愛を守ろう 

February 21 [Mon], 2011, 21:38
『愛の戦士 レインボーマン〜日本を守る日本だけのヒーロー』

 筆者の座右の銘である“憎むな! 殺すな! 赦しましょう!”は、月光仮面のオープニングで掲げられる同作品のスローガンである。この戦後最大のヒーローを創出し、また森進一の「おふくろさん」の作詞家、はたまた作家でもある右翼の大物 川内康範は、昭和47年(’72年) 10月、東宝との協力で、あらゆるヒーローの中で最も汎アジア的な、日本だけを守る純国産の異色ヒーローを誕生させた。レインボーマンである。

 レインボーマンの設定の凄さは、まず敵対する秘密結社のリアリティにあった。“死ね死ね団”という脳死的ウルトラ センスのネーミングを持つこの秘密結社は、第二次世界大戦時、日本軍の被害にあった人々の怨念が作らせた復讐結社であり、ひたすら日本に嫌がらせをするためだけに活動する。多くの特撮作品においてヒーローを苦しめる秘密結社(ショッカーとかデストロンとか…)が世界征服といういささか眠いテーマを掲げているのに対してこのリアルさ。

  “世界征服が目標の秘密結社がなぜ揃いも揃って日本ばかりを攻めてくるのか?” という疑問は、実は筆者は、ヒーローものにご執心だった小学校の頃から持っていた。ま、それでも、彼らの掲げる世界征服は実は手段であって、その後に真の目的があるはずである。そう考えるとただ単に嫌がらせをし、日本を困らせることだけを純粋目的とする“死ね死ね団”の方がはるかにタチが悪いし、その方法にも様々なヴァリエーションが考えられる。

 ドラマは全部で4クールに分かれているが、中でも第2クールの“M作戦” シリーズが凄い。このシリーズ、お金(M作戦、つまりマネー作戦)をご本尊とする御多福会(おたふくかい (苦笑))という新興宗教が登場する。この新興宗教、入信するだけでお金がもらえるという夢のような教団で、お金があればみんな幸せというわけだ。ところが、ばらまかれたお金によって経済は大混乱、ハイパー インフレが起こってとんでもない物価の上昇を招く。こうして、モノがあふれているのに、買えないというお寒い状況となる。しかもこのお金、後に偽札と判明し、銀行で鑑定の結果、破産する人が続出! 人々の心は徹底的にすさんでいく。

 しかもこのM作戦と平行して、レインボーマンを抹殺するための殺人プロフェッショナルが世界中から日本にやってくる。この殺人プロフェッショナルを率いるのがアマゾンの魔女というふれこみの“イグアナ”であるが、なんとあの塩沢ときが大熱演。彼らがまたこれでもかというくらい、次から次から日本にやってくるのだ。この充実振りは本当に凄い。

 この殺人プロフェッショナルもまた、それぞれに紹介したいくらい味わい深いメンツが揃っているが、ブッちぎりは何と言っても“電気怪人 エルバンダ”だろう。彼はイグアナの息子で、とんでもないマザコンなのだが、変な外人をやらせたら右に出るものの無い大月ウルフが怪演している。

 その他、市販のゴム製怪物マスクにほんの少し手を加えただけで、マスクをかぶるための後頭部の切れ込みがめくれあがったままの“毒殺プロ フドラ” “溶解人間ポンプ ガルマ”や頭だけが異常にデカい“ムササビ怪人 ジェノバード”のキッチュな素晴らしさも捨てがたい。

 この殺人プロフェッショナルはレインボーマンの献身的な活躍によってことごとく倒される。だが、問題はハイパー インフレによる食糧不足だ。レインボーマンもついに暴徒と化した一般市民を相手にせざるを得なくなる 第22話 『一億人を救え!』 こそが、レインボーマン全104話中最大のエピソードだろう。

 飢えた市民は土一揆さながら、町の食料品店を次々と襲撃する。米屋を襲撃した暴徒が、生米を口に運ぶシーンが印象的だ。このあたりの演出は、例えば、『獣人 雪男』や『ノストラダムスの大預言』『ゴジラ対ヘドラ』のような作品と通低した東宝の持つアナーキーな体質がよく出ているように思う。

 さすがのレインボーマンも、死ね死ね団を相手にするようにはいかない。たとえ暴徒と化したとはいえ、一般市民をやっつけるわけにはいかないのだ。万策尽きたレインボーマンはなんと、大臣に食料の無料配給を  “一人の国民として” 陳情に行く。こうして大臣の英断で食料の無料配給が始まり、日本は危機的状況を脱するのだ。

 このシーンでの死ね死ね団のミスターK(東宝の誇るマッドサイエンティスト 平田昭彦 一代のはまり役)の発言が凄い。「こいつはとんだお笑いだな。あんなチンドン屋の言うことを真に受ける奴などいるものか!」 レインボーマンを制作、放映しているくせに、その当事者が脚本の中でレインボーマンを否定しているのである!

 偽札を作っていたのは松前源吉というジジイなのだが、彼も孫を人質に取られ、やむを得ず偽札を作っていたのだった。しかし、このジジイ、ついに良心の呵責に耐え兼ねて、自らの命と引き換えに偽札工場を爆破する。この時レインボーマンはそれを近くの丘から見ていて、「誰かが自分に代わって爆破してくれた。名も知らぬ正義の人がやってくれたのだ」と、その人に手を合わせ、ミスターKは、これを正にレインボーマンの仕業と思い込む。この脚本のモノ凄さは、他に類を見ない。この“名も知らぬ正義の人”というフレーズ、高邁な思想性は、ナレーター 納谷悟郎の名調子、ラッパをフィーチャーしたインストゥルメンタルとともに、言い知れぬ感動を呼ぶ。

 「インドの山奥で修行をするとこういうヒーローになれるのか!」 子供達の幼心にトラウマにも似たインド指向の一端を強烈に刻印した ♪ インドの山奥で〜 ♪(人気声優の水島裕が安永憲自 名義で熱唱) というあまりにも有名なメイン タイトルも今更ながら素晴らしいの一言。また今では健康体操の一つくらいにしか思われてないヨガを神秘のハイパー テクニックとして、本格的に紹介した功績もまた忘れがたい。


●今週の推薦曲 「死ね死ね団のうた」 (昭和47年10月6日)

 かのセックス ピストルズでさえ、女王さまに対してここまで直撃的な歌は唄っていない。凡百の腰抜けパンク バンドにも少しは見習ってもらいたい気合の入りようである。これを右翼の大物である川内広範が書いたというのも凄いが、この歌詞がマジで本当に唄われているのだから、昭和40年代って…

 冒頭のブラッド、スウェット&ティアーズの「スピニング・ホイール」(注#1)のモロパクリとしか思えないたたみかけのフレーズ、ゆるいギターの音色が印象的なサウンド メイキング、男女混成合唱による豪華な一曲だ。しかし、残された音源を聴いてみると、歌がメロディと微妙にずれていて、歌手の側にもかなりの葛藤があったことがうかがえる内容になっている(苦笑) カラオケにもちゃんと入っているぞ! さぁ みんなで熱唱しよう!

(注#1 昔懐かしき 昭和40年代 土曜の夜のウルトラ悪質番組『ウィーク エンダー』で、冒頭の “新聞によりますと〜っ!” の名フレーズを牽引する ♪ チャ〜  チャカチャカチャ〜 チャカチャカチャ〜 ♪ のフレーズは誰しも聴き覚えがあるはず…)
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