3月11日に起こった地震に関すること 

2011年03月15日(火) 23時29分
3月11日の地震発生当時、私は竜田邦明先生の最終講義に出席しておりました。
なんといっても天然物の全合成の大先生。場所も大隈講堂ということで、私の家から近い。
というわけで、絶好のサボる機会いい勉強だと思って行ってきました。


ほぼ満員の盛況ぶり、講義も非常に面白く聞けました。しかし、そんな講義の半ば・・・

突然地震が。すぐ止むかなと思っていたら、全くそんな気配も無く・・・
揺れる大隈講堂。先生もスタッフの方に言われて講義を中断(それまで普通に講義されていた先生はやっぱりすごいと思った)。

そして、みんなで外に非難・・・
特に怪我人、建物の損傷も無かったので再び講義開始。
そしたら、しばらくしてまた地震が・・・


結局もう一度の中断を挟んで何とか講義は終わりました。
いや、101もの天然物を全合成した事実もさることながら、「完成するまで論文にはしない」、「糖つけてないのに発表したグループ(名はここでは伏せます)に「あなた天然物の全合成やめなさい」と言った」などなど先生の話はみな力強く、濃い内容でした。


しかし、この日はこれからが大変で・・・(竜田先生ごめんなさい)
とにかく、研究室に連絡がつかない。携帯はダメ、内線もダメ、公衆電話からかけても呼び出し音のみ・・・

とりあえず、メールだけ入れて私は帰宅。
しかし、高田馬場駅は封鎖されている・・・
仕方ないから歩いて帰宅。完全に帰宅難民。近いと思っていたら意外に3時間もかかり・・・

くたくたでした。
そして、土曜日に普通に研究室行ったら、みんな曰く「地震の後はグランドに避難していた」そうで
しかし、怪我人などもおらず器具の損壊も無く(あんなに雑然としているのに・・・)、NMRのクエンチも無かったのは幸いでした。

ただ、それ以降研究室は封鎖。とのこと。事態が収まるまで入れる気配もありません。
化学会の年会も中止となってしまいました。口頭発表があったんですが、残念です。
もちろん仕方ないことだし、被害にあわれた方々のことを考えれば贅沢言ってはいけないのですが・・・

研究は完全にストップですね。正直、痛いです。
学位と全合成を考えると今年は勝負の年だったんですけど・・・



と、暗い気持ちになっても仕方ないので家で出来ることをしてます。
英語の勉強したり、教科書読み返したり。意外にまだまだやることはある。
こんなことで負けてはいけない。

PACIFICHEMについて 

2010年12月31日(金) 19時47分
はい、今年も残すところあと4時間。名残惜しいかといえば、そうでもありませんが(笑)

個人的には、今年中に終わらせようとしていたペーパーが来年に持ち越しになってしまったことが心残りですね。


さて、そんな12月半ば、PACIFICHEM2010に参加してきました!
ハワイですよ、ハワイ。全く。



学会参加している場合じゃないって話です
意外に真面目に参加しておりました。


自身も、なんというか微妙な内容ですけど、ポスター発表とやらをしておりましたしね。
でも、国際学会とは名ばかり半数が日本人でした。質疑応答も英語を使う機会はあまり無く・・・

今度はガチの国際学会にでてみたいなーなんて思ってみました。

講演の方は、天然物の全合成のセッションはとにかく質疑応答が無いに等しかった。時間の関係もあるのでしょうが、なんだか物足りない・・・
バイオの分野の方も除いてましたが、そちらは活気があったなあ。

ちなみに、Inorganicのとある分野では、オーラル発表と座長しかいないという講演もありました・・・
さすがに酷すぎだろー

後は、地べたに寝そべって聞いている学生がいたり、酩酊状態でポスター発表している人がいたり・・・


やっぱり、国際学会とは名ばかりかと思いましたが。。。


後、NicolaouやTrostの講演の部屋。。。寿司鎮め状態でした。
おかげでほとんど聞けない。


と、酷いことばかり書いておりますが、若い研究者の方々の研究発表は聞いていた面白かったです。後、韓国人の英語はうまいなあとか研究とは関係ないことも感じたりしてましたけど。


なんか、取り留めない文章になってしまいましたが、グダグダながらも得るものもあった学会だったとは思います。
さて、来年。とりあえずすぐ来る年会の準備と(実験的な意味も)、弟子の修論卒論を添削しないといけないというお仕事がー

ただ、来年の大きな目標は「全合成に目星をつける」これに限る。学位が危うくなってくるしね。

それでは、良いお年を。
今後もよろしくお願いします。

ノーベル賞・続き 

2010年10月09日(土) 23時09分
しかし

根岸先生のお仕事・・・有機亜鉛試薬とハロゲン化アルキルのパラジウムカップリング
ヘックさんのお仕事・・・ハロゲン化アルキルと末端オレフィンとのパラジウムカップリング
鈴木さんのお仕事・・・ハロゲン化アルキルと有機ホウ素試薬とのパラジウムカップリング

となっているわけだけど

その前に
クロスカップリングを行った先駆者としては
故熊田先生、玉尾先生

パラジウムカップリングで末端アルキンとハロゲン化アルキルでは
薗頭先生

そして「鈴木ー宮浦カップリング」の
宮浦先生

パイーアリルパラジウムの
辻先生

などなど
この分野の日本人を挙げればきりが無い。
そういう先生方も賞賛されてしかるべきなんですけど・・・報道はなあ・・・
柴崎先生がNHKでしっかりフォローしていたけど


現実は




「古館カップリング」


だもんね・・・

よくわからん人はググッてください。ここで書く気にもなれません。
しかし、わからないなら専門家を呼べばいいと思います。柴崎先生や福山先生も今回のことでだいぶTV出演されてましたし。
知ったかぶりは良くない、特に情報をリリースする側は。
専門かじった人が一目見て「馬鹿じゃねーの」と思っても全国に流されてしまってはそれが事実になってしまいます。
本当に反省してほしいなと思いました。

と、人の振り見て・・・のわが身でした。


祝・ノーベル賞 

2010年10月09日(土) 22時41分
いやあ、いつか来る、いつか来ると言っていたパラジウムカップリングがようやく・・・


嬉しすぎて泣きますよ・・・


その当日は先生と二人でPCでの中継を見てました。

一人目、ヘックの名前が出たところで「パラジウムカップリングだ!!!」と大はしゃぎ。


先生 「根岸さんかーーー」
俺  「辻さんや玉尾さんはないのが悲しいですね、宮浦さんも・・・」
先生 「いや、それを言うならトロストもでしょう。まあ、C-C、ビアリールに特化して考えればね。この三人になるのかな。」
俺  「辻ートロスト反応はパイーアリルだから・・・」
先生 「まあ、素晴らしい仕事であるのは間違いない」



・・・・


てなわけで

本当にめでたい。

確かに、最近全合成でもオレフィン部位探して「ここをパラジウムカップリングして・・・」って考えてしまうもんね。
常套句になってます。特に鈴木ー宮浦カップリングとかは。
お世話になってます。

個人的には根岸カップリングはかなり、sensitiveな気がするんですけど・・・
腕なのか、基質の問題か、この反応にあんまり良い思い出が無いです。

皆さんはどうですか????


5年前のノーベル賞、Grubbsに代表されるメタセシスもそうだけど「C-Cボンド」を簡単に構築できるって言うのはかなりのインパクトですよね。特にそれがactivateするためにデザインしやすい前駆体を用いればいい反応であるほど。
てことはこれから来るのは・・・


C-H activationか!!??

Du bois、C.Whiteあたり・・・
さすがにまだまだ改善の余地が多い分野ですよね。ただ、個人的にはものすごく興味があります。だって、単純なC-Hを活性化するなんて夢のようじゃないですか。
完全に制御できるなら、下手すれば逆合成するときにどこでどう切ってもターゲットに持っていけるんですよ!

でも、まだ走り出したところだし。これからでしょう。


後は
有機触媒?
List、Macmillanとか。。。この分野は日本人があんまりいないからなあ。。。丸岡先生か?
中国人の論文が目立つような気がします。
でも、これに関してもまだまだな気がします。
有機触媒って確かに、マイルドで金属みたいなとっつきづらさは無いのだけれども、その分汎用性に欠けるというかなんというか・・・
やっぱり、強さで行ったら金属が無いとだめなきがする。
アルカロイド合成ならうまく組み合わせれば、効果的に作ることも出来るけど。


有機化学を離れたら、カーボンナノチューブとかかな?
天然物の全合成は評価されないかなー(Nicolaou、岸先生、Danishefsky)とかさ

とれたら凄いんだけどね。
さすがに無いかなあ。

Englerin 続き 

2010年06月13日(日) 18時37分
J. Am. Chem. Soc., 2010, 132 (23), 8219–8222.


今度はNicolaou。数々のFirst Total Synthesisを成し遂げてきたNicolaouもこれはなりませんでした。ちなみに、私がこの前記事にした前に全合成は行われています。


ちなみに、それに関してはユーキさんが記事にされております。話しはそれますけど、こういったブログなどで以外に有機化学の記事を多く勉強できる今の時代は素晴らしいなあと思う今日この頃。

そしてこのユーキさん、僕より1ヶ月以上前に、Englerinの他の二つについても記事を書かれておりました


いやー気がつかなかった(笑)
すみませんm(__)m



さて、Nicolaou。この人のFirst Total Synthesisに対するこだわりは半端じゃないらしいですね。しかし、今回は先に出されてしまった。だから細胞毒性について調べたんでしょうか。
しかし、Englerin Aは高い活性があるのに、Bはだめ。基本骨格だけでは全く駄目ということですか。てことは色々な官能基で試してみたら・・・
最後に縮合するだけなんだし、他の基質も色々試せそうなのになあという印象を持ちました。

詳報にするならもう少し多くの知見をいれたら面白いのにと、ふと思いました。

Total synthesis of Englerin 

2010年05月23日(日) 20時24分
Asymmetric, Protecting-Group-Free Total Synthesis of (-)-Englerin A Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 3513-3516.

Enantioselective Synthesis of (-)-Englerins A and B Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 3517-3519.

今回は2つの文献を比較してみよう!ってわけです(笑)
どちらもセスキテルペノイドのEnglerinの全合成です。そして、連続して記載、同日に投稿。

なんかできすぎてますね(笑)。両者でなんらかの情報交換があったんですかね?

両方に共通して言えるのは金触媒を用いたエンインメタセシス経由の環構築反応。
こういうテルペンってエンインメタセシスやCope転位とかで鎖状から一気に巻くのが多いなあって思いました。
後、アルキンといえば金触媒っていうのはずいぶん定番化してきてますね。

前者(Maグループ)の売りはなんと言っても無保護合成。たしかに、このくらいの置換基がある中で無保護は立派。しかし、中身を見てみると、無保護だったのは結果オーライじゃないのか???と思います。
ただ、15工程で8.1%と中々効率的であります

一方、後者(Echavarrenグループ)は無保護こそ叶いませんですが、負けておりません。原料を安価なゲラニオールから作っている点(前者はキラルなシトネロール)あたりもいいなあと思います。
後は、何とか2つの保護基を使わなければ・・・あるいは前者より単工程で高収率も望めたのかもしれません。
そういう意味では惜しい。これは両者とも思った印象ですが。

しかし、全く同じ結合形成を不斉アルドールでやっていたり(条件、不斉試薬は違う)、本当に似通った報告ですね。


最近、こういうちょっとした大きさの化合物にこってます。

Total synthesis and study of 6-deoxyerythronolide B by late-stage C-H oxidation. 

2010年05月05日(水) 21時52分
Nature Chemistry, 2009, 1, 547

さて、論文紹介なんていついらいだろう・・・
今回は、Christina White 先生の論文です。そう、White labといえばホームページが奇抜なことで有名ですが(笑)

されている報告もまた、秀逸です。
C-H activation.ここ数年で一気に色々開発されてきております。Whiteグループの他にバランなんかもこのまえテルペンを位置選択的なCH−酸化で効率的に合成していたと思います(たしか、Natureにのったはず)。


さて、私の個人的な見解ですが、こういう目新しい反応やメソッドが提示されると

「本当に使えるの???、すごく基質選ぶんじゃないの?」とか怪しんでしまいます。最低ですねwww


ただ、このWhiteグループは反応開発だけでなく、しっかり合成に応用してくるんですよね・・・そこがすごいと思う。

まあ、厳しい見方すれば汎用性の確認は反応開発の人の義務の一つのような気がしなくも無いですけど。


さて、今回はdeoxyerythronolide Bの全合成ですか。もちろん、erythronolideは多くの過去の合成例があります。そういう意味では目新しくないのですが。

素晴らしいのはマクロライドなのにマクロラクトン化しないところ、これがミソ。ここでCH酸化を利用してカルボン酸と活性化されたアリル位のメチレンとで環化するという。
とても面白いです。
しかも、ラクトン化前駆体では不斉の水酸基を構築しなければいけないけど、この手法ではただのメチレン。
巧みな技だと思います。
しかも、大幅に短工程での合成を実現。


うーん、まさにステップエコノミーな反応であったわけです。
自身の開発した反応を使って、超効果的に、しかも複雑な化合物の合成を実現した。
そんな感嘆せざるを得ない報告でした。

まあ、収率と反応時間はご愛嬌で(笑)

ブックレビュー+気になる本 

2010年03月06日(土) 23時13分
最近気になった本を挙げてみます。こんなのも久しぶりですね(笑)


進化を続ける有機触媒・・・もっとも最近に買った本がこれ。有機触媒って多種多様なんですけど、それをある程度まとめて勉強できるツールって今まであまり無かったもので。そういう意味でこの本はお得です。値段も手ごろなのが嬉しい。
また、教科書より手軽に読めるのでコーヒーブレイク中にもってこい(笑)


有機合成の落とし穴 ・・・これは去年の今頃買った本。最近は新しい反応とか経路考えるたびにこれ見て副反応の危険性とかを確認してたりしますwww
問題は学部生とかですと少し難しいことかな。自分のレベルが低いだけかもしれませんが。。。

天然有機化合物の合成戦略・・・これは前々から気になっていたんですが、最近やっと手に入れました。これも手軽に読める感じで面白いです。また、鈴木先生の文章が丁寧で、幅広い層が読める良本ではないかと思います。もちろん、これも教科書というよりは読み物ですね。

天然物全合成の最新動向 ・・・最後にこれ。これ欲しいんですよねー(笑)
お金が・・・無い。。。8000円越えは貧乏学生には辛いんですわー。立ち読みしたところ、スキームとかが大変丁寧だなあと言う印象を受けました。うーん、今度の年会で先生にねだろうかなぁ(笑)

皆さんも面白い本があったら紹介してくださいねー

なるべく安いのを・・・


2010年になったわけですが 

2010年02月21日(日) 18時14分
今年もよろしくお願いします。


って、今更ですね(笑)


最近はちょっと立て込んでまして、更新がままならない日々が続いておりました。

まあ、もともと頻度が高くないですけど・・・

やっと落ち着いたので、これからは少し増やしていきたいと思います。


勉強したいこと、気になる論文は次々出てきますので。

徐々に取り上げていきたいと思っております。

まあ、自分の理解できる範囲で(笑)

それでは、また。

嗚呼、エピメリゼーション 

2009年12月30日(水) 23時24分
久々の更新がこれか・・・


さて、私ついに、ついに最後のステップまで来ました!天然物の全合成。


そして、ラストの反応を仕込み、TLCで追って、極性的にばっちりっぽい。しかも1点!

テンションそのままにクエンチ→分液→crudeでNMRをみてみたら・・・












天然物と一致するデータが無い


いや、試薬カス多いし・・・ほら、カラム吊ればと口に出しては見たが、背中を走る冷や汗・・・

そして、カラムを吊ってモノらしいところ見てみると




以下略。。。





官能基は必要なのが揃っているからなー
マスもばっちりだし・・・
たぶんあれだ




エピマーだ。。。

ケトンのα位だ。絶対そうだ。
しかし、エピめるような反応したっけなぁ・・・
いや、いちいちNOEとかとれよって話しですよ。カップリングコンスタントしっかり求めろって話しですよ

でも、被り狂ってて良くわかんないんですもん・・・




こうして、僕の2009年は終わりました。

2010年は全合成してやるー


駄目人間の駄目日記ですみません・・・
P R
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