未完成な棚機津女 2014 旧暦

August 02 [Sat], 2014, 15:35

目を開けると、暗い闇が広がっている。
まだ夜中のようだ。
頭にわずかに走る痛みは、飲みすぎた酒のせいだろうか。
酒……そうだ。今日は逢瀬という名目で飲み会が繰り広げられて……。
以降のことは記憶がない……というより、思い出したくない。
胃の奥底から吐き気を感じ身をよじると、暗闇に慣れてきたのか部屋に差し込む月の光で周囲の状況が見えてきた。
……そこには惨状が広がっていた。

酒の入った器を抱えたまま前のめりに寝入ってしまっている妃賣。
苦しそうに寝込む探女と、彼女の頭を膝の上に乗せて介抱する雉女。
空になった酒瓶や、どこからか持ってきた肴の残骸が周囲に散乱している。

妊娠

July 23 [Wed], 2014, 22:07

ここ数日の空はどこかがおかしい。
夏も盛りだと言うのに、空にはどんよりと雲がかかっている。
(……ケンカでもしたのかしら)
この後に訪れるであろう展開に胸が疼く。
彼にとって、私が逃げ場になれるのであれば、それに越したことはない。
どうしたものか悩んでいると、小屋の戸が叩かれた。
恋焦がれるようでいて、呆れるような心持で戸を開くと、そこには予想外の人物……下照姫が立っていた。
顔色は酷く、表情もまた暗い。

天橋立

July 14 [Mon], 2014, 17:03

天橋立。
天地を結ぶ道なき道を、神々はそう名付けた。
聳えるような雲の合間から、ほのかに緑の野が見える。
……あれが地上か。
若日子の居場所を耳にした妃賣は、真偽を確かめるべく地に降下しようとしていた。
……いや、真偽を確かめるだけならば、もっと適役がいる。
「妃賣ちゃん……本当に行くの?」
天照は見知らぬ世界へ飛び立つ為に、不安と戦っている妃賣の背中に声をかけた。
その声は心なしか震え、心の底から妃賣のことを心配しているように聞こえた。
胸の前で両手を握りしめると、妃賣は決意を込めた瞳をまっすぐに天照へと向けた。
「ええ、このまま兄さまと離れていても、意味がないですから……」
少しだけ皮肉の籠った言葉ではあったが、天照はそれら一切に頓着せずに、妃賣の背中から優しく抱きしめた。
「……気を付けてね」
燃えるような熱が妃賣の背中から入り込んでくる。
不思議と妃賣の身体から未知への恐怖が消え、身体の熱とは裏腹に頭が酷く冷静になるのを感じた。
「さようなら、天照さま」
ゆっくりと天照の手を振りほどくと、妃賣は地へと下って行った。

牧倉8

July 10 [Thu], 2014, 23:28

「お待ちください」
長老の発した大きく通る声に、御手洗は反射的に振り向いた。

牧倉7

July 10 [Thu], 2014, 23:27

御手洗が人々に囲まれて、連れられて行った先は簡素な社であった。
濃厚な木の香りが、まだそれが建てられたばかりだということを主張していた。
御手洗が社の真中に座らさられると、周囲に火がくべられる。
炎の明かりが境内を照らし出すと、御手洗はあまりの光景に息を飲んだ。
決して広いとは言えない境内に、数多の村人が集っていた。
その数は二十や三十ではない。老若男女、まるで村の全ての人がここにいるようであった。
P R
最新コメント
http://yaplog.jp/alikaism/index1_0.rdf