小説・削除命令 終 

2007年02月11日(日) 21時13分
それから20分後一時間目終了のベルが鳴り、皆一息つく。休み時間だけは奴らの干渉もない。唯一気の休める時間だ。
先生と男子は揃って春明の机と椅子を教室から運び出す。削除命令が出された人の持ち物は全て捨てるように言われているからだ。
「・・・春明」
桜は目を潤ませ、机が運び出されるのをじっと見ていた。私はそんな彼女にかけてあげる言葉が見つからなかった。なんと言えば彼女は心を痛めないのだろうか。

授業の始まる5分前、先生が教室の中にやってきた。
「・・次の授業は道徳だ」
道徳という言葉を聞き、道徳の時間はずっとやつらがいて、見張っているのだ。そうなると少しも気を抜けなくなる。
「話の・・題材は、春明のことだ」
先生は戸惑いながらそういうと、生徒の半数は一瞬佐倉に眼をやった。
春明と佐倉が恋人関係にあったのは承知していたからだ。皆、どんな意見を出すんだろうという好奇心と、哀れみの目がずっと彼女を見ていた。

ドアが開き、やつらが入ってきた。私は姿勢を正しまっすぐ先生を見た。
「今日の道徳は先程の事件を起こした坂本 春明について話し合う。ひとりかならず1個は意見を出す事・・意見をあるやつは手を上げろ」
はい、はい。と手が上がっている中、一人・・佐倉の手だけは上がらなかった。
先生はそれに気付いたが、何も言わず他の人を当てる
「はい。ルールを守れないひとは削除されても仕方ないと思います」
「僕も同じ答えなのですが、今ルールを守れない人が社会に出たときにルールを守れるか分からないので削除して当然だと思います」
次々に似たような意見がでていく。私は逆らってやろう。と一瞬思ったが、今クラスを支配しているやつらに対抗できない。
「・・私も、春明が削除されるのは・・仕方がなかったと思います。」
そう口にしていると仕方なかったんだ。と諦めの思いが出てきた。
「・・・佐倉 薫。必ず、意見を話しなさい」
先生がそういうと、小さく溜息をつき立ち上がる。
「どうして、形態がなっただけ出すぎに削除されちゃうの!?今の世の中・・変だよ」
その言葉に少し教室がざわめいた。そうしてやつらの中の一人が立ち上がり、彼女の肩に触れた。
「触らないで・・私、別に削除されても良い。ここにいたんじゃ、人を思うこと出来なくなっちゃうから」
そう叫び、こちらを見る。凄く真剣なまなざしで心が痛くなった。何も言わず、連れて行かれた。ただ、ずっとこちらを向いて
それとともに授業終了のベルが鳴る。ああ、コレで二人目だ。
やつらが出て行くと、やっと皆気が抜けたのかボーっとしている。
「ここにいたんじゃ、人を思うことが出来なくなる・・か」
その通りだよ。佐倉、あんたは正しい。でも、思っていても行動にできたのは佐倉だけなんだよ。結局、皆怖いんだ。
「・・・佐倉の席・・もっていかなきゃな」
先生がふらふらと近づき、机を持ち上げる。私は持っていかれる机を見て、無性に叫びだしたくなった。
何を、何故叫びだしたいんだろう?私は何を伝えたいんだろう。

──こんな弱虫が、何を伝えたいんだろう。

誰かが変わらなければ、世の中は変わらないだろう。
変わらなければいけないとわかっている人は多いのに、変われる人はごく一部にしかならないのだ。

enD
後書
これはスパンスパンと頭の中で浮かび上がってきたのでラクでした。しかし、文才無いなぁ・・。
いやはや、これからもどうか・・この通り!宜しくお願いします。
あ、実は削除命令のもうひとつのストーリー書き中です。近日公開!

小説・削除命令 

2007年02月11日(日) 21時09分

ある時代・・ルールで縛られている社会が成り立っていた頃。その国に悪者がいなくなっていた。それは政府が権力を行使した「削除命令」なるものが原因である。

「・・・やってられない」
少女は小さく呟いて、まるでロボットのように一生懸命授業を教える先生と、同じくロボットのように授業を教わっている生徒達をながめいていた。
授業の途中、何度か『あいつら』が授業風景を見に来る。あいつらというのは、政府の選び出した人間で、サボっている人に削除命令を出すやつらだ。
削除命令、というのは政府の明暗を分けた大プロジェクト・・らしい。
人間として必要価値のあるもののみ生かされ、それ以外のものは削除される。つまり社会から抹殺される。
そうして自分の名前と住所を奪われ、ある場所に収容される。収容されると社会復帰のチャンスを一度だけ与えられるが、うまくチャンスを生かせないものにあるのは死、のみだ。

ガラガラ、とドアが開き、やつらが入ってきたのを知る。私は真剣に黒板に向かい、黒板の内容をノートに写す。それはいつもの風景だった。
しかし、どこからか軽快な音楽が聞こえてきた。私の隣の席の佐倉 薫が青い顔でぶるぶると震えている、しかし、この軽快なメロディの発信源は彼女ではない。
「・・授業の邪魔だ・・そこのお前、『削除』だ」
指を差されたのは、佐倉 薫の彼氏、春明である。だからさっき佐倉が震えていたのか。と納得した。彼氏の着信メロディを知らないはずがない。
削除命令が出され、春明はぶるぶると震えていた。
「嫌だ・・・助けてくれ、頼む。なあ、先生」
先生はそ知らぬ顔で授業を進める。自分にまでとばっちりがあるのは嫌、そんな顔だ。春明は振り返って佐倉を見た。
「佐倉ぁ。お前、もしどちらかが捕まる事があったら一緒に捕まろうって言ったよなぁ?」
佐倉は一回も春明を見ることは無い。ただ義務のように手を動かしている。
「あれは嘘だったのか?なあ、佐倉」
やつらに連行される春明を決して誰も気には留めていない。いや、気には留めていても授業を進めなければいけない。
戸が閉まり、春明の叫び声がだんだん遠くなっていった。

Inheritor 説明 

2007年02月04日(日) 17時09分
解説という名の真実
まず題名、相続者という意味がある。
俊雄(元主人)には兄がいた。それが文中にでてきた、安東である。ちなみに名前は俊明という。この話では俊喜らの名字は語られていないが安東ではないことを知って欲しい。
安東という名字は俊明の嫁の名字である。つまり婿養子というわけなのだ。
ちなみに柏も婿養子になったので名字が変わったのだ。
ということは柏と俊喜・俊治は従兄弟だったことになる。
従兄弟の割に年齢が離れすぎていることにお気づきになっただろうか?
俊喜・俊治が生まれたのが遅かった。大体俊喜の父母が40代前半か30代後半ぐらいの時に生んだからだ。
そうして何故俊明ではなく俊雄が家を継いだのか
俊明よりも俊雄のほうが信頼されていた、というよりも自分の死後を想像したとき、どちらのほうが安心できるか。その点のみ俊雄は俊明に勝っていた。
復讐のチャンスを狙うために俊明は俊雄の家で働く。そのときに俊雄は兄だということを気付いていたが知らぬ振りをしていた。その後に柏も俊雄の家で働く。
事件が起こったのは、俊喜が盗みを働いて急いで引き取りにいこうとした俊雄は運悪くなくなってしまった。何か細工したのかと思われるかもしれないが、これは偶然だった。
このときに俊明は考えたのだ。もしかしたら他のやつらが死ねば相続者は自分になるかもしれないと。まんまと俊喜の母を階段から突き落とした。
今度は息子に相続権が渡ってしまって焦ったが、またここで事件が起こったとき疑われるのは自分だというのは分かっているため手出しできずにいた。
俊喜が此処に来たのも俊明が叔父に金を積ませて避けの席で暴露させたからだったのだ。
そうして全ての駒が集まったとき、彼らの運命はほぼ100%決まった。
しかし、もしも途中で俊喜が帰っていればこの事件もおこらなかったかもしれなかったのだ。

後書
第2作目は似非サスペンス調です。最後にドカーンと何かしようと思った結果がコレです。
突拍子もないストーリー・・それが私の作品です。今回のは解説をつけておいたほうがいいんじゃないかな、と思ったので解説つきで。

Inheritor 終 

2007年02月04日(日) 16時15分
「嘘つくな!僕は殺してない!」
やはり俊治が後ろ手に持っていたのはナイフだった。俊治が振り下ろす寸前で何とかよける。このままでは、殺されてしまう。
俊喜の胸をめがけて俊治がナイフを突き刺そうとした。後はふすま、何とかよけようとしたが体が言う事を利かず、俊治の体はナイフに串刺しにされた。
「・・・がはっ」
血がどくどくと流れ出す。血はもえるように熱いくせに、痛みがない。痛くないってことは、多分もう直ぐ死ぬんだろうなあ。と考えた。
「兄さんが悪いんだ!兄さんがっ・・ぐ!」
急に胸を押さえながら、俊治が倒れこんだ。口からは血が流れ出している。
気が遠くなる前に俊治は思いついたことがあった。今日の料理は二人分作られていた。それはもしかしたら兄さんが来ることをどこかで知っていたのかもしれない。
どうしてなのかはもう分からない。只分かるのは、このままでは死んでしまうという事実だけだった。

ふすまが静かに開き、安東と柏が顔を出した。
「・・・死んだだろう?」
安東はいかにもおかしそうに笑いながらそういった。
「たく、馬鹿だねえ。しっかり話し合っていれば本当のことも分かったのに。まあ、結局毒で死ぬ事は変わりないけどね」
柏は二人の死体を足蹴にしながらそういった。
「だが、俊喜は俊治に殺されたんだな」
少し哀れんだように、目を伏せた。
「どうでもいいよ。それより・・これまで、つらかった分、ちゃんと痛めつけてやりたかった」
柏は仏壇を見る。──ああ。腹が立つ。
「・・もともと、何で長男の私じゃなくて次男の俊雄に継がせたんだ?」
そう、俊雄には兄がいた。それが安東だったのだ。
「そうだよ、父さんが継いでいれば・・」
苦虫を潰したような顔で俯いている。いやなことを思い出したのだろう。
「まあ、いい。これからでもやり直せる。もう、家を継げるやつは居ない。私だけだ」
二人は互いに朗らかに笑いあった。

Inheritorの続き5 

2007年02月04日(日) 15時07分
「・・・あの事件?」
安東の聞き返すことばに、俊治は真面目な顔で頷いた。安東はうーん、と唸ったが何かを思いついたかのよう手をたたいた。
「思い出しました。たしか6年前の今日、俊喜さんが東京で窃盗事件を起こしたんですよ」
「・・兄さんが窃盗?」
6年前の今日、そんなことが起こっていたなんて俊治は知らなかった。多分、金の力か何かでもみ消した事は安易に想像できる
「それを電話で聞いた俊治のお父様・・俊雄様は急いで船で出かけた。もちろん、俊喜さんを引き取るために」
「・・・それで?」
ごくんとつばを飲み込む音が思っていたよりも響いてしまった
「そこからは利治様の知っての通り俊雄様の乗った船が転覆してしまった」
「・・それでも僕、くわしくは知らないんだ。そのときちょうど修学旅行にいっていたから」
それを言った瞬間、安藤がかすかに笑った気がする。それは、気のせいだっただろうか・・?
「じゃあ、このことも知りませんね?」
そっと安東は俊治に耳打ちをし、安藤はそれを聞くと呆けてしまった。
──なんてことだ。そんなことがあったなんて

一方、俊喜は母親の死についてしらべていた。何か裏がある気がしてならなった。
こういうときの俊喜の勘は恐ろしいほど当たるのだ。
柏に話を聞くことにする。・・・・安藤はいまいち信じられないからだ。
「お母様の死?・・このことは誰にも言わんでください。これは秘密ですからね」
──俊治が本当にそんなことをしたのか?
俊喜はそれを聞くと、静かに溜息をついた。

俊喜は仏壇の前に静かに座る。
すると、静かにふすまが開き俊治が入ってきた。
「・・兄さん、何で今日帰ってきたの?」
俊治は後ろ手に何かを持っている。嫌な予感がし、顔が青くなる。
「ま、こたえなくても良いよ。僕は知っているんだ、兄さんのいったあの事件の事」
「・・あの事件」俊喜はそう繰り返した。あの事件については何も触れて欲しくなかった。
──自分がバカなことをやったと思う。しかし、今更その話をほじくり返すとは一体どういうつもりなんだ?
「・・兄さんが船の一部を破損させていたから、父さんは死んだんだろ?よく顔出せるよな」
ふざけるな、と俊喜は言いそうになるのをぐっと飲み込んだ。こんな口調だとけんかになってしまう。
「どういう意味だ?」
「兄さんが父さんを意図的に殺そうとしたんだろ!全部、分かっているんだ」
叫びながら俊喜を突き飛ばした。──ヒステリックに叫ぶその姿はまるで母さんのようだ。
「・・それなら俺だって知っているんだ。利治、お前が母さんを殺したってことは」
今度は俊治が分からないといいたげに見る。その目は少しゆれていた。

Inheritorの続き4 

2007年02月01日(木) 22時08分
「・・・あ、そうだ。兄さんも拝んでいきなよ。母さんと父さんに」
俊治はたとえ仲が悪くても親子だったんだから、と言いながら俊喜を案内しようとする
「いや、いい」
即答だった。「なんで?」と俊治が問い詰めても、俊喜はいかないとだけ告げ続けた。
「兄さん、わがまま言わないでよ。母さんも父さんもきっとに会いたがってるよ」
イラついた表情で、俊喜をある部屋まで引っ張っていく。
「・・・あ」
そこは、仏壇の飾ってある和室だった。ふと柱に目を向けると、何本も線が引かれているのが分かり目頭が熱くなった。そういえばここで、背丈を比べていたこともあった。
「・・母さん、父さん。兄さんが会いにきたんだよ」
俊治はそういうと、部屋から出て行った。気を遣ってくれたつもりなのかもしれない。
しかし、仏壇とはいえ俊喜は気まずかった。ぽつぽつと独り言を話し始める。
「母さんは・・俺のことまだ恨んでいるの?」
「父さんは、最後に俺のことどう思ったのかな?」
答えは返ってこない。返ってこないと分かっていても、つい言葉にしてしまったのはその場の雰囲気や俊喜の本音があったかもしれない。
「・・あの事件さえなかったら、きっと幸せだったのにな」

「・・あの事件?」
ふすまの間から覗いていた俊治は「あの事件」という言葉が気になった。
──そういえばさっき、兄さんが僕は何も知らないっていってた。どういう意味なんだろう
誰か知っている人がいるかもしれない、と俊治は安東を呼ぶことにした。
一体、俊治の知らない事とはなんなのだろう。

Inheritorの続き3 

2007年01月31日(水) 23時38分
「・・だから・・出て行ったんだ?」
俊治の質問に俊喜は黙ったままだった。
「そっか、結局兄さんは逃げたってわけなんだね?ふーん・・」
俊治はそういうとそっぽ向いてしまった。それを見て、俊喜は静かに口を開く。
「・・・お前は重要な事だけは何一つ知らないんだね」
その言葉は馬鹿にしているようには聞こえなかった。俊治は反論しようと口を開くがそれは言葉にはならなかった。それは、俊喜の顔が泣きそうなほどにゆがんでいたからだ。
静かな静寂がその場を包む。その静寂に耐えられなくなったのは、俊治のほうが先だった。
「まぁ・・とりあえず、今日はゆっくりしていきなよ。もうこんな時間だし」
時計は8時を刻んでいる。俊治が時計を指した直後、まるで見計らったかのようにコックの柏がやってきた。
「お久しぶりです、俊喜さん。・・・ご主人様、今ディナーの準備が出来ました。」
俊治は俊喜を促し、俊樹とともに居間を後にした。

俊喜は適当な席に座った。
「・・・どうぞ、」
テーブルの上に並んでいるのは、イタリア料理や中華料理など豪勢なものばかりだった。俊喜は物珍しそうな目であちこちを見ている。
──これは・・フカヒレか!さすが、良いもの食べてんなあ
「いつもこんなに良いもの食べてんのかよ?」
「いつもじゃなくてたまたまだよ。ちょうど良質のものが入ったらしくてね」
全く良いタイミングで来たんだなあ。と俊喜はしみじみそう思った。もしも来るのが一日でも遅かったらフカヒレに出会うことも一生なかっただろう。
「そういえばこういうのどうやって仕入れてるんだ?結構海岸から遠かったろ」
「まあね、こんな辺鄙な場所だから仕入れの際にはヘリを使ってるんだ・・まあ大きいものは海から運んでくるけどさ」
──金ってもんはあるところにはあるもんだけど、ないとこには本当にないもんだよな。
心のそこから、俊樹はそう思った。

「・・・御馳走様」
綺麗に平らげられた皿を見て、柏が嬉しそうな顔をしているのが目に浮かぶ。皿をそのまま置いておき、俊治は空いていた部屋、つまり元・俊樹の部屋を自由に使うように言った。

Inheritorの続き2 

2007年01月30日(火) 23時23分
「と、俊喜さん!あなたはまさか、そんな」
動揺していて言葉に詰まってしまっている安東が流石に不憫になってしまっていた、脅かしすぎたかな、と俊喜は少しだけ反省した。
「冗談だよ、そんなことするわけないだろう?」
──まあ、少し本気だったけどね、と俊喜は心の中で付け加えた。
椅子から降りて、背筋を伸ばす。この主人の椅子は思っていたよりも硬かった。
それでもこの椅子に座るのが夢だったな、と昔のことを思い出していた。
「・・・そういえば俊治はどこにいるんだ?」
「・・・まさか、お会いになりたいのですか?」
まさかとは心外だ、と俊喜は呟きながらも大きく頷いた。
「少々お待ちください」
そそくさとその場を立ち去る安東を一瞥し、辺りに目をやる。俊喜が出て行った頃から、全く変わっていない。それは俊治の意向だったのだろう。俊治は父が目標だったから。
ちょっと目をそらすと、壁に何かが飾ってあるのに気付いた。
「・・こんなものまだ飾ってたのか」
それは小さい頃・・・まだ俊喜と両親の仲が良かったときに描いた家族の絵だった。

「・・・兄さん?」
声のした方向を見ると、そこには俊治がいた。成長したのだな、としみじみ感じさせられる。俊喜が出て行ったときはまだ、俊治は10代だった。
「久しぶりだね。で、一体何をしに来たの?」
「・・財産相続の件で聞きたいことがあったんだ」
俊治は財産相続ぅ?と聞き返し、納得したように薄く笑った、
「そっか、そうだよね、なるほど」
一人で納得している俊治に苛立ち、こぶしを強く握り締めた。
「兄さんは不満なんだ、僕がこの家を継いだ事」
ああ、と頷いてみせると俊治はまるで興味もないように目線を外した。
「この土地売るつもりなんだろう。どーせ」
「・・・まあ、こんな土地に永住するつもりはないからな」
こんな土地・・か、と俊治は苦笑しながらそう呟いた。その顔はどこか寂しさを帯びていた気がする。
「俺にはここに良い思い出なんて微塵もないからな」
俊治が生まれてから、俊治のほうにばかり愛情が注がれていて、俊喜は悲しい思いをしていた事ばかりだった。
「・・二言目には弟を見習えだの、俊治が長男だったら良かったってことばかり言ってたよな」
昔の事を思い出してしまい、俊喜の表情は暗くなってしまった。

Inheritorの続き 

2007年01月30日(火) 22時27分

「・・・・はぁ。はぁ・・」
やっと見つけたころには日が暮れていた。その間、蚊に刺されてしまい痒いところだらけになっていた。
インターフォンを鳴らし誰かが出るのを待つ、2回・3回・・と鳴らすが誰も出てくる気配は無い。
「なんだよ、誰も居ないのか?」
このままでは無駄足になってしまう。パチンコでもうけた金を孤島に行くために使ってしまったことを半分後悔しながらもう一度インターフォンを鳴らす
しかし、誰も出てくる気配はない。
「・・っち」
苛立ち、ドアを蹴る・・するとドアが簡単に開いた。
「おーい!」
玄関にあがり、叫ぶと誰かが出てきた、それは執事の安東だった。安東は俊喜だと気付くと数歩後ろに下がった。・・・警戒をしているようだ。
「と・・・俊喜さん一体何の御用で?」
かすかにその声は震えていた。
「自分の家に帰ってきちゃ駄目か?・・あ!安東。俺お茶ね、濃い目のやつ」
安東は苦い顔をし、「・・少々お待ちください」と言っていなくなった。
俺は遠慮なくスリッパを借りて、屋敷の中に上がり、主人用の(つまり父のものだった)イスにふんぞり返った。いい気分だ。
「・・・俊喜さん!そこはご主人様のものです!」
安東は椅子に座っている俺に憤慨して言うようだ。俺は大して気にせず「ああ、知ってるさ」と平然とかえしてやった。
「そんなところ、ご主人様に見られたら──」
「何がご主人だ。・・いつ決まったんだよ俊治が主人だなんて」
俊喜の問いには答えず、安東は遠くを見るような目で俺を見た。
「俊治様は素晴らしいお方です。こんな爺にもやさしくしてくださった。あんな優しい方は他にはいません」
「・・素晴らしいねぇ・・知ってるか?俺にも主人になる権利はあるんだ」
その言葉を聞くと、安東は俯いたまま黙ってしまった

─相続者の権利なんて知らないが、まさか弟にあって俺にないってことはないだろうと思って言ったのはでまかせだった。
「俊喜さん・・・遅いのですよ。貴方にはもうチャンスはやってきません。ほら、椅子からおりなさい」
安東は小馬鹿にしたように笑っている。
「何言ってんだ?チャンスってのは来るものじゃない。掴むものなんだよ」
「・・どういうことですか?」
分かっていないのか、と俊喜は心の中でほくそえんだ。
「もしもさぁ、不慮の事故、あるいは相続を取り消すって俊治が決めたらさあ・・誰が相続するんだろうねぇ?」
「・・!」
その言葉の意味を理解したらしい、安藤は言葉を失いその場に立ち尽くしてしまった。

小説・Inheritor 

2007年01月30日(火) 22時08分



真夏の太陽の陽射しは身を焦がすように照り付ける。
なつかしい、と青年は思った
青年は中村 俊喜(なかむら としき)25歳。東京に住むフリーターである。収入は専らパチンコという生活力の無い男だ。
そんな彼が何故此処にいるのかというと、財産相続の話のためだ。
俊喜の母がちょうど1ヶ月前に階段から落ちて亡くなった。
俊喜の母は島を持っていた・・といってもそんなに大きくは無いが。
そこで俊喜の母(60歳)と俊喜の弟俊治(21歳)、執事の安東(63歳)とコックの柏(45歳)が住んでいる。無論、俊喜も住んでいたが20歳の時、親に勘当されてしまい島を出たのだ。
俊喜の父は俊喜が9歳の頃になくなってしまっていた。
勿論、財産を相続するなら自分だろう。と俊喜は思っていたが、どうやら弟のほうが財産を相続したらしい。
らしい。というのも俊喜は母の葬式以来弟に会うことも無く財産相続の件に関しても話し合う機会が無かったからだ。
俊喜の叔父が酒の席で口を滑らせたのを偶然聞いてしまった事で知ったのだ。
それでなければ今も俊喜はパチスロに金と命を賭け、勝負を繰り広げていた事だろう。

足が重い。船を降りてから約1時間弱歩いている。しかし、建物は全く見えない。
辺りは木ばっかり。変わらない景色に俊喜は苛立ち木にやつあたりをした。
すると、木に止まっていた烏が一気に逃げていった。その数は20羽くらいだろうか。
「・・・ふん、気味悪りぃ」
木を蹴るのをやめ、屋敷の方向に歩いていった。
2007年02月
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