みきがキンクロハジロ

October 17 [Mon], 2016, 21:51
"宮部みゆきさんの「ソロモンの偽証」は、単行本で全6巻という長編です。今までこんなに長い小説を読んだことはなかったのですが、長さが苦痛になることも無く、物語に引き込まれていきます。
宮部みゆきさんの小説はどれもそうなのですが、情景描写が他の小説家の方々と比較しても秀逸です。読んでいると自然にその光景が目の前に広がって物語の中に入り込むような感覚に襲われます。いろいろな作家さんの小説を読んでいますが、私は、宮部さんの作品ほどこのような感覚に陥ることは無いです。

物語の舞台は中学校ということで、読む前は、もう既に馴染みが薄いステージかと思って不安でしたが、全く問題ありませんでした。
登場する人物たちは実に様々な個性を持っていて、読者一人一人が誰か自分に近いキャラクターに出会えるのではないしょうか。
学生の方は今の自分に近いリアルな現実と重ね合わせたり、大人の方は自分の学生時代を思い出して懐かしかったり苦い思い出をかみしめたりするかもしれません。

物語はそこにミステリ要素が加わります。

ミステリの核は決して複雑なものではなく、「ある一人の男子生徒の死の真相」です。しかしそこには様々な要素が絡まり合って、読者を何度も揺さぶります。

学校でイジメを繰り返す素行不良の3人組の少年が、その男子生徒の飛び降り死にかかわっているのではないかとの噂、そしてそれが真相だと告発する偽物の声明文が登場し、事件は動き出します。

その声明文を作成した女子生徒もまた、3人組にいじめられていた一人でした。
思春期独特の悩み、家族との溝、そしていじめによってもたらされた心の深い傷から、親友を事故死に追いやってしまう女子生徒。これが「第2の死」です。

ある町の、ある中学校で起きた二つの死亡事件によって、かき回される生徒たち。
マスコミや、学校関係者の様々な思惑に翻弄され、傷付いていく。

そこで、主人公である、一人の女子生徒が立ち上がります。自分たちの手で、真相を突き止めようと。
彼女はいわゆる優等生。まじめで成績優秀、正義感が強く、周りから頼られる存在。
彼女の提案する「学校裁判」により、男子生徒の飛び降り死の真相と「真犯人」が明らかにされていきます。

前述のように、宮部みゆきさんは情景描写のレベルがとても高い作家さんだと思いますが、人物描写、心理描写も同じぐらい素晴らしいと思います。
登場人物たちの心の闇、強さ、未熟さ、人間としての脆さ、それが絡み合うことによる悲劇をここまで巧みに表現し、読者を結末まで導くことができるのは、宮部さんだからこそかと思います。

真相が解き明かされる部分は、読んでいて涙が止まりませんでした。

人の痛みを知ることでしか差し伸べられない優しさがあります。そんなことを教えてくれるミステリーだと感じました。

"
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:ルナ
読者になる
2016年10月
« 前の月  |  次の月 »
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
最新コメント
ヤプミー!一覧
読者になる
P R
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
http://yaplog.jp/allwtskrtabboc/index1_0.rdf