遠ざかる足音を空に例えるとするならば 

May 29 [Sun], 2005, 20:49
「はは、やっぱ…敵わねぇや」

一瞬の閃きの後、倒れたのは結人だった。
そんな台詞と空笑い、同時に地面に倒れる音。

一馬は血で濡れた自分の剣を見て、震える手を強く握り締める。

「…んで、だよ!何でお前!」
「言っただろ、欲しいものがあん、だって」

その言葉に一馬が弾かれたように振り向けば、そこにはいつもと同じ結人の笑顔。
それなのにどうして、その場に似つかわしくない赤の香りが辺りに散って。

「…でも、結局俺には、無理だったんだな」

結人はそう言って、変わらない青空を仰いだ。
遠い遠い空、どんなに手を伸ばしても、どうやったって届かない。

「結人…」
「行けよ、一馬」
「結人っ!」

悲痛な一馬の叫び声に、結人は苦笑のような笑みを零した。
その笑みはまるで、可愛い子供の我侭に親が思わず笑ってしまうような、そんな。


「まだ、…間に合う、から」


その言葉に、一馬の目が弾かれたように見開かれる。
予想通りの反応に、結人はにっと笑ってみせる。

漆黒の双眸が不安げに揺れても、結人は最期まで笑みを絶やさなかった。

「ああ、一馬」
「…んだよ」
「あの時の…言葉、訂正、な」
「え?」
「"親友"って、思ってた、ずっと」


”親友なんかじゃねぇよ、少なくとも俺はそんな風に一度だって思ったことねぇし”


たくさんたくさん、伝えたい事があって。
たくさんたくさん、守りたいモノがあって。
そんなたくさんの中から、選びぬいたものがあって。

でも別に、選べなかったものが、大切じゃなかったわけじゃなかった。
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