初めての出会い 【2】

March 13 [Tue], 2007, 14:49
血盟城に向かう道では1人の旅人を自分の馬の後ろに乗せて走らせているグリエ・ヨザックの姿があった。

「また、派手にやったみたいですね」

ヨザックが泥や土で汚れきっている長いローブを頭からかぶり顔がほとんど分からない旅人に声をかける。見た目はそれほど大きくない人物だ。

「左足首をちょっとひねっただけよ?でも、これくらいですんで良かったわ。まぁ、もっともあっちは『これくらい』ではすませてないけどね」

なにやら恐ろしいことをさらりと旅人が告げる。それを聞いてヨザックは苦笑いを思わず浮かべた。
この人はここに戻ってくる前に喧嘩を売ってきた相手と一暴れしたようだ。

         (変わってないねぇ、この人は本当に・・・)

自分だけではなくコンラッド、ヴォルフラム、そしてあのグウェンダルでさえもこの人に何度も投げ飛ばされたのは未だしっかりと記憶に染みついていた(もちろん回数も)。改めてこの旅人の怖さを実感しながらふと前を見たヨザックは血盟城まで500mぐらいのところまでたどり着いたことに気がつく。

「もうすぐですぜ。懐かしいでしょ、やっぱ」

肩越しに振り返るヨザックに旅人はふっと笑みを浮かべた。
            
「えぇ・・3年ぶり・・よね」

そのままフードをばさっと外す。すると漆黒の髪が風に踊った。
 
「そういえば・・もう魔王陛下はツェリ様じゃないんでしょ?どんな人なの?噂では双黒の者って聞いているけど・・」
「まだまだ子どもですよ。考えが甘くて向こう見ずですぐに誰でも信頼しちまって・・」

ヨザックが小声でユーリのことを話し始めた。ギュンターやコンラッドあたりの耳に入ったら彼はおそらく半殺しだろう。というか殺される。ユーリが止めてくれれば別だが・・・。
               
「そう・・」

どういう反応をしていいか分からずに彼女は苦笑いを浮かべる。

  
「・・でも、優しさと正義感なら誰にも負けてないと思いますね、俺は」

そこまでいってヨザックはふっと微笑んだ。その言葉に彼女も笑顔になる。
 
「・・・なら・・今はまだまだ未熟だけど・・将来的には立派な魔王になる可能性大・・ってところなのね?」
「ま、そんなところです」
「それは楽しみね、早く会ってみたいわ。」

彼女が心から楽しそうな声を出した。その時、ヨザックはふと思い出した、自分はまだ彼女に大切なことを言っていないことを・・。
   
「そういやぁ、まだいってませんでしたね・・・お帰りなさい。師範」       
「・・師範はやめてよ。・・・ただいま、ヨザック」

             
「師匠、お帰りなさい!」
「水月師範!」

血盟城についた途端、まずヨザックと彼女を迎えたのは兵士達からその言葉だった。ヨザックの馬が歩を止めると同時に彼女−沙夜はとんっと片足一本で地上に降り立った。ひねった足首をこれ以上痛めないためだろう。
           
「ただいま、皆元気そうね」

沙夜はそういうと柔らかく皆に微笑みかける。それと同時に兵達が口々に「また武術を教えて下さい!」と告げる。どうせ投げ飛ばされるのが関の山なのだが・・・これは言わないでおこう。
        
「えぇ。そうね、またやりましょうか。」

沙夜が1人1人と求められるままに握手をしていると少し離れたところから聞き覚えがある声がうれしさを込めて聞こえてきた。
               
「サヤ!」

その声と同時にそのあたりの兵がばっと場所を空ける。そこには魔族似てねぇ3兄弟の3男坊−ヴォルフラムが満面の笑みを浮かべながらたっていた。3年前とは少しも変わっていない。
 
「ヴォルフラム!!久しぶりーー、相変わらず可愛い顔してるわねー、変な男に絡まれたりしていない?」

少なくとも久しぶりにあった人に言うべき言葉ではないだろう&なぜツェリ様と同じようなことを言う的なセリフを同じく満面の笑みを浮かべながらいう沙夜。
 
「なっ・・かわいくなんかないです!それに僕にはもう婚約者がいるんです!変な男なんかに絡まれたりしませんよ!」 
「え・・?婚約者?!ヴォルフラムに?よかったじゃない、おめでとーー!!どんな子?あとで挨拶させてね!」

沙夜はくすくすと笑いながら答えていたがふと何かに気がついたようにヴォルフラムの顔を凝視した。
             
「さ・・・サヤ?」
「・・・相変わらず可愛い顔してるけど・・なんかかっこよくもなったね、ヴォルフラム・・。」         「え・・?」

そんなことを言ってもらえると思っていなかったのかヴォルフラムが不覚にも頬を赤らめた。
そこがまたかわいいところなんだけど。

「サヤ師範、お帰りなさい、お久しぶりです。」

その次に歩いてきたのはアニシナとギュンターだった。

「お久しぶりです、サヤ。」
「ギュンター、アニシナ・・・。うん、ただいま。2人とも元気そうね」

懐かしい友人達を見て沙夜の顔が思わず緩む。

「ささ、早速城の中に。陛下もお待ちですよ。」

ギュンターが沙耶の背中にそっと触れた。

「あ、うん。そうね・・まずは陛下にお会いしないとね。」

そういって沙夜は無意識に痛めていた足を地面につけた。その途端、ズキッ!!という痛みが体中を駆けめぐる。

「っ・・・」
「サヤ、どうかしたのですか?」

いきなり眉を寄せた沙夜を見てアニシナが顔をのぞき込んできた。

「え・・っ・・ううん、なんでもない・・。さ、早く陛下に会わないとね。じゃあ、ありがとうヨザック。皆もまたあとでね?」

そういうと沙夜はゆっくりと歩き始めた。それに続いてヴォルフラム達も歩き始める。

「・・・あーあ・・師範大丈夫かな・・」

ただ1人、沙夜が足を痛めている事を知っているヨザックは心配そうに眉を寄せた。
言っておいた方が良かったと、今になって気づくヨザックだった。
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