主な登場人物 

2006年10月08日(日) 19時51分
川瀬沙美(かわせさみ)
大浅緑(おおあさみどり)
金庭杏樹(かねにわあんじゅ)
青原裕(あおばらゆう)

うざい 

2006年12月17日(日) 14時09分
晴れたり、曇ったり、雨が降ったりする雲がうざい。
生きてもいないのに、あんなにキラキラ輝く海がうざい。
私になんか目もくれないで、いつも自分のことを一番に考える人間がうざい。
だから私も、そういう自分が大嫌い。
私はこの世界そのものが嫌いだ。
何故自分がこんな人間になったのかわからない。物心ついた頃には、すでに他の皆とは思考がずれていて、なかなか人の輪に入っていけなかった。というより、入りたくなかった、のほうが正しいかもしれない。
1人でも、特に不便は感じなかったし、無理に入ったところで、本気で受け入れてくれる人なんていないから。
そんな私、川瀬沙美も、好きなことがひとつだけある。それは歌うこと。これだけ。そして、私のことを唯一わかってくれるのは、同級生の林道海也だけ。海也は女好きで何でも出来、皆にモテモテな、私が一番嫌いな人種なのに、なぜか気があった。
そして今日は、高校の入学式、海也とも別れて、とても憂鬱だった。私は勉強はできたから、海也と同じ学校にだって入れた。でも、これでよかったんだ。もし私が海也といることで、海也の幸せを少しでも奪っていたのだとしたら、私は海也のそばにいてはいけなかったのだから。
私は1人でいい。それが嫌なら、自殺でも何でもすればいいんだ。
私は全寮制の高校に入った。髪型も何も、校則はない高校。そこで、私は髪の毛をピンクに染めた。弱い人間に見られたくなかったから。

 

2006年12月17日(日) 14時16分
「...川瀬沙美です。好きなのは歌うことです。」
私は暮らすの自己紹介で、そう一言言った。
「何あいつ。超暗っ。」「歌とか、無理だろ〜。」
そんな声がヒソヒソ聞こえてくる。
ほら、やっぱり見た目で決められる。
私はそいつらを睨み、自分の席へ戻った。

「なー、お前本当に歌えんの?」
休み時間、1人の男子が私に近づいてきた。
「からかいに来たんなら、やめてくれる?」
私は低い声でそういうと、席を離れようとした。
「ちょおっ。歌ってみてよ。」
その男子が私の腕をつかんで言った。
「嫌だ。歌えないと思うなら思ってれば?いいよ。私だって恥じかくのはごめんだね。」
すごくむかつくけど、何か不思議。何で私、こんなに話せてるんだろう...。
男子は私の腕を離した。
「オレ、バンド組もうと思ってんだけど、女ヴォーカルってかっけーじゃん?だから、お前、本当に上手いなら、入ってほしいんだ。」
私を必要とする人間がこの世にいるのか...!?
「...わかった。私、オリしか歌わんよ?」
男子は少し驚いた様子だったが、すぐに笑うと、
「よろしく。」
と言った。
私は口を開く。

...♪〜〜


クラスがシンと静まり返る。


...♪〜〜〜♪
...
私は恐る恐る、男子の顔を見上げた。
男子は頭を抱えると言った。
「...はっ...。やっべ...なんだお前...。」
だから嫌だって言ったのに...!

 

2006年12月17日(日) 14時30分
私は赤面した。すると、そいつは手を差し出してきたのだ。
「REGENDリーダー、大浅緑。よろしく。」
私はびっくりして、嬉しくて、声が出なかった。
「川瀬さんすごぉい...!あんな綺麗な曲初めて...。」
「もっと歌ってよ!。」
「さっき変人扱いしてごめんね。」
皆が私の周りに近づいてくる。
‘わたしは1人でいい’
ついさっきの言葉がよみがえる。
私は...私は...!
「私...っ!大浅君となっ仲良くなりたいのっ!!本当はっ...みっ...んなとも仲良くなりたいっ...。でも...私は変わってるから...。だから...。」
言葉が出てこない。だめだ...泣きそう。
「うん。」
私は大浅君を見上げた。大浅君は、笑いながら続ける。
「うん。...ありがと。」
他の皆も、優しく笑いかけてくれている。
ああ、私はこの15年間、何をして生きてきたのだろう...。思考がずれてるって何?皆それぞれ、考えなんて違うじゃん。自分のことを一番に考えるなんて、当たり前じゃん。私には、まだよくわからないけど、どんなに友達想いな人だって、やっぱり自分が一番大切なのは、当たり前じゃん...。
そう思うと、今さっきまでの自分が、本当に、本当に情けなくて、いつの間にか泣いていた。
そんな私の肩を、大浅君がたたいた。
「よく言えたな。かっこいーじゃん。」

杏樹命! 

2006年12月17日(日) 14時42分
「うち、金庭杏樹。杏樹って呼んでね。」
杏樹が近づいてきて、ウィンクしてみせた。
「沙美って呼んでっ。」
私もあわてて言った。
大浅君、杏樹...。友達になってくれるかも。
私はそう勝手に思い込んだ。実際そうなったし、誰が未来を予想できるというのだろう...。
それから私は、杏樹と大浅君と大浅君の友達の青原裕君の4人で遊ぶことが多くなった。
杏樹は、中学生時代は不登校だった頃があったらしく、(物語:[モノクロワールド]近日公開)私のことも理解してくれた。私も杏樹も、初めてできた大親友に、とても嬉しくて、毎日毎日笑って過ごした。
「おい沙美ぃー。今日もスタジオに7時なー。」
大浅君が廊下で私に手を振った。
「うん。わかった。」
私も手を振り返す。
「いいな沙美。うちもバンドやりたいなー...。」
杏樹がとなりでつぶやいた。
「え?じゃあ一緒にやろうよっ。」
私は杏樹の手をとった。
「え...?」
「杏樹も一緒にやろ。私がヴォーカルで、大浅君がギターだから、杏樹はドラムかベースやればいいよっ。」
「え!?まだ2人しかいないの!?」
杏樹と青原君が同時に叫んだ。
「え...あ...うん。」
私もあいまいな返事を返す。
「なんだ。うち、もう集まってるのかと思ってた...。じゃあうち、ベースやりたいっ。」
「オレも入っていい?ドラムなら経験済みだよ。」
「今日相談してみるね。」
私は笑いながら言った。友達って本当に楽しい。今の私は...。

「おー。いいじゃんいいじゃん。大歓迎よ。」
大浅君がギターを拭きながら嬉しそうに言った。
「そうだねっ。ヴォーカルとギターとベースとドラムと...。あと何が必要なの?」
私もマイクの電池を交換しながら言った。
「4人いれば十分だと思うよ。中にはキーボードとかサックス、パーカッション入れるバンドもあるらしいけど。」
ジャランッ
大浅君がギターを鳴らした。
「沙美の髪ってかっけーよなー。黒い髪にピンクメッシュ入ってて。俺もこの髪どうにかすっかなー。」
真っ黒でさらさらの大浅君の髪は、つやも出ていて綺麗だ。
「じゃあよく考えてから染めないとね。青原君みたいになっちゃうよ。」
私は青原君を思い浮かべた。
何も青原君ときたら、中学生の頃から、月に一回は染め直していたそうで、現在は赤茶けたごわごわの髪になっているのだ。
「あははっ。だねえ。」
大浅君は笑った。
大浅君は、皆と同じように笑うのに、なぜか胸が苦しくなる。大浅君は、なぜか特別。青原君や海也とは違う、特別な存在。
「...。」
「沙ー美っ。どした?練習するぞ。」
「うん。」
私は笑顔で答えた。そして私は口を開く。

ガシャーーーーーーーーーーーン...

「沙美!?」
私はその場にしゃがみこむ。マイクが落ちて、電池が転がっている。
「...ごめん。もう一回よろしく...。」
私はマイクを強く握った。
「...スランプ?」
大浅君はそう言って、私の顔を覗き込んだ。
「うわっ。沙美顔赤いじゃんっ。熱あるんだよ。今日はもう帰れ。送ってくから。」
「うん。そうする...。いいよ。寮なんてすぐそこだから。」
私は額に触れた。

 

2006年12月17日(日) 15時02分
「そう?じゃあオレ、もうちょっと練習してくよ。気ぃつけろよ。」
「うん。ごめんね。ばいばい。」
私はスタジオから出た。
あの歌...。
スランプなんかじゃない。熱があるわけでもない。
続きが歌えなかったのも、赤面したのも、あなたのせい。
...大浅君...。
15歳の春。私は初めて恋をした。
「海也。あのね、私、好きな人ができたの。海也と性格がそっくりなの!もっと仲良くなれたら、写メ撮って送ってあげるね。」
ピッ。
私は海也にメールをした。
「あら沙美ちゃん。もしかして恋わずらい?」
扉が開き、土屋理子先輩が入ってきた。この学校の寮は2人部屋で、その相手は必ず先輩か後輩になるようになっている。
「あ、理子先輩おかえりです。」
私はケータイを枕の下に隠した。
「応援するよ。頑張れ。」
理子先輩に言われて、私はまた顔を赤くした。
「あっありがとうございます。」

 

2006年12月17日(日) 15時06分
「おはよう沙美。」
寮が違う杏樹とは、学校でしか会えない。
「おはよう。」
私も返した。
「な、バンドの件どうだった?」
青原君が待ちきれない様子で言った。
「それがね...。」
私はわざと深刻そうな顔をした。2人が息を飲む。
「大歓迎だってー!」
2人の顔がパァッと明るくなった。
「イェーイ。」
杏樹と青原君は手をたたいた。
「...はよ〜。」
大浅君がまだ眠そうな顔をしながら、私達の中に入ってきた。
「緑っ...髪っ!!」
青原君が大浅君のかみを指差した。
「ああ。大浅『緑』だから緑!沙美の髪真似したんだよ。」
大浅君は髪の毛を触った。緑のメッシュが光っている。
「沙美、昨日平気だった?」
大浅君が真剣な表情になって言った。
「え?あ、ああっ!へーきへーき!心配させてごめんねっ!」
私は手をぶんぶん振りながら言った。
「そっか。よかった。じゃあ今日からは4人で練習できるな。料金半額じゃんっ!やったぜ!」
大浅君の言葉で、私達は笑った。

秘密ね 

2006年12月17日(日) 15時12分
体育の時間だった。
私と杏樹は更衣室で着替えていた。
すると、杏樹がいきなり言ったのだ。
「沙美って、大浅君と付き合ってるの?」
「え...?え!?んなわけないじゃんっ。」
私は赤い顔を隠すため、すばやく体育着を頭からかぶった。
「そっか。なんか、大浅君って沙美のこと呼び捨てだったから。うちは金庭さんなのに。だからもしかしてー...ってさ。」
「あっ杏樹だって、青原君のこと裕って呼んでるじゃん。大浅君は君付けなのに。それと一緒だよ。」
私は言った。
「そうだよねえ!うち馬鹿だぁー。実はね、バンドに入りたかった理由、もう一個あるんだ。」
そう言うと、杏樹は私の耳元でささやいた。
「え...?」
‘ウチ、大浅君ノコト好キナンダ’
「えへへ...。親友に隠し事は駄目だよね。2人だけの秘密。いい?」
杏樹は人差指を顔の前で立てた。
「う...うん。」
私は無理に笑みを作った。
そっか。そうだったんだ。杏樹は私より全然かわいいもん...。私なんて...。
また昔の私に戻っていくみたいで怖い。
‘親友に隠し事は駄目だよね’
言わなきゃ...!また前の自分に戻ってもいいの...!?
「杏樹っ!!」
「へ...?」
杏樹が振り返る。
「あ...えっと...。頑張ってね!」
「...。うんっ。ありがとう!やっぱり沙美に話してよかった。」
杏樹は本当に嬉しそうに笑った。
いいんだ。これでいいんだ。私を大切に想ってくれる人が幸せになれるなら、それでいいんだ...。
そうやってまた私は、自分の気持ちを封印した。生まれ変わった方のもう1人の私が叫んでいる。
大浅君―...

 

2006年12月17日(日) 15時21分
川瀬沙美に触ると暗暗病になるぞー!逃げろー!!
キャー!今、川瀬沙美にぶつかっちゃった!
大丈夫!?保健室行って、消毒してもらいなよ。
川瀬沙美ー。お前さぁ、超めざわりなんだけど。とっとと死んでくれる?
死ーね。死ーねっ。死ーねっ!死ね!!!
...めろ...よ...!!

...誰?海也?緑の髪...ああ、大浅君だ...。

沙美っ。あおい大丈夫かよっ。沙美っ。沙美っ。
「...。―。...美っ。沙美っ。沙美!!」
ハッ...
私はゆっくり起き上がった。
「お前大丈夫かよっ。体育の時間にぶっ倒れたんだって?今、金庭が先生呼びに行ってるよ。」
「―...。」
そこにいたのは青原君だった。
倒れた...?貧血?寝不足?ああ、最近寝てなかったし...。
「熱あるみたいだから寝てな。具合悪かったんなら休みゃあいいのに。」
青原君はケラケラ笑った。しかし急に真剣になって言った。
「なぁ、お前緑のこと好きなん?」
「え!?それ杏樹にも聞かれたんだけどっ!好きじゃないってばっ。」
私は笑いながら言った。1人に嘘をつくと、皆に嘘をつくことになる。昔誰かが言ってたっけ。
「じゃあさあ、緑はお前のこと好きなん?」
「...は?」
私の顔が引きつる。
「だってさあ、女子で呼び捨てにしてんの、お前だけじゃん。」
「あ...。」
そう言えば。
「私が大浅君の気持ちなんて知るわけないじゃんっ。」
「オレはね。」
青原君が急に声を大きくした。
「オレはね...、沙美が、好き。」
私は耳を疑った。今、青原君はなんて言った...?
「オレは沙美が好き。」
私に答えるかのように、もう一度青原君が言った。
「青原君...!?」
私はふと右を見た。緑色のメッシュの入った男子が立っていて......緑...色...!?
「大浅君っ!!」
「緑!?」
私と青原君が同時に叫んだ。

 

2006年12月17日(日) 15時33分
「あ...。ごめん...。立ち聞きするつもりはなかったんだけど...。」
大浅君が一歩さがった。
「大浅君違うの!」
私は大浅君のほうへ行こうとした。
「何が違うの?」
大浅君が私の手をつかんで言った。」
「えっ...と...。」
確かに。何が違うのだ。
「あ...。ごめんなっ。様子...見にきただけ...なんだ。」
大浅君が頭をかいた。やばい、引いているんだ。
「あ...ありがと...。」
「緑。沙美のことどう思ってんの?」
青原君がきつい口調で大浅君に聞いた。
「どう...って...、友達だよ。
いいんじゃない?沙美。裕、いい奴だよ。」
な...。
「...。」
「沙美?」
青原君が私の顔を覗き込んだ。
「うん。そーするよ...。大浅君もありがとね。」
私は泣きながら言った。
「沙美...。」
大浅君が何か言いたげに口を開いた。
「えへへ...。嬉しくて涙出ちゃった...。」
大浅君が気持ちとともに、言葉をぐっと飲み込むのを感じた。
「...っ。」
大浅君がこの場を立ち去ろうとしたときだった。
「川瀬さん...っ!」
「沙美っ!!」
現れたのは先生と杏樹。
今の状況を把握していない先生と、杏樹。
「沙美っ。起きてて大丈夫なの!?」
杏樹が私に駆け寄った。
「う...ん...。もう全然...。」
私は言いながら、大浅君をちらっと見た。私に視線に気づいたのか、我に返ったのか、
「...失礼しました。」
と言うと、行ってしまった。
大浅君、怒ってるの...?
「どうしたの?大浅君。」
杏樹が不思議そうに言った。
「様子見でしょ。元気そうだったから、帰ったんとちゃう?」
青原君が冷たく言い放った。異変に気づいた杏樹が、私の顔を見た。
「あとで話す...。」
私は小さな声で囁いた。
P R
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