001.コーヒーにお砂糖を 

November 30 [Wed], 2005, 23:08
「うお、苦。」

向き合って座る俺たちに障害はなく、朝の陽射をうけながらけだるい朝を過ごしていた。
テーブルには二つのマグカップ。
中身はコーヒー。

「だから止めとけって言ったじゃない。それなのにサスケが無理に飲むとか言うから」

「だってあんたうまそうに飲んでたじゃねぇか」

「大人だからな」

「子ども扱いすんのか?」

「してないよ。ただ子どもには無理だよって言っただけ」

「同じことじゃねぇか」

「違うよ」

笑いかけてやればあからさまな態度でそっぽ向く。
ポケットに忍ばせといた砂糖を取り出し、封を切ってサスケのマグカップに注いでやった。

「……なんか嫌だ」

「何がよ」

「甘ったるいのも、苦いのも両方。俺には合わない」

「へぇ、面白いこと言うね。じゃあ何がしっくりくるわけ?」

サスケはしばらく考えたようだった。
それからちょっとどもりながら言葉を呟いた。

「透明とか」

「味に透明はないんじゃない?」

「空気がある」

「馬鹿だな。空気は食べれないだろ」

「肺に入って体中循環してるんだろ? 食ってるのと一緒じゃねぇか」

「面白い子だね」

「……おい、まだこれ苦いぞ」

「大人は遠いな、サスケ」

001.藍色の天井 

November 23 [Wed], 2005, 17:54
 見付けて欲しい。
 雨が降る外界から遮断された部屋で、一人小さく膝を抱えて待っていた。耳鳴りは酷く、偏頭痛が寄せては引いていく波のように、規則正しくどくどくと脈打つ。見つめた膝小僧の登頂は赤く、ずっと幼い頃につけた傷跡が今でも残っている。天井は低い。10時の鐘の音。

「寒くないの? こんな所で小さくなっちゃってさ」

「寒い」

「だったらエアコンつけるとかしたらいいのに。俺風邪引いちゃう」

 ぶるりと見を奮わせた男をサスケは振り返った。その目には光を宿していない。この部屋はとにかく寒く、10時だというのに雨のせいで部屋は薄暗い。天井は藍色。
 背後に立つ男に、静かに視線を送りつづけて、そのうちふっと息が抜けた。

「あんた年だからな」

「サスケが若すぎるんだよ」

「不法侵入だ」

「俺んちのポストにラブレター入ってけど? 10時に来て抱いてね、ハニーよりって」

「ばかだな、あんた」

 もうとっくの昔から冷たくなっている足の指先を手で揉み解しながら、血行を良くする。しかし揉み解している手の方も冷たくて、あまり効果はなかった。冷たいばかりで何の意味もなさない行為をそれでもしばらく続ける。
 カカシは、それほどばかじゃなかった。そっと背後に寄って、背中合わせに座る。
 暖かい。
 サスケは安堵して、頭のいい男に感謝した。じらすようにじっと、辛抱強く作業を続ける。無言で、ゆっくりと時間は流れて、結局は一分も経たないうちに静けさは去った。名残惜しむことも無く、カカシが口を開く。

「甘えるの上手だね」

 ふふっと笑う背中に思いっきり体重を寄せても、揺らぐことはない。

「足、揉んで欲しい?」

「いや、いい」

「わかってるよ」

 もう一度ふふっと笑って、カカシは静かに手を回した。

「寒いって言ったね?」

「ああ」

「じゃあ、お風呂だ。背中流してあげる」

 カサカサに乾いた指先に息を吹きかけると、それだけで暖かい気分になった。小さく頷きながら、それでもこの部屋から出ることを躊躇ったのは、どうしてだろうか。
 例えば何かを自分は望んでいるのだろうか。この男の手を汚したいとか、そういうこと。いとおしいから、傷つけたいとかそういうこと。

 あんたに望むんでいるのは、多分それだ。
 傷ついて欲しい。
 傷つけたい。
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