安達勇人のレビュー

October 02 [Tue], 2012, 0:51
あすこのな、蛇屋に蛇は多けれど、貴方がたのこの二条ほど、験のあったは外にはないやろ。私かて、親はなし、稚い時から勤をした、辛い事、悲しい事、口惜しい事、恋しい事、」
 と懐手のまま、目をって、
「死にたいほどの事もある。……何々の思が遂げたいよって、貴方二人に類似りたさに、同じ蛇を預った。今少し、身に附けていたいよって、こうしておいておくれやす。
 貴方、結ぶの神やないか。
 けどな、思い詰めては、自分の手でも持ったもの。一度、願が叶うた上では、人の袂にあるのさえ、美津さん、婦は、蛇は、可厭らしな!
 よう貴女、これを持つまで、多一さんを思やはった、婦同士や、察せいでか。――袂にあったら、粗相して落すとならん。憂慮なやろさかい、私がこうするよって、大事ないえ。」
 と袖の中にて手を引けば、内懐の乳のあたり、浪打つように膨らみたり。
「婦の急所で圧えておく。……乳|銜えられて、私が死のうと、盞の影も覗かせぬ。さ、美津さん、まず、お前に。」
 お珊は長柄をちょうと取る。
 美津は盞を震えて受けた。
 手の震えで滴々と露散るごとき酒の雫、蛇の色ならずや、酌参るお珊の手を掛けて燈の影ながら、青白き艶が映ったのである。
 はたはたとお珊が手を拍くと、かねて心得さしてあったろう。廊下の障子の開く音して、すらすらと足袋摺に、一間を過ぎて、また静にこの襖を開けて、
「お召し、」
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