第三話 

2007年10月01日(月) 13時08分
これは夢だ。

わかっているのに逆らえない。
俺は夢でさえも逃れられないのか。そんなにも弱いものなのか。
高く遠いその人は見上げても顔はみえない。
笑っているのか怒っているのか、悲しんでいるのか。

「おとうさん」

幼い声にこたえる人はいない。

「おとうさん」

俺はあなたが。

あなたを。



昼過ぎに家に帰ると、昨日拾った海馬はまだいた。
とっくにいなくなってしまっているだろうと思っていたが、どうやら眠っているようだ。
少しイタズラしてやろうか、と静かに近づいた途端海馬は思いもしなかった速さで起き上がって、左手が俺の首に触れた。
「か、かいばサン・・・・?城之内ですよー。何もしませんよー??」
思わぬ迫力にすっかりビビッてしまった俺は敬語で言ったが、海馬はすごい勢いで掴んだ割に、強く首をしめようとはしなかった。
顔をのぞきこむとまだ少しうつろな目をしていて、寝ぼけているだけか・・・と安心した。
「悪い夢でも見たか?」
手を俺の首から優しくはずして、もう一度ふとんに寝かせてやった。
「昨日もすっげー顔色悪かったし。寝不足ならもう少し寝てろよ」
「・・・手を・・」
暗いままの瞳でどこか遠くを見つめたまま、何かを呟いた海馬に、妹にするように顔を近づけて聞いた。
「ん?なんだ?」
「手を・・・握っていてくれ」
まさかそんなかわいいことを言われるとは思っていなくて驚いて一瞬かたまってしまった。
「・・・いいぜ。だから寝ろ?」
冷たい手をぎゅーっとにぎってやると、ふっ・・・と少し笑って海馬は目を閉じた。
なんなんだ。
このかわいさは、一体なんなんだ。
・・・いや、俺はこんな感情を知っている。
恋というのだ。
「・・・まさか。俺が海馬に?」
恋してる?
そんなことがありえるのか?
そんなわけないぜ、と否定気味に眠りに落ちた顔をじぃーっと見た。
顔色の悪さをカバーしてなお有り余るビボー。
胸がキューンとする。
「やべぇ・・・
 俺、海馬のこと好きみたいだ・・・・」



音をたてて階段を駆け下りる。
今日はアイツに会える。しかも泊まりで。
そう思うと足取りも軽くなろうというものだ。
ユウギの頭の中には数時間前にふった男のことなどカケラも残っていなかった。
「相棒ー!待ったか?」
待ち合わせの場所に走ってやってきたユウギ。
「ううん、全然。どこ行きたい?」
ユウギにそう尋ねたのは、ユウギより少し背が低くてかわいいくらいの違いしかない、ほとんど同じ顔の遊戯だ。
はたから見れば双子のようでもあるが、実は血のつながりは一切ないというから驚きだ。
それに似ているのはほとんど顔だけで、性格はあまり似ていないので、二人を間違える人は多くはいない。
「君がいきなり泊まりにくるっていうから、片付け忙しかったんだよ〜?」
「俺は相棒がいれば汚くてもかまわないぜ☆」



「・・・海馬。もう夕方だぜ。帰んなくていいのか?」
そう城之内に起こされたときにはもう五時を回っていた。
今頃会社がどうなっているか考えると、もうこれ以上ここでグズグズとはしていられなかった。
西日のせいか、城之内の顔が赤らんで見える。
「・・・帰る。世話になったな」
最低限の気はきく男のようで、一応ハンガーにかけられていたスーツの上着を羽織った。ネクタイを締めるのも忘れない。
手を水で濡らして気持ち髪も整えて、靴をはいて出ようとした所をひきとめられた。
「なぁ、海馬!」
「なんだ?」
「あの、さ・・・俺と一緒にココで暮らさねぇか?」
それは唐突であったが俺にとって断り難く受け入れ難い誘惑だ。
ユウギに会える。
会わなければならない。
「なぜ?」
でも城之内は俺とユウギの関係を知らないはずだし、どうして昨日会ったばかりの俺にそんな誘いを持ちかけるのかわからない。
昨日、この家に招いたことだって不可解だったのに。
「俺・・・俺、あんたのこと好きになっちまった!また会いたいんだ」
思わず目を見開くほど驚いた。
「好き?俺を?」
「そうだ」
だめか、と目で訴えられる。
これほど純粋に熱烈に告白されたのは初めてで、思わずうなづいてしまった。
「・・・仕事が一段落ついたら、また来る。」
その一言で、城之内は輝くほどの笑顔にかわった。
かつてこんな笑顔を向けてくれたのは弟だけだった。
少し明るくなった気持ちできしばむボロアパートの階段を降りる。
沈みかけの夕日が眩しかった。

第二話 

2007年10月01日(月) 13時05分
(この壁の向こうにはユウギが・・・・?!)
海馬は振り返りたい衝動にかられた。一瞬の内に、頭の中が言葉で溢れかえる。
壁の向こうの、彼に伝えたい言葉で。
(・・・振り返ってどうする。今更何を言っているんだ、俺は。)
振り返ろうと浮かしかけた腰を床に落とし、海馬は少し自嘲的な笑いを浮かべた。
二人の間には、この壁以上の、何かが入り込んでしまったのだ。もはや。

「おーい。アンタ、オレの部屋で死ぬなよ、ホラ」
ハッとして海馬が顔を上げると、ユウギと二言三言、言葉を交し終えた城之内がミネラルウォーターの入ったペットボトルを差し出していた。海馬はそれを受け取ろうとしたが、体が動かなかった。全神経が聴力のみに向けられていた。城之内はそんな海馬の気持ちが分かるはずもなく、ぼんやりとしているように見える海馬の前にボトルを置いた。
「隣の―――」
海馬がようやく口を開いたとき、隣の部屋の玄関が開かれる音と重なった。
カチッと鍵の閉まる音と、軽快に階段を降りる音が響く。
「あぁ?ユウギがどうかしたのか?もしかして知り合いとか?」
「いや、――・・・・」
少し、冗談のように城之内が聞き返した。
(俺のオンナだった・・・。ククッ。この男はどんな反応をするのだろうな)
再び黙り込んだ海馬をチラリと城之内は覗き込んだ。
「今日はダチの家に泊まるんだってよ。・・・アンタもオレん家泊まっていくか?」
おそらく返事をしないだろうと思っていた城之内は、ボトルのキャップを開け、ゴクッと一口水を飲むと、部屋のゴミをガサガサ集め始めた。
しばらく、その後ろ姿を眺めていた海馬は、フイに声を掛けた。
「オイ」
「ん?何だ?」
城之内がゴミ袋を置いて海馬の傍にしゃがみ、視線を合わせた。
「城之内―――」
言葉の途中で、海馬は城之内の肩をトンッと押し、バランスを崩しかけたその上に覆い被さり、床に両手をついた。城之内はポカンとした顔をしていた。
「俺とヤるか?」
長めの前髪からのぞく、涼しげな目元と、日の光を拒むような真っ白な喉。海馬はコケティッシュに笑って見せた。
城之内はニッと笑い返した。
「結構元気じゃねーか。・・・でも病人は大人しく寝てねーと」
そう言うと、いとも簡単に海馬を押しのけた。立ち上がり、ゴミ袋を拾うと再び作業に戻った。押し返された海馬はそのままころんと床に倒れてしまった。普段の彼であったなら「おのれ貴様・・・!」とひどく憤慨したであろうが。
まるで今のが最後の力であったかのように、海馬は動かない。埃っぽいフローリングに頬をつけ、城之内の背中を見つめる。中途半端に開かれたカーテンから、西日が差し込み、部屋中を赤く染めていた。海馬はいつの間にか眠っていた。

城之内はケータイのフラップを開いた。P.M10:30。いつもより少し床の見える部屋とむずかしい顔をして眠っている、キレイな男。
「海馬」
呼んでみたが、返事はない。
(なんか今日は妹が来てるみたいでうれしいぜ。)
城之内は海馬の顔を見てニコニコしていた。全く彼はとんでもない拾いモノをしてしまっていたのだが。
ついさっき、誘われたこともすっかり忘れ、上機嫌で電気を消し、眠りについた。

はっとして目を覚ますと一瞬自分がどこにいるのか分からなかった。
汚い部屋だ。部屋の隅にはダンボールまである。何だこの部屋は、と海馬は時計を探した。10時50分。
今日は水曜日。人生最初の無断欠勤だった。
と昨日の記憶が頭に流れ込んできた。
「思い出した・・・」
思わず声に出して大きなため息までついてしまった。
ユウギと城之内は学校か、と思った。
部下に連絡を入れる事さえ、億劫だった。
今、この時間をとても苦痛に感じた。
もはやそばにいない恋人を想っているのか、誰かに傍にいて欲しいのか、そんな風に考える自分の存在か、海馬には何が原因か分からなかったが、心に穴があいたようだ、と思った。
中途半端なカーテンを開け、外を眺めて見たが、何も目に入らなかった。

第一話 

2007年10月01日(月) 12時51分
「大丈夫か・・・?アンタ」

顔を上げるとそこには頭の悪そうな金髪の男がこちらを心配げに見つめていた。
「・・・」
「お、おい・・・!マジで大丈夫かよ?!」
何と答えるべきからしくもなく悩んでいると、どう勘違いしたのか男はあわてて携帯を取り出して「救急車、呼ぶか・・・?」と尋ねてくるので首を横に振った。
そんなに俺は危なげに見えるのだろうか。
「あーうー・・・そうか?」
男はなおも俺の前で落ち着かない様子で家はどこだの帰らないのかなど訊いてきたが、全てに首を振った。家にいる弟のことを思うとますます足が重くなった。
「なぁ!アンタ、ウチに来ないか?」
「・・・どういうつもりだ?」
「いや、別にアンタから何か貰おうなんざ思ってねェけどよ。その、だな・・・とりあえず、そんな薄着じゃ見てるコッチが寒いんだよ・・・!」
余計なお世話さという言葉が喉まで出掛かって、そして結局言葉にならなかった。今の俺にとっては全く知らない他者のそんな言葉までが俺の乾いた何かを潤した。
「・・・可笑しな奴だな」
そう言った俺の顔を見て男は嬉しそうな顔をした。
「アンタ、笑ってた方がイイぜ!」
「!?」
「俺、じょうのうち。城之内克也!」
アンタは?と目で問うてくる城乃内克也という男に「海馬瀬人だ」と応えると男は「よろしくな!」といて右手を差し出してきた。その手に応えて己の右手を出そうとするとふいにその手を引かれた。
「!オイッ貴さっ・・・──」
「俺ン家わりとここから近いんだ。はやく行こうぜ!」
俺の手を引きながら城之内はどんどん進んで行く。
行くと言った覚えはなかったが、脳裏に浮かんだ紅い瞳が俺を黙らせた。
ヤツとの淡白な生活で溜まっていた俺はこの城之内という男とコトに及んでも構わないとさえ思った。要は誰でも良かったのだ。だがそんな風に自棄的になる一方で、誰かに乾きを潤して欲しいと望んでいたのも事実だった。

「着いたぜ」
城之内の言葉に我に返ると、俺の目の前にはどこにでもあるような、白いアパートがあった。セメントの壁の上部には少し光沢の失せた金色の文字で「メゾン・デ・ペガサス」と装飾してあった。
「汚いけど、カンベンな」
「・・・気にせん」
城之内の部屋は2階の奥から2番目に位置していた。部屋の中には城之内の言葉どうりだった。だが、既に社会人として働き、時には会社で寝起きしている俺は平凡な独身男性ならこんなものかと一人思うに終わった。
「ミラクルウォーターでいいか?茶切らしてンだ」
「かまわん」
多量の即席めんの空ゴミを横にどけると、城之内は壁に立てかけてあった四足の卓袱台を置き、テキパキとその周辺のものを片付けていった。
ようやく見えた床に俺を座らせると、城之内は台所と思しき方へ消えた。卓袱台に移る自分の顔を眺めた。なるほど、酷い顔だと思っていると奥の方から物の落ちる大きな音とギャーという声が聞こえた。
「おい、城の──・・・・」
『大丈夫か?城之内くん』
その瞬間の俺の気持ちを何と形容したらいだろう。
一瞬は聞き間違いだと思ったのだ。この部屋には俺と城之内しかいないのだから。
「痛ってー・・・」
固まった俺の前にペットボトルを二本持った城之内が現われた。
「すまねぇ。ちょっと物落しちまって・・・」
『城之内くん?』
幻聴ではなさそうだ。確かにその声は聞こえていた。
俺の背にある白い壁から。
ほんの数時間まで耳にしていた懐かしい声に俺は歓喜と恐怖を覚え、次の瞬間それは頂点に達した。

「悪りぃ!ユウギ!!」


息がとまる。


はじめにお読み下さい 

2007年10月01日(月) 11時01分
こちらは遊@王非公認ファン企画ブログです。
”同人”、”腐女子”の意味の分からない方は閲覧をご遠慮下さい。
また冗談をご理解頂けない方も同様です。

鵜原とめこ、目路、常盤まきの、の順に書いて行く行き当たりばったりの交換小説です。
CPは城海中心の闇海闇、バク海、W遊戯、ばくばく(?)です。
上記のCPが同時進行してゆきますので、許容範囲の広い方のみお勧め致しますm(_ _;)m
テーマは 「昼ドラ的なもの」 です。
ドロドロしたものが書ければいいな、なんてv\(^o^)/
設定が半パラレルなのでご注意下さい。
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