TOTO トイレの進化 

December 10 [Wed], 2014, 16:18
 日本のトイレはもはや排泄するだけの場所ではない。日本人の「清潔好き」と「技術力の高さ」が相互にトイレ環境を磨き上げ、独自の発展を遂げ、かつてない高みに到達している。この特集では、日本のトイレ文化が世界にもたらす未来について、5日連続で紹介していく。3日目は、洋式便器を初めて国産化したTOTOにトイレ開発100年の歴史を伺う。

 1日目「日本のトイレは排泄するだけの場所じゃない!」はこちら。
2日目「81歳創業者はなぜトイレを素手で磨くのか?」はこちら。

 フタが自動で開く、座ると便座は当然のように温かい、立ち上がると自動で水が流れる、離れると自動で脱臭する──。日本のトイレ環境は、いつの間にか最高峰に上り詰めているのではないだろうか。

 この快適さに慣れると、あたかも最初から至れり尽くせりだったように錯覚するが、実はここに至るまでには長く険しい道のりがあった。

 「TOTOの和式便器と洋式便器の出荷台数が逆転したのは、1977年。37年前はまだ和式便器が半分でした。長い年月を経て、じわじわと日本人の生活スタイルが変わっていったのです」と、同社広報部の桑原由典さんは話す。

 日本で初めて洋式便器(水洗腰掛け便器)を国産化したのは、TOTOの初代社長となる大倉和親氏とその父・孫兵衛氏。1914(大正3)年のことだ。100年前に洋式便器が日本にあったのは意外である。

 「国産化したのが早すぎるぐらいで、ほとんど普及していません。あくまでも帝国議会議事堂や高級ホテル、富裕層の洋館などに設置されていた程度。一般家庭や企業、学校はずっと和式が主流でした」

 それまで和式で事足り、特に不都合を感じていない日本人に、洋式がいかに座って楽かを説いても、「しゃがむので十分」と拒絶されてしまう。そもそも日本の生活スタイルにはイスの文化がなかった。畳の上に座ってちゃぶ台でご飯を食べ、食べ終わったらちゃぶ台を片づけて、布団を敷いて寝る。どこにも腰掛けるというスタイルがない。

 なじみのないスタイルに加えて、洋式便器の使い方がわからない。「たとえばiPhoneなら使っている人が周りにたくさんいるので、目にする機会が多く、どのように便利かがわかります。しかし、トイレは個室で使うもの。使い方は人それぞれで、ほかの人がどう使っているのかわからない。だから自分が使い慣れていないトイレを目の前にすると、戸惑ってしまう」。

 なかなか普及が進まなかった洋式の裾野を広げ、起爆剤となったのが、1960年代の高度成長期に大都市圏で建設された公団住宅だ。イスとテーブル、洋式便器が標準装備された。「家の中にあれば自然に使い慣れて生活になじんでいきます。そうして、やっと1977年に和式便器と逆転した。2013年度のTOTOの出荷数は、洋式が99%、和式が1%です」。

 ここからはトイレの進化を、「便器」と「便座」に分けてたどっていく。まずは便器。主に水の流し方の改良である。

 1959年に発売されたタイプにはタンクの水を「大」と「小」で切り替えるレバーがついていたが、1回の「大」で使用する水は約20リットルだった。大きいペットボトル10本分だから大量である。「当時はまだ節水よりも水道代の節約という観点でした」。

 1970年代にオイルショックや公害問題が起こり、環境への配慮が高まる。そこで1976年に「節水便器」が登場。1回13リットルにまで落とした。

 いかに少ない水で流せるか、TOTOの挑戦は続く。「便器ボウルの中から汚物を流す“排水能力”だけではいけない。下水管の中でも押し流していける“搬送能力”が重要なのです」。

 タンク式はためた水の重みで勢いをつけて流す方式だが、デメリットは1回流すと、タンクに水がたまるまで流せないこと。うまく流せなかったときに、トイレの中で待ち時間が生じてしまう。日本の狭いトイレ空間ではタンクのスペースも邪魔になる。

 それを解消したのが、1993年に発売された日本初のタンクレストイレ「ネオレスト」だ。

 タンクに水をためずにどうやって流すのか。「便器ボウルの中を洗う水と、下水管へ流し切る水のタイミングをマイコンで制御して流す」。コンピュータを搭載したのである。これで1回8リットルにまで減った。

 便器ボウルの表面も重要な要素だ。つるつるしていれば、そもそも汚れがつきにくく、少ない水で流せる。だが、便器は焼き物だから凹凸がある。ミクロレベルでも凹凸があると、そこに汚れがたまり、菌が住みついてしまう。そこで特殊な釉薬を吹きかけて焼くTOTO独自の防汚技術「セフィオンテクト」を1999年に開発した。こうした複合的な技術が節水効果を高め、掃除の回数を減らすことにもつながる。

 そして、水の流し方に大革命を起こしたのが、2002年の「トルネード洗浄」だ。それまで便器の縁から滝のように水を流していたのが、真横に水を流した。ぐるぐる渦を巻きながら便器ボウルの中を長く回る。このまったく新しい発想によって、より少ない水できちんと洗い切れるようになった。

 現在、最新型「ネオレスト」は1回3.8リットル。業界最少である。「数年前から、ヨーロッパの展示会にTOTOも出展していますが、ヨーロッパのトイレメーカーがトルネード洗浄を見て、“トルネードもどき”の流し方に変えているようです」。まさにTOTOが世界のトイレの“流れ”を変えたのだった。

 トルネードはトイレ掃除にも革命を起こす。便器の縁そのものが消滅したことにより、それまで便器の縁に付着した頑固な汚れと格闘してきた多く人々が解放されたのだ。トイレ掃除を家庭や職場で担っている人にとっては、こちらのほうが歴史に刻むべきイノベーションだろう。
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