空の花E(みんなで飲みに行きました)

December 08 [Sun], 2013, 13:00
駅からの人の流れと逆に進む。

「アホ、おっそいなぁ〜。」
慣れない草履のせいでユリの歩みは遅い。
嶋本はそれに歩調を合わせ、横に並ぶ。
一歩遅れて小鉄が続く。
「ごめんなさい。」
「なんで橋本さんがあやまるん?」
「花火、そろそろ始まりそうだし…。私、一人で大丈夫ですから。」
嶋本は携帯電話を片手にユリに笑って見せた。
「あのアホ、『ふたりで花火を見よう!』とか言わへんの?」
「え!?いや、あの、そんな…」
「どうせならふたりっきりでデートとかしたよな?」
「…そんなっ!」
「俺やったら、ふたりがええなぁ。」
ユリは真っ赤になっている。
温度のあがった頬に手のひらを当て、顔を少し隠している。
嶋本の視線はユリを越えて、少し遠くに送られる。

「でも、私、兵悟君が皆に囲まれてる姿見るの好きでっ!あ、職場に顔をだしてご迷惑ばかりかけてごめんなさい!」
「…俺も、楽しそうにしてるの見るの好きですよ。」
少し後ろから、小鉄が声を出す。
ユリは驚いたように小鉄を見上げる。
「あっ、いや、自分とふたりだけの時にはしない表情を見てるのは、すごく…楽しい…です。」
嶋本は目を丸くして、小鉄を見つめた。


「ユリちゃ〜ん!」
遠くから馬鹿みたいに大きな声が響き、三人は神林の到着を知る。
大きく手を振りながら、ジャンプまでしているので、人ごみの中でもよく目立つ。

ユリと一緒に嶋本がいるのを見つけて、兵悟はやばいと思う。
嶋本がそこにいた事も、沢山の着信とメールも。
『俺が小さすぎて見えへんかったんか?』
なんて言われそうな気がする。
びくびくしながら近付く。
「嶋本さんお疲れ様です。」
「…ん、ああ。」
「あ!小鉄さんも!お疲れ様です!!」
「遅かったな。」
「ごめんなさい!」
ちらっと嶋本の表情を窺う。
「おい、橋本さん連れてはよ行かんと、花火始まってまうで。」
じろりと睨まれるが、驚くほど怖くなかったのは、目元が赤いからかもしれない。
「はい!ユリちゃん遅くなってごめん、行こう。」
「うん!あ、お二人も一緒に…」
ユリの言葉をさえぎって、小鉄が言う。

「先、行っててくれるか?」
「あ、はい。」
「ちょっとビールとつまみ買ってから戻るから。」

ユリはぺこりと頭をさげ、二人は人ごみにのまれていった。


「嶋本さん、今度の休み…二人で出掛けませんか?」
「…おまえは、ほんま…」
「駄目ですか?」
「……」
「ふたりだけの時にしか見られない顔も大好きです。」
「……おまえ…」

  『ドンッ』

空に大きな花が咲いた。
皆が一斉に上を向く。

小鉄は真っ赤にそまった嶋本の頬から目が離せなかった。


終。


冬になっちゃった。


空の花D(みんなで飲みに行きました)

October 01 [Tue], 2013, 19:02
スミレと盤はアニメのネコとネズミのように仲良く喧嘩している。
それを遠巻きに見ているのはとても楽しい。
ユリは少し距離を置くため体を引くと、小鉄にぶつかった。
「あ、悪い。」
「ごめんなさい。」
兵悟が3隊の頃からちょこちょこ顔を合わせていたが、会話をするのは初めてだった。 
「神林、早く来るといいな。」
「え、や、別に!そんな!」
ぱっと見怖いのに、意外と柔らかく笑う事に気付き、ユリはすこしほっとした。

スミレと盤の喧嘩に真田も巻き込まれている。
二人とも息継ぎの度に
「真田さんはどう思います!?」
なんて言うものだから、真田もその場から抜ける事が難しいようだ。

小鉄とユリは二言三言、他愛ない会話を繰り返す。
特別な盛り上がりはないが、雰囲気は良かった。

ユリは時々視線を上げ神林を探している。
その仕草が可愛くて、小鉄は無意識に目を伏せた。
少し時間をおいて、少し遠くにいる嶋本を見る。
嶋本が安堂の頭をぺチンと叩き、無理やり自分の席に座らせていた。
安堂の嫌そうな顔と、大口の嬉しそうな顔。毎度おなじみの表情が良く見える。
嶋本は手をひらひらと泳がせた後、ゆっくりと小鉄の方へと向かってきた。

スミレと盤を諫めに来たのか。
それとも真田にビールの酌に来たのか。
ようやく小鉄を助けに来たのか…

嶋本はユリの前に立った。

「橋本さん、アホのお迎えに行かへん?」
嶋本はにこっと笑った。
「は、はい!」
ユリも笑って立ち上がった。

「ちょっと行ってきますね。」
真田に一声掛け、嶋本の足は駅に向かう。
二、三歩進んで、ちらっと振り返る。

「小鉄、行くぞ。」
「え…あ、はい。」
小鉄は慌てて立ち上がった。



やっぱりもう一話続きます…
もう秋なのにごめんなさい

空の花C(みんなで飲みに行きました)

September 09 [Mon], 2013, 0:13
真田が小鉄に興味を持ったきっかけを知っている。

タカミツはすこしぬるくなったビールを飲んだ。

いつかの飲み会で黒岩が、日光の氷下訓練の話をしていた。
小鉄が嶋本隊だった時、裸で氷の下に潜ったらしい…
それを聞いてからだと思う。真田が小鉄にやたらと話しかけるようになったのは。

北の海の冷たさを知っているタカミツには、誰より小鉄の凄さが分かった。
だから、まぁ、仕方がない…と思う。

小鉄は視線でタカミツにSOSを送っているような気がする。
でも、タカミツにはどうする事も出来ない。
割り込んできた兵悟の彼女と盤の彼女のせいでますますカオスな空間が広がっているが、タカミツにはどうする事も出来ないのだ。


少し遅れて盤がやってきた。
何の迷いもなく一直線に真田のもとにやってくる。
彼女無視して上司かよ…とタカミツはでっかい溜息をついた。
ついでに同僚も全部無視。
そのうち彼女とふたりでぎゃあぎゃあと、いちゃつきはじめた。
所詮痴話げんか。
いつもの事だと皆は温く見守っていた。
巻き込まれた上司も特に動じる様子がない。

当たり前の風景の奥で、兵悟の彼女と小鉄が会話するという非日常が繰り広げられていた。

タカミツは知っている。
小鉄には年上の彼女がいる事を。
話に聞くだけで、写真を見せてもらった事もない。
これだけ隠すという事は、きっとタカミツの知っている人が相手なのだろう。
秘密にしたいなら深追いしない。
…気にはなるけれど。

兵悟の彼女に向ける小鉄の表情が思いの外柔らかく、タカミツは驚いた。



続きます。
次で最後です。






おへんじです。

August 29 [Thu], 2013, 0:18
夜には秋の虫が鳴いてますね…
季節はもう秋だというのに、まだ夏の小話書いててごめんなさいです…

以下お返事です。
こんな気まぐれなサイトに遊びに来て下さってありがとうございます!!

空の花B(みんなで飲みに行きました)

August 28 [Wed], 2013, 23:41
お祭りの空気が大好きだ。
わくわくして、そわそわして、べっちゃべちゃの屋台の焼きそばも、生焼けのイカだって最高においしい!

大口はビニールシートの上で満面の笑みを浮かべている。
本当は可愛い彼女と二人っきりとかが最高だけど、今はいないから、職場の仲間とでもいいや。楽しいし。

ビールでお腹がいっぱいだけど、まだ花火はあがらない。
大口はちらりと上司の顔色を窺った。
楽しそうにビールを呷っている。けど、なんだか落ち着かない様子で、少し離れた席の事を気にしている。

大口も視線を向ける。
ビール吹き出しそうになったけど、どうにかこらえて飲み込んだ。

何がどうなってああなったのか。
あまり得意ではない上司と、ピッチピチのかわいこちゃんに囲まれて、変な顔色で固まってる。
上司はともかく、女の子に囲まれてあの表情はないだろう。
時々話しかけられて、ぎこちなく首だけで返事している。

かわいそ〜
でも、おもしれ〜

小鉄が焦れば焦るほど、大口の笑顔は輝いていく。
嶋本は部下の黒さを改めて感じていた。

「おつかれ〜っす。」
缶ビールの入ったビニール袋を片手に安堂がやってきた。
「あれ?神林は一緒やないんか?」
お土産を受け取りながら、嶋本は安堂の後ろをのぞく。
アホの石井は一直線に真田のもとに走っていた。慌てて武山もそれを追っている。
「あ〜、基地長に捧げてきました〜。」
「生贄か…。」
神林の彼女はかわいそうに、キョロキョロと不安そうな表情をしていた。

「しゃあないなぁ。」

嶋本は腰を上げると、空いた場所を安堂に譲る。
大口のすぐ隣のその席に嫌な顔をしたが、渋々と腰を下ろした。


「橋本さん、アホのお迎えに行かへん?」
嶋本はにこっと笑った。


続きます。




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