花を持って、会いにゆく

March 25 [Sat], 2017, 17:30
花を持って、会いにゆく
              長田弘


春の日、あなたに会いにゆく。
あなたは、なくなった人である。
どこにもいない人である。

どこにもいない人に会いにゆく。
きれいな水と、
きれいな花を、手に持って。

どこにもいない?
違うと、なくなった人は言う。
どこにもいないのではない。

どこにもゆかないのだ。
いつも、ここにいる。
歩くことは、しなくなった。

歩くことをやめて、
はじめて知ったことがある。
歩くことは、ここではないどこかへ、

遠いどこかへ、遠くへ、遠くへ、
どんどんゆくことだと、そう思っていた。
そうではないということに気づいたのは、

死んでからだった。もう、
どこへもゆかないし、
どんな遠くへゆくことはない。

そうと知ったときに、
じぶんの、いま、いる、
ここがじぶんのゆきついた、

いちばん遠い場所であることに気づいた。
この世からいちばん遠い場所が、
ほんとうは、この世に、

いちばん近い場所だということに。
生きるとは、年をとるということだ。
死んだら、年をとらないのだ。

十歳で死んだ
人生で最初の友人は、
いまでも十歳のままだ。

病いに苦しんで
なくなった母は、
死んで、また元気になった。

死ではなく、その人が
じぶんのなかにのこしていった
たしかな記憶を、わたしは信じる。

ことばって、何だと思う?
けっしてことばにできない思いが、
ここにあると指さすのが、ことばだ。

話すこともなかった人とだって、
語らうことができると知ったのも、
死んでからだった。

春の木々の
枝々が競いあって、
霞む空をつかもうとしている。

春の日、あなたに会いにゆく。
きれいな水と、
きれいな花を、手に持って。



Martin Turner

March 21 [Tue], 2017, 16:23


元ウィッシュボーン・アッシュのベーシスト、マーティン・ターナーによるWishbone Ashのライヴを観てきました。

ウィッシュボーンアッシュは、メンバー間でバンド名を誰が名乗るかという裁判をしているらしく、このライヴも1年以上前に行われるはずだったのが、延びに延びて、止む無くチケットの払い戻しをした直後に突然発表になったもの。

数年前に野音で観たのは、ギターのアンディ・パウエルのWishbone Ashでした。ややこしい。
(だからこっちは一応、マーティン・ターナー ex Wishbone Ashのようですね)

この日はちょっと私自身の調子が良くなくて、ぼーっとしているというか、心ここにあらずという状態でした。
間違って男子トイレに入ってしまったり、ドリンク類の置いてあるテーブルをひっくり返して周囲を水浸しにして迷惑を掛けたりと、始まる前からかなりションボリしていて。

始まってからも気持ちを立て直すのに時間が掛かりましたが、休憩を挟んで2部の「Argus」全曲演奏を聴いているうち、音楽に没頭できることを幸せに感じるように。
マーティン・ターナーは気さくなジョーク好きなイギリスのおじさんといった雰囲気で、ちょっと自虐的?とも言えるジョーク連発。
短髪のほうのギターの人、いい音だったなぁ。
泣けました。










天使のいる図書館

March 10 [Fri], 2017, 10:56


奈良は葛城を舞台にした映画、「天使のいる図書館」を観てきました。

広陵町にある図書館のレファレンス担当の新人司書が主人公。
奈良、図書館というキーワードが並べば、観にいかないわけにはいきません!

葛城は二度ほどしか足を運んでないので、さすがに知らないところが多かったけれど、夕暮れ時の二上山や、ススキが揺れる葛城山など、胸がキュンキュンするような美しい景色がいっぱい。
途中出てきた一言主神社や当麻寺は前回行ったところでした。
主人公の小芝風花ちゃんの実家の神社は鴨津波神社かな?
御朱印いただくときに通されたところに似ていました。
宮司さんがお茶出してくださって、周辺の見どころを教えてもらったっけ。

死を前にした老女の香川京子が、かつての恋人・森本レオに逢いに来るというかなり切ないお話で、彼女が、一方的に別れを告げた、忘れられない恋人に恨まれているという思いをずっと抱えて生きてきたことを思うと、思わず涙してしまいました。
失恋した若者がカメラマンの夢をあきらめ、図書館の職員になっているという展開がまた、さもありなんというか。
香川京子さんは自然な年齢の重ね方で、気品があって今でもとても美しい。
小芝風花ちゃんはルックス、話し方とも少女漫画の主人公のようなキャラクター。
こんな可愛い司書さんがいたらいいな。

また図書館で働きたいという気持ちがむくむく膨らんでくる、ハートウォーミングな映画でした。



BIG FISH

March 09 [Thu], 2017, 12:54



先週のことになりますが、ミュージカル「BIG FISH」を日生劇場に観に行ってきました。
ティム・バートン監督の映画を舞台化したもの。
恥ずかしながら映画の方は未見なので、その違いなどはわからなかったのですが、ミュージカルとして存分に楽しむことができました。

一風変わった夢見がちな父親と、そんな父を持つ息子との、愛憎といってしまっては大げさだけれど、親子の情愛を描いたファンタジックなストーリー。
子どもの頃は憧れや尊敬に近い気持ちを抱いていた親に対して、自分が成長するにつれ、かつては見えなかった欠点が目に付くようになる。しかし時を経て、一旦離れていった心が再び通い合う。
多かれ少なかれ、誰しもが経験するであろうそんな過程を丁寧に、かつユーモラスに描いていて、観終わった後とても温かい気持ちになりました。
同時に、この世を去らねばならない人間の思いが、どんなに深く残された者の中に浸透していくのかを、あらためて感じる作品でした。

音楽がまた素晴らしくて。
やっぱり、ミュージカルはいいな、楽しいなぁというのが一番の感想。
理屈じゃなくて、音楽があってお芝居があって、それが目の前で演じられている喜び。
日々いろいろあるけれど、その時間だけは物語の中に浸っていられる。
ROLLYさんは、怪しくキュートで実は優しいサーカス団の団長さん。
歌は勿論、ダンスもばっちり決まってました。







めぐる季節と散らし書き 子どもの音楽

March 03 [Fri], 2017, 0:38


浜離宮朝日ホールに高橋悠治さんのピアノ・リサイタルを聴きに行ってきました。

プログラムは、パーセル「組曲7番ニ短調」、ルイ・クープラン「シャコンヌト短調」「パヴァンヌ嬰ヘ短調」、ジョン・ケージ「四季」、高橋悠治「散らし書き」、バルトーク「10の易しい曲」、プゾーニ「子どものためのソナティナ」、サティ「コ・クォが子どもの頃」、ストラヴィンスキー「五本指」。

全てが初めて耳にする曲。
高橋悠治さんも初めて、生で演奏されているのを観ました。
あの似顔絵通りのひょうひょうとした風貌で、作品の解説をされるときのざっくばらんな雰囲気もイメージ通り。
ピアニスト然としたところのない、でも芸術家らしい独特のムードを漂わせていて、いっぺんにファンになってしまいました。

演奏が素晴らしかった。
音と音の間から、楽し気に遊んでいる妖精が見えるような、子どもたちのはしゃぐ声が聞こえるような。
ひとつひとつの音がいきいきと際立っていて、音そのものの中に何かが潜んでいる・・・ そんな印象を受ける演奏でした。
作曲家が演奏する音楽って、味わいがあり、魅力に溢れている。
特に、プゾーニとサティがとても気に入りました。




アンコールはヴェーベルン。
これまた、曲も知らなければ作曲家も初めて。
20世紀前半の前衛作曲家とのことですが、この曲はビックリするほど短い、楽しい曲でした。




旅T

February 25 [Sat], 2017, 19:00
旅I         谷川俊太郎



美しい絵葉書に
書くことがない
私はいま ここにいる

冷たいコーヒーがおいしい
苺のはいった菓子がおいしい
町を流れる河の名は何だったろう
あんなにゆるやかに

ここにいま 私はいる
ほんとうにここにいるから
ここにいるような気がしないだけ

記憶の中でなら
話すこともできるのに
いまはただここに
私はいる



JOURNEY

February 08 [Wed], 2017, 0:02


JOURNEYの武道館公演を観てきました。

久しぶりのジャーニー。
16歳の時、初めて観に行ったロックのコンサートがジャーニーでした。
1982年の4月。
それ以来、実に35年ぶり。
会場も同じ武道館。
記憶が確かならば、座席も南西1階の同じあたりだったような。

数年前に来た時にもなんとなく気になってはいたのですが、残念ながら都合が悪くてパス。
その頃、ヴォーカリストのアーネル・ピネダ加入までのドキュメンタリーを観て感動し、次回は絶対行きたいと思っていました。





やっぱり武道館はいいな。
この雰囲気がとても好きです。
うお〜っていうどよめきが響き渡る感じが。

ヒット曲だけで2時間近くのライヴを持たせられるっていうのは、さすがジャーニーならでは。
客席の大合唱で、会場全体がひとつになる。
私も、「Don't stop believin’」や「お気に召すまま」を一緒に歌えて、それだけでも大大満足でした。

アーネル・ピネダは初めて観ましたが(you tubeではずっと観ていた)、小柄な体をバネのように動かしながらの熱唱で、躍動感がバンドを若返らせていました。
スティーブ・ペリーとどうしても比べてしまうけれど、どちらにもそれぞれの良さがある。
もう今や、歴代ヴォーカルの中で最も長くなるそう!

今回、アンコールの1曲目にやった「La Raza del sol」。
ラテンロックの曲。インストゥルメンタルで、ギターとオルガンのソロ応酬を交えて演奏していました。
これがめちゃくちゃカッコよくて!!
ジョナサン・ケインを初めてカッコいいと思えた瞬間でした。




こっちも観たかったなぁ。翌日の「エスケイプ」「フロンティア―ズ」再現ライヴ。


懐かしの1982年のパンフレット。







パンフレット一つにも、手が掛かっていた時代です。




Glimrockers feat. 鈴木茂

February 01 [Wed], 2017, 14:33


久しぶりにグリムロッカーズのライヴを渋谷BYGで観てきました。
この日は、featuring鈴木茂さん。
茂さんのギターを堪能した、素晴らしい夜でした。

整理券を貰った後、お店でランチしていると、リハの音が聞こえてくる。
あれ、これは、四人囃子の「空と雲」・・・
何故だ?と思いつつも(笑)、本番がとっても楽しみになってきます。

会場に入るとき、メンバーのサイン入りポストカードが配布されました。
どなたのサインか確認すると・・・ わーい!!茂さんだ!嬉しいな。

1部はグリムロッカーズの3人によるライヴ。
そして2部に茂さん登場。
「氷雨月のスケッチ」「100ワットの恋人」などなど、ギターだけでなく、茂さんの優しい歌声も素敵で。
グリムロッカーズとの新曲もとても良かった。
アンコールの「花いちもんめ」は鳥肌が立っちゃったくらい、スリリングでカッコ良かったです。
グリムの曲もポップでセンスが良く、本当に楽しいライヴでした。
良い音楽は本当に人を幸せにするね。



階段のところに貼られてあるポスター。
このお店で観られたことがとても嬉しかった。
ここと隣のライオン、私にとってはとても思い出深い大切な場所です。


 

終演後には、サインをいただきました。
先月、twitterで私のツイートを茂さんがリツイートしてくださり、そのことのお礼も伝えることが出来て感無量。
2ショット写真も撮ってもらっちゃったもんね。家宝にする〜!
友達にはもれなく見せて、自慢してしまいそうです。






RIK EMMETT&RESolution9

January 27 [Fri], 2017, 12:07
今、最強に気に入っていて、超ヘビロテして聴いているCDがこれ。



トライアンフのリック・エメットの新バンド、RESolution9。

80年代、トライアンフは大好きなバンドの一つだったのだけど、そのうちリック・エメットの名前もあまり聞くことがなくなっていました。
最近、久々にトライアンフのCDを引っ張り出して聴いてみて、楽曲の良さにあらためて感動。
今どうしているのかなぁと調べてみると、バンドとして新譜が出たばかりの様子。
早速購入してみました。
見開きの紙ジャケで、CDもレコード風のシャレたデザイン。
実際にLPでも出ているようです。

新譜は最高にカッコいい!!
ジャンルに囚われることなく、ソングライティングの素晴らしさも変わらず。
ギターは凄くて、歌も上手い。
こんな完璧なミュージシャンはなかなかいないね。
普遍的な音楽のカッコよさを追及してる人。
これ!という際立った個性がないからなのか、イマイチ日本ではメジャーじゃないけれど、私は大大大好きです。
ラッシュのギターとドリームシアターのヴォーカル、トライアンフの残りのメンバーがゲスト参加。


アルバム・トレイラ―がyoutubeにありました。



ストライプのスパッツを穿いてステージに立ってた頃に比べると、ずいぶんおじさんになったけれど、先生っぽい、穏やかな品の良さは変わらない。

大好きな1曲。


は〜、カッコいいなぁ。



トライアンフ時代から一度も来日公演がないリック。
是非このバンドでライヴを観ることができたらいいなぁ。



谷内六郎館

January 26 [Thu], 2017, 10:36
冬晴れの一日、観音崎にある横須賀美術館に行ってきました。
お目当ては、谷内六郎の作品が展示された谷内六郎館。




美術館の前は浦賀水道。
巨大な船が行き交っている、素晴らしいロケーション。
湾の向こうには、房総半島がきれいに見えました。



谷内六郎の週刊新潮の表紙絵が多数収蔵されているということで、いつか行ってみたいと思い続けていました。
数年来の思いが叶い、感無量。




現在、「冬物語」というタイトルで、冬景色を描いた作品が展示されています。
それぞれの作品に添えられた、六郎氏による解説の小さなコラム(週刊新潮に掲載されていたもの)が、ユーモアに溢れていて、くすっと笑ってしまうものばかり。それでいて鋭く、本質を突いていて、六郎さんというのは温かさとともに、常に一歩引いた目で物事をみていた人だったんだなぁとあらためて思わされます。

谷内六郎といえば、まず郷愁の画家のように言われがちだけれど、私にとってはそれとは少し違っていて、子ども時代、誰もが抱く不安や恐れ、喜び、子どもの目に見えるものや音をシュールレアリスム的に表現した人。
だから、彼の絵はどれもどこか怖い。いつもおどおどして、周りをキョロキョロ見渡していた子どもの頃に戻ってしまう。
今も私の中のどこかにいる子どもの自分に逢いたくて、折に触れて六郎さんの絵を観てしまうのです。

空間を大きく取り、白を基調にまとめられた美術館はとてもとても素敵で、季節が変るごとに訪れたくなる場所でした。



2017年カレンダーと手拭いを自分へのお土産に。
可愛い!!



P R
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