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April 11 [Fri], 2008, 22:54
半年間、掛け値なしにばかな男に片想いを続けたあたしに、救いの手が伸びた。サークルで知り合った、違う大学の男が、付き合ってほしいと言ってきたのだ。
彼とは、知り合ってすぐ仲良くなった。良くも悪くも適当な人で、妙にさばけたところがあった。あたしがさらりと下ネタを言ってもげらげら笑って楽しそうに聞いているし、一緒にいるのがとても楽な相手だった。
ある時、この彼と彼の友達と、三人で映画を観に行こうという話になった。あたしはちょうど、ばか男を諦める悲壮な決意をし始めた時だったし、たまには他の男も見てみるか、と、軽い気持ちでオーケーをしたのだ。
けれど、約束の日の前日、彼からメールが入り、友達が来れなくなったという。
あたしの友達は、「絶対なんかあるって!」と半笑いで力説したし、なんとなくあたしもそんな気がして、急に行くのがおっくうになった。でも、行かなきゃ。あたしはせんぱいを忘れるんだし。他の男だって、見てみるんだし。
映画は、B級のホラーだった。そもそもなんであんなのを観たいと思ったのか今ではまったくわからない。勢いってあるもんだ。映画館を出てからどう行動したのかは覚えてないけれど、最終的に彼の家に持ち帰られていた。けれど、ぐっずぐずの処女のあたしはこの期に及んでも、自分がセックスをするかもという可能性すら考えていなかった。
彼とこたつに入って、テレビを観ていた。部屋は薄暗かった。完璧だ。男が女に乗っかってなし崩し的にセックスしちゃうには、完璧な状況設定。
けれど、セックスはしなかった。
彼は、薄暗い部屋のこたつに半身をうずめて、その隣におんなじ体勢でいるあたしに、ひとつキスをした。そして唇がはなれると、こう言ったのだ。
「オレと付き合ってもらえん?」
今考えると、彼がこの言葉を言うのには相当の勇気がいったと思う。そういう人だった。
山より高いプライドを持ったこのB型男が、あたしのためにプライドを捨てたのは、この時と、あと二回だけだった。後にも先にも。
「あたし今、好きな人がいるんだけど、それでもいい?」
なんて偉そうな女。目の前の男は、明らかに自分よりレベルが上だ。見た目も、生まれも、なにもかも。
それでも、B型男はいいと言った。そのうち忘れるだろうと。
いや違う。忘れさせる自信があったのだろう。山よりでっかい自信が。
かくして、このプライドの高いB型男とあたしの生活が始まった。


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