第4話

November 10 [Tue], 2009, 19:23
だめだめ・・・レッスンに集中しなくちゃ・・・

ビーカはもう何度もイワーノワ先生の注意を受けている。

「ぼーっとしすぎよビーカ!もう一度初めから!」

ビーカの集中できない理由は言うまでもなく、昨日のマーシャとの電話の件だった。
マーシャはビーカの声を聞くと、「今一番あなたとは話したくないの。」と、言った。
理由は聞くまでも無く、ビーカが、今回主役を踊れるかもしれないチャンスをもらえた事を、マーシャは認められないからだった。

ビーカは、マーシャの言葉にとても驚いた。
マーシャはビーカと同じ163センチで、クラスで2人は一番小柄だった。
背丈が同じなだけに、踊るときにペアになる事が多く、よく一緒に残って練習をしていた。

一見して、似た雰囲気の2人だったけれど、ビーカとは反対に、マーシャは小柄なだけに、早い動きのパが得意で、ジャンプ力もあったし、踊りも安定していた。
とても優しい性格の女の子で、ビーカが先生に怒られて泣いていた時も、イリーナと2人で慰めてくれる様な女の子だった。

どうして?マーシャ・・・マーシャも、公演の張り紙を見て、おめでとう。と、言ってくれたのに・・・

「ビーカ、何度言えば分かるの?そこはもっとはっきり元気に踊らないと、ジゼルはまだ元気なのよ?」

今はジゼルの1幕の振り付けの最中だった。
一緒に振り付けを受けているナターシャはさっきから呆れ顔でビーカを見ていた。

「ご、ごめんなさい!」

「あやまる前に動く!!」

ビーカはあたふたとザルの下手に走った。

ビーカのせいでナターシャも一緒に初めから踊らなくてはいけない。

そう、今日はナターシャの先生が不運にも風邪を引いてしまい、ビーカとナターシャの合同練習となったのだ。

ナターシャも「はぁ。」と、大きなため息をついて下手に走った。

「まじめにやってくれない?」

ビーカはナターシャの言葉に何も返せなかった。

どうしてマーシャはあんな事を・・・私、嫌われてる?

ビーカの頭の中はその事でいっぱいだった。


「今日はここまで!2人ともお疲れ様。今日教えた振りを各自復習しておいてね。明日も放課後よ。」

はぁ〜、すごく嬉しいレッスンのはずなのに、私ってばどうしてこんなに気が弱いのかしら・・・

「あなたのおかげで今日は1幕の半分も振りが進まなかった。やる気がないなら早く辞退して。迷惑。」

ナターシャはトウシューズを脱ぎながら目も合わせずに言った。

「や、やる気がないわけじゃない・・・よ。ご、ごめん・・・」

「・・・ごめん。そればかりね。あなた、あまいわよ。」

ナターシャはまた目も合わせずにサッと立ち上がり、ザルを出て行こうとした。

「待って!・・・あの・・・」

「・・・あなた、私に何を言って欲しいの?」

ナターシャはぶっきらぼうに言い、さようならも言わずに、ザルを出て行った。

私ってば・・・ナターシャに何を言おうとしたの?誰に何を聞いて欲しいの?
マーシャにあんな事を言われただけで弱気になって、ナターシャにも迷惑をかけて・・・
きっと、私はジゼルを踊れない・・・その言い訳が欲しいだけなんだわ・・・
イリーナなら分かってくれる。相談してみよう!


「ただいま・・・」

イリーナと共同の寮に戻ってきた時には、7時を過ぎていた。

「元気ないね!どう?上手くいった?」

イリーナはスナック菓子を食べながら音楽を聴いていた。

「うん・・・私、やっぱりジゼルをやる自信ない。マーシャもきっと、私が主役なんておかしいと思ってるんだわ。」

ビーカは思っていても口に出来なかった事をイリーナに話した。

「じゃあ、やめれば?」

いつになく冷たいイリーナの口調にビーカは驚いた。

「え?イリーナ・・・でも・・・・・・」

「また。いつもそうやってビーカは人の意見を聞きたがるくせに、都合の悪い事を言われると泣くのよ。踊りたいんじゃないの?ジゼル。それに、どうしてマーシャに認めてもらえないからって悲しむ必要があるの?言っておくけど、誰もビーカが主役を踊れる事を認めていないよ。私だってそう。どうしてやる気のないビーカが主役を踊れるの?って。この学校にいる者なら、みんなビーカの立場に立てば、見返そうと努力するよ。」

イリーナは早口で言った。

気づいたら、ビーカの目には涙が溜まっていた。何も言い返す言葉が見つからなかった。

「ビーカさ、何の為に踊ってるの?」

「・・・好きだからよ。」

「ぷ!あははは!ビーカってあまいなって思ってたけど。好きでバレエをやるならこの学校から出ていきなよ。ここはバレエを仕事にする人間が集まる所だから。」

「・・・・・。」

ビーカはレオタードにショールを羽織ったままの姿で泣きながら部屋を出て行った。
シューズ入れの中に入っているトウシューズが、やけに重く感じた。

「ちょっと言いすぎたかな。でも、これできっと、ビーカはやる気をおこしてくれる!今のままじゃだめだよ・・・」

イリーナは、ビーカが出て行った部屋の扉を見つめながらつぶやいた。

自分の才能に気づいていない・・・なんて、本当、ビーカって・・・
イリーナは、食べかけのスナックの袋が空になっている事を確認してからゴミ箱に投げ捨てた。

「ナイス!!」

全てはイリーナの気遣いとも知らずにビーカはだれもいない学校のザルに向かって走っていた。



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