を呼ぶかのように。






「覚悟は決まったかい?」

優しく問いかけているように見えて、その眼鏡の奥に潜む暗い光は細い刃でギンを射抜く。

「・・・覚悟なんてもうとっくに決まってますわ」

ふぅと燭台の灯を消すと、自分の冷たい唇を相手の唇に押し付ける。
その瞬間引き込まれた熱に眩暈がする。
自分への執着と独占欲に。
誰が何と言おうと自分の正義はここにある。
全てを捨てても構わないと思える想いがここにある。
暖かな肌に触れてしまえば世俗から隔離された甘い世界が広がっている。

「お前はいつも冷たいね」

「ふふ・・・藍染はんあっためてくれはるやろ?」

妖艶に動く唇。
囚われているのは自分も同じ。

「おいで、ギン」

強くひかれる腰を流れのままに委ねてしまえば未練などひとかけらもなく。
僅かに繋がっていた糸すらも自ら断ち切る。
伊達だと知る男の眼鏡は放物線を描く。


あともう少し光溢れる世界に居たいと思う心はいらない。
欲しいのは目の前に広がる新世界だけだと、言い聞かせるように目を閉じた。

RED*5 

June 15 [Fri], 2007, 21:53
「ほんま何考えてんのかわからん人やね」

ベッド脇でオレンジ色に揺れる光を見ながらギンは鮮やかな笑みをつい先ほどまで自分の中にいた人物に向けた。
ベッドの中に沈むギンとは対照的に優雅に本などを読んでいた男はおや、と本から目を離す。

「ギン、君にそんなことを言われるとは思ってなかったよ」

細い銀色の髪を指に絡めながらクスリと笑う。

「修兵くん、どないするつもりやの」
「・・・・・あの子はただの鍵だよ」
「せやけど」
「珍しいね、お前が他人の心配をするなんて」
「別に心配なんかしとらん・・・」

ムス、と口元を歪めてギンは男に僅かに向けていた視線を外した。

「心外だね、私はこんなにお前を愛しているというのに」
「・・・・・は?」

それこそ心外だ、という風にギンは自分でも間抜けな顔をしたと思う程顔を歪め、のろのろとベッドから降りた。

「シャワー浴びてくる。・・・神槍がうるさいねん。早く、て」
「それは・・・・・彼の、も同じなんじゃないかな」
「どうでもええわ。シャワー浴びたら迎えに行ってくるわ」
「お前こそ余程あの子が気になるみたいだが?」
「・・・・・・別に」

ふわ、とあくびをひとつして浴室に消えていく銀色の髪を見ながら藍染は読んでいた本を閉じた。
同時に携帯の着信音。

『檜佐木修兵さんがお着きになられました』

RED*4 

June 15 [Fri], 2007, 21:47
この目で蒼い空を見れたらどんなに幸せだろう。
でも俺はこの薄汚れた街しか知らなくて。
灰色の空と赤く燃える空しか知らなかった。
だけど、あいつの髪の色は朝焼けの色に思えた。
あいつに抱かれた身体が疼く。
この身体が自分のものだったなら喜んで捧げるのに。
あぁ、でもこんな汚れた体いらないか。

「阿散井、恋次か・・・」




「遅かったな、修兵」

ノックもなく部屋に入ってくるのはいつもの事。

「すいません、ちょっと・・・」

自分の身体じゃない身体に勝手に傷を作り、あまかつ勝手に知らない男に抱かれたなんて知ったらどんな顔をするのだろう?と思いつつも怪我をした腕を見せると案の定、表情を曇らせた。

「テメ、勝手に傷つけてんじゃねぇよ」
「不可抗力です。すいません」

ちょっとイラついた。あいつの顔が脳裏に浮かんだ。あいつだったらやっぱり優しく抱しめてくれたりすんのかな。

「まぁ別にいいけど。あぁ、そうだ。藍染さんから要請来てたぜ」
「そう、っですか」

にやり、と男は笑う。
最悪。

「身体清めておけよ」
「・・・・・・・わかりました」

のろのろとベッドから身体を起こす俺を尻目に男が出ていく。
あぁ、俺を殴らなかったのはそういうことか。


「もう一回、会いたいなァ・・・・・・」

それが適わぬ望みだと分かってるけど。

RED*3 

June 15 [Fri], 2007, 21:46
あの檜佐木修兵という男を抱いて1週間。
彼がつけた自分の背中の傷はなくなった。
あの朝、空になっていたベッドをみて絶望した。
今まで、恋人と呼べる存在以外と朝を共にしたことはない。
それが普通で当たり前だと思ってた。
こんなに空虚は思いを抱いたことはなかった。


「阿散井クン」
「・・・浦原さん。またあの人に会うにはどうしたらいいっスかね?」
「檜佐木サンには関わらない方がいいと思いますけどね?」
「関わらせたのはアンタじゃないっスか」

とんだ押し付けだ、と自分でも思った。
それでももう一度会いたい。
手がかりはこの人しか残されていない。

「・・・・・檜佐木さんも“死神”の能力持ってますよ」
「え?」
「彼も“斬魄刀”を所持しています」

それは・・・・。
自分のてのひらを見る。
もう随分斬魄刀を手にしていない。会話もしていない。
そもそもそれは一度捨てたはずの力だ。

「それで勘弁してくれませんかねぇ?」




RED*2 

June 15 [Fri], 2007, 21:31
「・・・ッ、ァ、はッ・・・ッ!!」

男に慣れてる、と思った身体は意外とそうでもなさそうで。
必死に声をかみ殺し、俺の背中に爪をたてる様は今まで抱いてきたどんな人間よりも俺を奮い立たせた。
こんなにも夢中になったのは初めてなんじゃ、と思うくらい余裕がなかった。

「・・・ん、はッ・・・れん、ッぁァッ・・・・・」

情欲に濡れた瞳の中に俺が映る。
両脚を更に高く上げさせ、最奥を突くと思わず洩れた悲鳴のような声。自分の声に驚いたのか一気に顔を朱に染まらせた男を愛しいと、思った。今日、つい数時間前に出会ったばかりで。
この行為はただの仕事の筈なのに。もっと、と求めてしまう。

「ッ、修兵さん・・・気持ちいい?」
「・・・ッ、ん・・・・ッ」

額から流れる汗を舌で救うとぎゅぅと抱きつく様が可愛くて。
初めて自分から口付けて、そういえばキスもまだだったことに気付く。柔らかい唇と舌を十分に味わいながら腰を進める。

「ぁッ、も・・・・・・ッ!!」

ぐい、と俺を引き離そうとする修兵さんの身体をそれ以上の力で抱しめて逃げられないようにすると、ふるふると首を振る。

「俺も・・・もう限界っス」
「あっ・・・・・・・う、んッ!」

どっちが先か、なんて分からない。気付けば二人して荒い息を繰り返していて、二人で顔を見合わせて苦笑した。
ずるりと自分のモノを修兵さんの中から出した時一緒に流れた液体を見てゴムをつける余裕も外に欲を吐き出す余裕もなかった自分に更に苦笑した。

「俺をここまで余裕なくさせたの、アンタが初めてっスよ」
「・・・・・俺も余裕なんかなかったっつの」

その声は枯れていて。
ぐったりとベッドに横たわった身体を一ミリたりとも動かす気にはなれないようだった。

「お湯とタオルとってきます」

そう言って部屋を出ようとすると、ツンと髪の毛を引っ張られた。

「あとでいい」
「でも・・・・・・」
「この髪の色、本物?」
「地毛だよ」
「そっか。綺麗な髪だよな・・・・」
「・・・・・・修兵さん?」

俺の髪を少しだけつまむ細い指がするりと落下した。

「無茶、させちまったな・・・・・・」

深い眠りへと落ちていった修兵さんの額にちゅ、とキスをした。
こんな行為、誰にもしたことがなかったのに自然と出た自分の行動に少し戸惑った。
心の奥底に永遠に封印した感情がふと頭をもたげようとするのを無理矢理押し込めて、後処理のために部屋をでた。

RED 

June 15 [Fri], 2007, 21:28
「悪ぃな」
「いえ・・・・・・」

初めて触れたその足は、細くて白かった。
震える肩に自分のジャケットをかけると申し訳なさそうに微笑を浮かべたが、突っ返されることはなかった。

「ここも安全とは言えねぇですけど・・・・」
「うん。明日になれば出てくから・・・・悪ぃな」
「・・・・・この怪我で?今晩熱出ますよ、アンタ」

もうすでに足が熱い。
息苦しそうなのは全力で走ったからだけではないだろう。
いつもなら厄介事を嫌う店長が受け入れたこの男から俺はなんとなく目が離さないでいた。

「手当て終わりました?」
「・・・・・すいません、浦原さん」
「いーーんスよ。アタシのこと思い出してくれただけで嬉しいですから♪あ、今日はここで休んでくださいね。阿散井くんも側についてあげてください」
「え、それは・・・」
「大丈夫ですよ、檜佐木サン。阿散井くんはこうみえても役に立ちますから」
「でも・・・・」
「檜佐木サン。とりあえず今日は側に置いてやって下さい。色々役に立つと思うんで。ねぇ?阿散井くん」
「はぁ・・・・俺で出来るならなんでも」
「・・・・・・ありがとうございます」

そう言ってヒサギサンは少し戸惑った後一度俺の方を見、店長に頭を下げた。
店長はあの人の所にでもいくのか今日はよろしくお願いしますね〜なんて歌いながら姿を消した。
静寂が辺りを包む。少しだけ苦しそうな息遣い。

「大丈夫ッスか?横になった方が・・・・」
「お前、名前は?」
「あ、阿散井恋次、っスけど」
「男、抱いたことある?」
「・・・・・・・・・・あぁ」

店長の色々、と言った言葉の意味がなんとなく理解できた。
そっと額に手をやるとやはり熱が出てきたのか熱かった。
明らかに誘うような目つきにごくりと喉が鳴る。

「アンタには痛いのより優しい方がよさそうだな」

そう言って挑発すると、ヒサギさんは意外そうな顔をした。

「そんなこと言ったのお前が初めてだぜ?俺には赤が似合うらしいからな」
「そうなんですか?でもおあいにく様。赤が似合うのはアンタより俺っス」
「・・・・・そうだな。俺は檜佐木修兵。呼び方は何でもいいぜ」
「了解」




P R
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