
小石と小ザル
1
都会から、遠くはなれた山の中。木々が青々としげる山の中に、ある小石がありました。
その名はゴン。ゴンは不思議なことに、石なのに人語を話せるのです。
ある日の夜、山の中の動物たちが眠りにつくころ、急に雨が降り出しました。その雨は止む気配もなく、どんどん勢いをまして、川の水はあふれんばかりに流れ出しました。
そのころゴンは、自分の家がある木の根のしたでぐっすり眠っていました。
ですがゴンは、川の音がゴゴゴと鳴っているのに気づき、目を覚ましました。
ゴンはびっくりしました。
何しろ川をこえたところにある山が、くずれてなくなっていたからです。
ですがゴンは、歩くことができません。ですからゴンは、怖々しながら待つしかありませんでした。
そしてゴンは、また眠くなって眠ってしまいました。
その日の夢の中では、この山の中でゆっくり昼寝をしていました。ところが急に空が黒くなって山がくずれ、自分も山から落ちてしまったところで目を覚ましました。
空はもう明るく、太陽の光が照りつけていました。ゴンは「はー、夢でよかった」とため息をつきながら言いました。
ですがなぜか、自分が群れている気がします。それもそのはず、昨日ゴンが眠ってしまった直後に、ゴンの寝ていた山もくずれ、ゴンはまっさかさまに川へ落ちてしまったのだからです。
2
ゴンは大変だと思いました。このままじゃ、おぼれ死んでしまうからです。そう思ったゴンは、必死に助けを呼びました。
「だれかー、助けてくれ」
ゴンはさけびました。ですが、だれも助けに来てくれません。それもそのはず、昨日の雨で土砂くずれが起き、山の動物たちのほとんどがけがをおってしまったからです。
もうおぼれ死ぬんだ、とゴンは思いました。この川の先は滝になっていると、仲良しだったトンビの友達が教えてくれていたからです。
しだいに流れが速くなり、音も大きくなって、ゴンは滝から落ちてしまいました。
3
ゴンは、気がつくと、小川の岸に打ち上げられていました。
そう、ゴンは危機一髪で、おぼれ死なずにすんだのです。
ゴンは考えました。家を失ってしまってから、一体何日たったのだろう。
その時、近くをカニが通りました。すかさずゴンはカニに聞きました。、
「今日って、大雨がふってから何日たった」
「もう一週間だよ」
ゴンはびっくりしました。それもそのはず。滝から落ちるとき、ゴンは滝の横にあった大きな岩に頭をぶつけ、気を失ったまま川に落ちていたのです。
4
ゴンはもうここで暮らそうと考えました。でもその時、二匹のサルの兄弟がゴンの目の前に現れました。ゴンはびっくりしました。そしたら、急にサルが話しかけてきました。
「小石さん、あなたの名前はなに」
「オレか、オレは小石のゴン。きみたちの名前は」
「おいらは太陽。そしてこっちが弟の風太郎だ」
「よろしくお願いします」
太陽と風太郎は、あの大雨で群れからはぐれてしまったのでした。
その話を聞いて、ゴンは
「オレも探すの手伝ってやってもいいぞ。そのかわり、もしお前らの仲間が見つかったら、オレの家族になってくんねえか」
この話を聞いて、太陽と風太郎はにっこり笑って
「うん、いいよ」
と答えました。
5
それから何日か山を探したある日、風太郎が
「ぼく、なんかあとを付けられてる気がするんだけど」
と言いました。
太陽は
「そんなの気のせいだよ」
といいました。ゴンも太陽と同じことを言いました。
でもあまりに風太郎がうるさいので、後ろを振り向いて見ると、寒気がするほど大きな大きな熊がいました。ものすごく怒っているようでした。
その理由は、あの土砂でえさがなくなり、おなかをすかせていたからです。
熊は大きな声を出しながら、ゴンたちにどんどん近づいてきました。
するとゴンは
「オレを投げろ」
といいました。太陽と風太郎は、友達をなげることなんてできない、と思いました。ゴンは『オレを投げろ』と言い続けました。
太陽と風太郎は、ゴンの熱意に負け、しかたなくゴンを投げることにしました。
「おまえら、熊の鼻をねらえよ」
とゴンは言いました。太陽と風太郎は
「どうして」
と言いました。するとゴンは
「昔から、熊の急所は鼻だって言われてるんだ」
といいました。太陽は
「風太郎は、ものを投げるのがうまいんだ」
と言って、ゴンを風太郎に渡しました。そうして風太郎はゴンを投げました。
こうして投げられたゴンは、見事に熊の鼻に命中しました。
熊は痛そうに山の中へ帰っていきました。
太陽と風太郎は、すかさずゴンを拾いに行きました。太陽は
「危機一髪だったね」
と言いました。ゴンは
「風太郎は、本当に投げるのがうまいんだな」
6
そうして次の日、ゴンのいた山から六個目の山を登り終えたところで、
「あれ、サルの足あとじゃねえか」
ゴンは言いました。風太郎が
「そんなこと、あるわけないよ」
と言うと、太陽が
「おい、ゴンの言った通りかもしれないぞ」
と言うので、三人で向こうを見ると、サルの群れが見えました。
「父ちゃんと、母ちゃんがいるかもしれない」
と太陽と風太郎が思ったそのとき、サルの群れの方から近づいてきました。
すると、群れの中から太陽と風太郎のお父さんが飛び出て、
「息子たちがお世話になりました」
ゴンは、とてもうれしそうでした。太陽と風太郎の父ちゃん母ちゃんが見つかったら、みんなで一緒に暮らすと約束したからです。
ところが、太陽たちが約束のことをお父さんに話すと、
「わたしたちは別の山に行くことになったんだ。そこで新しい生活を送ることに決まったんだ」
と言いました。そして
「新しい山へは、群れだけで行く。群れ以外のものを連れて行くことはできないんだ」
と言いました。ゴンは気を失ったようにぼう然としていました。
「ゴンを一緒に連れて行くことはできないの」
太陽は必死に言いました。お父さんは
「ごめんな、長老が決めたことは、変えることができないんだよ」
その一言で、山にしばらくの間沈黙が続きました。
すると、太陽と風太郎は言いました。
「ゴン、ここで待ってて。ぼくたちがもう少し大人になったら、必ず、ここに来るから。だからゴン、ここで待ってて」
そう言われたゴンは、
「分かった。約束だ。ずっとここで、おまえらの帰りを待ってる」
太陽と風太郎の群れを見送ったゴンは、そのまま静かに目をつぶって眠ってしまいました。
太陽と風太郎が行ってしまった山には、また「沈黙」が戻りました。
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現在中2の息子が5年生のときに書いたお話。なんか良かったので、テキスト化しといたのですが、そのまま放置になってたので、載せてみた。