ご案内。
2010.01.01 [Fri] 00:00

こんにちは。

ここは、anormal.という小説を
掲載・(いずれ)漫画化していくHPです。

本当にゆっくりとですが、徐々に充実させていきます。
よろしくお願いいたします。

第2話『勧誘』
2008.01.17 [Thu] 00:00

≪≪1話へ                                   3話へ≫≫

「ソルー!いないのー!?」
「ママー!!」
「あらあらどうしたの?」
 女性は息子の様子に戸惑いつつ、眼前に広がる光景に目を向ける。見知らぬ男が二人とへし折れた斧と木。自分の息子が二人の男に襲われたのだ、と彼女が考えるに至ったのは無理もないことだった。
「あなた達は...」
「いっいや!違うんです奥方さん!」
警戒の視線を察知したトンドルはあわてて弁解を始める。
「私はトンドル、彼はモーリィ。王室直属の機関のものです。あなたがたに危害を加えることはありません。」
 この言葉はむしろ警戒を煽ったらしく、女性は眼光をいっそう強め、息子を抱く腕を硬くする。
「ソルくんのことでお話しがあるのです。勝手に外に連れ出してしまい、申し訳ありません。」
 そう言ってトンドルはその場にひざまずき、モーリィもそれに続いて同じ姿勢をとった。女性が腰にしがみついているソルに顔を向けると、ソルは弱弱しい声を出した。
「僕も話聞きたい。」
 女性は、少なくとも息子が襲われたのではないと安堵し、ヤレヤレといった表情でトンドルらに話しかけた。
「いいわ、話を聞きましょう。家に上がってくださいな。」

 こじんまりとした小屋だ。中には寝室が一つと、台所、リビングがあり、必要なものしかないといった様子で綺麗に片付いていた。椅子に座るよう促しながら、女性から口を開いた。
「私はリノル、ソルの母親よ。手短に用件を言って頂戴な。」
「手短に、と言われると難しいのですが...ソルくんの体についての話です。」
「・・・・」
 リノルはトンドルの切り出しに、何か思い当たるようなことがあるような、ないような、よく分からない顔をした。
『ソルが・・?私じゃなくて?確かにソルは数日前から変なこと言うけど・・・私の体が温かくないとかなんとか。』
 一応の確認のため、リノルは買い物のついでに町医者に行っており、自分の体に異常がないらしいことを確認していたため、ソルの妙な言動については単なる思い過ごしだと考えていた。しかし、確かにここ数日のソルは、よく哀しそうにうなだれていた。リノルが思案に暮れ始めたのを見て、モーリィが口を開いた。
「単刀直入に申し上げマス。我々にソルくんを保護させていただきタイ。」
「保護?・・・どうして?」
 リノルは突拍子もない申し出に、唇を震わせて目を丸くさせている。
『国の役人が保護?なにか危険が迫っているとでも・・・?』
「我々、そしてソルくんには、特殊な能力が備わっていマス。これは体の中の遺伝子と呼ばれるところの異常に由来すると思われマス。」
「え?イ・・デンシ?」
「遺伝子とは、体の設計図と考えられているもので、例えば、目が青いとか髪が黒いとかそういうことを決めているものだと言われていマス。しかし、我々にも、その存在自体も含めて不確実なもので、よく分かっていまセン。」
「そのよく分かっていないものがおかしくなって、ソルの体がおかしくなったっていうこと?でもソルはいたって普通の子よ?」
リノルの頭にも、ソルのおかしな言動が引っかかったが、そんなことはここ数日だけのことだという思いがそれをかき消した。
「普通だったのは数日前までだと思いマス。」
「え・・・」
 リノルの不安因子は急激に膨らんだ。ソルが数日前から変だとは思っていたが、たった数日前からのことだからこそ安心していたが、逆であった。やはりソルの体に異常が起きたのか?
「一ヶ月ほど前、この近くに“太陽の涙”と呼ばれる石が飛来しまシタ。それによりソルくんの遺伝子に異常が生じた、つまりからだの設計図が書き換わったのだと思いマス。そしてここ数日で、その能力が設計図通りに出来上がったということデス。」
「・・・」
「具体的には、ソルくんの体は、強靭になっているようデス。先ほどこの小屋の裏で倒れていた木、あれをやったのはソルくんですヨ。」
リノルはぴくっと反応し、驚愕の表情でソルのほうに顔を向ける。ソルは決まり悪そうにうつむいていた。それはリノルがモーリィの話を信じるのに十分な要因となった。
「・・・話はだいたいわかりました。ソルの体に何か起こったのは本当のようですね。で、どうしようっていうんです?」
 既にリノルは目は、驚きを秘めた目ではなく、今にもトンドルらにとびかかろうというような、鋭い目つきに変わっていた。トンドルがその目を見据えながら静かに口を開く。
「我々は、ここウーファノス王国王室直属の、アノルマレスという機関のものです。そこには、我々のような特殊な能力を備えたもの、そしてその縁者が所属しています。能力者、又はその能力のことをアノルマルと呼びます。アノルマレスは、国内の治安維持、ソルくんのような、新たに発見されたアノルマルの保護、育成を行なっております。」

「そんなところにソルを渡す気はありません。」
「そうもいかないのです。あなたには三つの選択肢があります。」
「ちょっと勝手なこと言わな・・」
「一つ目!ソルくんを引渡し、ソルくんに関するあなたの記憶を我々の能力で操作し、あなたはここで暮らす。」
 トンドルは、さっきまでの紳士的な態度を変え、声を荒げてリノルの言葉をさえぎった。しかしそれは怒りや苛立ちからくるものでないとわかる冷静さを秘めていたため、まずは聞くしかないと、リノルは押し黙るしかなかった。一方ソルは、一連のやりとりを、他人事のように口を開けてぽかんと見ている。とても話を理解しているようには見えない。
「二つ目!ソルくんとともにアノルマレスの構成員となる。三つ目!ソルくんの引渡しを拒否し、隔離地区に移され監視対象となる。」
「・・・」
「すいませんネ。突然の話で戸惑われてるかと思いますが、この措置はソルくんを守るためでもあるのですヨ。アノルマルは、その存在が知られると、必ず特異な力の利用を狙ったものが集まり、否応無しに危険におかれますカラ。さらに、アノルマルとしての生き方をしっかり学ばねば、アノルマル自身の意思でその力を悪用することも考えられマス。」
「・・・二つ目の選択肢を選べば、ソルと一緒にいられるのね?」
「もちろんデス。実際私の母と兄はアノルマルではありませんが、サポート要員として、アノルマレスで働いておりマス。さらに、実際にアノルマレスで働くかどうかは、ソルくんが16歳になったときに自分で決めてもらいマス。もちろん拒否した場合は、隔離・監視つきの生活になりますガ。」

 警戒を解こうとしているのか、モーリィは笑みを浮かべながら話すのだが、リノルはあまり心地よくは感じていない。そしてモーリィの言葉で、リノルはいくつかのことを悟った。
『アノルマレスって機関は恐れてる。アノルマルって超能力者を仲間にできないことをじゃない、もし仲間にできなかったときに、危険思想を持った敵になることを。私たちは、きっと逃げられない。だけど、彼らは一種の“正義”を持っていそうね。素直に従うかどうかはそれが受け入れられるか確かめてからだわ。』
 モーリィへの視線をはずし、決意を宿した目をトンドルに向けて、言う。
「さっきあなたはそのアノルマレスって機関の仕事を治安維持って言ったわね?それって・・・」
「・・・基本的には、反乱分子・危険分子対応です。具体的には、密輸・武器売買などの闇取引や違法行為の阻止などですが、時には暗殺を行なうこともあります。我々が表舞台で動けないのは、アノルマルの存在自体を秘匿するためです。アノルマレスという組織があること自体、王室でも限られた人しか知りえないほどです。これは我々の身を守るためでもあります。」
「ソルに暗殺をさせるですって?とても承服できないわね。」
「そのお気持ちは理解できますが、我々は自身に恥じることは行なっていません。王室に対する拒否権も持っていますので、組織として拒絶した仕事を行なうことはないのです。」
「王室に拒否権・・・王室直属機関って言うより独立機関ね。」
「アノルマレスは特別な組織なんです。王権からの依頼を受けたら、まずは事実関係を独自に調査します。王権にだけ都合のよく、民を虐げるような依頼をするわけにはいきませんから。そして暗殺などの倫理的問題の絡む仕事は、アノルマレスの内部でかなりの議論を経ます。最近引き受けた暗殺は、領内のある反乱民族の族長の暗殺です。彼らが族長の指示で、戦闘員とすべく王都ノルサムで大量に子供を誘拐していることが発覚したのです。族長は、王権から抑圧されているわけでもないのに、自身の族長としての立場を維持するために、自治区を広げて富みを得ようと自民族をけしかけて、度々境界線を荒らしていました。敵を作れば、自分の統治への不満がそらせると思ったのでしょう。そういったことを勘案してアノルマレスのほぼ全構成員の同意を得て行動に踏み切ったわけです。」
「正義と理念は持ち合わせているようね、でも!だからといって!ソルを危険な目にあわせたくはないわ。」
「理解していただきたい。ソルくんがアノルマルとなった今、アノルマレスに属さずに生きていく方がよほど危険だということを。」
「とりあえず王都に来ていただけませんか?そこで我々の仕事を見てからどの道を選ぶか決めていただければ結構ですから。」
『とりあえずは、従うしかないか。』

 リノルがそう考えたとき、それまで黙って聞いていたソルが口をはさむ。
「僕の体・・治るの?」
「・・・今のところは治せない。でも皆で治す方法を探してるところだよ。」
 リノルは、トンドルの言葉に違和感を覚えた。
「あなたたちは、自分の能力を消したいって思ってるの?」
「全員ではありませんが、そういう意見が多いです。アノルマレスの創設者がそういう思想を持っていたらしく、機関の中での教育で、そういう考えが広がっているのです。あ、別に教育は洗脳のようなやり方は一切しないので、期間内に様々な考えがあるのですが。」
「どうして?人には使えない力を得たんでしょう?」
「・・・異端として生きることは辛いことです。我々は普通に生きることが許されない“アノルマル(異常者)”なのです。」
 リノルは言葉の真意がはっきりとはわからなかったが、トンドルの哀しげな顔にそれ以上の追求は阻まれた。
「わかったわ。行って話を聞いてから考えるわ。」
『行く途中に探りを入れて、危険な所なら機をうかがって逃げないとね・・。』
警戒心を緩めないリノルとは逆に、ソルは、“治す”方法を探しているというトンドルの言葉に想いををめぐらせている。リノルには、ソルが既にアノルマレスに加わろうとしているようにすら見えた。まだ子供で、話の半分も理解できたかどうか怪しいのにもかかわらず。
「では王都までお連れしまショウ。」

≪≪1話へ                                   3話へ≫≫

第1話『異常』
2008.01.12 [Sat] 00:00

≪≪トップへ                                   2話へ≫≫

 二人の男が森の小道を抜けていく。一人は、長身で体格のいい男で、栗色の髪にひげを蓄え、たくましい青年であるが、左腕が根元から無い男。もう一人は、ほどよく脂肪を蓄えた、顔も体も丸っこい男。隻腕の男がけだるそうに口を開く。
「ほんとにここでいいんだろうな?森に入ってから結構歩いたぜ?」
 小太りの男は、今更なにをと言わんばかりに言葉を返す。
「トンドルは、サナリの“アンテナ(異常探査)”を信用できないのカイ?」
「そういうわけじゃねぇけどよ、こんな森の奥に人が住んでるとは思えねぇよ。」
 トンドルと呼ばれた隻腕の男は、ふてくされてみせるが、再び黙って進み始める。

 このとき二人の男は森の中を2時間ほど歩いたところにいた。そしてそこからさらに30分ほど歩いたところでトンドルが木々に囲まれた小屋を見つける。
「おいモーリィ!あれじゃないか!?」
「かもしれないネ。“アンテナ(異常探査)”によれば、対象はもう口のきける歳の子供だそうだヨ。」
「どっちにしろ親と話しねぇとな。」
「理解してくれるといいんだけどネ。」
 言葉とは違い、小太りの男、モーリィにはそれほど不安な様子も無い。

 コンコン。
 トンドルが小屋の扉をノックする。しばらく反応を待ち、再びノックをしようとすると、戸が少し開き、少年が顔をのぞかせる。
「・・・誰ですか?」
 何か用ですか、ではなく誰ですか、という言葉に、少年の警戒を読み取ったトンドルがぎこちない笑みを浮かべて自己紹介をする。
「俺はトンドル、こっちはモーリィ。えっと・・・両親はいるかな?」
「・・・街に買い物に行きました。」
「二人ともか?」
「・・・うちにはお父さんはいません。」
「おっと、そりゃ悪かったな。・・・ちょっと外で話せねぇかな?」
 家に入れるよりもマシだと感じたのか、こんな森の奥まで来た二人組みに興味を持ったのか、少年は少しの間の後、扉を開けて外に出た。
「わかりました。」

 少年は小屋の裏の、開けた場所に二人を導いた。小屋の庭のような場所で、半径5mほどの小さい円の中に切り株が三つあり、小屋の脇には薪や薪割り用らしい斧が立てかかっていた。三人が切り株に腰をおろすと、トンドルが少年に話しかける。
「まず、名前を教えてくれるか?」
「・・・ソルです。」
「ソルか。なぁソル、いきなりなんだが、最近何か変わったことはないか?」
 ソルと名乗った少年は、ハッとした後、少しうつむく。明らかに心当たりがある、ということは見て取れる。ソルは膝に当てた手を少し震わせながら、問い返す。
「何か、知っているんですか?」
 モーリィがソルの動揺をなだめるように、話に入る。
「君にもし、何かが起こっているのなら、力になれるヨ。」
 ソルの疑念は確信に変わった。
『この人たちは何か知っている。・・・僕を治してくれるかもしれない!!』
 そしてすがるように、自身の“異常”を話し始める。
「・・・何も感じないんです。ママに触っても、転んで怪我をしても。」
 トンドルとモーリィは顔を見合わせ、言葉を交わす。
「多分この子だな。」
「あぁ、既になんらかの“欠陥”が生じているようだネ。」
 二人の意味の分からない会話にソルは困惑した表情を浮かべるがトンドルはそんなことはおかまいなしに質問を続けていく。
「他には変わったことはないか?」
「力が・・強くなった。」
「そうか、どれくらい強くなったか、みせてくれないか?」

 自分の“異常”についてのことを早くおしえてもらいたいソルは、トンドルらの頼みに素直に従い、小屋の脇に立てかけられていた斧を手に取り、集中し始める。
『おぉ・・・』
『これハ・・・』
 ソルの体から、とても少年とは思えない殺気がみなぎり、トンドルとモーリィは、心の中で驚嘆した。そしてソルの内に向かってたまっていた禍々しい殺気が、一気に外に弾け、ソルが大木に走り向かう。

「ガシィィィィ!!!!!!!!!!!」
 周囲3mほどの木は、一撃でへし折れた。斧も木の8割ほどまで食い込んだところで折れたようだ。ソルはわずかに殺気を体に宿したまま無言で立ち尽くしている。

「間違いないネ。」
「あぁ、“アノルマル(異常者)”だ。」
「片手で木をなぎ倒すトハ。それにすごい殺気だったヨ。」
「バリバリのバトルタイプだな。“能力”は筋力の強化、“欠陥”は触覚や痛覚の喪失ってとこか。」

 トンドルらがソルを彼らの捜索対象だと確信し、言葉を交わしているとき、小屋の方から女性の声が響いてきた。
「ソルー!いないのー!?」

≪≪トップへ                                   2話へ≫≫
P R


閲覧される方へ
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓

┃ご閲覧ありがとうございます。    

┃本HPの画像の複製、転載等
┃全ての二次利用を禁止しております。

┃あらかじめご了承ください。

┃             管理人

┗━━━━━━━━━━━━━━━┛

┏━━━━━━━━━━━━━━━┓

┃ご意見、ご感想、ご質問などあれば
┃以下までお願いいたします。
┃    

┗━━━━━━━━━━━━━━━┛

《目次》
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓

トップページ

第1話『異常』
第2話『勧誘』


┗━━━━━━━━━━━━━━━┛